最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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『仕方ない事だとしても自らで招いたものの責任は負うのが天才の努め』

 俺は別にGOAという人間を嫌ってる訳では無い。

 何ならこの人が手掛ける作品に出た事も何回もある。

 だが、今回に至っては俺が納得出来なかったのと先生も本当に納得しているのか疑問になったからこうした事態を人為的に引き起こした。

 それは勿論、GOAさんの顔に泥を塗る行為になるという事を分かった上でやった事だ。

 

 かなの言った様に

 

『遅かれ早かれこの事が鮫島先生に伝わった場合、同じ事態が起きていただろう』

 

 というのは確かにそうだ。

 だが、結果として俺が動いた事でこの人の面目を潰したのは事実だ。

 

「ぜ、全部って流石にそれは無茶ですよ……! 脚本こちらに丸投げして許諾されて稽古にも入ってるんですから……それにもう本番まで23日しか無いんですよ……」

 

「私は『キャラの魅力を最大限に尊重すると約束してくれるなら』丸投げで良いとお伝えしたはずです。本当に良いならこの場でOKですとしか言わずに帰るつもりでした。でも良くないからOKじゃない、そうですよね?」

 

 ならば、やる事は決まっているだろう。

 自分で招いた事は自分でフォローまで完璧に完遂する、それもまた天才の努めなのだから。

 

「先生……まずは、ご希望に添える脚本を上げる事が出来なかった事、謝罪させてください。もちろんですが、今からでも脚本の手直しはさせていただきます」

 

「……貴方がこの脚本書いた人?」

 

「はい」

 

「原作はどれだけ読まれてますか?」

 

「1巻から最新刊まで全て入念に読ませていただきました、ファンなので」

 

「……ファン、ですか。……そうですか」

 

 だがまだ入り時では無い、こういうのはタイミング次第で話を聞いてもらえる事も、聞いて貰えない事も出てくる。

 ならばじっくりと待つべきだ。

 

「私がナメられているだけなのかなと思っていましたが、どうやら脚本家の方が純粋に理解されてないだけの様ですね。ちゃんと原作読んだ上でこれって言うのであれば――」

 

 行くならここだ。

 これ以上言うとお互いに亀裂を更に産む上にGOAさんのプライドに大きな傷を付ける失言になりかねない、このタイミングしかない。

 

「ちょっと待ってください」

 

「……無道君? 」

 

「GOAさん、勝手に割り込んで申し訳ない。……鮫島先生、それ以上は流石にGOAさんを大きく傷付ける事になるので、待っていただけたらと」

 

「……私の大事な作品なの。無道くんは分かってると思うけれど、だから妥協できない」

 

「俺も、そしてGOAさんも原作のファンですよ? それくらい痛いくらい分かってます」

 

 マッチポンプも甚だしいと自分自身に嫌になる。

 だが東京ブレイドを成功させる為だ、俺自身を道化にしてでもこの2人の意見を擦り合わせる方向に向かわせなければならない。

 今日1日では無理だろう、それでも少しでも脚本家という仕事を、そして漫画家という仕事をお互いに知ってもらうべきだ。

 

「じゃあなんで……」

 

「あー……なんというか、演劇というものは決まった時間内に収めてやらないとならない……そうですよね?」

 

「あ、ああ。その分を演出で補ってカット出来る部分をカットして『魅せる』んです」

 

「……でも、私のキャラを下手に改変しないでほしいんです」

 

「ううーん、そうは言われてもですね……」

 

「漫画は色んな媒体で映像化や肉付けが行われ、その都度様々な原作改変が行われますからね……その度原作サイドと制作サイドが揉める根底というのは原作サイドの『キャラ愛』から来るものだと思っています。……先生は、東ブレのキャラ達を我が子のように見てるんですよね?」

 

「うん。私が生み出した子達だから。たとえどんなキャラでも、モブでも、悪役でも、それは大切な我が子。だから汚してほしくない」

 

「……成程、僕の思っていた以上にキャラへの愛情が深いのか……確かに楽しんでもらえる劇を作ろうとしていたけれど……これは少し失念していたかもな」

 

 少しずつ擦り合わせが出来てきている。

 お互い分かり合うのには数日は掛かるだろうが、これなら多少なり楽に話せる事だって増えてくるはずだ。

 

「少し出過ぎた真似をしたみたいで申し訳ないですが、俺としてはお二方の事を良く知っているのでお互いの良さをお互いに知ってもらいたいと思いましてね」

 

「……済まないね、無道君」

 

「ありがとう無道くん」

 

 あれ、何か知らないけど俺様の方にも胃痛がしてきた様な……

 頼むからGOAさんは俺にお礼なんて言わないでくれこんなのただのマッチポンプなんだから……! 待って本当に胃痛がしてきたんだけど。

 

「……はぁ。全く和也は天才なのか不器用なのかたまに分からなくなるわね」

 

 あとかなお前はもう少し労いの目線でも送ってくれ、本当に自分自身の撒いた種で死にそうなんだけど。

 哀れまれると死にたくなってくる。

 

