最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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『色々情報量が多過ぎる』

『…………この前、ゆきに膝枕されてたアレってなに?』

 

 ヒュッという声とも呼べない呼吸音が喉を通ったのが分かる。

 本来ならゆきちにも見せたくなかったのだが、あんまりにも優しくされるもんでつい気を許して泣いてしまってそのままぐっすり寝てしまったのは前も言った通り、多分誰にも見られてないってのは俺様も警戒しなさすぎだとはいえまさかメッちゃんに見られていたとは思わないじゃないか。

 

「ちょ、ちょっと一回待ってもらって良いか? 俺様今共演者と飲んでる途中だから抜けてくるまでな、ほんと悪いけど。俺様から掛け直すから」

 

『……和也に限って大丈夫だと思うけど、逃走したらかなに言っちゃうからねー?』

 

「マジでそれは死ぬからやめて」

 

 取り敢えず急いで通話を切る。

 ここじゃ流石にいくらなんでも話せない事過ぎる、何とか平静を保ちながら出て……酔い潰れてる主宰以外のアクアと姫川に了承を取っておく。

 

「っと、悪ぃけど急用が出来たから帰るわ。すまん」

 

「ああ、それは構わないが……忘れ物だよ」

 

「おっ、と。プライベート用スマホその2ポケットから落ちてたのか……済まない、恩に着る。代金は置いておくから」

 

「……なんだったんだアイツ」

 

 何か落ちてた二台あるプライベート用スマホの内の一台も拾ってもらえた様で、慌てていた気持ちが少し和らぐ気がした。

 

「……いやてかこのスマホ録音誤作動してんじゃねえか」

 

 落ちた拍子に録音が作動してしまっていたのか、ずっと録音状態になっていた……十分くらいだろうか。

 まあ今はそんな事よりメッちゃんに電話掛け直すのが先決だから消すとか処理すんのは後だ、何としてでも誤解は解かねばならない……急いで外に出て高速で通話を掛け直す、集中力は恐らく舞台の時と同等レベルだろう。

 いやそれだけ切羽詰まってるって事なんだけどな?

 

「悪い、遅くなった」

 

『いーよいーよ別に、その息切れ聞けば急いでくれてたの分かるしさ』

 

「んで……今誰にも聞かれないとこで通話してるよな? そこだけ聞いときたい。勿論俺様も大丈夫な場所……公衆電話ボックスにわざわざ入ってから掛けてるから問題無いが」

 

『いや怪し過ぎでしょ。こっちもだいじょぶだいじょぶ、弟達みんな下の階でゲームに熱中してるからさ』

 

「そうか……なら大丈夫そうだな」

 

 近くに公衆電話があって良かった。

 あそこは元より防音機能があるガラスに覆われているからこうした電話を掛けたところで誰かに聞かれたり盗聴される事はまず無い。

 俺様は失敗を二度も繰り返さないんだよ。

 

『ごほん、それで……ゆきと何があったの? どう見ても浮気にしか見えなかったけど』

 

「まず訂正させてほしいがアレは浮気では無い、現にゆきちはあの後ノブの方に連絡してある程度の状況を鑑みた結果何も問題ないって事になってる」

 

『え、マジ? ……じゃあなんで膝枕なんてしてたワケ? 女の子には目の保養以外では興味無いみたいな事言ってたじゃん?』

 

「まあそれは……ちょっとお恥ずかしながらあの時俺様盛大に傷心してましてね。そんな時に偶然会ったゆきちに慰められたら思わず泣いてしまいまして……」

 

『……あ、なるほど。そのまま泣き疲れて寝ちゃいましたと……』

 

「ほんっと恥ずかしい……」

 

 公開処刑か何かかこれは。

 いつも格好付けてる俺様が傷心してましたーなんてわざわざ言うのはダメージがものすごい事に……

 いやだがこれは別に俺様の為に言ってる意味合いは低いからな、あくまでも善意100%で慰めてくれたゆきちを庇う為だから……ここは我慢だ我慢……

 

『ちなみにご理由なんかは』

 

「頼むそれだけは勘弁してくれ……」

 

 ただ理由だけは死んでも言えない、ゆきちに言ってしまった時は圧倒的に正気じゃなかっただけで誰かに言うとかほぼほぼ死んでも有り得ない事だぞこれは。

 確かにゆきちにはめちゃくちゃ感謝しているし膝枕気持ち良かったなーてのは思ってる、疚しい気持ち無しに思ってはいる。

 だが良いか、さっきも言ったが俺様は失敗を二度も繰り返さない。

 結果良かったとしてもアレは明確に『失敗』だ、だとすればここで言う事は失敗を繰り返す事になる。

 

 それだけは絶対にしたくない、絶対にだ。

 

『ふ〜ん……ほんとに話せないの?』

 

「ゆきちには話したが基本的に誰にも話したくない事なんだよ、いやほんと」

 

『まあ、なら仕方ない。人には隠しておきたい事の一つや二つあるだろうからね』

 

