鬼を狩る梟   作:リボルバー・ハト・オセロット

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今のところ義手つけて欲しい方が多いですね


大忍び

目が覚めた湊は余りの情報量の多さに困惑する。

(なぜ俺が生きているんだ?てっきり俺は自爆に巻き込まれたものかと思っていたけど違ったのか?いや、だとしてもなぜ今お館様の前にいるんだ?)

 

「失礼しました。まさかお館様の前にいたとは露知らず、無礼をお許しください。」

 

「いいんだよ、そんなに固くなる必要はない。君が一番混乱しているはずだからね」

耀哉は落ち着かせるように言う。

 

「目が覚めたらいきなりこんな場所にいたんだ、聞きたいこともたくさんあるだろう。まずは僕の話より前に君の疑問を解決するとしよう。何から聞きたいんだい?」

 

湊は一旦自分の状況を整理して一番気になっていたことを聞く。

 

「…私が自爆に巻き込まれた後どうやって生き残ったのですか?私はあの時、死を覚悟したのですが。」

 

 

産屋敷は頷いて答える。

 

「そうだね、君の記憶はそこで途切れているのかな?じゃあ爆発が起こったところから話を始めようか。」

 

産屋敷はなにがあったのかを話し始める。

 

「まず君が倒してくれた下弦の参。この鬼が使った血鬼術は『爆破』、君はそう考えたんだね。」

 

「はい、鬼もそう言っていましたし私自身もその言葉に偽りはないと思いました。」

 

「うん、確かに間違っていない。でも正確でもないんだ。おそらくだけど『爆破』であることに違いはないのだけれど君に関係のある影響はあくまで『爆風』のみだと言うことだね。君の鴉やカナエの話によると鬼はあくまで自分の体を爆破して爆風を利用したんだ。だから君に火傷とかの傷はないだろう?とはいえ腕などの体の部位ごと爆破した場合は骨とかが飛び散って裂傷してしまうみたいだけどね。だから君の体も傷が多かったんだよ、医者が治してくれる前まではね。」

 

「…つまり爆破で私の体が飛び散ることはなく、あくまで爆風による吹き飛ばしによる気絶ということですか?」

 

「そう言うことだね。君が見つかったのは実は近くの民家でだったんだよ。そこの人が親切にも事情も聞かずに町医者を呼んで君を助けてくれたのさ。どうりで見つからないわけだよ、そんな君を見つけたのは隠ではなく君の梟だからね。その後君に直接話したいことがあったからここに運んできてもらったのさ。」

 

「こいつが?」

 

そういって湊は肩に止まった梟を見る。

 

「そっか、ありがとうな。」

 

湊は梟に感謝を伝えると、梟は嬉しそうに羽を震わせた。そして産屋敷の方へ視線を戻して尋ねた。

 

「ここに来た経緯はわかりました。それで私に直接話したい事とはなんでしょうか?」

 

耀哉は湊の双眸をみて答える

 

「単刀直入に言うね。薄井湊君、君を柱に勧誘したい。」

 

「…はい?」

 

湊はお館様の前であることを忘れて思わず声が上擦り、口調がいつものものに戻ってしまった。

 

「失礼ですがお館様。私は柱となるための条件を突破できていないのではないでしょうか?」

 

湊は己の階級が乙であるため耀哉の答えに疑問をもつ。

 

「いいやそんなことないよ。君の今の階級は昇級して"甲"だ。十二鬼月を単独撃破したんだ、そして君は昇級して甲になった。それに今回のことがなくても君を柱に勧誘しようとは考えていたんだよ。君は入隊して一年もたっていないのに討伐数が多かったからね、自分の討伐数を覚えているかい?」

 

「すみません、あまりそこには興味がなかったもので。」

 

「そうかい。じゃあ教えてあげるけど君の討伐数は62体、今回の十二鬼月の一件も含めると70体。一年経たずにこの討伐数、柱になるには充分すぎる成果だよ。」

 

(俺ってそんなに鬼を狩ってたのか…)

 

湊は自分が思っていた以上に成果を上げていたことに驚くが耀哉は続けて話す。

 

「それで湊君、君の返事を聞きたい。柱になってくれないか?」

 

湊は少し考えた後、毅然として答えた。

 

