最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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???「そりゃあ都合良く世界が改変させられたら都合の良くない代償も出るよね?君にその代償を背負う覚悟はあるかい?世界を変えた、歪んだ世界の運命を背負う事が出来るかい?――『都合の良いイレギュラー』さん……」


『変わる運命、それは世界の歪み。そしてその代償は』

「無道君、今日はまだ大きい撮影はある?」

 

「いえ、今日はあとこの現場だけになります」

 

「それじゃこっちは後は細かい撮影だけだから帰って大丈夫」

 

「え? ですが俺様の出番はまだ……」

 

「それは後日でも行けるから。それより幼馴染の事見てやんな。ほら行った行った」

 

「……すいません、ありがとうございます」

 

 かなの事はあまり話したくない事ではあったが流石に『最近再ブレイクしている』アイドル兼女優だ、今日も本来は仕事があったがそれを延期する為に話さざるを得なかった。

 だがそれも別に悪い事ばかりではない。

 こうして事情を知ってる監督に優しく『早く帰ってやれ』と言われ、いつもより早く帰る事が出来た。

 ならばまあ、これもまた悪くない事なのだろう。

 

「感謝しとかないとな」

 

 いつもよりも何時間も早い帰宅とあり何かかなに買っていってやろうと今日は徒歩での帰り、鼻歌交じりとまではいかないがかなの傍にいてやれると思うとホッとしてしまう。

 アイツの好きなハーゲンダッツやら何やら色々買ってってやらないとな……なんて思っていた、この瞬間までは。

 

「お兄さん」

 

「ん? ……なんだいちびっ子、俺様を呼んだのは君か?」

 

「うん、そうだよ。無道和也、君を呼んだ」

 

「おーそうかそうか、さては俺様のファンか何かだな? しかし悪いね、今日は用事があるんだ。今度のファン感に来てくれればサインの一枚でも書いて――」

 

「――本来『星野アイ』は死ぬはずだった」

 

「…………は?」

 

 整った顔の少女、いや少女というにも少し年齢が低そうな子に話し掛けられた。

 最初はただの俺様のファンだと思っていた、何せ目の前に現れて俺様を呼んだと言ったんだ、ならばそうだと思うのは自然だ。

 

 ……だが、それは違った。

 

『星野アイ』彼女は今そう言った。

 その瞬間『コイツは人間では無い何か』だと直感した、いや強制的にさせられたというのが正解か、どちらにせよこの世ならざる存在だと感じた。

 何せ『アイは本名を公開していない』上にそれを知っているのは社長夫妻と恐らく実子だろうアクアとルビー、その他にいたとしても片手で数えられる程の情報のはずだ。

 更に俺様でさえ推測で辿り着いた程度で、確証の無い事だった。

 

 そう、彼女は斎藤夫妻に引き取られるのと同時に芸能界入りしているのだから。

 

 だから、こんな訳の分からない少女が分かる訳が無い。

 だとすれば……そう、辿り着いた。

 

 しかし何よりも『星野アイは死ぬはずだった』その言葉に俺様の脳みそが全力で警鐘を鳴らしていた。

 

 これは異形の存在だと。

 

「有馬かなは本来、もっと傲慢な女の子として育つはずだった。黒川あかねは本来この時期、星野アクアと本格的に付き合っているはずだった。星野アクアは――星野アイを亡くしてもっと壊れるはずだった」

 

「ま、待て……だって全然違うじゃないか……? かなは確かにちょっと傲慢で強気なところはあるが幼少期と比べたら素直で可愛いところが多くなったし、あかねちゃんとアクアは付き合ってないし、アイは死んでないじゃないか? お前は何なんだよ……誰なんだよ……何を……言いたいんだよ……」

 

「この際ハッキリ言うけれどね……無道和也、君は本来存在しないはずの『イレギュラー』なんだよ」

 

「どういう……事だ……?」

 

 この少女の形をした異形の言葉に、たじろいでしまう。

 気付けば周りに人の気配も無ければ物音もしない、さっきまであんなに雑多とした空間だったのに、だ。

 これは何なんだ……しかも今見ている現実とは全く違う事を言ってきているし、何なら俺様が『イレギュラー』だと?

