最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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『希望に堕ち行く《黒》の星』

「いよいよ新宿クラスタと渋谷クラスタが全面衝突するシーンですね……み、見てるだけでも緊張が伝わってきます……」

 

「流石に派手だね」

 

「……という事は、かなとあかねちゃんが真正面からぶつかり合う一番のシーンでもあるんだよな」

 

「天才対決……それも、舞台演劇で間近で見れるなんて……」

 

 第二幕も中盤から佳境に差し掛かり、迎えるは一番の盛り上がりどころである新宿・渋谷両クラスタの全面衝突。

 ここまでまともに対峙してきたのがキザミと匁だけである事を踏まえてもボルテージは最高潮に達する。

 鞘姫、つるぎと刀鬼との三角関係、キザミと匁のライバル関係、鞘姫の死と奇跡……この残り30分程に濃縮されたそれに観客は魅了される。

 

 出来る事ならジン(俺様)も参加したかったんだが死んでるからなあ。

 ま、そんでも人の死を前にするとつるぎがジンの事を思い出す様になって少しずつ葛藤していくという事で奴の死に様が引き継がれていくと思えばそれもまた悪くないと言ったところ。

 

 特に鞘姫が死ぬシーンではかなり葛藤と後悔が描かれているしな。

 

 さて、そんなめちゃくちゃ鞘姫とつるぎが目立つシーンともなると自ずとライバル関係になったかなとあかねちゃんがぶつかる最大のシーンでもある訳で。

 ここでどんな演じ方をしてくれるのかも楽しみになるってもんだ。

 

 何はともあれ俺様はここから見守ってるしか無いがな。

 

 

 

 

 

「新宿クラスタ、厄介な奴等みたいだな」

 

「何も考えてない、バカの集まりですよ。全員倒せばそれで良いと思っている……どうします? アイツ等攻めて来ますよ?」

 

「俺は姫の懐刀だ。持ち主の指示に従うだけ」

 

「君に意見を求めたのが間違いでしたね。少しは人間味というものを持ったらどうなんですかね。はぁ……鞘姫、ご決断を」

 

「……刀を抜けば、血が流れる」

 

 ようやく演り合える――この舞台に立った瞬間、私の心は震えた。

 それも恐怖や緊張では無い、今までに無い渇望から。

 憧れを超えられる、超える為の舞台に心が武者震いをしていた。

 

「しかし戦わなければ守れないものもあるのでしょう」

 

 その為にこのキャラを、鞘姫の全てを私は憑依させてきた。

 最初の脚本の時はどうなるかとか考えて心配だったけど、手直しされたこの脚本であるなら私は戦える。

 

 ならばやる事は一つ。

 

「――ならば刀を抜きましょう……合戦です」

 

 真正面からぶつかる、それだけ。

 

 

「刀を抜きなさい、鞘姫」

 

「……貴方には、これ()で充分です」

 

「ナメて……くれちゃって!」

 

 負けないよ……かなちゃん。

 私は、貴方がここに居たから、ここに居る。

 貴方が私の希望の光であり続けてくれたから、いつだってあの言葉があったから……

 

 だから、本当は。

 

 ずっと、ずっと、こうやってかなちゃんと演り合える日を。

 何年も待ち焦がれていたのかも知れない。

 

 あの時からずっと――

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ママ! 巻き戻し、巻き戻ししてっ」

 

「あかねは本当にかなちゃんが大好きねえ」

 

「うん! だってすごいんだよ! 10秒で泣ける天才子役で、かわいくてお芝居も上手で、大人の人相手にもハキハキ受け答えしてて! みんなを明るくしてくれるお日様みたいな……」

 

「だから、ほんとうにすごいんだぁ……」

 

 私は昔からかなちゃんの事が大好きだった。

 キラキラ輝いていて、かわいくて、みんなを照らし出してくれるような女の子で。

 みんなの憧れで、私も憧れていて。

 

 こんな子になりたいって心のどこかで感じていて。

 

 そんな時、両親が私に児童劇団のパンフレットをくれた。

 うじうじ悩んでる私に『もしかしたらかなちゃんとお友達になれるかもしれないね』なんて言ってくれた。

 だから私は、頑張って子役になろうと思えた。

 両親の言葉が私を後押ししてくれた。

 

 それから立派な子役になる為に必死にかなちゃんみたいな演技を目指して指導を受けたり、形から入る為に髪型もかなちゃんと同じにしてもらったりして。

 

 そして迎えたオーディションの日。

 そこで私は偶然にもかなちゃんと出会った。

 

「ね……アンタ」

 

「か、かなちゃん!? わ、わたしかなちゃんのファンで……」

 

「……でしょうね。でもバカね、アタシのマネするなんて。そんなんじゃ生き残れないわよ」

 

「え……? ど、どうして……」

 

 やっと会えた、今までの想いをぶつけよう。

 そう思っていたのに開口一番で否定されて、訳も分からずに泣きそうになって。

 

 でも。

 

「まったく。かな、それじゃこの子が誤解しちゃうだろー?」

 

「なによ和也! アタシがまるで口下手にみたいにぃ……」

 

