最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「も、もうすぐだな」
「愛しのメッさんがどんなカッコで出てくるかってワクワク止まらない様子だねえケン〜?」
「そ、そりゃそうだろ! 愛しかはさておき可愛いのは……そりゃ、そうだしさ」
「わっかる〜メッさんめっちゃ美少女だもんな〜、共演した時は間近で見れる機会多くて眼福眼福……」
「それゆきに報告して良い?」
「やめて?」
ワイワイと盛り上がる2人を他所に俺はかなが大丈夫か心配でならなかった。
アイツは昔、こういうステージで失敗している。
そして歯車がそこから狂っていった。
周りからは失望され、親からも見放され、やがてかなの味方は俺とアクアの2人になっていた。
そんなトラウマを抱えたかなはきっとこう思うだろう『自分がセンターじゃ2人をコケさせてしまうんじゃないか』と。
正直それだけならまだ成功すれば問題無いから良い。
本当の問題は別にある。
「ん? 和也、さっきから難しい顔してどうした?」
「……かなはな。きっと2人の輝きに気圧されてしまうと思う」
「気圧される? かなちゃんが?」
「ああ。正直言ってかなは『失敗は成功の元』『仲間が一緒なら安心』と捉えるタイプじゃない。『失敗すれば後が無い』『全員を引っ張らないと』そう思うタイプだ。そしてかなは、失敗を積み重ね過ぎた……勿論本人の責任に無い部分が大半だが、それでもそうした『負の経験の積み重ね』で人が、事務所関係者も、両親さえかなを見捨てた。そしてあの子は心を壊してしまった」
「……なーるほど。軽いPTSDみたいなもんか。にしてもひでぇ両親だよ」
「俺達が想像する何倍も辛かっただろうな」
1人だけなら失敗してももう良いと思えるのかも知れない。
だがあの子は人一倍仲間を大切にする。
そして人一倍周りと自分を比べる。
それが全て負の方向に出てしまう可能性が高い。
では、本当に『全て負の方向に出てしまった』ら?
「ああ。1人なら平気だろうが……『2人を何とかして輝かせないと』そう背負っている。そして――その2人が自分より輝いたら? 自分が何をするまでもなく輝いていたら? あの子は『自分がグループにいる意義』を失くすだろう」
「……残酷すぎるだろ、それ」
「今回に関しては誰も悪くないってのが尚更、ね……」
そう、何もかも見失うだろう。
必死にカウンセリングをして、ある程度立ち直らせた俺様ですら完全に治す事はならなかった。
それ程までに、かなの心というものはあの時壊れてしまった。
だから俺は、かなの親をこの世で最も恨んでいる。
せめて抱きしめてやっていれば、せめて『頑張ったね』と声を掛けてやっていれば、せめて傍にいて変わらず接してあげていれば、かなは壊れなかったのに、笑顔でいられたのに。
――ユルサナイ
「あ、B小町来るぞ!」
「和也、和也!」
「あ、スマン。お前ら
「おうよ!」
「完璧!」
一瞬、意識が何かに持ってかれ掛けたがもっさんのお陰でハッとした。
今は変な事に気を取られている場合じゃない、応援しないとな。
「せーの……」
「B小町ーー!!」
思い切り叫ぶ、それはもういつものかなにかける声援よりも何倍も何倍も大きく大きく叫ぶ。
「メムーー!!!」
「ルビーちゃーーん!!!」
「かなーーー!!!!!」
横断幕を広げ、魂の限り叫ぶ。
メッちゃんが気付き、ルビーちゃんが気付いた。
2人の顔がパッと明るくなったのが見えた。
ダンスのキレが良くなったのが見えた。
だが、かなだけは変わらなかった。
いや、見えていなかった、俺達の姿が。
2人も気付いたが俺が目配せをして、声援を止めさせない。
ここで止めたら何の意味も無くなる、それだけはダメだ。
必死に声を上げ続ける、団扇を、サイリウムを振り続ける。
「L・O・V・E!! ラブリーMEMちょーー!!」
「ルビーちゃ〜ん!! 最高だよーー!!」
「かなーー!! お前が世界一だああああ!!!」
誰よりも安定した声で歌い、そしてバランスの良いダンスをしていた。
それでも、全てを諦めた様なオーラだけは変わらなかった。
俺の声でも届かないのか?
