最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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※主人公は売れっ子なので状況考えて本誌3話分くらい本編に関われなかった事になってます、一気に出来上がった脚本渡されます
※2章ラスト回です


『俺の気持ちは……』

「脚本、出来たんだって?」

 

「ええ、今日渡されるみたい」

 

「鮫島先生とGOAさん……あの2人何だかんだ仲良くなれたみたいで良かったよ。2人とも好きな人だからさ」

 

「アンタがあんな事した時はどうなるかと思ったけどね」

 

「それは言わんでくれ……自分でもあのマッチポンプは惨めだと思ったさ……劇を成功させる為にやった事だから後悔はしていないがな」

 

「そう思うんならあんまり下手なものはやり過ぎない事ね、昔のアタシみたいにヘマするわよー?」

 

「そりゃ勘弁」

 

 アレから数日。

 俺様はスケジュールが空いた事で暇になる……なんて事は無く、ならばと何個も本来は断りを入れていた生放送番組からのオファーが続出、生なら急遽ゲストを一人増やしたとしても回そうと思えば回せるからな。

 そんな訳で売れっ子の俺様は生放送で久々に弾き語りを披露したりしていた。

 とは言え全く東京ブレイドに貢献していなかった訳でも無く、出るのだからと番組側に承諾を貰った舞台東京ブレイドの宣伝をしたり、演じるジンがどういうキャラなのかを語ったりと結構集客期待値には貢献したと思っている。

 

 さて、それでだがあの後鮫島先生とGOAさんとでリアルタイム通話しながら脚本の手直しがあったと聞いた時は流石に驚いたがその甲斐あって数日で代わりの脚本が上がってきたらしい。

 

 俺が精神削ってフォローしたんだから良いの頼むぜ……

 

「んじゃあこれが新しい脚本になる。……少し演じる難易度は高くなったがお前らならやれるだろうと2人が託したんだ、期待してるぞ」

 

「……演じるのが難しくなった、ねえ」

 

 俺様からしたらちょっと難易度高くても原作寄りならそっちの方が演じやすそうだから問題無いと思うがな。

 どんなのになってるか見てみるとするか。

 

「……うっわぁ」

 

「ほほう?」

 

「ま、マジでかこれ」

 

 中身は、正直想像以上に原作寄り且つ……高難易度だった。

 これは確かに金田一さんが言っていた意味も分かる。

 

「全く……とんでもない脚本が上がってきたわね」

 

「説明台詞がとことん削られて、やたら『動き』で表現しないといけないシーンが多い……役者の演技に全投げの、とんだキラーパス脚本じゃない」

 

 姫川も感心している表情はしているが、他のキャストは全員息を飲んで表情に緊張が走っている。

 何せ演者としては『誤魔化しの効かない純粋な演技力、表現力に委ねられた脚本』なのだ、プレッシャーは相当なものだろう。

 

「失敗したら責任は全部こっちのせい……ってワケね。大分無茶振りが過ぎるんじゃないかしら」

 

 しかし、そんな事を言いつつも。

 全員の顔に気合いが入る、特にあかねちゃん何かはかなり明るい表情になっている気がする。

 そうだ、説明が大幅にカットされたという事はそれだけ原作の流れに沿った展開や、それに準拠した派手な演出が付け加えられているという事、東京ブレイドファンは勿論、こんなワクワクした脚本渡されて気合いの入らない役者なんているはずが無い。

 

 何より、かなの顔はこれ以上無いくらいカッコよくて、何だか見蕩れてしまって。

 

「フッ……面白い。これくらい尖っていた方がやり甲斐があるというものだ。良いだろう、全力で盛り上げてやる。この俺様がな」

 

 無論俺の顔も、ニヤリとするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな盛り上がってんなあ」

 

 新しい脚本に盛り上がる面々を見ながら、1人うんうんと頭をブンブン振りながら抱えるメルトに話し掛ける。

 一番俳優経験が低いのは明らかにコイツだからな、いくらある程度育ったとは言え負担の大きい事に違いが無い以上フォローするのが俺様の役目だからな。

 

