最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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怒られたので次章(38話から)は和かなでテコ入れします
テコ入れは40話からだ!良いな!OK!(ズドン)


『お前が影になると言うのなら』

「……なるほど、あかねちゃんがここまで凄いとはな。それ程までしてかなと戦いたかったって事か」

 

 舞台裏から見ていても分かる程のオーラを感じる。

 ここは新宿と渋谷両クラスタが入り乱れての大人数殺陣、この人数なら俺様も紛れ込んでやって来て良いかと聞いたんだが金田一さんに

 

『お前が入ったらモブがモブじゃなくなるから辞めろ。いくらオーラ消しても無道和也の看板は下ろせないんだよ』

 

 と言われちまったからな。

 本当は出たかったがモブやサブキャラが目立つのはよろしくないし大人しく引いておく事にした。

 

 ちなみにチーム文京として生き残ったカマジ役の慎吾さんとイタチ役のいっちゃんはそのサブキャラとして殺陣に出てるから形としては俺様だけ居残りなんだけどな。

 だから最初ジン役で出るの渋ったんだよなあ、あのモブ暗殺者役ですら別役のモブで出てるのに出れてないの俺様だけなんだぞ。

 

「ま、今となっちゃ後悔はしてないがな」

 

 とはいえあんなに役に入り込めたのはジンが初めてだしな。

 出て後悔は無かった、というか色んな意味を含めて出られて良かった。

 複雑な想いはあるが、それを上回る程の収穫と成長を手に入れられたんだからな。

 

「しかし……あかねちゃん、あの瞳の黒い星は……」

 

 この舞台は大成功を収めるだろう、その心配はしていない。

 想像以上のものが見られて客としてもすっかり各々の魅了されている様だしな。

 

 だが異変を一つ見つけた。

 あかねちゃんの瞳、そこに映る星だ。

 そもそも瞳に映る星というのは誰に、どうやって、いつ付くのか全く分かっていない……それどころか今まで見てきた中でこの瞳の星を持っていると分かったのは星野兄妹とアイ、それにカミキ社長とアイインストール時のあかねちゃん……それに他数人。

 それもあかねちゃん以外は『ほぼ』白い星だ。

 

 アイインストール時のあかねちゃんが黄色。

 

 ――そして今のあかねちゃんの瞳の星は黒。

 

「なんだ、この違いは……?」

 

 俺はさっきあかねちゃんを除いても『ほぼ白い星』を見てきたと言ったと思う。

 その例外である極一部、そこで見たのが『黒い星』だった。

 今までは瞳の中の星は特別な体質を持つ人間が発現させるものであり黒は俺の目の錯覚か気のせいか何かだと思っていた。

 見たというのもあまり長時間では無かったからな。

 

「だが……間違いない。今のあかねちゃんの瞳は、ここからでも分かる程黒い輝きを……放っている。この輝きは……飲まれそうになる、それでいて馴染みやすいこの感覚は一体……」

 

 だが今回だけは話が違う。

 いつまでも異彩を放つその漆黒は、まるで悲壮な覚悟を背負う鞘姫の心情を暗く照らすかの様で。

 

 これだけの、壮観と言える程の役者がいる中で。

 全員が同じ様に殺陣を行い、出演時間を貰っているというのに。

 

「間違いなく……今この瞬間、主役はあかねちゃんだ……」

 

 どこまでも黒く、暗く、輝く。

 それは俺だけでは無い、出演している役者全員を飲み込む様な独裁的な、この盤面に一番相応しい演技。

 こんな全てをねじ伏せる様な演技、あかねちゃんがした事があっただろうか……

 

 これまで見てきたものは、美しく照らし出し、包み込む様な、それでいて力強いものだったはずだ。

 

「やはり、それでもおかしい」

 

 完璧だ、それでいて原作を超える恐ろしい演技。

 しかしこれは……『これ』はあかねちゃんのやるものじゃない。

 なんなんだ……何が彼女を変えた……?

 

「つーかそれでも飲まれてないかなは凄すぎるんだよ」

 

 俺が思考を張り巡らしている最中でも、二人だけそんなものを意に介していないとばかりにいなしている役者がいた。

 一人は姫川、アイツは何もかもが規格外だから除外するとしてもう一人は……かなだ。

 

「徹底的に『影』になるつもりか……? 方針を変えた……? ……ったく、そういうとこはアイツの良いとこでもあり悪いとこでもあるんだよな」

 

 意に介していない……と言えば聞こえは良い、実際何一つ影響を受けずに自在に演技の出力を変えているアイツのスキルは俺から見てもこの日本最高クラスのものだと言える。

 

 しかしかなは……約束を違えていた。

 

 本気でぶつかろうと言っていたのにも関わらず徹底的に黒子になる様な、鞘姫を引き立てる演技に徹している。

 

