最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「よっ、居残りかメルト」
「頑張ってるわね」
「和也さん、有馬さん……俺、どうにかして上手くなりたくて。みんなに少しでも追いすがる為にはこうして時間を他の人より取るしか無いから」
「最近見てて思うが、お前の成長は凄いぞ。本格的な俳優挑戦2回目で、しかも俳優になりたいとか思ってなかった奴がここまで伸びるのは初めて見た」
「はいこれスポドリ、アタシも思うわよ。だからそんなに追い詰めた表情しなくても大丈夫」
「……スかね」
とある日の午後、この日の稽古は早めに切り上がり俺様とかなは2人して終了しているにも関わらず居残り稽古しているメルトの様子を見に来ていた。
一番才能が無いと自覚しているだけに、いくら思い詰めるなと言ってもどうしても自分を追い詰めてしまう、良くも悪くも責任感のある良い男なだけに力になりたいと思ってしまう。
「この天下のワールドシアター助演男優賞の俺様と、泣き演技ナンバーワンのかなが言うんだからドンと構えとけって」
「いくらでも稽古には付き合ってあげるわよ、アタシ達共演シーン多いんだし。……んじゃアタシはちょっと外行ってくるわね」
「おう、変な男には引っかかんなよー」
「引っかからないわよ、全く心配性なんだから」
「……仲良いッスねほんと」
「まあな。……感情演技ってのは意識して感情を出さずとも、キャラを感じればある程度は出来る。演技すんのも良いが自分の演じるキャラを知るとこも忘れずにな」
「う、ウッス!」
こういう時は先輩である俺様達が支えになんないとダメだからな。
ちょっとでも味方がいた方がコイツとしても落ち着くだろうし気付いてはないだろうがこういった時間が休み時間にもなるというのも理由の一つだ。
「うっし、気分転換に外行くか」
「わざわざすんません、俺の為に」
「良いって事よ、後輩を気に掛けるのは先輩の務めだからな」
こうして適当に理由付けて外連れてリラックスさせるのもまた先輩の務めってね。
そういや外には今かなもいるんだったか、共演シーン多いとはいえ結局3人固まってる事多いよな。
「大丈夫大丈夫!」
「あ、あかんてぇ~」
「……何やってんのルビー?」
そんで外に来てみたら何か賑やかだった。
というのもかな以外にルビーちゃんと……アレは確か現役JKグラドルの寿みなみ……だったか、あの子の友達だったのか。
ならルビーちゃんと一緒に挨拶しとくかね。
「よっ、ルビーちゃんがここ来るなんて珍しいじゃん」
「あ、和也くん! おひさ〜この前のステージ応援ありがとね〜」
「フッ、B小町の応援とあらば隙を見つけて行ける時は全力で行くのが俺様のポリシーだからな」
ちなみに俺様は多忙と言えどB小町の大ファンになっているので隙あらばステージには駆け付けている。
その様子がネットに投稿されたりもしているが最早名物化しているらしい、俺様的にはこういうところからでもかな達の知名度が上がるなら無問題だからどうでも良いがな。
「貴方がルビーの言ってた昔からお付き合いのある和也さんやね〜寿みなみ言います、よろしくお願いします〜」
「こちらこそ、ルビーちゃんがお世話になってるみたいで。こっちは俺の弟子で共演者のメルトだ」
「あ、どもども兄がお世話になってるみたいで。……今日あま以来かな?」
「ああ、アクアの妹か」
テレビで見た通り柔らかい声にこれまた物腰柔らかい京言葉、見た目も含めてこれは男性人気が高いのも頷けるな。
「……何見てんの和也」
「俺様と縁が遠そうな美少女は純粋に目の保養になるからな」
騒がしい中でかなが少し嫉妬してるのが何となく嬉しくて優越感に浸ってしまう、が流石に隠しておかないとな。
バレたら色々面倒だ。
「あはは、そない可愛いなんて言われるなんて照れちゃいます〜」
「ちょっとちょっと、いくら和也くんでもみなみをナンパするのはダメだからねー! ……ってする様な人じゃないよね、見た目に反して。かなちゃんにベッタリだし」
「そうなの? 親切でちっちゃい頃から仲良しとは聞いてたけどほんなら安心やね」
「良く分かってる様で光栄だよ」
「だから毎度言っても直さない様だけどかなちゃん呼びすんなって言ってるでしょうが」
「いーやーでーすー」
「こんの生意気な……」
俺様とルビーちゃんはアクアと犬猿の仲なのが嘘のように仲が良い。
良くも悪くも気軽に話せる関係性といったところだ。
「ん? そういやなんかアクアに用なのか? もう帰ったけど」
「え!?」
「そうか、ここまで来たって事は用はアクアだもんな。もう稽古も終わってるからなあ」
