最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
『今回はワールドシアター総合主演男優賞を見事史上最年少で受賞された無道和也さんにお越しいただいています! ワールドシアター・アクション部門、恋愛部門、そして総合主演男優賞受賞おめでとうございます!』
「フハハ! ありがとうございます!」
『今のお気持ちを、是非お聞かせください』
「俺様としては昨年度のアクション部門助演男優賞が初めての世界への挑戦だったので、一年でここまで成長出来た事、即ちここまで引き上げてくださった製作陣の皆様には頭が上がりません。そして『共にこの賞を取ろう』と言ってくださった五反田監督と共に受賞出来た事、感無量の思いです」
「和也……お前ぇ……!」
ワールドシアター受賞式典当日、俺様はニューヨークにいた。
同日にはロサンゼルスでアカデミー賞の受賞式典もあるが十代で取れるとは思っていないだけに学生で取れる最大の栄誉はこれだと認識している。
それだけに二部門での同時受賞、そして文句無しの総合優勝……もといクリスタルシールドは言葉通り感無量の一言だ。
更に言えば、ずっと名作を作りつつも中々評価されてこなかったかなの恩人の1人でもある五反田監督と共にこの壇上に上がれている事が何よりも嬉しい。
アイツを助けてくれた事の恩をいつか返そうとしていたからな、それをこういう形で返せたというのは一番の恩返しになるのではないだろうか。
これで後は何かめちゃくちゃする嫌な予感だけ払拭出来れば完璧だ……
『今同時刻ロサンゼルスでは姫川大輝さんが史上最年少でのアカデミー賞主演男優賞を獲得されました、日本勢による、そして映画史に残る2つの式典での史上初の快挙に付いて一言お願いします!』
「…………はい?」
そう、この嫌な予感だけ回避出来れば……良かったんだ……どうして……どうしてこんな事に……
「和也〜ワールドシアタークリスタルシールド獲得おめでとう〜!!」
「ありがとな、かな」
「何よ、素っ気ないわね。そんなにあの人にオスカー取られたのが気に食わないの?」
「そりゃそうだろ! あの日俺様が日本で一番輝く存在になるはずだったのに……! ワールドシアター主演男優賞のクリスタルシールド史上最年少なんだぞ……! どうして姫川に持ってかれないといけないんだ……全ての速報を……!」
帰国し数日、この日はかながどうしてもお祝いしたいと2人で個室のあるちょっとお高い店に来ていた。
だが俺様はかなには悪いがそこまでテンションを上げる事が出来ないでいた、理由は間違いなく全ての速報を姫川に持ってかれた屈辱のせいだった。
姫川の事はまだまだ超えられない壁だとは思ってはいる、思ってはいるが何も俺様の栄誉をここまでしなくても良いじゃないか……!
「あーはいはい、アタシにとっては和也が世界一の役者だからね〜よしよし」
「そう言ってくれんのはお前だけだよ……」
酒みたいにソフトドリンクを飲み干してはダランと背もたれにもたれ掛かる。
こんなしょうもないだらけた姿見せられるのはかなにだけだよ……
姫川大輝……俺様はいつか必ずお前を超えるからな……
「もーだらしないわねぇ。はい、あーん」
「あー……ん、あーこの時間が至福過ぎる……」
「アンタアタシの事好き過ぎない?」
「……そりゃ大好きな幼馴染だからなー。家族よりも家族してるようなもんだし、一番心許せる関係じゃん?」
「ほんと良くサラッとそんな事言えるわね……まあアタシとしてもそれには同意するけどね。和也以上に心許せる相手っていないもの」
決意を胸に、俺様はかなのあーんを享受する。
……幼馴染ならこれくらいするよな? ってルビーちゃんに昔聞いた事があるがとても宇宙猫な表情をしていた事を思い出す、あれは一体何だったのだろうか。
そんなに不思議な事だったのだろうか。
「だよなあ……はぁ。食い終わったら適当にぶらつきながら帰るか」
「そうね。本当ならデートしたいところだけどあんまり撮られてもファンも良い気分しないものね」
それはさておき、こうやって死ぬ程だらけていても俺様達はプロだからな。
人目が付かないここではこんなイチャイチャしててもそこから出たら一応弁えた行動はしないとならない。
2人きりで出歩いてるだけでも普通なら大炎上ものなんだがな、幼馴染として過ごしてて良かった。
「……うし、帰るかー」
「ほんとはもっといたかったんだけどね、仕方ないか」
それは俺様としても同じ気持ちだがなあ。
惚れた女とデートだぞ、相手に気取られてないだけでこっちからしたらガチデートなんだからな。
……まあ、そんでもアクアの事が好きだってなら後押しするんですけどね。
会計して外出て取り敢えず帰って……
「あ、アクア……とあかねちゃん」
「おいマジかよなんでここで出会すんだ」
「……かなちゃん!」
「なんだ無道、2人してデートでもしてたのか」
「お前の思ってるデートではねえよ」
って言ってるそばからどうして遭遇するんだよ、しかもあかねちゃんと一緒にいるし。
あーあもうかなの顔がめちゃくちゃ曇ってきてる……こういう顔見たくねえんだよな……
「そうか」
「んで、アクアはなんだ? あかねちゃんとまだお仕事上の付き合いしてんのか?」
「ううん、それは無いよ」
「……そうなの?」
おや? てっきりまだアクアが煮えきらずに付き合いを続けてると思ったんだが……あかねちゃんの言葉を聞くにどうにも関係性に変化があったみたいだな。
これは……光明あったか? というか今日があの作戦を実行に移すなら最適なのでは?
