最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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『俺様は空気も読める天才ってワケ』

「もきゅもきゅ……」

 

「お前はリスか?」

 

「アタシの事なんだと思ってるのよ」

 

「小動物」

 

「うぉいっ」

 

 収録は夏祭り編になり、全員が浴衣ではっちゃける感じになっていた。

 そして相変わらずかなは面白い、番組的にも俺達は今回の名物コンビとして上手い事サブキャラポジションに定着している。

 

「似合ってるよ、浴衣」

 

「えへへ、ありがとうノブくん」

 

 メインは勿論ノブとゆきちのカップリングだが。

 

 ……しかし俺は最近思うのだ。

 

「ほぉらアクアももっと食べなって〜」

 

「オイやめろ押し付けてくるな」

 

 最近やたらとかなが星野アクアに絡んでいるのは何故なのかと。

 確かに同じ事務所だから気心知れた奴なのかも知れないが俺と絡んで安全圏のサブキャラにいるんじゃなかったのか……?

 あークソ、やはり気に食わない……なんだってアイツは男を見る目が無いのか……

 

 あーイライラする、本当は来る者拒まず去る者追わずで番組をコントロールしようと思ったがちょっとくらい突っかかってやる。

 

 そーっと後ろから近付いてかなの肩を叩く。

 そして頬を人差し指で突く、面白い様に引っかかった。

 

「へ? むにゅ……にゃにしゅるのよー」

 

「クックックッ、引っかかったな! こんな単純なのに引っかかるとかさすがかなだわ」

 

 ケラケラと笑いながらかなが絡みにいってた男に『この番組で初めて』接触する。

 もっさん……森本ケンゴにさえ接触していた俺が唯一避けていた相手だ、目立つリスクは覚悟の上でも我慢出来なかったのだから仕方ない。

 

「……無道か」

 

「よぉアクアくぅん、なんか良い雰囲気だねえ?」

 

「別にそうでもない。有馬は同じ事務所だから気兼ねなく話せるだけだ」

 

「ほんとかにゃ~? かなはそこんとこどうなのよ」

 

「ぅえ!? アタシも……そ、そう! 同じ事務所だからってだけだから!」

 

「にしては仲良さげだったけどなー」

 

「……もしかして妬いてるのか?」

 

「は? 妬く? 誰が? 誰に?」

 

「お前が、有馬に」

 

「面白い事言うな〜アクアくぅん。どっからその思考が生まれてきたかちょっとお聞きしても良いですかねえ?」

 

「ちょ、ちょいちょい和也! ほんとにそんなじゃないんだから!」

 

 カメラマンからは演技として見られてるが……コイツ本気で動揺してやがるな。

 だがこれ以上行くとメインキャストのノブ達を食っちまう可能性もあるだろうし引いとくか。

 最近は空気だったもっさんがゆきち争奪戦に参加しだし三人の三角関係が番組の中心だ、星野アクアとあかねちゃんは空気、メッちゃんは特定の誰かとは恋愛的には絡まないが全体を明るくするムードメーカー、そんで俺とかなはメインキャスト三人に茶々を入れる賑やかし。

 空気枠の黒川あかね以外は確立したポジションで固定で良いだろうからな、そのあかねちゃんがここ暫くずっと焦ってるのが少し気になるところではあるが。

 

「それなら良いや。……あ、メッちゃんメッちゃんあっちで花火しない? 俺様面白いの持ってきたんだぜ? 気にならない?」

 

「お、気になる気になるー! ケンちゃんも来なよー」

 

「え? 俺も?」

 

 ま、ここまで順調なんだ……大丈夫だろ。

 

 

「と思ってたんだけど……マネちゃんさあ……なにこれ?」

 

「なにこれもなにも、お前が今回の今ガチで初めてメインフューチャーされてるだけだが?」

 

 夏祭り編のオンエア、途中まではノブ、ゆきち、もっさんの三角関係を取り上げて良い感じに俺達が盛り上げてるのも含めて完璧な流れだった。

 だが終盤で話が大きく変わる、俺が星野アクアに対して有馬かなを取られてしまったのを嫉妬だと解釈して番組側が盛大にピックアップして放送してしまったのだ。

 

『天才マルチタレント和也の嫉妬は果たしていつも一緒にいる幼馴染を取られたからなのか、はたまた恋心からか――どうなる、もう一つの三角関係の行方』

 

「ぜってぇおかしいだろこれ」

 

 あの場面が撮られていたのもオンエアされるだろうというのも分かってるがそこまで盛り上げる場面じゃねえだろうが。

 全く、本来はこんなはずじゃなかったんだが……

 

「いやいや良いでしょ、お前ここまでそんなに目立ってなかったし」

 

「目立つつもりは元よりねえよ! かなとそれとなくやれてればそれで良かったんだ!」

 

「うん間違いなくそれが原因だよね」

 