 恐らく、この作品をより良いものにする為に瞬時に思考を切り替えて出力をほぼ0にしたのだろう。

 そうだとも、それはかなのお家芸、生命線、この芸能界で生き抜く為の術、力だ。

 最初それを教えてくれたのは五反田さんだった。

『芸能界を生き抜く為の演り方を教えてやる』小さい頃からずっと世話になってきた監督だけあって、信頼を置けていたかなは事務所からも親からも見放された後にその術に縋り付いた。

 

 絶望の中で見つけたたった一つの生き方。

 今でもそれを教えてくれた五反田さんにかなは大きな感謝をしている。

 だが、かなは次第に『それ』しか演れなくなった。

 五反田さんや鏑木Pと言った才能を理解していた人はともかく、他の人間は『扱いやすさ』だけでかなを登用した。

 

 そうしてかなは輝く事を辞めた。

 完全に辞めた訳では無い、今日あまでも姫川との演り合いでも輝いてはいた。

 それはそれとして、悪い意味で『身勝手な演技をする』事を辞めてしまったのだ。

 

「……お前の本当の良さは、そこだろうに。もっと身勝手な演技して、周りを圧倒して、釘付けにするとこだろ」

 

 ずっと見てきたからこその言葉だった。

 子役時代の誰よりも輝いて、圧倒して、釘付けにして、虜にしていくそんな有馬かなに俺は惚れていた。

 

 そう、惚れていたんだ。

 

 今なら分かる、あの肌が灼ける様な、脳みそが茹で上がる様な、身体の底から高揚感が溢れる様な、あの感覚。

 あれは間違いなく有馬かなという人間の演技に心の底から、そして異性として意識し始めたのも恐らくはそこなのだろう。

 

「だからこそ、納得行かねえよ」

 

 この演技が悪いとは言わない。

 ただ、この舞台は、つるぎ(かな)鞘姫(あかねちゃん)の戦いは、お前は輝くべきだろうが。

 ジンの死を看取った時みたいに、心の底からの感情演技で、誰しもの心を揺さぶるそんな演技をすべきだ。

 

「……馬鹿野郎がよ」

 

 それを自主的に引っ込めてしまうかな以前に、そうしてしまう様な環境を作った周りの大人と、守り切れなかった自分へ罵倒する事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで……私が間違ってたの……? こんなんじゃ私がただ出しゃばっただけ……自分勝手で、ワガママで……ごめ……」

 

「それで良い。ふぅ……有馬のやつ、腹立つ演技してるな」

 

「ああほんとだよ。あの場面はもっと前に出て良いっつーのに」

 

 一旦あかねちゃんやアクア達が引っ込んできた。

 すっかり黒い星は鳴りを潜めたのか弱々しい言葉だけが紡がれる。

 アクアも同じ事を思ってるみたいだし……ここは乗ってもらうか、いっちょ。

 

「和也くん……」

 

「アクアもあかねちゃんも、アイツの本当の良さ知ってるだろ? アイツの本当の良さはもっと独善的な輝きだ」

 

「そうだな。小器用に自分が作品の質を高めている様なのが良さじゃない、もっと……そう『私を見ろ』って顔してる時が、一番輝いてんだ」

 

「ま、このままあかねちゃんが勝ち逃げしたいなら自動的にそうなるけどね」

 

「そういうのじゃないの、和也くんなら良く知ってるでしょ? ……私、諦められない。やっとかなちゃんと同じ舞台に立てた、やっと真正面からぶつかれる時が来た、ライバルとして、憧れじゃなくて対等な立場としてぶつかれる時が来たんだよ? なのにこのまま終わるなんて……絶対に嫌だ」

 

 知ってて言った。本心を確認する為だ。

 これで妥協する様だったら俺様は協力しなかったが……勿論そんな生半可な気持ちじゃねえよな。

 さっきの黒い星の瞳の輝きは、そんな中途半端な人間が出せる覚悟じゃない。

 

「そうか。だったら引きずり出すまでだ。アイツがどうやったって『輝くしかない様にする』」

 

「アクアにしちゃ俺様と気が合うじゃん? 流石、かなの演技に脳みそ焼かれた同士考えるこたぁ同じってか?」

 

「……否定はしない」

 

 ニヤリと、アクアの言葉に口角を上げる。

 何だかんだ言ってもこういうところ……というか、かなの事に関してだけは完全に気が合うんだから不思議なもんだ。

 これでコイツの演技ももっと素直なもんになったなら俺様も完全にコイツの事認めるんだけどなあ。

 

 ま、言ったところでか。

 

 取り敢えず俺様はする事が無いから肩を組んでおく。

 

「俺様の幼馴染託すんだから頼むぜ、刀鬼さん?」

 

「ふっ、任せておけよジン」

 

 お互いわざと役名で呼んでもう一度お互いにニヤリと笑みを浮かべるのだった。




無道和也
実は自覚していなかっただけで惚れたキッカケは初めてかなの演技を見た時だったくらいには脳みそを焼かれている

星野アクア
同じく一番脳みそ焼かれた演技はかな
コイツら仲良いな
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