「マジかぁ……俺にこの脚本渡されるなんて……自信ねえよ……しかも本番まであと半月ちょいしか無いし……どうしたら良いんすかね無道さん……」

 

「んだよ、この前吉祥寺先生に合格出されたんだからもっとリラックスしろよ。そんな強ばってたらやれるもんもやれねーぞ」

 

「うぅ……それはそうなんすけどね……」

 

「逆に言やまだ半月ちょいもある、お前はこの中でダントツ経験値最下位組だ、他の連中に追いつこうなんて思わなきゃお前らしい演技で魅せられる。緊張してると言えばこれがデビュー作のいっちゃん……一希もいるんだし、俺様やかなも着いてるんだから胸借りるつもりで来い」

 

「あ、ありがとうございます……でも一希ちゃん上手いんだよなあ〜俺情けねえ……トホホ」

 

 ん、多少は緊張も解れたか顔の強ばりも少しずつ改善してきて口数も増えてきたな。

 しかし経験値最下位組でこうも差があるとは……ちょいと意外と言うか、いっちゃん想像以上の天才かも知れないな。

 

 

「ど、どうでしたか黒川さん……」

 

「凄いよ、凄い凄い! ほんとにこれ女優デビュー作!?」

 

「は、はいぃっ! 今までは歌と子ども向け番組とバラエティで生き残って来ましたぁ!」

 

「はへ~……ちょっと飲まれるくらいだったよ〜」

 

 

「本当は……経験値で言い訳なんてしたくなかったんすけどね。だって一応は俺の方がほんの少しだけでも経験値上なんすよ? ……ほんと、自分の情けなさとか才能の無さが惨めに思えちゃいます」

 

「っとにお前はよぉ……才能無かったら先生に認められてねえっての。つーかそんななら色々聞いてこれば良いじゃん、年下だし俺様の後輩だから紹介してやるぞ? ほら、クヨクヨすんな。イケメン顔が台無しだぞ」

 

「そ、そっすね……それじゃお願いしますッス」

 

 強過ぎる才能は他人を壊すと言われている。

 それはどの界隈でもそうだ、役者に限った話ではない。

 例えばプロ野球、今年のWBCでは前年度の国内三冠王打者がメジャー最強と謳われる日本人選手のバッティングを見てから明らかに調子がおかしくなり、シーズンでも低調のまま終わった。

 その選手もまだ23歳と若いのにも関わらず、だ。

 

 圧倒的な才能は人を絶望させてしまう、つまりはそういう事だ。

 新橋一希、これが女優デビューであるあの子もまたその1人なのかも知れない。

 だからメルトも、そして絶望させる側が絶望する側に、壊されない様にする為にもいっちゃんに友達を増やす為に2人を近付ける。

 

 メルトはチャラ男を自称しているが決して女の子が嫌がる事をしないと認識しているしな。

 

「うぃっ、順調そうだねいっちゃん」

 

「あ、はいぃ! お陰様で胃痛しっぱなしですけれどな、何とか……生きてます、はい!」

 

「そりゃ良かった。んでさ、良かったらコイツとのシーンやって欲しいんだよ。色々模索してるみたいで、同じ経験値低い人間同士話したら何か見つかるかも知れないと思って」

 

「は、はいぃ!! ……え、えと、鳴嶋先輩……でしたよね?」

 

「お、おう……その、よろしく」

 

「ここここちらこそ! よろしくお願いしますっ!」

 

「じゃ、頑張れよメルト」

 

 よし、これでこっちは大丈夫そうだな。

 次に懸念があるとすれば……表現力が露骨に苦手なアクアってところか。

 全く、アイツにも今回は俺様が指導しないと行けなくなりそうだなんて最悪極まりないな。

 だが仕方ないから、仕方ないから様子を見に行ってやる。

 

「アクアくんは舞台初挑戦だしバランス分からないよね。でも少しずつ合わせていけば……」

 

「甘やかしちゃダメよーあかねちゃん」

 

「そそ、こういうタイプにゃ要点をガツンと言わねえとダメなんだよ」

 

「かなさん、それに和也くん……」

 

