最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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※本来この話の前にあかねちゃんへの入れ知恵で本格的に諦める描写を一話詰め込むターンがありましたが、急遽『本来書く予定の無かった第四章』を書く事になったので変更してこの話を前倒しでお送りします
※第三章ラストです


『辛いものは辛い』

「いやなんて言うか、凄かった!」

 

「本当にあかね!? カズくん!? って思っちゃった!」

 

「えへへ……」

 

「ほんとほんと、俺としてはちょっと和也の演技で涙出てきちゃって……」

 

「あー確かにジンって彼女持ちとか相手がいる男にはぶっ刺さるもんな。……俺にはそんな相手いないけど」

 

「ノブともっさんで明暗分かれすぎだろ」

 

 長い長い公演初日が終わった。

 俺様の出番は全体2時間半の内の1/5、しかも丁度半ばの30分に集中している為待機時間と終わってからの手持ち無沙汰な時間が余計そうさせているのだろう。

 

 終わってからいの一番に向かったのは、招待していた今ガチ勢の集まっている場所だった。

 どうやらメッちゃんは苺プロ組の方で話しているから後で感想を聞くとして、3人ともあかねちゃんと俺様どっちも好感触というか最高の評価みたいで何より。

 特にノブは彼女持ちだから俺様の演技は深く突き刺さったらしく、光栄といったところだ。

 

「うーむ、こうしてみるといつもの黒川だけど舞台の上じゃ別人に見えたなあ」

 

「いやほんと、今日から黒川サンって呼んで良い?」

 

「ええ!?」

 

「え、俺様は?」

 

「いや和也とジンって口調とか根っこの性格一緒でしょ」

 

「ラストシーンは大泣きしたけどそこはちょっと和也とかなちゃん重ねて見ちゃったというか」

 

「あたしもちょっとウルっと来ちゃったなあ〜……大切な幼馴染を庇って死んじゃうとかベタだけどかっこいい!」

 

「思ってたのとは違うがまあ好評そうで良かったって事にしとくか……」

 

 ただ、折角だからもっとギャップみたいなのを味わってもらおうとしたんだがな……やはりジンと俺様では似通った部分があり過ぎて逆にリンクしてしまっていたらしい、観客もそう感じる程だったとはな。

 それはそれで感情が良く伝わっていたという事にも繋がるから満足しているがな。

 そしてここに唯一いる『女性の観客』ことゆきちの感想も上々ならジンの良さを全て出し切れたという事で断言しても構わないだろう。

 

 そしてそうして浸ってる間その3人はあかねちゃんに天才!天才とコールをしていた、ほんと君ら仲良いな。

 

「……でもね、私なんかまだまだだなってね、改めて思った……思い知らされたんだ」

 

「あかねちゃん……」

 

「本当の天才って言うのは……それこそ、姫川さんや和也くん……それに、かなちゃんみたいな人を言うんだろうなって……」

 

 あかねちゃんの目には涙が浮かんでいた。

 シレッと俺様の名前が入ってるのはどう反応して良いか分からないから流すが、あのかなの演技に圧倒されて、嬉しくて、でも勝てないと分かって悔しかったんだろうな。

 

 ……俺様目線から言わせてもらうと、あかねちゃんもとんでもない演技してたし勝ち負けなんて付けられないレベルだったと思うがな。

 

「あ、あかね!?」

 

「ちょいちょい黒川!?」

 

「どうしたんだよ!?」

 

「私……もっと上手くなりたい……かなちゃんに認めてもらえる役者になりたい……」

 

「……そっか。でもあたしはあかねがナンバーワンだって思ったわよ、だから……ね、泣かないで」

 

「ゆき……ありがとう……」

 

 ギュッとあかねちゃんの手を優しく握って微笑むゆきち。

 俺様達男勢はそっと自然と一歩下がる、そうこの美しい神聖な空間は何者も挟まってはならないのだ。

 

「ノブ、もっさん」

 

「そういうのには疎いけど、まあ言わんとしてる事は分かるさ」

 

「ゆき……なんかすごく綺麗に見える……いつもそうだけど」

 

「勝手に惚気けるな砂糖自動生成機」

 

「いやまあだが気持ちは良く分かる」

 

「それは同意する」

 

