最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「ふぅ〜、沢山歌ったわねえ」
「俺様も応援しまくれて楽しかったぞ」
「そのうちわとサイリウムと法被とハチマキはどこから出てきてるのかしら……」
「手作りだし常備してる。俺がカバンをいつも手放さない理由」
「アンタ生粋のドルオタよね……」
「何を言う、俺様が応援してきたアイドルは有馬かなだけだ。今までも、今も、これからも。ま、正式にアイドルという肩書きをもらった試しは無いがな」
解散して2時間後。
もう22時になったしお開きにするかという話になったがぶっ続けで歌って全く喉も体力も疲弊していないかなはやはり天才としか言えない。
持ち歌から他のアイドルソングからバラード、演歌まで多種多様に渡って安定して全曲90点以上叩き出しそれもカラオケとはいえ一切の手抜きをしないれっきとした歌手の本気の歌い方なので応援にも熱が入った。
自作グッズも活きてくるというものだ。
「なによ、アタシにアイドルになってほしいワケ?」
「俺だけのアイドルでいてくれるのも良いが、このかなの良さはもっと広まるべきだな。本気演技してる時のお前と同じくらい、アイドルしてる時のかなは輝いてるからさ」
「そ……じゃあ今言えるわね」
「ん? なんだよ」
そんな俺の言葉を受けて意味深な事を言い出すかなを訝しげに見つめる。
まるで『アタシ、アイドルになるの』なんて言い出しそうな顔で――
「アタシ、アイドルになるの」
「!?!?!?!?!?」
何かのドッキリかと思った。
思考盗聴でもされてるレベルとしか思えない一言一句違わぬその言葉に久々に素でビビってしまっていた。
「お、おおおお前マジで……?」
「うん。と言ってもグループでやる上にまだメンバー集まりきってないからデビューは未定だけど。あと1人揃えば3人だしってとこ」
「冗談……でお前はそんな事言わないもんな」
「当たり前じゃない」
「……それで、グループ名は?」
「……B小町」
「!?!?!?!?!?」
そしてコンボでビビった。
B小町、さっきの集まりで出ていたアイのいた伝説的グループの名前。
アイ以外も6人在籍していた7人体制のグループで、デビューから2年程はアイのワンマングループだったもののアイ15〜6歳辺りから他も頭角を現し今だ初期メンバーの内解散まで残った2人は芸能界に在籍しタレント、歌手とそれぞれの道で活躍中。
他の4人も順風満帆な暮らしをしているとたまにアイが言っている。
……そんな伝説的グループの名前を、かなが引き継ぐ。
その意味を分からない俺様では無かった。
「そ、その事知ってるのは旧B小町と新生B小町になるもう1人と事務所のお偉いさん抜いて何人だ?」
「色々とお世話になったぴえヨンとアクアくらいかしら」
「星野アクアよりは先に知りたかった……!!」
「仕方ないじゃない、同じ事務所なんだから」
「でも俺は有馬かなのファン会員第0号の幼馴染だぞ!? ずっと応援して来たのに……他の人間なら許せたがアイツだけは……とてつもない敗北感が……」
「いやそんなに落ち込む事?」
「俺の推しのトップシークレットをあんないけ好かない奴に先に知られてるなんて……俺は……」
そしてその事をアクアの方が早く知っていたという事にあまりのショックを隠せない。
いつもは余裕で飄々と全てを交わして行く様な俺様なのに……かなの事となるとやはりダメなのかもしれない。
でもかながアイドルとして光り輝いてるのが悪い、そんなの目の前で見せられ続けたら脳みそがおかしくなるのも当然じゃないか?
