最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「……で、まさかアンタがシークレット枠のチーム文京で来るとは思わなかったけど。なんで
「そりゃお前、無道君と暫く会ってないだけでコンディション少しずつ悪くなってたら会わせるに決まってるだろ……」
大体俺のオファーから3ヶ月、東京ブレイドメインキャスト発表がありその直後にはシークレット枠としてチーム文京も発表、これはメインキャストにも秘密での発表だったらしく直後は慌ただしくスマホに連絡が来ていた。
さて、そんな俺は今苺プロダクションの一室で社長の斎藤さんとかなと3人で話していた……というのも、かなはアイドルになったのだからおいそれと2人きりで会うのはいくら世間公認幼馴染コンビと言えど些かまずいのでは無いかとなり、かなと話し合い会わない様にしていたのだが我慢出来ず何とか体裁良く会えないかと斎藤さんと掛け合った結果こうなった。
あっちとしても最近かなのコンディションが奮わず、どう考えても俺と会ってないのが原因だろうという結論に落ち着いていたのが大きいからだが。
「いんやぁすいませんね斎藤さん。かなはアイドルになっちまった訳ですから幼馴染とはいえ中々2人で会う訳にも行かなくて……こうして予定をこじつけてもらわないとゆっくり話も出来ないのなんので」
「……君の方から連絡が来た時は何事かと思ったが、こっちの体裁を気にしてくれてる事には大いに感謝してるぞ」
「いや今こじつけって言ったわよね? え? アタシの聞き間違い?」
「ここで適当に打ち合わせとか言って会えばB小町になってからかなに付いたファンも気を張らなくても済むだろうって思ってな」
「まあ良いや。和也……ありがとね」
「なに、俺様もアイドルオタク達には敬意を払っているからな。特にかなを推してくれている連中には、な」
俺様はあの日、あのJIF第10ステージで見た小さなステージでも輝いていた彼女達に敬意を払いアイドルやそのオタク達へも敬意を払って接する事にした。
本当なら気にせずかなとは付き合いをしていたかったんだがな。
「昨今炎上関連は厳しいからな……今ガチでもあったから当事者足るお前らは分かってると思うがな。だからこそ本当に助かった。東京ブレイド稽古から公演期間中は少なくともある程度融通を効かせよう」
「対応、感謝しますよ」
「ありがとう社長……やっぱり今までずっと一緒だっただけに半身みたいな存在がいなくなるのはちょっとキツかったし。でもそれを言い訳に使うのはやっぱり違う気がしたからどうしようってなっちゃってて」
「ったくお前はぁ……ガキなんだから多少のワガママくらい言えっての。自慢じゃないが苺プロは全員に手が回るくらいには人がいねえもんでな、ワガママを聞く余裕程度有り余ってんだよ」
かなは俺が思っていた以上に堪えていたのか、疲れ切った声色でそう呟いていた。
そしてここの社長……めちゃくちゃ良い人だと感じた。
「……何度か言っているがな、お前の境遇は一応知ってんだ。ここではもう少しリラックスして過ごして良い……失敗したって誰もお前を責めやしねえし誰も見捨てねえんだから」
そして何より、この言葉を聞いて『この大人になら託せる』と確信した。
今までのどんな大人であってもダメだと思っていた俺が、だ。
「わり、ちょっと斎藤さんと話したい事出来たから少し外してて良いか?」
「ん? ああ良いわよ、アタシはアンタが半分カモフラージュで連れてきたっていう神プロのチーム文京を演じる2人……一希ちゃんと慎吾さんと話してるし」
「分かった……頼むね、いっちゃん、慎吾さん」
「は、はいぃっ!」
「行ってらっしゃ〜い」
こうなると多少なりとも話したくなる、ここの社長と、2人で。
かなが手に入れられなかった『親の温もり』を手に入れる最後のチャンスかも知れないから。
「……分かった。着いてきな」
斎藤さんは何も聞かず、社長室へと俺を招き入れた。
ある程度言いたい事が伝わったのだろう。
「入りな」
「ありがとうございます」
「……んで? 話ってのは有馬のどういう事についてだ?」
「やはり斎藤さんにはお見通しでしたか」
「そりゃな。アイツが1番大切だと言い切る存在なんだから大抵その話題だろうと察せるさ」
「話が早いですね。……あの子の境遇はどこまでご存知ですか」
勘と洞察力の良い人だ、俺がこの一言を話した瞬間目付きが変わった。
ここまでは多少様子見の面もあっただろうが、ここからは1人の男と男の話し合いだ。