「申し訳ありません。お誘いはありがたいのですが今回の話は断らせていただいてもよいでしょうか?」

 

耀哉は意外そうな反応を示した後に湊に問う。

 

「それはどうしてだい?」

 

「…団体行動が好きじゃないからです。私がいるだけでその場の雰囲気が悪くなってしまいます。柱ともなり一般隊士を率いていく立場には向いていません。」

 

ふむと頷いて耀哉は考えるそぶりを見せた

 

「しかし君ほどの隊士をこのままにしておくのはもったいない。どうしたものか…」

 

少し思案した後、耀哉は湊にひとつの提案をする。

 

「そうだ、僕の忍びになる気はないかな?」

 

「…はい?」

 

思ってもいなかった提案に湊はまた口調が普段のものにもどってしまう。

 

「…お館様のおっしゃられていることがよくわかりません。戦国の世ならまだしも、この大正の世において忍びなど必要ないのでは?」

 

湊は疑問に思ったことを聞く。

 

「忍びというのは比喩さ。君には情報収集、要は諜報をして欲しい。未だ見つけることができていない無惨の居場所を把握すること、それが君にして欲しいことだ。それに君の育手である猩々も私の父や祖父の忍びとして動いてた時期もあったらしいしね。」

 

「猩々殿が?」

 

懐かしい名前がでてきたことに湊は驚く。

 

「そうだよ。今回君を柱に勧誘するに当たって彼からも話を聞いたんだ。その時に言っていたよ、『あいつは一匹狼の気質があるが信頼を置いた人間は何があっても守ろうとする気質がある、だからこそ妹を自分の手で殺してしまったことを後悔してやがるんだ。だからこそあいつに必要なのは守りたいと思える相手だ』って。」

 

(猩々殿…)

 

あまり口数が多くなかった彼だが自分のことをちゃんと見ていてくれたことに湊は嬉しくなってしまう。だからこそそんな猩々の期待に応えるためにも湊は覚悟を決めた。

 

「私にできる役目がそれならばできることはなんでも致しましょう。これより私は産屋敷耀哉様を主として仕え、お支えしていきたいと存じます。」

 

「そんなに固くなる必要はないよ。これからよろしく頼むね湊。猩々もきっと応援してくれるはずさ。」

 

湊は忍びとなったついでというわけではないがさっきから引っかかっていたことを聞く。

 

「…先程から疑問に思っていたのですがお館様は猩々殿の本名をご存知なのですか?私は教えてくれなかったのですが…」

 

あぁ、といって耀哉は答えた。

 

「いや、私も彼の本当の名は知らない。なんでも、『忍びになるというのは己の全てを主に委ねるということ、全てを委ねるのだから名も生き死にの事実も必要ない。優れた忍びほど後世に真の名を残さないものだ』と。だから彼は猩々と名乗るようになったらしいね。」

 

その言葉を聞いた湊は耀哉にひとつのお願いをした。

 

「…もしそうならお館様にひとつのお願いがあります。私を死亡したことにして報告してくれませんか?」

 

「それはどうしてだい?」

 

「猩々殿は優れた忍びほど後世に名を残さないと言いました。なら私はお館様のためにもその優れた忍びになりたいのです。」

 

その答えを聞いて耀哉は一つの質問を湊にした。

 

「…私は別に構わないよ。でもそれはそれで悲しむ人は出るんじゃないかな。花柱となる予定の胡蝶カナエとその妹のしのぶ、彼女らは任務の合間に君を捜索していると聞いている。彼女らも猩々が言っていた『守りたいと思える相手』なんだろう?彼女らを悲しませてもいいのかい?」

 

しかし湊の覚悟はぶれない。

 

「構わない…と言ったら嘘になります。私が死んだことになれば彼女らに会うことは二度とできなくなるでしょう、ですが私は今回奇跡的に生き延びたいだけ、それならば別人として人生を歩むのもまた悪くはないでしょう。」

 

湊の真っ直ぐな目を見た耀哉は湊の望みを呑んだ。

 

「わかった、君は死亡したこととして通達しよう。それじゃあ私は君をなんて呼べばいいのかな?」

 

一拍置いて湊が答えた

 

「…そうですね、今回私のことを見つけてくれたこの鎹鴉にかけて『()』なんていうのはどうでしょうか」

 

