最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
俺様には関係の無い話、そう言われたら「ずっと前から知ってるし、何ならなんで俺様が巻き込まれてるのか意味不明でお手上げだ」そう答えるだろう。
東ブレの稽古の時アクアが倒れたあの日以降、事ある毎に俺様にだけ親しい人物の過去や秘密なんかの情報を事故や相談で手に入れてしまっている。
何故かは分からない、どうして俺様がアクアより先にアクアとルビーちゃんの父親のアテを付けられてしまったのか、どうして亮介より先に雨宮吾郎の実の子どもを見つけてしまったのか、どうしてメッちゃんより先に父親にあげたたった一つのボールペンの行方を知ってしまったのか。
全くもって分からない。
だが、知ってしまった以上繋げてやらないとならない。
知らない人間の事ならそれとなく誰かに情報を渡して降りる事も考えた、だが知ったのは大切な友人と大切な兄貴分の話。
ならば降りられる訳なんて無い。
「ま、元よりこの件から降りるなんて選択肢俺様には無いがな」
死んだ人間は生き返らない、だが思い出はいつまでも生きている。
だから、たった一人のガキだと言われても良いし偽善だと言われても良いから、俺様はこれをやり遂げる。
そう、決意したんだ。
「和也? 珍しいよね、私だけを呼び出すなんてさ。しかもこのBARだなんて」
「ああ、話したい事があるからな。――マスター、悪いけど今日も大丈夫だから」
「構わないよ、自由に過ごしてくれたら充分」
「ありがとう、成人したらここでマスターのカクテルを頂くよ」
「はは、そりゃ楽しみだ」
この話に関しては間違いなくここで話すに限る、ちなみにメッちゃんは前回会員になっている。
お互いドリンクを口に含んで喉を潤わせたところで、こちらから話を切り出す。
緊張はするが、これくらいなら問題無いはずだ。
「さて、今回ここに呼んだ理由だが……あー、その前に一つ、聞きたい事がある、良いかな?」
「この前は沢山話聞いてもらったからねー、良いよ良いよ」
「君のお父さん……実のお父さんの方だ、雨宮吾郎さんにメッちゃんは何かプレゼントを渡した記憶ってあるか?」
「え、実のお父さんにかぁ……結構色んなものあげてた気がするからなあ……」
ここでペンの話が出てきたら一気に本題まで行く、中々出てこなかった場合じっくり掘り出せる様に誘導する、どちらにせよ20年前の記憶だからかなり賭けにはなるが……どうだ。
「あ……そうだ。仕事場でも使える様にって、アイちゃん仕様のボールペン……誕生日にあげたんだった……懐かしいな、私とさりなちゃんとお父さんでお揃いのボールペン、とても喜んでくれて……凄く優しい笑顔してくれてたっけ。……ん、そう言えば、なんでそんな事聞いてきたの? あかねが話してた遺留品の中には入ってなかったはずだけど」
よし、完璧にビンゴ。
この場合に置ける亮介の話してた『妊娠してたアイドル』がイコールアイになって話の全てを繋げた結果ほぼほぼアクアとルビーの母親がアイで決定的になり俺様のSAN値が思いっきり削られた以外は何も問題無い。
これで取り敢えず繋げる事が出来るんだから。
「……ここから俺様はめちゃくちゃ真面目な話をするから、真剣に聞いてもらいたい」
「う、うん……」
「もしも、もしもだ。……そのお父さんにあげたボールペンが何処にあるか知ってるって言ったら……どうする」
「……え」
メッちゃんはそう言ったきり口を開けたり閉じたり、何か話したいのだろうが言葉が見つからない様な素振りを見せる。
それはそうだろう、もう見つからない、そう思っていた実の父親との繋がりをたった一つと言えど『何処にあるか知っている』そう言われて気が動転しない人間など存在しない。
俺様は決して急かしたりせず、ただ見つめながら待つ。
これは、彼女が決める事だ。
もしもトラウマになるから嫌だと言うなら、この話は全て無かった事とする。
だが、求めると言うのであれば――
「ほ、本当に……? お父さんの……?」
「間違いない。何せそのお父さんに庇われて命を救われ、ボールペンをいつか娘に届けてやってくれと頼まれた張本人から聞いた話だ」
「……っお父さん……最後まで、誰かを救おうとしてたんだぁ……本当に……自慢のお父さんだなあ……」
「もしも会いたいと言うなら、掛け合ってみる」
「――お願い、して良いかな……お父さんと私の、多分唯一の繋がりだからさ……」
求められたのなら、断る理由なんてどこにも無い、そうだろう?