「全ては知らないさ。ただ、事務所にも親にも見捨てられた事は知っている、それだけだ」
「分かりました。……かなは、昔から。それこそ生まれてきた時から『親に愛されるという事を知らずに育ってきた』んです」
「……なに?」
「俺の実家はかなの実家の隣です、生まれた時には既にかながいる様な生活でした。なので生活環境なんかもずっと見れたんですよ」
「アイツの母親は元々芸能界に憧れて芸能界に入ろうとしていました。ですが失敗し、その想いは溶ける事無く肥大していった……言わばかなはその受け皿として利用されたんです。自分が成せなかった芸能界入り、そしてその先の栄光の夢をまだ言葉を話す事すら不可能な時期のかなに押し付けて、勝手に期待して、売れなくなれば勝手に失望して、勝手に捨てたんです。あの女は……かなを娘として一度も見ていなかった……!! ただただ、あの子は道具としてッ……!!」
残酷な話だ。
赤ちゃんタレントというのは存在する、だがあの女はそれを利用して自分の夢を押し付けるだけ押し付けたのだ、夢を叶える便利な魔法の道具として。
その夢が叶っている間は確かにかなに優しかった、だがそこに娘への愛情なんて微塵も無かった。
父親の方はまだあったかも知れない、だが今となっては別に女を作って蒸発したから真意は分からない……俺としてはクズに変わりは無いが。
だがやはり本当に恨むべきはあの女だ、優しかった時期でさえ夢を見ている目でしか無かった、その目にかなは映ってなどいなかった。
そしてその夢から覚めた瞬間、捨てた。
あっさりと、まるで使えなくなった道具をゴミ箱に投げ捨てるかの様に、捨てたのだ。
あの時のかなの顔を、忘れる事は無い。
ほんの僅かな希望さえ絶たれたアイツの顔を、忘れる訳が無い。
抱き締めた俺の胸で声も上げられずにただ震えて泣いていたかなの顔を、身体を、忘れるはずが無い。
そしてその時初めて自分の中に芽生えた憎悪を、忘れるはずが無い。
「アイツ、そんなに辛い事を……」
「……取り乱して申し訳ない」
「いや構わん。どれだけ有馬への愛情を、そして有馬の親への憎しみを持っているか、痛い程伝わった。それで無道君、君は俺に何を求める?」
「俺は……貴方に、かなの親代わりになってもらいたい……どうか、お願いします」
もうかながあんなにも壊れる姿、見たくない。
その一心で。
俺は斎藤さんに土下座をしていた。
「そんな土下座なんてする程の事じゃないだろ。顔を上げてくれ……ここまで話を聞かされちゃ、断るなんて出来ねえよ」
「……ありがとうございます」
「俺もな……昔々、つっても20年前くらいだが養子を取っていてな……界隈じゃもう有名だろうがアイの事だ。あの子も母親に捨てられて施設に入れられてて……迎えたのは『スター性を感じた』っていう打算もあったが、どうにも『孤独』で見ていられなくてよ。そんで引き取って育てたんだ。ワガママで破天荒だが可愛い娘でな……そんな可愛い娘と境遇が同じとあっちゃ、その頼みを断るなんて選択肢俺には残されちゃいねえ」
斎藤さんにはアイに加えてアクア、ルビーと言う実の子どももいる。
負担は大きくなってしまうだろうが、この人にしか頼めなかった。
受け入れてくれてフッと肩の荷が降りる気持ちになり息を吐く。
「ただ、ここまで言ってもかなが受け入れるかはアイツ次第ですけど……」
「ま、なんだ。取り敢えず少しずつ距離測りながら近付いてってやる。あっちが受け入れるなら俺もまたそれを受け入れる」
「本当に、ありがとうございました」
深々と頭を下げ、社長室から立ち去る。
「っと、俺からも一言君に言いたい事があったんだ」
と、その前に斎藤さんに引き留められる。
その顔は穏やかなものだった。
「話してくれてありがとうな。君は、優しいんだな」
「……どうですかね」
不意にそう言われ、曖昧にそう返す自分の顔は、笑っていただろうか。
俺は、自分の心に渦巻く感情に少しずつ気付き始めていたのかも知れない――
無道和也
そりゃアイの子どもだなんて気付く訳ねーわ
ちなみにこの後かなとはめちゃくちゃイチャイチャしていた(周り視点)
有馬かな
あの日から何だか社長やみやえもんが親身になってくれている気がして盛大に謎だがそれはそれとしてちょっと嬉しい
斎藤壱護
かなの境遇に引き取った頃のアイを重ねて見るようになってしまい、みやえもん共々割と過保護になり始めてる
新橋一希(イツキ)
神プロの新人女優・中学生(子役上がり)
東京ブレイドが女優初お仕事
牟呂田慎吾
神プロの中堅俳優
どんな役柄でも熟す便利屋