 こう、百合という訳でないのは分かっているのだ。

 それこそ3人とも2人の恋愛事情は当事者だったり目撃者だったりする訳だからな。

 だがそれはそれとして、女の子同士の神聖なる美しい瞬間ってほらあるじゃないか。

 そういうところはやはり男としては目の保養になる訳で。

 

「……見世物じゃないわよ?」

 

「大丈夫、神聖なものとして見てるだけだ。続けたまえゆき」

 

「どうぞどうぞ」

 

「俺様も別にそういう疚しい気持ちで見ていた訳ではないからな。やはり美しい女性同士の友情は絵画になると思っていただけだ」

 

「恥ずかしいから一人ずつ蹴り飛ばして良いかしら」

 

 ……なんと言うか、こうして親しい友人達とワイワイ話していて。

 苦しくなっていた気持ちが、ほんの少しだけ晴れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「和也ー? 一緒に帰らないのー?」

 

「あー、まあな。ちょっと最近用事立て込んでてな、悪ぃけど無理っぽい」

 

「んもう仕方ないわね。それじゃ後輩共(メルトと一希ちゃん)、今日はアタシが奢るから行くわよー」

 

「うっす! ゴチになりまーす!」

 

「はいぃ! お供させていただきますぅ!」

 

 公演4日目、ここ最近はかなと帰る事も無くなっていた。

 俺はかなから離れてアクアとの恋を後押しすると決めたのだから俺はかな無しでも、かなも俺無しでも生きていける様にそれぞれ少しずつ準備をしているのだ……俺が勝手にやってる事だがな。

 

 しかし利点が一つだけある、演技の身の入り様だ。

 ジンは何度も言っている通り『叶わぬ恋』と感じた直後につるぎを庇って死んでいる。

 死の間際にもしかしたら気付いていたのかも知れないし、俺としてもそこは敢えて『そう感じさせる様に』演技しているがメイン軸となるのは前者の感情である。

 

 勝手に身を引いた恋ではあるが、そうなると益々ジンへの感情移入が大きくなっているのか日を追う事にドンドンジンにしか見えなくなってきた――なんて言う意見が散見されているくらいだ。

 

「ん? 和也、お前今日用事なんてあったっけ?」

 

「……ま、色々とあるんですよ。それじゃ俺様はこれで、鴨志田さんお先〜」

 

「おーう」

 

 近い内にあかねちゃんには相談する事とはいえ、あんまり話したくない、話せない内容な事もありかなりナーバスになっている気がする。

 話してると親しい人相手でもストレスがある事がバレかねない。

 

「……嫌なもんだね、決断してからこんなに離れる事が辛いと分かるなんてさ」

 

 最近、頭の中はかなとの思い出がフラッシュバックしまくっていて落ち着かない。

 些細な事、今まで忘れてた様な事まで思い出してしまう。

 どんだけかなの事を好きだったのか諦めてから分かるとは、溜め息を吐きたくなるくらいの皮肉だ。

 

「……あれ、カズくん?」

 

「ん? ……ゆきちか、珍しいね一人なんて」

 

「うん、ちょっと映画の帰りみたいな?」

 

「そうか。いやしかし女の子が夜道を一人は流石に危ないだろう、送ってってやるよ」

 

「あ、ごめんねー帰りなのに。ありがと」

 

 重い足を動かしていると、ふと声がした。

 そうだろうとは思ったが声の主はゆきち……てか一人で夜道なんて歩きなさんな。

 ノブの胃が何個あっても足りないだろ、全く……普通の女の子でも危ないのに売れっ子の美少女モデルが無防備過ぎやしないかね。

 

 これが知らない女の子ならいざ知らず、ガッツリ友人なので送っていく事にした。

 こうしてると気が和らぐのもあった。

 

「ね、カズくん」

 

「なんだ?」

 

「最近元気無い? 顔、ちょっと暗いよ?」

 

 ……無防備だったのは俺の方もか?