「いや事実でしょ」

 

「うっ……」

 

「てな訳でごめんね」

 

「あ、あなたは……?」

 

「おれさまは無道和也、かなの幼なじみだ。で、翻訳するとだな……『誰かのマネじゃなくて《自分》として活動しないとこの世界じゃ生きていけない』って事をかなは伝えたかったんだ。ちょっと言い方が悪かっただけだから嫌いにならないであげてよ」

 

 隣にいた幼馴染……和也くんが本当に言いたかった事を教えてくれて。

 そうしたら、私の為に言ってくれたんだって思うと涙が止まらなくて。

 

「ええ!? ちょ、ちょっとアンタなんで泣いてんのよ〜!」

 

「だっでぇ! かなぢゃんがわだぢのだめにいっでぐれだとおもうど〜!」

 

「……めちゃくちゃかなの事好きみたいだな、この子」

 

「は、恥ずかしい……」

 

 その後涙が止まるまで一緒にいてくれて。

 この人の事がもっと好きになってしまった。

 

「アンタ名前は?」

 

「く、黒川あかね……」

 

「あかねちゃんね、覚えたわ! 今度は『貴方らしさ』で勝負してきなさい!」

 

「う、うん!」

 

 そしてこの人みたいに活躍したい、輝きたいと思って。

『自分に何が出来るか』模索し続けて、辿り着いたのがこの舞台演劇。

 知名度こそそこまで無かったけれど、ここで沢山勉強してここまで来た。

 

 

 ……本当は、今ガチで久しぶりに共演した時私の事なんてすっかり忘れられていると思っていた。

 接し方を見ていても覚えているような感じじゃなかったし。

 

「え? 初めて会った時の事?」

 

「は、はい、その、覚えてるかなって……あはは、迷惑ですよね……」

 

「何言ってるのよ、初めてオーディション来てあんなに純粋な目しちゃって、しかも大泣きしてたような子忘れる訳無いじゃない。和也の方は覚えてるか微妙だけどね」

 

「ほ、ほんとですか!?」

 

「もしかしてあかねちゃん、疑ってた〜?」

 

「そ、そんな訳じゃないんですけど……その、私達今ガチで再会するまであれっきりだったんで……」

 

「少なくとも……アタシは、あの時嬉しかったのよ? 少しずつ減り始めてる仕事と無い様な未来に押し潰されそうになってたアタシの事をあんだけ純粋に大好きって言ってくれた人、あかねちゃんが初めてだったんだし……」

 

 でもその言葉を聞いて、またあの時みたいに泣きそうになってしまって。

 覚えていてもらえたんだって、かなちゃんも大切な思い出だと感じていてくれていたのだと思うと嬉しくて嬉しくて。

 

「ちょ、ちょっとなんでまた泣きそうになってるのよ!?」

 

「私との思い出を覚えていてくれて、大切に思っていてもらえていたと思うと……感動で涙が……」

 

「全くもう~、あの時からあかねちゃんは変わらないわねえ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、あの時から今まで。

 かなちゃんは自分にとっての『完全無欠』だった。

 そしてそれを超えないといけない。

 

 ……だと言うのに。

 

 どうして貴方はそんな『星を照らし出す様な』演技をするの?

 私が憧れて、超えないといけない、その貴方はもっと太陽の様な眩しくて心の奥底が熱くなる様な煌びやかな演技をしていたはずなのに。

 

 私と演りたいと言ってくれたのに。

 

 ……理由なんて分かりきっていた。

『作品を成功させる為』にはプライドも何もかも捨てて黒子に徹するのが最適。

 そしてそれを教え込んだ人も心の底から心配して教えてくれた事も分かってるし私も感謝している、だって五反田さんだもんね。

 

 ……昔は自由にやっていた演技も、一度全て何もかも失ってからそんな事をしているだけじゃ生き残れないって分かったんだよね。

 たった一回の失敗で事務所から見放されて、仕事も無くなって、周りから人が消えていって……

 

 そしてかなちゃんをトレースしてみて分かった。

 この人はきっと、親からも見捨てられたんだって。

 それで『生き残る為の演技』を身に付けたのも理解していた。

 

 許せない。

 

 たかが少しの失敗くらいで私の太陽をこんな歪ませた事務所に、かなちゃんの親に、この世間に。きっと私は憎悪を抱いている。

 私の大切な人を傷付けた人間全て、何があっても許す事は絶対に無い。

 

 ――助けなきゃ。

 

 私を救ってくれた太陽を。

 

 私を導いてくれた光を。

 

 大切な、大好きな人を。

 

 今度は、私が。

 

 

 ――見ててね。

 

 

 私も、ちょっとだけ出来るようになったんだよ

 

 

 周りを食べちゃうような演技

 

 

 

 瞳の黒星が、瞬いた

 




黒川あかね
大好きが故に遂にアクアへより重たい感情をかなに持ってしまった
但し『このままじゃ生き残れないから』とかなに生き残る術を与えてくれたのとアクアを大切に想っている事を知っているので五反田にはプラスの感情を抱いている
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