少なくとも俺はそう思うがな。
「……もー、和也ならちょっと後に言っても大丈夫だと思っただけよ。アンタは信頼出来るから」
「そうか。……それなら納得しよう」
しかしかなにそうやって信頼されてると分かるとすぐ立ち直ってしまうのもまた現金な話である。
それならまだ良しとしよう、アクア本人への感情はさておき。
「それに、活動始まったら会員番号0番あげるんだから。それで我慢しなさいよね」
「よし許そう」
本当に現金な奴ね、と呆れるかなだったが俺は結局のところ上機嫌で帰る事が出来たのだった。
「本日よりあかねちゃん復帰になります!」
「皆さん、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。頑張りでお返しして行こうと思っています、宜しくお願いします!」
黒川あかね、今ガチ復帰。
前回収録分放映時のラストに告知された一文だ。
これを見て番組関係者も俺達も、やっと一息付けるとホッとした。
あかねちゃんの精神状態も落ち着き、世間もある程度落ち着き、ここから佳境を迎える今ガチ終盤戦としてリスタートだ。
「それではカメラ回しまーす」
「……行くぞ」
「うん」
前回みんなで集まった時、あかねちゃんは『アクアの好みに合わせて演技を入れる』と言っていた。
アクアは全くもって意に介していなかったが、俺とかなは特に嫌な予感がしていたという意見が合致。
舞台役者として天賦の才を持つ黒川あかねが魅せる演技、それは紛うことなき輝きを放っていたからだったからだ。
だから――
「そうだね、アクア」
第一声で俺は全てを察してしまった。
「ふぁっ〜……眠いんだよね、収録早すぎてさ〜。あ、もうカメラ回ってる?てへっ」
間違いなかった。
それは正に『伝説のアイドル・アイ』を自らに憑依させていた。
「……ッほんと、天才役者なんだから」
隣で歯噛みするかなにフォローの一つでも言えたら良かったんだが、どうにも今はそういう余裕も俺様には無いらしい。
「ア……あかね?」
「アクア、どしたのー? まるで本物見るような顔しちゃって」
「いや……」
しかもあの星野アクアに至っては本気で動揺してやがる。
かなと絡む時との反応の差なんなんだよ。
「あかね〜、おかえりー!」
みんなが自然とあかねちゃんを囲む様に集まってくる。
まるで魔法だなこりゃ、アイを憑依させた事によってその人の特殊能力までコピーするとは俺様でもちょっと動揺してしまうが。
しかしあまりこういう動揺は映されない方が良いだろう、かなと話して誤魔化しておくか……
他の面子はあかねちゃんから暫くは離れないだろうしな。
ちょいちょいとかなを手招きし廊下に呼んで二人で歩く。
勿論カメラマンも一人着いてきてるがここなら落ち着けるか。
「……つまんない」
「俺はある意味面白いがな」
「ぶん殴るわよ」
「分かってる分かってる。俺様だって最近はかなとアクアをくっつかせようとしてたってのにこれだぜ? アクアの奴いくらあかねちゃんが完全憑依見せたっつってもチョロ過ぎだろ」
「あ、分かるわー! アタシをアクアとくっつけようとしてるのところ以外は分かるわー! ゆきユキコンビメインで全て解決させようとしたのにあんな簡単に靡くなんて、そんな軽い男だとは思わなかった! ミホノブルボンで皐月賞と日本ダービー取れたから手堅く菊花賞でもミホノブルボン買ったらライスシャワーに差された時くらいには予想外よ!」
「例え方渋くない? あとお前ならマツリダゴッホが勝った2007年有馬記念で例えた方が良かったと思うけど、有馬だけに」
「やっぱりぶん殴って良い? あとどうせならアタシは2015年のゴールドアクターの年にするわ」
よしよし、調子が出てきた。
いくら仕事でもあんな圧倒的な演技と圧倒的なチョロさ見せられたら動揺した俺達の不都合な映像がどっかで映り込みかねないからな。
「ハハハ、ジョークだよジョーク。だからお前は弄りやすいんだよ」
「ほんとムカつくわねー」
「でも万が一お前がアクアから告白されなかったら俺様がいってやるよ。ま、ほんとに告白されなかったらだけどな」
「ま、まるでアタシがアクアから告白されるの待ってるみたいな事になってるじゃない! もー、良いわよそんなの」
だがあの星野アクアならあかねちゃんへの告白がハイリスクなのは分かっているはずだ。
他事務所、半分ガチで押しに来てる、この二つは本来前に出てくるのを良しとしない方針だったアイツの真逆を行く。
ならば強制で誰かに告白が男陣営のミッションではあるとしても堅実にかなに行くはずだ。
なにも問題無いはずだ。
そう、何も……
「へぇ〜凄いねーアクアがタジタジだ☆ しかも私そっくり〜この子あか…り? ちゃんだっけ? 一度会ってみたいなあ」
「黒川あかねちゃんだよ。というかまあそりゃお兄ちゃんの好みの女の子って言えば今私の目の前にいる人だからね~」
「ね、ママ?」
無道和也
有馬かな限定ハイパードルオタ、そこそこデカい鞄をいつも持ち歩いているが中身は全て有馬かな応援グッズ
かなにアイドルになるという話を聞かされたりあかねが予想以上の憑依を見せて情緒がぐちゃぐちゃになった被害者
有馬かな
和也にドルオタされるのは悪くない、寧ろ嬉しい
正式なアイドルとしても推してくれるのが確定してるので内心めちゃくちゃ喜んでいる
ファンクラブ会員番号0番は確定で渡すことになる
アクアがあかねにデレデレしてると思って非常に不満げ
アクア&あかね
主人公達の裏で原作通りイチャついてる
星野ルビー
地味に初登場