最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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『星野アクアはその答えを探して』

 ――俺にとってアイとはなんだろうか。

 

 この十数年、アイの息子として過ごしてきて今更な自問自答をしてしまう事に若干の呆れを感じつつも、そう思わずにはいられない。

 今でさえ彼女は俺にとってのなんであるのか、答えが見つかっていないからだ。

 大切な人がずっと推していて、託されたから応援してきたが気付けばそれ以上の特別な感情を抱いていて。

 

 推しのアイドル、と一言で片付けるのは何かが違うように思えた。

 だが、だからと言って母親として見られていない事にも気付いていた。

 

 この気持ちの答えを見つけないと、あかねに抱いた感情も分からなくなってしまう。

 せめて、傷付ける事だけはしたくないから。

 

「――だって言うのに、なんでお前の事まで浮かんでくるんだ……」

 

 

 

 

 

 

「有馬……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とかなは通ってる学校が違う。

 というのも俺は住んでいる場所から一番近い高校の通信制高校に通っているからだ。

 そうした場合登校は週1度、他を大抵は午前の半日授業という形にしているのだが近くにかなや星野アクア、有名どころで言えば不知火フリルなんかが通っている高校がある為かある程度個別で融通が効く。

 昨日の俺なんかは、事務所での会議も含めて22時までやる予定だった為に事前に午後授業にズラしてもらっていたから今日は夕方まで授業が無い。

 

 そんな訳で暇で眠気もそんなに無かった俺は登校途中のかなでも探して絡んでやろうとしていたのだが……

 

「有馬かな……今から学校サボって遊ばね?」

 

「……! いくっ!」

 

 

「あんのクソボケタラシ野郎が……わざわざ学校サボって遊びに誘うとかこの俺様の幼馴染になにしようとしてやがる……? 事と場合によっちゃぶっ殺しても良いんじゃないか……?」

 

 かなを見つけたまでは良い。

 だが声を掛けようとした瞬間アクアが声を掛けて、そのまま遊びに誘ったのだ。

 今から学校があるにも関わらずだ。

 

 ……怪しい。

 

 コイツやっぱりかなに気が合ったんじゃねえかと思う反面、怪しいと思う気持ちも大きい。

 何せいつもはそんな事もせずに自分から話し掛ける事すらあまり無いあのクソボケが、わざわざ学校をサボってまで誘った意図が読めない。

 見た目といつもの行動からはそうとは言い難いが、絶望的なまでの女食いの可能性がある。

 いけ好かない、いけ好かないとは言っているがそこまでクズとは思ってないだけに万が一そうなら徹底的に半殺しにした後ルビーちゃんに突き出して社会的に殺してもらおうと画策し、尾行する事とした。

 

 

「は〜マジありえなくない!? 学校サボって遊びに行くとかマジ不良じゃん! ありえな〜い! マジさいあくマジさいあく〜♪」

 

「そんなに言うならやっぱやめとく?」

 

「そうは言ってない。なんだかアンタが思い詰めた顔してるから、ちゃーんと見ててあげなきゃっていう先輩心? 心が天使よねーアタシ」

 

 いやどう見てもお前がウキウキしてるんだろうがとか心の中でツッコミを入れておく。

 意地張ってる癖にアイツの事好きなのバレバレでガードが緩すぎるんだよかなは。

 だから心配になってここまで見に来てるんだぞ。

 

 またなんかギャーギャーかながアクアに言ってるがカット、取り敢えずどこに行くかまで尾行してやる。

 変なとこ連れ込んだら本当に許さねえからな。

 

 

「……やっぱアンタ変わってるわね」

 

「そうか?」

 

 そして着いた場所で俺もこっそり頷くしか無かった。

 変なとこ――と言えば変なとこではあるが……

 

「うら若き男女が学校という牢獄から逃げ出して何をするかと思えば……公園で呑気にキャッチボールだもん! そりゃ言いたくもなるわよ!」

 

 そしてもう一度大きく頷く。

 このクソボケ、道中でわざわざグローブとボールまで買って公園に来てキャッチボールなんて始めやがって、流石の俺様ももう出てって突っ込んでやろうかと思ったくらいだ。

 

 しかしノーコンなかなはそれはそれで見ていて可愛いので許す。

 

「私みたいな下手っぴじゃなくて、もっと上手な人誘えば良かったんじゃないの……ルビーとか」

 

「妹に学校サボらせる兄がいるか」

 

「シスコンきも……」

 

 そして思わず本気で出て行きかけて再度踏ん張った自分を褒めたい。

 ここまで分かりやすいシスコンがいて堪るか。

 

「じゃあ、あかねちゃんとか……仲良いんでしょ?」

 

「まあ、悪くは無いけど……一応仕事って言うか。そういう気安い関係でも無いし」

 

