最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「……で? つまり俺様とノブともっさんでアイドルユニット組めって? 全員所属事務所も本業も違うんだが?」
例のハチャメチャな一日から数日。
事務所から『大型案件取ってきたからよろしく』と言われ出向いて内容を確認したら何とノブともっさんとでアイドルユニット組めって言う話になっていた、いやいやおかしいでしょ。
というか社長ニコニコなんだけど俺様の心中も知らないで良くそんな事出来るな畜生が。
「まあそうなんだけどね、各事務所の社長さんからもウケが良くて。『本業も事務所もバラバラだから継続しては難しいけど期間限定ユニットで復活したりしなかったり繰り返すなら便利に使えて良くない?』って。丁度3人とも共演経験あり、交友関係も深いみたいだし」
「俺様達そんな便利に扱われて良い格なの?」
「ほら、東ブレもそろそろ千秋楽でしょ? そうしたら少しだけクールダウンの為に仕事は調整する様にマネージャーには伝えてあるし、世間としても『今ガチで仲良かった男組4人でアイドルしてほしい』なんて意見が噴出してたくらいだからね。アクア君は流石に断られたけど」
「どう考えても当たり前でしょ」
割とおかしいのウチの社長だけかと思ってたら他のとこも似たり寄ったりかよ、どうなってんだ。
確かに世間の声的にそういったのが出ていたのは知ってはいるが、まさかノリで『じゃあやろうか』とか言われるなんて思いもしないだろ。
というかノブももっさんも了承したの? マジで言ってる?
「あ、他の2人……熊野君と森本君はもう了承取ってるからね。あの2人ノリ良かったから後は和也君次第さ」
「そんな簡単に了承しないでもらいたいんだがね……」
うわぁ本当に了承取ってやがる。
しかし純粋な男性アイドルとなると某超大手事務所一強過ぎて対抗相手としては不利な気もするがなあ。
「まだ迷ってる?」
「2人が了承したなら基本的には良いですがね、男性アイドルユニットとなると……あそこの事務所一強時代にやってもそこまで良い効果は得られないと思いますがね」
「そこは問題無いよ、あそことは違ってライブメインじゃなくてYouTubeメインにするつもりだし」
「俺たちゃB小町かよ」
でもそれなら分からんでも無い。
例の某大手事務所は昔からテレビやステージ主体で売り出してきてるスタイルを変えずに今まで王座に君臨してきているが、ネットで売り出すという事はあまりしていない。
YouTubeやインスタグラムでの生放送、動画配信何かはほぼ無いレベルに等しい。
ネットアイドルと言えばVTuberが猛威を奮っているが、それなら対抗手段は大いにあると言うのは合理的判断になる。
……そういやB小町は今度MV撮影に県外……どこ行くかは忘れたが、行くらしいし丁度かなと離れて活動するには都合も良いかもなあ。
「それで、どうする? インターネットでならかなり勝算はあるし、MV撮影での旅費なんかは経費で落ちるけど」
「分かった、やろう」
結局のところ、決め手が金だったのは秘密だが。
「っぱ最初は自己紹介動画っしょ!」
そして翌日、早速集まる3人。
俺様としては旅費が経費になるならもうなんだって良いから取り敢えず都外脱出させて欲しい、かなと一緒にいるのがそろそろ本当に気まずくなってきたんだよ、一方的に、そう一方的に。
だから自己紹介動画とかどうでも良いとは思う訳だが……
「はいそれじゃお次は和也!」
「フッ……無道和也だ。知っての通り神木プロダクション所属、大天才マルチタレント和也様とは俺様の事だ。AtoZのリーダーでもあるが……そうだな、まずは小手調べにこの『インターネット』とやらを掌握してやろうじゃないか」
仕事スイッチが入るといつもこれである。
違和感無く撮れるからこれはこれで便利ではあるが、これじゃまるで俺様が一番ノリノリみたいで何か不服。
あと『AtoZ』は俺様達のグループ名、適当に「万物を支配するという意味」って俺様が言ったらそのまま採用になった、どうしてだよ。
「……よし、こんなもんだな。俺達の門出だ」
「良いんじゃないの〜? てかこれ企画としても面白いし、YouTubeならちょっとした空き時間にも撮れるし別に積極的にリアイベしなくて済むから俺達でもやれるし」
「ま、それはそうだな。全員見知った仲でもあるから楽に臨めるしな」
一つ言えるのは、まあ下手な負担やら何やらが無いから気楽という事くらいか。
仕事の調整もしてくれるらしいし、そこまでして見たかったなら仕方ないからやってやろうじゃないか。
旅費も経費で落ちるからな!
