最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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※本来ここと次話は三章とする検討もしていましたが四章のサブコンセプトの導入としてこれ以上の入りが無かったので四章になっています
※この二話に関しては和かなの絡みはそんなに無いです


第四章 宮崎旅行、それと複雑な2人
『たまには男同士で』


「ふいぁ〜!!」

 

「つっかれたー! この舞台消費カロリー高過ぎない? 特に文京編とか毎回最大級に心身の消費カロリーの高さを思い知るわ……」

 

「おしおし、今日も良かったぞ」

 

「フッ、今日も俺様は完璧だ……やはり日に日にジンに近づいてる気がする……これが魂の定着というヤツか」

 

「何言ってんだ……って言いたいとこだが実際無道の演技力は実践で更に原作のジンそのものになってきている気がするのは確かだ。元から上手いヤツが本番を繰り返し成長するというのは一種チートとも言えるかもな」

 

「俺様はなんでも出来るからなあ~、何度も決死の覚悟で死んでいくキャラやってると『馴染んじゃう』みたいな? あ、てか今日も俺様は用事あるから……」

 

「おおっと? 今日は用事ねーのマネージャーから聞いてるぜぇ?」

 

「うげっ、鴨志田さん……」

 

 公演も中程を迎え、演者の体力も結構削れてきた頃。

 相も変わらず俺様は原作のジンそのものになってきただの、そのまま2次元から出てきた? だのと相当な評判だ。

 

 その代償でこの前はゆきちに迷惑を掛けてしまった訳だが……というかめちゃくちゃ泣いた後緊張の糸が切れてしまったのかあのまま寝てしまうという大失態を犯してしまったのが何よりも恥ずかしい。

 起きたらゆきちの膝枕だぞ? 俺様じゃなかったらノブに殴り殺されててもおかしくないぞあんなの。

 

 ……というかゆきちがあんなに世話焼きだったとはな。

 

 いやまあそれは一旦さておき。

 なるべくかなを避けたかったのだが今日は無理そうだという事が確定した、少しくらいは妥協するか……離れ過ぎるのも逆に詮索されかねないしな。

 

「うげっとは随分な言い様だなあ? 何してんのか知らないけどたまにはみんなでパーッと行こうぜ」

 

「わ、分かりましたよ。そこまで言うなら……まあ、はい」

 

「やりぃ! 今日は和也付きだぞ!」

 

「無道くんと飲めるなんて光栄だな! 素晴らしい!」

 

「結局今日も飲みなのね……」

 

「舞台人って飲み会好きだよな」

 

「アタシこういう飲み会って騒がしくて苦手なのよねぇ」

 

 舞台人やスポーツ選手が飲み会好きだ、という話は良く聞く。

 というのもどちらにせよ体力と精神の消耗が激しく目に見えるストレスが溜まりやすいからだ。

 そういった時にパーッと酒でハイテンションになってスッキリしておくというのは一つこうしたハードな業務をこなす界隈を生き抜く為の手段として賢い。

 俺様としても楽しくてやっているこの仕事ではあるが、色々な仕事をこなす上で嫌でも飲み込まなければならない事、楽しくても疲れる事なんぞ多々あるから20歳を超えればきっと飲む事も多くなるのだろう。

 

「アクアはどうするの? アタシは帰って休みたいんだけど」

 

「行く」

 

「分かったアタシもやっぱ行く」

 

「現金なヤツだなお前は」

 

「和也とも久々に帰れそうだしね〜」

 

「へいへいそうですか」

 

「何よ嬉しくない訳?」

 

「イヤードウデショウカネー」

 

 そしてかなとも久々に結構絡んだ気がする。

 最近は意図して少しずつ距離を離していってるから仕方ないが、やっぱり話してると楽しいんだよな、困った事に。

 意固地になって話さないとそれはそれでかなを傷付けそうだし妥協点としてここは話しておくとしよう、決して俺様がかなと話していて幸せだとかかなの事が可愛くて仕方ないから話しているとかでは無い事はご理解いただきたい。

 

「そんな事言ってるとアクアとしか話さないわよー?」

 

「それはそれで幼馴染の婚期が早まるだけだろうし別に気にしないが」

 

「え、待って思ってた反応と違うんだけど。最推しの発言が解釈不一致なんだけど」

 

「……もうそこのイチャイチャカップルは置いていかね?」

 

「だな」

 

 そんなこんなしていたら鴨志田さんとアクアが呆れていたが多分俺様は悪くない。

 あと解釈不一致とはなんだ解釈不一致とは。

 お前は厄介アイドルオタクの追っかけか何かかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからねっ! 役者も一人の作家であるべきなのよ!」

 

 ジンジャーエールを一気飲みしながらかながさながら面倒な酔い方をしたオッサンの様に切り出す。

 お前もお前で俺様の見えないとこでも苦労してんだな……

 

「その場その場をミスしない様に演じるんじゃなくて! 作劇的な盛り上げに加担しなきゃいけないワケ!」

 

「あー分かる、俺様そういうの得意だし率先してやるから特に」

 

「でしょー!?」

 

「でもそれは演出家の仕事だろ」

 

「それはそうだけども!」

 

 めちゃくちゃ盛り上がってるなあ。

 俺様もチラホラ参加しているがかなが楽しそうで何よりだ。

 

 まあ、それは良いんだが……俺様としてはそろそろかなの事をアクアに話しておくべきだと思っている。

 自分は手を引く事、だからお前にかなの事を頼むぞって事。

 ……あかねちゃんの事は話すと拗れるだろうしあかねちゃんにだけ全容を喋っておく事にするか。

 

 しかし中々隙を見つけられないがどうしたものかね。

 

「ワークショップで集めた人材使って、何公演か回して……まぁ、アレは一部を除いて失敗だったがな。もうやらん」

 