 毎日顔合わせてる連中に何も言われなかったから大丈夫だと思っていたがまさかゆきちにバレるとは。

 いやここは隠し通すか。

 

「気のせいだろ、俺様はいつだって絶好調だぞ」

 

「……嫌なら話さなくても良いけどさ。あたし、今ガチの時にあかねが誘拐されたって聞いた事で取り乱しちゃったじゃん? あの時気遣ってくれたの凄く嬉しくて……何か力になれる事があるなら話してほしいなって思って。ほら、あたし達友達って言っても気軽に話すくらいだしさ、そういう軽い関係の人の方が話せる事もあるかなーって」

 

 なんというか、それを言われたら断れないんだよなあ。

 全く話が上手いというか優しすぎるというかね。

 

「ふぅ……仕方ない。そこの公園で話すよ」

 

「自分から言っといてあれだけど……良いの?」

 

「俳優関係者でもない友人なら気軽に話せると思ったんだよ。お茶とカルピスとオレンジジュース、どれにする?」

 

「んじゃカルピスでー」

 

「ほいほい、ほら」

 

「どーも」

 

 飲み物を買って一息付きながら、公園のベンチに座り空を見上げる。

 満天の星空に三日月、点々とある雲。

 話そうとした、たったそれだけなのに妙に心が落ち着いてしまう。

 

「……俺さ、弱い人間なんだよ」

 

「『俺様』って一人称も自分の素ではあるけど、強くなれない時はこうやって言えなくなっちゃってさ」

 

「だからなのか、公演初日に俺の横にいる時よりアクアの横での方が輝いていたかなを見て『敵わない』そう思っちゃったんだよ」

 

「……そっか」

 

 優しく一言相槌を入れてもらえるだけで泣きそうになる。

 こんなに弱い自分を見せるのは初めてで、どうして良いか分からないからこそそれだけで涙腺が緩くなってしまう。

 

「かなへの恋を自覚したのも稽古の中盤辺りでな」

 

「ふとした事で『あ、俺ってこんなにもかなの事好きだったんだな』って感じて」

 

「アクアへの恋を応援する反面、俺に恋情を向けてくれないかって……おかしいよな、矛盾してるんだもんな」

 

「…………諦める事に、したんだ。かなへの恋」

 

 初めて、口にした。

 自分で決めて、自分で苦しんでたとはいえ誰にも話せなかったそれを、やっと言う事が出来た。

 

「……不器用だね、カズくん。でも心の底からかなっちの事好きなのも分かった」

 

「バカ……泣きたくなってくる、だろ……」

 

「泣きたい時は泣いたって良いと思うよ。今は丁度あたししか見てないんだし」

 

「だ、だがな……これは自分で決めたんだ……泣くのは……」

 

 ここで泣けば止まらないだろう。

 自ら決めた事なのに、そんな事で泣いて良い訳が……

 

「恋愛ってさ、ワガママなんだよ。抜け駆け横取り、勝手に恋して勝手に冷めて、そんな事ばっか。だからさ……カズくんのそれくらい、泣いたって誰も責めない。誰も笑わない。だから……ね? 泣いても良いんだよ……?」

 

 その言葉は、今の俺の涙腺を壊すには、あまりにも簡単過ぎて。

 

「……肩くらいなら、貸したげるから。泣き止むまで待っててあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや、いやいやいやいや 」

 

 私、MEMちょは衝撃的なものを見てしまいました。

 

 

『泣き疲れて寝ちゃうなんて……取り敢えず膝枕したけど誰にも見られてないわよね……? てかやばカズくんやっぱ顔面偏差値の暴力過ぎ、イケメンは寝てても絵になるってかー? いやそれよりそれより……ノブくんには正直にメールしとかないとね……カズくん相手だし事情話しとけば大丈夫よね……?

 

 

 最後の方何言ってるか聞こえなかったけど、まさかゆきと和也が……

 

「どどど、どうしよう……どうしよう……かな、ノブユキ……」

 

 

 

 

 

 

 「あの2人、浮気してる……」

 

 




MEMちょ
違うそうじゃない

無道和也
彼氏持ち世話焼き美少女に癒されてる間にとんでもない事になっているというのにはまだ気が付いていない

鷲見ゆき
詳細は言っていないもののノブユキにも話したし理解もしてもらったから万事解決だと思っているが本番はここからなんだ、済まない

熊野ノブユキ
事情把握したし傷心の和也慰めるなら寧ろファインプレーくらいに思ってるぐう聖陽キャ
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