「分かった、そいつの話じゃいつか必ず渡すと言っていたから万が一にも失敗する事は無いはずだ。期待して待っていると良い」
「ほんと、何から何までありがとうね……和也ぁ」
「気にする事は無い。大切な友人と……そして、もう一人の方も、俺様にとっては家族同然の存在なもんでね。そういう人達の想いを聞いちまうとどうにも唯一どちらの話も聞いた俺様が思い出と、共通の思い出の品を持ってる2人を引き会わせてやるべきだと思い至った、それだけの事だ」
「ほんと、そーいうとこがモテるんだよねぇ……和也じゃなかったら私も惚れてたかもね〜」
「相変わらずメッちゃんは口が上手い」
その後少し飲んで他に持っていた雨宮さんの遺留品なんかも聞いたりして解散したが、目を閉じれば先程見たメッちゃんの、最期まで医者として誰かを救おうという信念を聞いた時の泣いていた顔を思い出す。
あんな顔見せられて、やる気出さねえ男なんていない、そうだろう無道和也。
さあ、ここからが本番だ。
「なんだ、またこっち来たのか」
「今日は話をしたくてな」
「話? 俺とか……珍しいな、わざわざそう言ってくるのも」
「そうかもな」
連日の実家帰りともあり、亮介にも不思議がられているが今日ばかりは譲れない事があるからな。
あくまでも昨日は『知り合いの話』として聞いていたが、あのボールペンの話を聞かされてそれだけで、傍観者で終われるはずが無い。
「で、何の話だ?」
「……昨日のボールペンの話だ」
「ああ、知り合いの話の」
「もしもだ。雨宮さんのその実の娘を俺様が知ってると言ったら……」
「それは本当か!?」
拒否されたりはぐらかされる可能性も僅かながらに考慮した、何せ昨日はぼかしを入れた話だったのだそこを考慮しない訳が無い。
だが言った途端物凄い剣幕で俺様の肩を掴んできた、最早優先順位はそっちの方が上なのは明白だった。
「元々ちょっと前に、宮崎で見つかった白骨死体が自分の父親だって知らされてな。その話を俺様にだけしてきたんだが……亮介の話と完全に合致したからボールペンの話をしたらビンゴだ」
「あぁ……あぁ……そうか、そうかぁ……いてくれたんだな……それも、近くに……ありがとう……和也……」
「……良いさ。俺様の友達と、そして兄貴分の大切な人の事だ。協力するに決まってるだろ。……ま、知った経緯は偶然に偶然が重なりまくった結果だがな」
「それでも良い、もう知り合いの話なんて誤魔化しもしない、ただただ見つかって良かった……本当に良かった……ゴローの形見……その片割れを本来あるべきところに返せた、それだけで……」
これで全て解決だろう……というところで少し引っかかる言葉が聞こえた……片割れと言ったか?
「……雨宮さんの形見はもう一つあったのか?」
「そうだ。それは死んじまった大切な人から貰ったもんだから死んでも持ってるって言っててよ。『アイ無限恒久永遠推し!』って文字の入ったステッカー型のキーホルダーだ」
「なるほど……あ、取り敢えずその子には後で連絡取って空いてる日程聞くから。亮介の方も大丈夫な日教えてくれ」
「分かった」
アイのキーホルダー……おかしい、さっきメッちゃんから聞いた話の中の遺留品には少なくともそんな類の物は無かったはずだ。
だが『死んでも持っている』そう言うくらいに大切な物で、この17年弱ずっと見つからなかった遺体だ、何処かに行くなんて可能性はほぼ0に近い。
……待てよ、雨宮さんの第一発見者はルビーちゃん……何かが繋がりそうな気がする、そしてそれを知ったら恐らくもっとSAN値が削れそうな事も分かっている。
取り敢えずこっちは後回しだ、今は……そうだな、メッちゃんに連絡取って日程、聞いておかないとだな。
「えと……その、貴方が……お父さんの……?」
「……君のお父さんの事、守れなくてゴメンな……本当に……ゴメンな……」
「ううん、大丈夫ですよ。死んじゃってたのは悲しいけれど、誰かを守って、最後までカッコいいお父さんのままでいてくれたって貴方が教えてくれたから。それよりも、そのボールペン、持っていてくれてありがとう……ございました……!」
「こっちこそ……ゴローの娘がこんなに大きくなってたと思うと……感慨深いもん感じちまうよ……」
そっと手渡される、アイのボールペン。
それをメッちゃんは心の底から大切そうに、ギュッと胸の前で抱え込むようにして包み込む。
メッちゃんも亮介も、憑き物が落ちたみたいに微笑むその姿を見て、やはりやって良かったと思うのだった。
Q.ルビーは?
A.それやると本誌122話までループするんだよ…
Q.本誌の話にはいつ戻るの?
A.もう少しで一気にコスプレ当日までループします
亮介「……ところで知り合いの話と誤魔化せなくなった訳だが」
和也「ああ、妊娠してたのがアイだったって言う」
亮介「絶対秘密だからな!?今回恵美ちゃんの為に言っただけだからな!?」
和也「分かってる分かってる」
和也「(多分父親関連でこの話使わないと行けない時が来るんだろうなあ……ま、その時は亮介も巻き込めば良いか……)」