「そうなんだ」

 

「嘘吐いたり打算で動く事ばっかで、何の打算も無く無駄な会話出来る人間ってのは俺の周りにはあまり居ない」

 

「その点有馬相手なら気を使わなくて済むし」

 

「ちょっとは使えやゴラ」

 

 ただこれは本当だろう。

 芸能界というのは打算と潰し合いと利用で溢れている。

 俺も何度かなをそういうものから守ったか分かったもんじゃない。

 

「んーでもまあ、そういう相手に選んでくれたって言うのは悪い気はしないかな〜」

 

 だから、今後も守ってやれる人間じゃないとかなを渡す気にはなれないんだよ。

 俺の好き嫌いを度外視して選んでるのはそういう面も大きいんだよ、と自分の心に無頓着なクソボケを見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今ガチもそろそろ収録大詰めね」

 

「ああ」

 

「……ね、実際アンタは誰狙いな訳?」

 

「あくまで仕事だからそういうのは無い」

 

 アレから暫く。

 何一つ進展無し。

 あの野郎そろそろ出てってツッコミの一つでも俺様がお見舞いしないと気が済まないんだなそういう事なんだな。

 だがもう少しだけ泳がすか、ワンチャンこの男からかな狙いという言葉を引きずり出せる可能性がある。

 

「た、タイプくらいあるでしょ! 年下が好きだとか年上が好きだとか!」

 

「難しい事を聞くな……」

 

 ふとボールを真上へ放る。

 物思いに耽っているのかその顔付きは神妙だ、ここばかりは真剣なのだろうと見守る。

 少しは見直すべきところもあるじゃないか……

 

「どんどんと『僕』と『星野アクア』の境い目が無くなっていく」

 

 流石の俺様もこれにはズッコケるより他無かった。

 気付かれなかったのが奇跡だろう。

 

「前から思ってたけど……怖くて聞けなかった」

 

「なんだ?」

 

「アンタ厨二病? そういうの早く卒業しなさいよ……見てて痛々しいから」

 

 だが隙を与えないかなのツッコミに笑いを堪えられなかった、その通り過ぎて腹が痛い。

 

「きゃあっ」

 

「あっぶね! このクソボケ野郎俺様の頭狙っただろ!」

 

「和也!? いつからいたのよ……」

 

「流石に少しイラッと来た。後悔はしてない」

 

 キレて投げてきたアクアのボールを避けながら悪態を付く。

 ちょっと煽ったくらいで投げてくんなよほんとによ……

 

「……コイツがいつからいたかは知らないが、全部聞いてたんだろ?」

 

「何ならかなが誘われてるとこから」

 

「ほんとに全部ね!? 予想以上に全部でビビるわよ!」

 

「……はぁ、要は俺も高校生って事だ。自分と近い歳の子を恋愛対象として見る事がある」

 

「んじゃかなはどうなんだよ。同じ恋愛リアリティショーに出てるならかなに告白する可能性もあるんだろ?」

 

「なっ!? なに聞いてんのよアンタは!」

 

 気に食わないからさっきのお返しだ。

 ストレートに聞いてやる、コイツの好みを。

 

「で、どうなんだよ」

 

「…………考えた事無い。無道が言うように良い女だとは思ってるけどな。それ以上は、恋愛自体をリアルのものとして考えた事が無い俺じゃまだ分からないな」

 

「良い……女。わ、悪くはないわね……そう言われるのは……ふふっ」

 

「……やっぱり、俺のあかねへの感情は……」

 

「なんか言ったか?」

 

「いや、なんでもない」

 

 思った以上に真面目な解答が返ってきた事に少し面食らう。

 コイツも割と真剣に考える事があったのか……それもかなへの感触も悪くない。

 これは本当にワンチャンある感触だと噛み締める。

 

 やっぱり……星野アクアになら、かなを託せる。

 そう再認識させられた。

 

 

 

 

 

「んで、年上と年下はどっちが好きなんだよ? この際答えちまいな」

 

「……年上」

 

「へー? ふーん? へー?」

 

「気付いてないかもしれないがあかねちゃんも年上だぞ」

 

「……へー? ふーん……? へー……?」

 

「……なんだよ」

 

「なんでもないっ!!」

 

「お、良い球じゃん」

 

「そんな事言ったって機嫌直りませんー! ……ばーか♪」

 

 

「ほんと、分かりやすい奴だなあかなは」




無道和也
この後キャッチボールに混ざって暇潰しした

有馬かな
アクアに『良い女』と言われて気分上々
この評価は大体幼少期から和也と一緒にいた影響である

星野アクア
自分の感情の答えを探している
実は二人からの印象は厨二病のまま変わってない事には気付いていない
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