「そっかぁ……お兄ちゃん、いつも遅くまで何やってんだろ……帰ってくるの日付変わってからなんだよね……」
……アイツ、いつもそんな時間まで帰ってないのか。
何してんだか……いや、やってる事は大抵あかねちゃんとの……色んな事だろう、この辺はあんまり考えたくないが。
「してたら……心の底から軽蔑する……」
って思考に浸ってたらルビーちゃんの冷徹な表情が。
この子、未成年の不純異性交友はともかくとしてエッチな話になると昔から相当拒否反応出すんだよな。
……やはりあの件は関係が……っと、今考えても意味無いな。
「というかちょっとお手洗い借りても良いかな、ごめんね和也くん」
「あ、ウチも」
「アタシもメイク直ししないといけないしね。案内するわ」
「ありがとー」
何はさておき女子陣は挙って嵐の様に消えていった。
残ったのは俺様とメルト。
「俺様はもう少し外いるけどどうする?」
「もう少しだけ稽古したいんで戻ります」
「ん、分かった」
数分前まで騒がしかったのに気付けば俺一人。
もうちょいゆっくりしていても良いんだが……そういや今中に誰いたっけか、と考えて嫌な予感が過ぎる。
「……あ、そういや鴨志田さん残ってんじゃねえか。あの人すーぐ女の子に手出すからなあ。悪い人じゃないんだが」
鴨志田朔夜、劇団ララライの中でも上位の演技力と人気を誇る若手イケメン俳優。
人付き合いも良くフレンドリーな性格だが、その実態は大の女好きで有名なチャラ男。
女好きな事を除けば悪い人ではないし俺様も付き合いの長い人ではあるんだが……まさかかながいるのにナンパなんてしてないよな?
……見に行くか。
「ねね、連絡先交換しない? かなちゃんもさ」
「お断りします」
「えー、そう言わずにさあ〜」
って見に来たら絶賛ナンパ中かよ。
しかもなんでかなまでナンパしてるんだあの人……
「鴨志……」
「待てメルト」
先に様子を見ていたメルトが声を掛けかけたところで止める。
「え、和也さん……でも有馬さんも……」
「俺様が止めとく。お前がやるとあの人にはナメられるだろうしな……付き合い長い俺様なら何とでもなる」
実際、実力至上主義のララライではフレンドリーに見えて上下関係が激しい。
今回呼ばれたララライ面子は全員が同格だから問題は無いが、外部の面々はそうじゃないから俺様が何とかしてやらないとならない。
「鴨志田サァン……かなには手出しちゃダメって俺様言いましたよね……?」
「は? 誰だ……うげっ和也」
「うげっじゃないんですよ。俺様が鴨志田さんとお近付きになりたい女の子紹介してる対価にかなには手出さない約束でしたよね? あとそこの2人もかなの友達なんで……ね? 分かりました? もう紹介しませんよ?」
「わ、分かった分かった。和也とは付き合いも長いからな、ここいらで諦めとく、悪かったね君達も」
ちゃんと俺様が止めれば諦めるんなら最初から諦めとけよ。
ほんとこの人は見境ねえなあ……
「あんまり遊び過ぎてると痛い目見ますよほんと。一応友人なんで痴情のもつれで刺されて死んだとかニュース聞きたくないんですから」
「その辺は慣れてるからヘーキヘーキ、何せ俺様遊んでても超一流だからね……どっかの素人とは違ってな」
「……」
「気にすんな、お前はお前のやる事に集中しろ」
「……分かり、ました」
そんな捨て台詞を吐いて鴨志田さんは軽快に去っていった。
役者というものはプライドの高い連中が多い。
鴨志田さんもその例に漏れず、メルトとのシーンが一番の見せ場とありこんな素人と……なんてイライラしているのが目に見えていた。
だからここはどちらの波も荒立ててはいけない、これはメルトがこの人を見返すしか無いのだから。
そして、あの人はただそれだけで言った訳で無いのも分かっているから。
「ふぅ、助かったわ和也」
「気にすんな、ったくあの人の手癖の悪さにも困ったもんだよ」
「ウチからも、ありがとうございます〜」
「良いって良いって、んじゃ俺はこれで帰るけどこれからもルビーちゃんを宜しくね」
「任せといてください〜」
女子陣からの礼を受け取り、さてととメルトの背中を見送る。
「……絶対に、見返したいんで」
「それで良い。その気概があれば認めてくれるだろうさ」
今までに無いくらい燃えるメルトに、ニヤリと笑みを浮かべるのだった。
無道和也
朔夜とは付き合いが長く気軽な友人
女好きな事を除けば面白い人だと思っている
ちゃんと『そういう関係になっても良い』と思ってる女の子だけ紹介している
鳴嶋メルト
実はこの回が一番重要だった
鴨志田朔夜
女好きのイケメン一流役者であり和也とは友人
メルトの事は見下しているが見下しているだけでは無い