「つーかケン、もう何曲か仕上がってんだろ?」
「まあね。だからすぐにでもMV撮りに……もとい、遊びに行く事は可能だ」
「流石もっさん、最高だよ」
「んで、どこ行くよ。折角のバカンスだぜ?」
もうすっかりバカンス気分である。
そんな俺様も気ままに仕事と称してバカンス出来るのは悪くないし、はてさてどこにするかな。
「とはいえ初手から海外はやり過ぎだろうな」
「となると行くなら沖縄、宮崎、鹿児島の三択かな」
「沖縄は遠いしあんまりゆきに会えないのも寂しいから宮崎か鹿児島が良いな」
「うげっ、鹿児島は勘弁してくれ……島津んとことは一度揉めてんだよ」
閑話休題にはなるが、鹿児島の大手プロダクション島津プロダクションとカミキプロダクションはちょっと揉め事があって行きたくない。
俺様自身は何も関係無いんだが、あそこ戦国時代からの薩摩藩DNA過ぎて巻き込まれないとは言い切れないからなあ。
「あーらら、それなら宮崎で決まりかね」
「だね」
正直言って宮崎がバカンスと言えるかどうかは微妙なところだが、こういうのは気分が大切だからな気分が。
2泊3日くらいしてゆっくりMV撮影してくるとするか。
……そういやかな達がMV撮りに行く県ってどこだったっけか。
まあ流石にいくらなんでも宮崎が被るなんて事にはならないだろうから良いけど……いや大丈夫だよな?
何だか少し嫌な予感がしたが多分大丈夫だと言い聞かせるのだった。
「今ガチから……もう半年くらい経つのかな? 色々あったけど、あの番組楽しかったよね」
「アクアくんやかなちゃんと一緒にいる間は、まだあの時間が続いてるみたいで楽しかったな……」
寒空の下でそう呟く黒川あかね。
隣を歩くは星野アクア……これは今まで偽装カップルとして過ごしてきた2人の関係性に決着をつける為の話だった。
「俺は……いつまでもあかねを縛っておくのはダメだと思ってる。これは番組の形式上で始まった関係で、本物じゃないから」
「そうだよね、本当の恋人じゃないもんね。キスだってあの番組でしたあの一回きりだし、手だって一度も繋いだ事……」
「……こんなの、不自然な関係だもんね。だから何れこうなる事も、分かってた。それに……こんな中途半端に続けてちゃ、かなちゃんが可哀想だもんね」
お互い、優しいが故の苦しみだった。
片方は今まで縛ってきたからと、片方はそれを大いに理解していて、恋敵は自らの憧れであり親友でもあるからと。
「私はもう、必要ないよね? ……何かの役に立てた?」
「知ってるよ。君は私が何かしらに利用出来そうで側に居た事くらい」
彼女は悲しそうな笑みを浮かべる。
全て分かっていたと言わんばかりに、全て知っていて尚それでも諦められなかったと言わんばかりに。
そして……
「ねえ、ここ覚えてる? 私が誘拐された時、君はここを見つけて助けてくれたよね。私ね、きっと一目惚れだったんだよ? 絶望してた時に真っ先に来てくれたヒーロー、それがずっと気に掛けてくれていたアクアくんだったって。本当に格好良くて、こんな人が私の王子様になってくれたらどれだけ良かっただろうって」
「だからね、偽物のカップルだったとしても幸せだったんだよ? アクアくんと私と……時々かなちゃん。大好きな人とのデートは、分かっていたとしてもずっとこんな時間が続いてほしいと思うくらいで」
「……ねえ、アクアくん。分かってると思うけれど……かなちゃんは君の事を異性として気にしてると思うんだ。今はまだそれが恋だって気付いてないだけかもしれないけど、多分それって私達がこうしてカップルしちゃってるからだと思うし」
「……だから、ね?」
そして彼女は、だからこそ全てを諦める決断をしていた。
幸せであったから、夢の様な時間だったから、もうこうなった以上夢から覚めるべきなのだと。
きっと自分の好きな人の矢印は、自分には向いていないから。
「…………お願い」
「私を、振って」
次回!『嫌な予感っていつもそうだよな!俺様の事なんだと思ってるんだよ!』
「……どうして宮崎にB小町が?」
「え? そりゃB小町の撮影は宮崎でやるからよ? てかアンタらも撮影? 何かアイドルになったとか聞いたけど」
「あっそっかぁ……」
黒川あかね
自分の気持ちに明確に気付いている&かなに狂信しているせいでめちゃくちゃ展開が重たくなっている
この後どうなったかはまた後ほど(早く和かな見せろと言われ出したし筆者としても名前からしておわかりの通りだしそっちの方が書きやすいのはある)
AtoZ
本来和也達にアイドル活動させる予定は微塵も無かったが話にツッコミどころと宮崎旅行に行く理由付けとして起動させた舞台そ…グループ
ネット活動がメインだが音楽祭レベル以上の大きな企画やMステにはグループとして出演する
島津プロダクション
旧薩摩藩/現島津財閥の家柄がやってる鹿児島最大手芸能プロダクション(かぐや様は告らせたい世界観要素)
数年前『薩摩出身東京住みアイドルをどっちのプロダクションで育てるか』で激しく衝突し島プロが強奪した為危うく神プロ側が武力行使に行きかけたという和也からしたら傍迷惑以外の何物でもない内紛を起こしている
そもそも薩摩と江戸って仲悪いからね、仕方ないね