「わかったよ『梟』。これから活動の拠点となる場所が必要だろう。どこかの山に隠れ家を作らせよう、それから隠の統率権も君に渡しておくよ。苦手かも知らないが人を動かすという経験はいずれ役に立つ時がくる、使うかどうかは君に任せるけどその練習だとでも思ってくれ。」

 

「お気遣い感謝します。」

 

「それから水、音、岩の柱たちには君のことを既に話として通してある。だから彼らには君の本名が知られてしまっているが構わないかい?」

 

「問題ありません、柱の中の誰一人も私の本名を知らないというのもそれはそれで問題でしょうし。」

 

「わかってくれて助かるよ。それじゃあ二ヶ月後に花柱の就任式を含めた柱合会議がある、そこで君のことを改めて柱に紹介しよう。だからその時までに君の方でも準備を進めておいてほしい。あとはもう下がっていいよ、今日は疲れたろう、ゆっくり休んでくれ。」

 

その言葉を聞いた()は耀哉に一つ礼をしてその場を去る。 

 

その日はまだ薄井湊死亡の一報がでていない日のためだったため藤の家にお世話になった。

 

そして数日が経ち、一報が流れると湊は九水の元へと向かった。

 

「こんにちは平田さん。」

 

湊が後ろから声を掛けると鳩が豆鉄砲を喰らったような顔を九水は見せる。

 

「…馬鹿なやつだねお前も。…全く心配させやがって」

 

そう言った九水の声は涙ぐんでいた。

 

湊は九水にこうなった経緯を話した。

 

「…それで薄井湊は死亡したこととして報告したんだね。本当に驚いたよ、『死んだかもしれない、これは彼の持っていたものだ』って君の組織の人が物を渡しに来るものだからね。そして今日の朝、君は死んだと伝えられた、それなのにさっきこんにちはなんて挨拶したんだから驚くに決まってるよ。」

 

「すみません。九水さんに頼みたいことがあったので。」

 

「頼みたいこと?」

 

九水は首をかしげる

 

「えぇ、茶屋というのは情報が集まる場所です。そこで何か気になる話があったら教えてほしいんです、例えば異形の者の話とか」

 

湊の答えに合点が言ったという風に頷く。

 

「そういうことなら別に構わないけどこれから湊はどうするんだい?」

 

「さっきも言った通り情報を集める、梟として。敵の親玉を見つけ出すためにはどんな小さな情報も必要だから全国を回ることになるかもしれません。それに、湊としてここに来ることはもうない。次来る時は湊ではなく梟としてです。」

 

九水は一瞬怪訝な顔をしたがすぐに表情を戻して湊に言った。

 

「湊がそう決めたのなら僕は何も言わないけど、その決断によって悲しむ人がいることを忘れないでくれよ。…客がきた、少し待っててくれ。」

 

そう言って九水は湊から離れていく。

一人客席に残った湊は自虐の笑みと共に思わず口からこぼす。

 

「…お館様にも同じことを言われたな。誰かを守るといいつつ離れることで傷つけてるのは結局俺か。」

 

そんなことを考えていたら九水が接客してる客の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「でも、私があと少しでも早くついていれば彼に手が届いて助けることができたんです…」

 

(…この声は⁉︎)

 

そう思い湊が聞き耳を立てると、聞こえてきたのは間違いなくしのぶの声だった。そしてそのまま九水としのぶのやりとりを聞く。

 

(九水さん…、しのぶがこっちにきたのを察してさっきの言葉を俺にかけたな…。)

 

しのぶとの会話を終えた九水は問う

 

「彼女は君のとこであんなに悩んでいたのに君は本当にこれでいいのかい、()?」

 

しかし湊は何も返事をしない。そして立ち上がり、そのまま()はしのぶが帰っていった道とは逆の方向へと進んでいく。

 

 

(そうだ、俺は湊じゃない、梟だ。覚悟を決めろ。しのぶや俺のような人を出さないために出来ることは無惨を見つけ出し、殺すこと。その目的のためならば、どんな痛みも、悲しみも、怨嗟も、背負ってみせる。)

 

この日、一人の大忍びが誕生する。

 

 

 

 

 

 

 

 




大忍び誕生まで行くことができました、長かった…。何度も言いますがアンケートの締め切りが後二、三話なのでお早めにどうぞ。

湊に忍び義手つける?

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