「……しかしあのいけ好かない奴が目立つのもそうだが、ちょっと困ったなこれ」

 

「なんだ、不都合でもあるのか?」

 

「ああ……あかねちゃん……黒川あかねが単独で空気になり始めてるのがまずい。あの子最近焦ってるっぽくてさ……」

 

 しかしこれで一番まずいのがあかねちゃんの孤立だ。

 あの子はここまで見てきてメッちゃんみたく単独で目立てるポテンシャルは限り無く低い。

 そうなると焦りから失策を起こす可能性を考慮しないといけない。

 

「絡みにいったら?」

 

「あんま乗り気じゃないけどそうするかね……俺様単独で目立てるポテンシャルあるし? ちょっと良い雰囲気にすれば評判も安定するかな」

 

「……和也のやりたい様にやりな。誰かを心配してる時のお前の事は信頼してるから」

 

「さっすがマネちゃん、話が分かるぅ〜」

 

 異性とはかなと絡む以外ダルくて今ガチ収録中はしてなかったが、仕方ない。

 番組のパワーバランスを整える為にも俺様のマルチタレント振りを発揮しちゃいますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあやああかねちゃん、ちょっとあっちでお茶でもどうだい?」

 

「……え? わ、私ですか?」

 

「そそ、ちょっとかなもいなくて手持ち無沙汰でさー。ね、ちょっと付き合ってよ」

 

「……! は、はい!」

 

 最近のあかねちゃんは見ててヒヤヒヤする悪女ムーブをしていた。

 そしてそれでいて空気だった。

 役者としての実力は本物だと言うのは以前から知っていたからこそ、そうやって空回りしているのがどうにも見ていられなくなってしまったというのが今回こうして絡みに行った要因の一つでもある。

 

「へ〜、かなが憧れなんだ」

 

「はいっ、あの人を目指して演技の世界に入ったんです! なので今回のお仕事は本当はちょっとだけ楽しみで……でも話せてないんですけどね……」

 

「んじゃ今度三人で話そうぜ。どうせ俺とかなとあかねちゃんじゃ何も起きないだろうから気楽に話せるし」

 

「ほ、本当ですか!? 本当に良いんですか!?」

 

「だって共演してるんだぜ? なのに話さないとか勿体ないしさ……それに俺様、可愛い女の子には笑顔でいてもらいたいから、ね?」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 この気の効かせが功を奏したか、ネットの評判は良い感じになってきた。

 

『マルチタレント無道和也、女もマルチに攻略へ』

『コイツ絶対かなちゃんの気を引きたいだけだぞ』

『敢えて黒川あかねに絡みに行ったのは面白い』

『ここまで空気だったからな』

『今回で前回までの総出演時間越したらしい 』

『いや草。サンキュームドー』

『てかあかねちゃんほんとはこんな子なんだな、見方変わったかも』

『無理して悪女ムーブしてて涙出ますよ…』

『これで全員に明確な相関図が出来たな』

『なおMEMちょ』

『アイツは一人で目立てるからセーフ』

 

 まだまだ一部ではある、あるがあかねちゃんが注目され出した。

 今までは『空気』かそれ以外の数少ない感想は『悪女』としての否定的なものだった。

 それが『本質に気付いた連中』から声援が少しずつ入ってきた。

 僅かであっても、たった一件でも、希望さえあれば支えになるはずだ。

 

『黒川あかね 今ガチ 好き――18件』

 

「さっすが俺様。これだから天才なんだよね」

 

 だが俺はこの時気付いていなかったのだ。

 

「……も、もっと、もっと目立たなくちゃ……これじゃまだまだ挽回出来たとは言えない……から」

 

 彼女が俺が思うより既に追い詰められていたという事に。




無道和也
かなをアクアに取られてイライラして絡みにいったところをカメラに抜かれてそのまま使われた、当たり前だよアホンダラ
あかねの事を気にかけて敢えて絡みに行った
割とネットではネタ的な人気がある

有馬かな
実はアクアがいるのを思い出したのは本番前日で内心めちゃくちゃ焦っている
無意識にアクアにご執心

熊野ノブユキ
和也の数年来の友人
アクアをメインに据えさせたくない和也とゆきと仲を深めたいノブユキの思惑が一致し主役の一人として最高の立ち回りを見せている

マネちゃん
和也のマネージャー
二十代ながら事務所の稼ぎ頭のマネージャーを任される敏腕
和也の本質を見抜いて信頼を置いている

黒川あかね
原作同様目立てない事に追い詰められるが和也の起点で幾分か原作よりは評判も高くなり心持ち穏やか…なのだが…

星野アクア
和也のせいで安全圏から引きずり出されて割と困っている
そのせいでルビーの機嫌取りも一苦労とか

星野ルビー
焼肉以上にあかねやかなとの絡みに機嫌を損ねているらしい
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