 ほんと何なんだよコイツは……

 

「どういう事と言われてもそのままの意味だよ。君の魂はこの世界に生まれる事は絶対に有り得なかった。そしてその世界こそこの世界の『正史』、正常に世界が動いていくはずだった。でも君は生まれてしまった……いや、正確に言えば『生まれる事になってしまった』、無道和真と浦和美乃、君の父母が幼馴染として出会ったその時点でこの世界の歯車は狂ってしまった」

 

「俺様が本来生まれる事が無かった存在? だとすればかなへの愛が強過ぎたんだろうよ……生まれる前から俺様はアイツの為に生まれてきた、そういう事なんじゃねえの。あとたとえ世界が変わっちまったとしても、それで救われる存在がいるのならそれはそれで良い事なんじゃないのか」

 

 精一杯の強がりだった。

 俺が本来この世界に必要とされるはずが無かった存在だと認められる訳が無い、そうしてしまえば今まで過ごしたかなとの時間はなんだ? それも無意味だと言うのか? そんな事絶対に有り得ない、有り得ちゃいけないんだよ。

 

「ふふっ、それは私にも分からないよ。でもね……世界がたとえ良い方向に転がったとしても、(ひず)みが出てしまった事には変わりない。そしてこの世界は良い悪いを問わずその歪みを修正し『元の世界に近づけようとする』。これは世界を変えてしまった代償だ」

 

「代償……だと?」

 

「うん、代償。本来星野アイを殺そうとしていた黒幕も元の世界とは別人になってしまった、それもまた『世界の修正』が起こした現象」

 

「……元の黒幕と今の黒幕を教える気は?」

 

「それは無理だね。教えたらもっと世界が歪んでしまう」

 

「……」

 

「ふふっまあ折角ここまで私を邪険にせず話を聞いてくれたから良い事を教えてあげよう」

 

「良い事だと?」

 

「うん、君にとって凄く大事な事さ」

 

 世界の修正……それを聞いた直後に『良い事』を教える、そう言われて嫌な予感がするのは当たり前だ。

 修正力が働いたせいで俺様の近くで何か都合の悪い事が起きるのか?

 ちょっとした事、俺様自身に起こる事なら最悪どうでも良い、どうにでもしてやるさ。

 

 だが……だが、それが、もしも――

 

「星野アイは本来死ぬはずだった、しかし死ななかった。ならば世界の修正力は星野アイ以外を殺しにくる――イレギュラー、君の一番大切な人をね」

 

「――っ!?」

 

 かな、だったら?

 俺様は……俺は……コイツを……

 

「ああ、待って。私は君の敵じゃないんだ、そう敵意を剥き出しにしないでくれないかな」

 

「な……に……?」

 

 しかし、唐突に紡がれたその言葉で肩透かしを喰らった様な気持ちになってしまう。

 ここまで来て『敵じゃない』だと? それを信じろとコイツは言うのか? そんなもの今更信じられる訳が無い。

 

「だって私はこれを君に伝えずに世界の修正力に飲まれる事を見ているだけでも良かったんだよ? それをわざわざ伝えに来た……その意味をもう少し考えてほしいな」

 

「だとしたら何が目的だ」

 

「確かに君は本来生まれる存在では無かった、世界に祝福される存在ではなかった。だけれど君は生まれた、この世界に。なら私は、君の生まれたこここそが、今見ている現実こそが『真実』だと思っているんだ。もしかしたらそれは詭弁で的外れなのかも知れないけれどね、それでも私は『この世界』を見守る存在。『たとえ本来辿る未来とは別物になったとしても、今見ている世界こそが私の世界(現実)。そうであるなら、私はこの世界に仇なし世界の修正を止める為に君に手を貸すべきだろう』そう思ったんだよ」

 