「失敗……ですか、詳しく聞きたいですね」

 

「若い頃の失敗だ、詮索するな」

 

「教えてください」

 

「ダメだ、子どもに話すような内容じゃない」

 

 そのアクアはアクアで主宰の金田一さんと話し込んでるみたいだし。

 てかララライのワークショップねえ……

 

 ララライと言えばウチの社長が昔、十代の頃に所属していた劇団でもあるのは承知している。

 更に言えば、調べたところワークショップをやっていた頃と社長の在籍していた時期は同じ……

 

 更に言えば。

 

 そう、アイがそのワークショップに行っていたのも同時期だ。

 

『――あの社長、10代中盤でどっかの女の子孕ませたって聞いてさ。どこの誰かは知らないけど教えてくれたんだよ、これトップシークレットだから誰にも言うなよ?』

 

 思い出すのは間違いなくこの言葉。

 聞いた当初は何も思わなかったが、アクアとあかねちゃんのやり取りを聞いてしまった以上気にならない訳が無い。

 どうにも昔から恋愛に消極的なのが万が一にでもそういったところで繋がっていたら目も当てられない、俺様が引くのにアクアも引いてたら俺様がただのバカじゃねえか。

 

 と、言う訳で俺様もこれには一口噛んでおくかね。

 

「金田一さん、ヤサ変えて飲みましょう。良い店があるんです」

 

「あ、俺様も着いてって良いっすかー? 男同士じっくり話したりしてみたいのもありますし、男だけで遊ぶのもたまにはしたいんですよ」

 

「仕方ねえなあ、じゃあ今日はその大輝のオススメとやらで4人飲むぞー」

 

「……無道、どういうつもりだ」

 

「どうもこうも、俺様も主宰の昔話は気になるもんでね」

 

「一人増えたくらい気にするまでもないだろう。ほら、早くしないと置いていくぞ」

 

 上手く入り込めた様だ。

 さてさてここいらでどんな話が聞けるか……ちょっと真剣に聞くとしようか。

 

 

 

 

 

「カンパイ!」

 

「ハイ! イッテらっしゃい!」

 

 景気良い掛け声と共に酒を一気する成人組の主宰と姫川。

 俺様とアクアは未成年だからソフトドリンクだが……まさかオススメの店ってのが完全会員制のBARだった。

 

「俺様にはジンジャーエールを」

 

「は〜い、君無道和也くんだよね」

 

「おや、ご存知で?」

 

「そりゃもう! 新曲買っちゃったんだから! 役者としても憧れなんだよ?」

 

「それはそれは光栄な事です、ありがとうございます」

 

 それにここ、どうやら役者も従業員として働いているらしい。

 道理で見覚えのある顔がチラホラいる訳だ。

 

 つーか姫川、あんな生気の無さそうな顔しといて割と遊び人だったとはな……意外だ。

 

「こんの恩知らずがぁ~ここまで育ててやった義理も忘れてぇ〜、ほら飲めぇ〜」

 

「はいはい飲みますって」

 

 ちょっと待て今とんでもない事サラッと言わなかったか主宰。

 え、姫川って主宰の養子な訳? マジで?

 

 …………しばらく聞いていたがどうにも姫川は養護施設出身で、施設を出た後主宰に面倒を見てもらっていたんだとか。

 主宰の目が完全に息子を見る優しい父親になってやがる。

 

 あと欠けてる演技とか言っていたがそれ俺様は含まれてないからちょっと気まずいんだよな聞いてるの。

 いやてかそのまま寝ちゃってるし、どうすんだよこれ。

 

「しまった、飲ませ過ぎたか……すまんな、オッサンの失敗話やら過去話はまた今度引き出すとしよう」

 

「別に良いですよ」

 

 しかし何か妙ちくりんな空気になってきたな、これ何か2人で話す……話したい事がある感じか。

 俺様何かいない事にされてるしこのまま聞いちゃっても……

 

「……無道、スマホが鳴っているぞ」

 

「げ、姫川……はぁ……折角盗み聞き出来ると思ったんだがな。タイミングの悪い」

 

「ちゃっかり聞こうとするなバカが」

 

 ……なんでこんな時にスマホが鳴るかね。

 しかもメッちゃん、まあメッちゃんなら許すけどわざわざこんな時間になんだ?

 

「うっせ、すいませーんここ通話しても大丈夫なスポットありますー?」

 

「あるよー、そこの個室」

 

「ありがとうございます……チッ、今度は聞いてやる」

 

 わざとらしく席を立って個通スポットへ移動。

 万が一あんまり聞かれたくない話題だった場合でもこれなら聞かれなくて済む、流石業界人御用達なだけある。

 

「はいはいもっしーメッちゃん? どうしたこんな時間に」

 

『あー和也? 今……その、誰にも聞かれない状況?』

 

「おー、そうだけど」

 

『……その、どうしても聞きたい事があって電話したんだけど』

 

 何かちょっと深刻そうな声をしている。

 妙だな、何だこの嫌な予感は……

 

「? なんだどうしてもって、改まっちゃってさ。俺様達そんな畏まる様な仲でも無いだろ?」

 

『それは……そうだけども。じゃ、じゃあ……き、聞くよ?』

 

 ゴクリ、とメッちゃんが生唾を飲み込む音が聞こえる。

 

 ――まさか、と一つ本当に見られていたとしたらまずい事を思い出す。

 いやいやまさかねまさか、アレ見られてたらものすごく面倒な事になるんだぞそれだけは無いと思いたい。

 

 そしてそれは……

 

「おう」

 

『…………この前、ゆきに膝枕されてたアレってなに?』

 

 無情にもめちゃくちゃピンズドで当たっていたのだった――

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