「……でも私は、まだ納得行ってないのは事実だから。演劇の脚本が単純な物じゃないというのは理解しました。だからといってこれを認める訳にはいかないので。一旦白紙に戻してもらっても良いですか? 心の整理を付けないといけないので」

 

「僕の方こそ、もう少し歩み寄った脚本が書けるんじゃないかと思って来ました。……これが認められなかったのは悔しいですが。先生がいない間にももっとより良い脚本、考えておきます」

 

「……あと、暴言吐きかけたの、ごめんなさい」

 

「いえいえ、そんな!」

 

「あの人が他人に謝った……?」

 

 そして吉祥寺先生はサラッと鮫島先生に毒吐かないでください、事実ですけど。

 でも人格破綻者だの変わり者だの言われたい放題だった人が謝るのは確かに珍しいものを見た気はする……2人の事を知っていて尚且つ基本的には鮫島先生側の俺様が仲介したのが大きいんだろうがな。

 

「……つー事は暫く稽古は無しだな。帰る」

 

 ホッとした目線の端では姫川や他の出演者が撤退を始めていた、まあララライは売れっ子多い実力派劇団だから無い稽古に付き合ってる暇が無いのはそれはそうだろう。

 俺様も売れっ子の実力派だけどな!

 だが生憎とスケジュール調整は完璧にしてしまっている為、この後が暇になってしまった。

 鮫島先生とは連絡先を交換してるから後で色々連絡するとして、この後どうするかね。

 

 その後先生方やその他スタッフ等も引き上げ……その間に何かアクアとあかねちゃんがデートの約束取り付けてたが……残ったのは俺様とかなとメルト。

 丁度この後予定の完全に無い組だった。

 

「……アンタ、『やった』わね?」

 

「うっせぇ、こちとらGOAさんにも恩あるから一方的に裏切るのは背信行為になんだよ」

 

「律儀ねほんと」

 

 笑いたくば笑え、全て知ってて尚且つそうやって言えるのはお前だけだから実質ノーダメージなんだよ。

 

「……? なんの話してるんすか?」

 

「こっちの話よ。てかアンタ暇?」

 

「あ、はい」

 

「そんじゃ今から3人で演劇でも見に行かない?」

 

 話は変わり、かなから演劇に誘われた。

 デートか? と思ったがメルトもいるし保険に抜かりないな。

 まあ大方空いた時間で今後の舞台演技の糧になる事をしたいという事だろう、そう言った事には疎いメルトを連れていくのは最適解と言える。

 

「俺は構わんぞ、この後は暇だしな」

 

「良いんすか!? ありがとうございます!」

 

「メルトにはもっと舞台演劇の何たるかを知ってもらわなきゃならないからな……そう言えば、吉祥寺先生に良い反応は貰えたか?」

 

「ウッス! 『頑張ったね、これなら大丈夫そう』って言ってくれました!」

 

「良かったじゃねえか、俺様とかなの指導の賜物だな」

 

「今日あまではやっぱりそれでもそこまで良いとは言えませんでしたからね。また選んでもらえるなら頑張らないと」

 

「そう思ってくれるなら、アタシ達が教えた甲斐が有るってもんよね」

 

 あと、我が弟子はちゃんと認めてもらえたらしい。

 成長と向上心が著しいようで何より、でもメルトの本業って俳優じゃなくてモデルなんだよな……勿体ない、ここまで急成長出来るならマルチタレントすりゃ良いのに。

 

「あ、そう言えば何見に行くんすか?」

 

「GOA先生が脚本書いた時代劇よ。昔放送されてた大河ドラマの章の一つを劇に落とし込んだみたいだから東京ブレイドと待遇も似てると思ってね」

 

「なーるほど、それならメルトの勉強にも持ってこいって訳だな」

 

「お、俺の為に……ありがとうございます!!」

 

「良いわよお礼なんて。さ、行くわよー!」

 

 メルトの勉強会を兼ねてるとは言え久々にデートらしいデートが出来て嬉しい気持ちは大きい。

 そりゃオメー、恋愛感情は無くとも世界一顔と性格と俺との相性が最高の女とのデートなんだから最高に決まってるだろうがよ。

 

 ……恋愛感情無いよな? うん、無いはず、多分。

 

 ……多分。




無道和也
自分の感情に疑問を持ち始めてる
マッチポンプしたせいで自分にも胃痛が来始めた、そらそうよ

有馬かな
大好きな幼馴染と久々にデートらしいデート出来てウキウキ
但し前も言った通り『世界一好みの異性』止まり

鳴嶋メルト
俳優として急成長し出した、但し本業はモデル
そう言えば極楽湯でコラボ商品が出るらしい、まだアニメそんな出番無いのに待遇良いなお前

鮫島アビ子
原作より早めに舞台演劇に理解を示し始めた
但しまだ心の整理は付いていない

吉祥寺頼子
メルトの成長を認めた
胃痛は止まってない

GOA
この後胃痛と戦いながら脚本の手直しをしていた

星野アクア&黒川あかね
違う演劇を観ていたが会場が同じで和也一行と出会っていた
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