 んー、あかねちゃんは優しいからあんまりキツい事言えないと思ったがやっぱりだったか。

 だからこそ俺様達がいるんだが。

 

「アクアは普段そこまで感情表に出さないから感情演技ってやつが苦手なのよ。今までして来たのはあくまでも見本ありきのコピー演技ってやつ。それじゃダメなのよ」

 

「ま、かなとは真逆ってやつだな。かなは感情演技やらせたら最強みたいなとこあるし」

 

「ふふん」

 

「あ、分かります分かります! つい感情移入し過ぎて見入っちゃいますよね!」

 

「あかねちゃん分かってるな〜、そんな訳で付き合いの長い俺様達が来てやったと言うやつだ」

 

 プライベートだったらこの後数時間に渡ってあかねちゃんとかなに付いて語り明かしたいところだが、ここは自重しよう。

 今はアクアが肝心だからな。

 

「アタシ達アクアとは幼馴染みたいなもんだしね。アタシが休止してから数年会ってなかったからちょっと不思議な感覚だけど……色々助けてもらったりもしたし……」

 

「確かに色々助けた気がするな」

 

「澄まし顔で肯定されるとそれはそれで複雑だからやめて」

 

 おう何懐古し出してんだかなは。

 分かるけども、その気持ちは分かるけども!

 幼馴染は俺だろうがよ……って何嫉妬してんだ俺は、あーもう。

 最近どうにもこうだ、嫉妬しなくて良いところで嫉妬しちまう……自分の感情をコントロールしきれてない。

 何かがおかしい。

 

「……ところで、有馬はどうやって泣き演技してんだ?」

 

 考えても仕方ない、何とかして振り払っておかないとな。

 

「んー、色々手法はあるんだけどね。簡単に言うなら……もしもアタシが死んじゃったらどうする? とか?」

 

「おう冗談でも俺様が泣く事言わんでもらって良いか?」

 

「嬉しいけど今はアンタじゃないのよ」

 

「……いや、だがそれなら分かりやすくはある、か」

 

 そしてかなのたとえが俺様にクリティカルヒット過ぎた。

 そりゃ最愛の幼馴染が死んだら俺は壊れるだろうよ、だって誰にも渡したく……え?

 

 今、俺は何を考えた?

 

 目の前から音が消える。

 あるのはかなと、少し笑顔になって話すアクア。

 だがそこに、音は無い。

 自分自身の感情に茫然自失としてしまったからだ。

 

 こんな感情、あるはずが無い。

 俺はかなが幸せなら誰と結ばれても良いと思っていた。

 

 ああ。

 

 だが、この気持ちは。

 

 

『ねえ、もしもアタシがおばさんになっても結婚してなかったらどうする?』

 

『フッ、それまで残ってたら俺様が幸せにしてやるよ。誰よりもかなの事を知ってる俺様なら確実だろ?』

 

『それもそうねえ、じゃあもしもその時がきたら頼むわね』

 

『俺様に任せておけ』

 

 

 そうか、もうこの時から。

 中学に上がった時に交わしたこの約束の時から俺は既に――

 

 

 

 

 

「アクアッ!?」

 

 しかし、そんな俺の気持ちを遮る様に俺の世界に音が戻ってくる、それもかなの悲鳴という形で。

 

 状況を見渡す。

 

「しっかりしろ、おい!」

 

 目の前には倒れてるアクア。

 

 ――何があったかは知らんが、今この気持ちは押し込めておくべきだ。

 

 俺は咄嗟にそう判断して急いでアクアを救護室まで運ぶのだった。




無道和也
実は面倒見が良い兄貴分肌
遂に自分の感情がどういうものなのかに気付いた
この2章ではジワジワと恋愛感情に近づいていく和也を描くのに大分苦労したりした

有馬かな
和也の影響で例えが軟化した
だがこの例えが地味に和也とアクアに本気でクリーンヒットしていた事を彼女は知らない

星野アクア
原作通りトラウマ発症してぶっ倒れたが、実はトリガーはアイの事故現場をかなで重ねて想像してしまいダブルキルされたのが原因だったりする
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