 ……少女の口角は不敵に上がっていた。

 そしてコイツの言っている言葉には、謎に説得力があった。

 皮肉にもそれはコイツが異形だからこそ、ここまでの『敵では無い』という言葉以外の全てを信じられたからこそだった。

 

 ……もしも、本当に敵でないのだとしたら。

 

「……どうすれば止められる、その世界の修正とやらは」

 

「信じてくれるのかい?」

 

「お前を信じるんじゃない、俺様の決断を信じるだけだ」

 

「ふーん、まあ良いや。世界の修正を止めるには、星野アイを未だに殺そうと企んでる黒幕を見つけて捕まえる事と星野アクアを救う事……ま、その前に星野アイの代償として殺されそうになってるイレギュラーの世界で一番大切な有馬かなを救う事、つまりはストーカーをどうにかする事から、だけどね」

 

「……かなはそいつを潰したら世界の修正力にはもう飲み込まれないのか?」

 

「そこは保証するよ。……本来星野アイを直接殺す予定だった亮介が完全に改心しているからね、そこまでしつこくないさ」

 

「……っ、なるほどな……」

 

 確証が持てた、と同時に胸が締め付けられた。

 本来アイを殺すのが亮介だったと思うと何も言えなくなってしまう、あのまま壊れてしまっていたのかと悲しくなる。

 だが、それは止められたんだ……今は、前を見ないとな。

 

「ああ、でも一つ言わないと行けない事があるんだ」

 

「なんだよ」

 

「そのストーカー、完全に改心させるか殺すか、黒幕を捕まえるかしないといつまでも都合良く殺しに来るから。そこだけは気を付けてね」

 

「――ッ!」

 

 今まで飄々とした顔付きだった少女の目が鋭くなる。

 これは本気で止めさせようと言っている、誰に何を言われるでもなくそう確信出来た。

 

 だからこそ、俺様は覚悟を決める。

 

「分かった。お前の事信じるから……裏切ってくれるなよ?」

 

「そう警戒しなくても、私自身はこの世界の運命に干渉出来ない。だからこうして出向いたのだからね」

 

『それじゃあ健闘を祈るよ、無道和也』そう言ってあの少女は一瞬で姿を消した……やはりアレは人間では無い存在で正解だろうな。

 

「……時間、1分も経ってないしな」

 

 取り敢えず今は、気を取り直してかなに色んなもの買ってってやろうと雑多を取り戻した街に消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ、君は大きなミスを一つしているよ無道和也」

 

「……世界の修正力は、代償は、君にも及んでいるという事に勘づけなかった事だ」

 

「――君の受けた代償(肩代わり)は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

(亮介)の『殺意』と主人公(アクア)の『憎悪』だ」

 

 




無道美乃
和也の母親、現在放浪の旅に出ていて消息不明
和真とは生まれた時からの幼馴染というどっかの和かなと似た出会い方をしている
浦和は旧姓である為現在は無道

無道和也
意味の分からない話ばかり聞かされたものの、あまりにも常人が知るはずのない事を知っていたので信じざるを得なかった
目下目標はストーカーの排除だが…?

少女
筆者が本垢の方で推定邪神ネキと連呼してる存在
この世界では邪神どころか守護神と化しているが、『イレギュラーがいようがなんだろうが今見ている世界が現実』と思っているので修正されたくないだけである


代償一覧
・星野アイの殺害→有馬かなの殺害(食い止め中)
・星野アクアの実父への憎悪→和也の有馬母への憎悪
・亮介のアイへの殺意→和也のストーカーへの殺意
・亮介のストーカー行為→???のかなへのストーカー行為
・?????→?????
・黒幕カミキヒカル→黒幕?????

邪神ネキ「ここで一つ解説をしてあげよう」
邪神ネキ「どうして星野アクアの憎悪が代償として成り代わっているか、気にならないかい?」
邪神ネキ「ふふっ、そうさ。この憎悪はあくまで勘違いから引き起こされているものだから。元の憎悪とは似ても似つかないものだからね」
邪神ネキ「さて、彼は無事に代償を乗り越えられるか……見せてもらうよ」
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