ならばやるしかなかろうて。
「私達ね、別れたの」
「ああ。中途半端な関係のまま続けるのはあかねにも……有馬……いや、かなにも悪いと思ったからな」
「……! アクア、今アタシの事名前で……」
「なんだ、悪いのか」
「ううん……嬉しい……」
成程、別れはしたが大方それはそれとしてまた恋を0から探していくとかそういったものだろう。
そしてそういう事でフェアプレーにする為にかなの事も名前で呼ぼうと決心したと……やるじゃんアクア。
「なんだアクア、0から恋探しでも始めたか?」
「まあ、そういう事だ。今までの関係はあくまでも仕事上の延長線上、あかねから切り出されたのもあるからこの際にと話し合って決めたんだ。また0から関係を始めて誰を好きになるか探したい……かなの事も、その中に入っている。自分で言うのもどうかと思うが、あまり良いムーブとは言えないが……」
「……ほんと、アンタはほんと不器用よね。でも……うん、それならアタシも自分の気持ちにちゃんと決着付けないと……よね。中途半端な気持ちにしっかり答えを見つけないと」
「かなちゃん……私、真正面から勝負したい」
「臨むところよ!」
うーん青春、かなとあかねちゃんは親友だから真正面から正々堂々勝負してケリを付けたいんだろう。
それ自体は美しい友情だな……俺様がジョーカーカードを使う事を除けば……だがな。
「ところでアクアクゥン、ちょーっとお話したい事があるんですよぉ。あ、かなとあかねちゃんもこのままで良いからさ」
「……なんだ、その胡散臭い言い回しは」
「胡散臭い? 俺様は素晴らしい提案を持ってきたんだぜ? 聞かなくて良いのか? 少なくとも3人に利点しか無い話なんだがなあ」
「アタシ達にも?」
「利点が?」
アクアは怪訝な顔をしているが2人は食い付いてきたな。
釣れた……ニヤリと心の中で勝ち宣言をする、これならアクアが引き気味でもかなとあかねちゃんで押し切れる可能性が高い。
後は提案するだけだな。
「そう、この世の中は結婚という言葉に縛られ過ぎている。確かにこの日本は一夫多妻制ではなく一夫一妻制だ。だが、だからといってハーレムが出来ない訳では無い、違うか?」
「……何が言いたいんだ」
「つまりだよ、結婚というところにこだわりさえ持たなきゃ別に『恋愛感情さえあれば勝負なんてしなくても良い』んだよ」
「いやそれは倫理観ぶっ飛び過ぎだろ」
アクアに突っ込まれるがそれは極論どうでも良い。
大事なのはかなとあかねちゃん、この2人なんだから。
「――和也くん」
あかねちゃんが最初に口を開く。
「流石に倫理観とか常識感とか少し疑うけど、それを全て飲み込めるくらいには魅力的かも……!」
「だろ?」
「あかね、お前は何を言ってるんだ?」
最高の答えだった。
そう、あかねちゃんがこの提案に勝てるはずが無いのは最初から分かりきっていた、何せアクアの事もかなの事も大好き……最早どこまで好きかとか聞いたらとんでもない答えが帰ってきそうなくらいだ。
「ちょっと待って和也、アタシはまだ気持ちに決着を付けられた訳じゃ……」
「だから、これは2人が同じ方向を向いた時の話だ。万が一そうならなかったらそん時は聞かなかった事にすれば良い」
「そ、そっか……じゃあなるべく早く決めないと……」
「どうしてお前まで言いくるめられてるんだ? 俺の言い分は無いのか?」
「バッカお前、今まで散々2人の気持ち宙ぶらりんにさせてきたんだからそれくらいの恥、両者がOK出してるんだから受け入れるべきだっつーの。それに何もお前の気持ちを無下にしてる訳じゃない……上手くいけば2人とも好きになれるから言ってんだよ。な? 悪い話じゃないだろ?」
「…………確かに、今まで全然向き合って来なかったな、そういう気持ちと。良いとは言わないが……考えておく」
計画通り、アクアも99%落とした。
これで星野アクアハーレムルート開通だ……ククク。
さて、自分のメンタルが何れ死ぬ時の為にちょっと寺関連の仕事貰ってくるか……
無道和也
役者としては超一流まで登りつめたが恋愛は分かってて自滅していくド下手くそ。だがあーんはしてもらう
ちなみに半バイリンガルであり英語のリスニングが完璧、話すのは日常会話なら可能だが大舞台では微妙なニュアンスを間違えたくないので通訳者を介している
五反田泰志
40を過ぎてようやく大きく日の目を浴びたかなの恩人である映画監督
製作費用があまり掛けられないが故の素朴さが和也の演技を光らせたという事で恋愛部門で最優秀賞受賞に至った
和也のスピーチを聞いて年甲斐も無く号泣していた
二つ名は『世界一の子ども部屋おじさん』