最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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第五章開幕


第五章 重なり始める過去
『届かなかった願い』


「そっか。……そう言えば、なんでそんな難病の子とメッちゃんが交流してたんだ? メッちゃんも子どもの頃病気がちだったとか?」

 

「ううん、そういう訳じゃなくてね。……この話が本題になってくるの」

 

 メッちゃんが重々しそうに口を開く、それはまた懐かしそうな表情でありどうしてそうなってしまったのかと悲しんでるような表情になっていた。

 俺様はその顔を見て、何か声を掛ける事は出来なかった。

 してはいけないと、思ってしまった。

 

「私の実のお父さんはね、お医者さんだったんだ」

 

「……育ててくれたお父さんは、また別って事だよな? 聞いた話のお父さんは、亡くなるまで会社員って聞いてたから」

 

「うん。実のお父さんとママは結婚してないんだ。ママの方が『彼の夢を邪魔しちゃいけない』って身を引いたんだって……それでも、私の事を実のお父さんは認知してくれた」

 

 複雑な話だが、お母さんの話も何となくだが分かってしまうようなところもあると感じてしまった。

 それこそ俺様じゃそこまでいった事は無いから大半は想像になるが、誰かを愛しているという点では全く理解出来ないという訳でも無い、そこがまた複雑にさせているのだが。

 

 そして実のお父さんの話……それでも認知してくれたというのはそれだけその人の事を愛していたんだろうしメッちゃんの事も愛していたんだろうなと感じた。

 良い人だったのだろうとそれだけで分かる。

 

「お父さんの方は結婚したかったみたいなんだけどね、俺は男として責任を取らなくちゃならないんだーって。だからなのか、私にはとっても優しくて。働いてる病院にも定期的に遊びに行ってて……ある日、そこでたまたま偶然さりなちゃんと出会ったんだ」

 

「なるほど、そういう経緯で出会ったのか」

 

「本当は会わせたくなかったって言ってたけどね……その時点である程度の余命がもう宣告されてたから」

 

「医者としちゃそうだろうな……」

 

「その時お父さん研修医だったんだけど、さりなちゃんとは趣味が同じで仲良かったみたいでさー。まあそれがB小町だったんだけど、私もさりなちゃんとお父さんの影響でB小町好きになったんだよね。だから仲良いから余計、どれだけ苦しんでるかも知ってたから会わせたくなかったって言ってて」

 

 確かに医者としては、まだ5歳程度の実の子にそんな辛い思いさせたくないと感じてしまうだろう。

 仲良くなったら別れが辛くなってしまうから、5歳の子どもに背負わせるにはあまりにも重過ぎる事だから。

 

「さりなちゃんは初めて会った私にこう言ったんだ。『もしも私がすぐ死んじゃうかもしれないって言われていたとしても仲良くしてくれる?』って。本当はそれで訳も分からずに立ち尽くしたり離れてくれたら良かったって話してたんだけど、私は『もしも死んじゃうとしてもなかよくしたい!』って言ったんだよね」

 

「……5歳で良く言いきれたな」

 

「ママから、お医者さんがどんな仕事か聞いてたからね。ちびっ子ながら必死に理解して、そして出たのがこの言葉だった。お父さんもそんな言葉聞かされたら止められなかったみたいで、その内3人で過ごす時間が増えて、お父さんも凄く優しくて……楽しかったんだ」

 

 ……俺としては、この後の言葉をあまり聞きたくなかった。

 ここまで話されて察するなという方が無理がある、何せ「メッちゃんのお父さんは宮崎の病院で働いていた」という事になる、そしてこの落ち込み様……全てが合致してしまうのだ。

 

「さりなちゃんが亡くなってからお父さんは産婦人科医になったんだけどね。4年後くらいに、お父さんが行方不明になったって聞いたんだ。それも担当していた患者さんの出産予定日の前日に」

 

「…………この前の宮崎で見つかった遺体、お父さん……だったんだぁ……」

 

 そしてその言葉は、俺が危惧していた事を現実としてしまった。

 そう、宮崎で見つかった白骨遺体……あれは医者のものだった。

 白衣を着て、胸元には医者としての名札を付けて……そう報道されていた。

 

「ママがね、教えてくれたの……悩んだけど、知っておくべきだって」

 

「もう……17年弱も会ってないお父さんの事、教えてくれたの……」

 

 今にも泣きそうな顔をしているメッちゃんの事を、俺はどうする事も出来なかった。

 人生で初めての友達を亡くし、育ててくれた父親を亡くし、そして実の父親もずっと前に死んでいた事が分かって。

 

「あはは……ほんと、なんで私の思い出ってこんななんだろ……」

 

「……んな、悲しい事……あんのかよ」

 

 ただただ、俺はそうやって言う事しか出来なくて。

 

「私ね……アイドルになりたかった理由があるんだ」

 

「あ、ああ……確か、アイに憧れてたんだっけ。それ以外にも……あるんだな」

 

「うん。アイドルになれば……どっか行っちゃったお父さんが私を見つけてくれるんじゃないかって。本名じゃないけど、顔付きも変わってないしさ。お父さんなら見つけてくれるんじゃないかって……」