「メッちゃんてたまに高校生らしからぬ達観した事言うよな」

 

『ソンナコトナイヨ? ワタシコウコウセイダヨ?』

 

 何とか切り抜けられた様だ、助かった。

 メッちゃんの精神が大人で良かった……それにしてもメッちゃんの精神とか心構えって高校生にしては大人っぽ過ぎる気もするんだよな……いやまあ聞かないでおくけど、なんか聞いちゃいけない気がするし。

 

「いや急に片言なっとるて……まあその辺は俺様も聞かないでおくからおあいことして、取り敢えず黙ってくれてれば良いから。俺様自体はバレたところで『かなとは付き合ってなかったのか〜』で済むが相手がゆきちってなるとお互いめちゃくちゃ不味い事になるから」

 

『そこは勿論。いやー最初見た時は「え、2人がダブル浮気してる……」なんて思ってたけどそれはそれとして言う訳にはいかないのも分かってたからこうして直接聞いた訳だし』

 

「うん、俺様はかなとは付き合ってないからな? まあありがとよ」

 

『えー、あんなにイチャイチャしてるなら付き合っちゃえば良いのにさ~』

 

「それとこれとは話が別じゃい!」

 

 おい安心した途端切り返しでその話題はやめろ主に俺様の精神がクリティカルで逝くから。

 しかしゆきちに気持ち吐き出してきて良かったな、そうでもなきゃこうしてギャグ調でツッコミなんて入れられなかったぞ本当に。

 

『でも何にせよ解決って感じで良かった良かった。今度誤解のお詫びに何か奢るよ』

 

「そりゃどうも。こっちとしても誤解が解けて良かったしな……んじゃまた」

 

『はいは〜い』

 

 電話BOXから出て息を吐く。

 ドッと疲れが出た気がした。

 

「あっぶねぇ~確かにあの場面他人から見たらそう見えるもんなあ……今度ゆきちに会ったらそれとなく何か奢ろ……」

 

 これで今日の騒動は終わり……家に帰ってまた明日の公演の為に力を溜め込むか、なんて呑気に思っていた。

 

 しかし今日の衝撃はこれでは終わらなかった、というか帰ってからの方がとんでもない事になっていたのを、俺はまだ知らないでいた……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~……そろそろ寝るかね……」

 

 今日は精神的な面でも疲労が溜まったが故に少し早いがもう寝てしまおうと思い立って……そう言えばと思い出す。

 プライベート用スマホその2に間違えて入ってしまっていた録音の事だ。

 

「一応あそこ完全会員制の厳重な場所のだし間違っても流出なんてしようもんならとんでもない事になるな。消しとくか……いや一回聞いとこ、どうせ一人暮らしだしな、イヤホンも着けるし俺様は悪くない悪くない……」

 

 誰に言うでもなくブツブツと言い聞かせながらイヤホンを手に取り装着、躊躇無く再生ボタンを押す。

 いやだってあの2人が気付かなかったって事は『2人きりで話したかった事』が録音されてる可能性があるって事だぞ、気にならない訳が無い。

 

 ……と言った手前ではあるが、まあどうせロクでも無い事しか録音されてないだろうから期待はしていないが。

 

 さてさて何が録音されてるやら……

 取り敢えずそれっぽい所まで飛ばして。

 

 

『遺伝子……鑑定?』

『俺と姫川さん……父親が同じなんですよ』

『教えてくれませんか、貴方の父親の事』

 

 

 ふーん成程成程、遺伝子鑑定の結果アクアと姫川の父親が同じという事が判明したと、いやー確かにこれは2人で話したい事だよな、うん。

 

「……いやいや、いやいやいやいや、ちょっと待ってくれって」

 

 一度現実逃避をさせてほしい。

 どうしたらそういう話になるのかは置いといて、そうはならねえだろと言わせてほしいのと心底俺様が一人暮らしで良かったと思っている。

 大スキャンダルどころの話じゃねえぞこれは。

 

 いやだって冷静になって考えてみてほしい。

 アクアの父親最有力候補がウチの社長であるカミキヒカルだって事はだぞ、姫川の父親もカミキヒカルって事になるんだぞ!? 何歳で子ども設けてんだあの人!?

 

 アクアとかルビーちゃん見てりゃ分かるが、あの2人は父親が誰かを完全に知らない……何故か知らんが偶然に偶然が重なりまくったせいで当事者以外じゃワンチャン俺様が一番真相を知ってしまったのでは……?

 

 というかだ、わざわざアクアがそんな事したってなると……

 

「……父親、探してんだよな多分」

 

 これ知ってどうしろって言うんだ俺様に。

 一番関係無い奴がそれ知ってどうすんだよ本当に……




無道和也
なっとるやろがい!
恋を諦めたと思いきや今度は一番関係無いのに勝手に原作に巻き込まれてる不憫な人
上原の事を知らなかったが故にストレートに真実に辿り着いてしまう大事故を起こしている
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