ずっと一緒にいた俺の声ですら――
「なっ!?」
「アレは……」
唇を噛み締めた瞬間だった。
後ろ姿でも分かる程の無駄に綺麗な金髪、イケメンオーラ。
そして異質なまでのオタ芸の切れ味。
「アクア!?」
「来てたのかよ!?」
まさか星野アクアが来ているとは。
アイツは元より妹のアイドルデビューに反対だった。
B小町でデビューする事を承諾した後も、かなをスカウトしたって言う後も、ちょくちょくそれは俺様に話していた事だった。
だからアイドルの事は嫌いで、見に来ないものだと思っていた。
だがそれより、俺の目が釘付けになる事があった。
「――かなの奴、笑った」
「ほんとだ」
「やっぱり笑顔、可愛いよな」
アクアを見て、かなが笑った。
アクアを見て、声に張りが出た。
アクアを見て、踊りのキレが格段に上がった。
何より、その一瞬でかなが『アイドルになった』。
「……ああ、悔しいな」
俺の応援がほんの少しも届かなかったのに、あんないけ好かない奴のオタ芸は届くなんて、まるでアイツの中の優先順位はもう決まってる様なもんだ。
だがアイツになら託せるんだ、何を残念がる必要がある。
寧ろそうであるならあの男を認めてやらなくて何が男だ。
無性にアクアに向けてる笑顔に胸が痛むのを堪え、頭を振る。
「ええい!! 俺様達も星野アクアに負けてらんねーぞ!!」
「そうだな!!」
「よっしゃー!!」
「あ、かなちゃんもこっち向いたぞ!!」
「うおおおおおかなああああああああ!!!」
このステージは、かな達にとってかけがえのない瞬間だから。
「ようアクア、来てたんだな」
「無道、それに熊野に森本……正直、応援圧巻だった」
「ハンッ当たり前だろ、1ヶ月も前から準備してたんだからな」
「しっかしアクアも隅に置けねえなあ? あんな大胆なパフォーマンスでかなちゃんを笑顔にしちまうんだからよ」
「ああいう事するタイプだとは思わなかったら意外だったけど」
ステージ終了後、俺達はアクアと話す事となった。
女子陣は他のステージも見ていくらしくどっか行ったが……それよりも今は、コイツに思いの丈をぶつけてやる。
「……はっきり言ってやる。かなの笑顔は俺様が作るもんだと思ってた、疑いもしなかったし何かあったら俺が救うもんだと信じていた。今までそうだったんだからこれからもだって。確かにアクアもずっとかなの傍にいてくれた、ここ数年はタイミング合わなかったがな。それはさておきだな、子役の時から誰も彼もがかなを見放してもお前だけはずっと傍にいてくれた。だけどそれでも俺がかなの一番であると信じていた、というか事実だ」
「無道……」
「でも今日、一番辛くて苦しいかなを救ったのはお前だった。俺がどれだけ声を上げても届かなかった心を救ったのは紛れも無く星野アクア、お前だったんだよ。完敗ってやつさ……」
コイツに負けた事より、自分の声が届かなかった方が辛かった。
だから言わないといけない。
「ありがとよ、かなを笑顔にしてくれて。そんでもって認めてやるよ、お前がかなのナンバーワンだ。……これからもアイツの傍にいて支えてやってほしい、きっとかなの隣に居るべきはお前だからよ」
「無道、お前が一番有馬の傍にいたんだからそれは違うだろ」
「うっせえ、お前がかなの彼氏になれば解決すんだよ。……ま、ならなかったとしても見捨てる事だけはしないでやってくれ。たとえ何があっても、どんな理由があっても、その手を取ってやってくれ」
「それは……分かった。俺としても数少ない友人だしな」
「ならば良し。かなを救えんのはお前しか居ないし、きっとお前が困難に陥った時心の支えになんのもかなだと思うから。『頼んだ』」
「『頼まれた』」
握手を交わしたアクアは、やっぱり陰険な顔付きの癖に妙に爽やかで、いけ好かない野郎だった。
「……アクア」
アクアはアタシに『ここにいても良いよ』と教えてくれた。
あの時、全てが真っ暗になりかけた時、教えてくれた。
その瞬間世界が広がって見えた気がして、和也達の応援も聞こえて、少しだけアイドルとして自信が持てる、そんな気がした。
……まだ、アクアに対する気持ちがなんなのかは分からない。
いや、違う。
今ガチの時、あの時の気持ちは間違いなく『恋』だった。
でもフラれて、落ち込んでる時来てくれた和也の顔を見たら、何だか分からなくなって。
今アクアに思っているこの気持ちは恋なのか、友情なのか、親愛なのか、もうはっきりしない。
でも、一つだけ。
たった一つだけだけど、これだけははっきりと分かる、気持ちがある。
「アイドルとしてのアタシに、夢中にさせてやるんだから」
アイドルやってる間に、きっとアイツのサイリウムをアタシの色に、真っ白に染め上げてやるんだから。
「アンタの【推しの子】になってやるんだから!」
無道和也
アクアの声の方がかなに届いた事で正式に認めた
ただ自分の中に眠る、起きるかもしれない二つの感情には気付いていない
かなが誰からも見捨てられた時唯一他人で見捨てなかったアクアの事は実は信頼はしている
星野アクア
和也からかなを託され、原作以上に近かった距離が更に近くなり和也の次に本音を打ち明けられる親友になった
但し原作以上に過保護になった
有馬かな
原作では性格が災いして干されてる場面があったがここでは単純な失敗による干されが大きかった
今ガチに出た事で原作よりアクアに対する感情があやふやになり、恋なのか友情なのか親愛なのか分かっていない
ただファーストステージを助けてもらった事と、和也と共に小さい頃から支えてくれた恩のお陰でアクアに対する矢印は原作よりもめちゃくちゃ太い
黒川あかね
一方その頃彼女はかなのファーストステージが尊すぎて号泣していた
MEMちょ
美少女(25)
鈴城まな
B小町のファーストステージ見て引退決めたアイドル(24)
リアルだと多分全盛期AKBグループの姉妹グループ内で中堅程の知名度