 

「メッちゃん……」

 

「……見て、ほしかったなあ……私がアイドルしてるところ……褒めて、ほしかったなあ……」

 

 ただただ、泣いてる女の子を見過ごす事だけは出来なくて。

 気持ちなんて真の意味で理解出来てるはずが無い自分が触れて良い訳無いとか、そういうノイズを頭を振って消し去りそっとメッちゃんの頭に手を置いて静かに撫でる。

 俺に出来る唯一の慰めはきっと、これしか無いから。

 

 見かねた店主が「サービスだから」とドリンクを一杯ずつ置いていってくれたのが多少救いになっただろうか、やはりそういう、重たい話をしていく人を沢山見てきたのだろうと分かる。

 もう少し俺様としてもそういうセンスのあるフォローが出来れば良かったんだがな。

 

 取り敢えずそんな慰め方が下手な自分に呆れつつ、それでも撫でている事しか出来ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとね、和也」

 

「つっても俺様は話聞いて頭撫でるくらいしか出来なかったけどな」

 

「良いよそれでも、慰めてくれたのには違い無いし。てかそれ以上したらかなに怒られるでしょー?」

 

「それだけなら良いがな、二度と口聞いてくれなくなるかも知れない」

 

 BARを出て数分、すっかり落ち着いたのかいつものメッちゃんになった感じのする彼女は結構な軽口を叩けるまでになっていた。

 俺様としてもこっちの方がしっくり来るし明るくてみんなのムードメーカーで癒し枠してるのが何より合うと思っているから安心した。

 

「ふふっ、それはダメだね〜?」

 

「まあな」

 

「……ほんとに……ありがとね」

 

「まあ、こんなんでも少しでもメッちゃんの心が鎮まったってなら素直に受け取っとく」

 

「ママ以外の誰かに聞いてほしかったんだよね。でも親しいと話して良いのかどうかも分からなくて……だから、和也が手を差し伸べてくれて嬉しかったんだ」

 

 済まないもっさん、この笑顔は多分受け取っちゃならなかったんだろうけど受け取っちまったよ。

 この埋め合わせはいつかちゃんとしてやるから許してくれ、そう内心で手を合わせて叫ぶ。

 

「俺様に話してみて、他の誰かに話す気とかにはなった?」

 

「う〜んそうだねえ……和也に話したのは言わないと思うけど……ケンになら……良いかな? 誠実で真面目な子だし頼りになるカッコイイ子だしね。……それに……」

 

「ん? どうかしたか?」

 

「あ、ううんっなんでもないっ」

 

「……? そうか。確かに俺様から見ても付き合い良くて物事をしっかり見れる人間だと思ってるから最適かもな」

 

 ありがとうメッちゃんそこでもっさんを選んでくれて、これで俺様は罪悪感から逃れられる。

 何ならそのままそれとなく付き合ってくれ、もっさんもこの春に高校卒業するんだし19と26なら付き合っててもそこまでおかしくないだろうさ。

 

 応援してるぞ我が友人。

 

「だよね、だから一応この話を知る予定になるのはママ以外だと和也とケンだけになるのかな、今のところはだけど」

 

「あんまりおいそれと話す事でもねえからな、こういうのは」

 

「話してるこっちもしんどいからね……それに、あの日からどうしてもルビーの表情って言うのかな、ずっと暗くて。出来上がったMVのルビーとか魅力的ではあったんだけど『らしくない』感じだったし」

 

「……あの日からずっと?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、何かが引っかかった。

 何かは分からない、だが本来なら気付けるはずの何かを見落としているそんな気がしてならなかった。

 

「うん、やっぱりショックが大きくてトラウマになっちゃったのかなあって。だから私のお父さんだって言うと更にショック与えちゃいそうで……尚更言えないかなと思ったんだ」

 

「ふむ……?」

 

「どしたの?」

 

「あー、いや、多分気のせいだ。問題無い……はず」

 

 自分に言い聞かせる様に一つずつ言葉を踏みしめる。

 そうだ、この話を聞いたせいで神経質になり過ぎてるだけだ、そうに決まっている。

 

「なーに? 歯切れ悪いぞ〜」

 

「いや、ちょっと考え過ぎなだけだ。それより元気になって良かったよ 」

 

「お陰様でね〜。今度余裕出来たらこのお礼はワールドシアターの分と一緒に何か奢るよ」

 

「はは、そりゃ有難い」

 

 表情とは裏腹に、俺様の心は晴れないまま帰宅したのだった。




MEMちょ
雨宮吾郎の実の子供
父親の生まれ変わりはすぐ近くにいるんですよ

星野アクア
実はメッさんが実の子という事に気付いてなかったりする


MEMちょ雨宮吾郎の娘概念
某あにまん掲示板で7月初頭に大きく話題になったトンデモ概念
ゴローの女遊びしてた性格とメッさんの年齢上整合性が合致してしまい奇跡的に辻褄が合ってしまう為に掲示板で話題となっている
本作ではその中でも派生概念の『MAMが出産した事を知っている(認知している)』『さりなちゃんと仲が良かった』を採用、更にアイドルになりたかった理由を追加している
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