最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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6章開始


第六章 代償と復讐
『束の間の平和』


「ムドくん、今日はお仕事とか無いの?」

 

「ええ、流石にオフを取れって事で半強制的に休み取らされましたよ。全く優しい面々ばかりで助かりますが『かなちゃんの傍にいてやれ』だの『たっぷりイチャイチャしてこい』なんて言われるのは少し小っ恥ずかしいですね、はは」

 

「みんなもやっぱりムドくんとかなちゃんの事ラブラブだと思ってるんだね~、お姉ちゃんもニコニコしちゃうな」

 

「世間の幼馴染もそんなもんだと思ったんですけどね。なんか違うみたいですが」

 

「うーん流石に世間の幼馴染を知らなさ過ぎるんじゃないかなあ」

 

「……ライブ配信で視聴者にも同じ事言われましたね」

 

 俺様が本格的に狂ってしまった(戻れなくなった)事を悟ってから一夜明け、それでも表向きには決して悟られない様にと笑顔を貼り付けてこうして日常を過ごしている様に見せかけている。

 

 そんな事はさておき今日は休日だ。

 本来ちょっとした撮影やら会議が入っていたのだが社長から「最近顔色良く無いからちょっと休んだ方が良いよ、それくらいのスケジュール調整なら出来ると思うし。ね、マネージャー君」と言われそこまで言われてしまっては反論の余地も無い上かなの事も見てやれるので甘んじてしっかりと受け入れた。

 なお、その時のマネちゃんは鳩が豆鉄砲喰らった様な顔をしていた事を追記しておく。

 

「……かずやぁ」

 

「んー? どうしたんだよ、今日は仕事ねえから一緒にいてやるよ」

 

「ほんと?」

 

「俺様、かなには嘘付かない」

 

「うれしい、ありがと」

 

「俺様も嬉しいよ」

 

 しかしかなは幼児退行した影響なのだろうか、ものすごく甘えんぼになった気がする。

 いつもちょっとツンデレ気質……とはいえ俺様の前では1:9くらいだが……なかなのこれを見ると正直火力が高過ぎて顔がニヤけるのをめちゃくちゃ我慢しなくてはならない事が難点だ。

 

「ふふふ……それじゃ私はちょっと離れてるから2人でごゆっくり〜☆」

 

 ……そんでもってなんか空気を読まれたのかアイはものすごく良い笑顔で器用に車椅子を動かしてどっか行ってしまった。

 いやどっか行くっても隣の部屋くらいしか無いが。

 

「さてと……折角2人きりになったんだからめちゃくちゃに甘やかしてやりますかね」

 

 しかし折角用意してくれた2人きりの空間ともあればそれを有効活用しない手は無い。

 チラチラ見てくるかなの隣に座って腰に手を回し抱き寄せ、安心させるように包み込む。

 

「あ……あったかい……」

 

「つーかちょっと暑い? 嫌だったら離れるけど」

 

「いや! ずっと……ぎゅってして……?」

 

「うっ、お、おう……分かった……」

 

 まずいこれは今まで見たかなの中でも最大火力だ。

 いつもの感じも良いがここまで甘々素直なのも可愛い……流石かな、ポテンシャルが高過ぎる。

 

「おちつく」

 

「……B小町、楽しい?」

 

「うん。ルビーもメムちょもやさしくてたのしくて、ずっといっしょにいたいっておもう 」

 

「そうか。……絶対にストーカーは捕まえてやる、そうしたらきっとまた外を歩ける様になる。だからそれまでは俺様から離れるなよ……」

 

「ぜったいはなれないもん……」

 

 B小町の事を語る時のかなのうっすら見えた笑顔、それを思うとやはりあのストーカーはぶち殺すべきだろうと思考の奥底で考え至る。

 その辺は近いうちに依頼したとこから連絡が来るだろうからそこまで深く考え過ぎてもダメか。

 

 だったら、ちょっと懐かしい話でもしながらアタックするか。

 

「なあ、お前が前芸能活動休止した時もこうして2人くっついてたよな」

 

「あの時は俺様の胸の中でずっと泣いてたかなを抱き締めて背中を擦って和らげてあげる事しか出来なかったけどさ……今はもう少しちゃんと慰めてやれるんじゃないかって思ってんだ」

 

「もしストーカー野郎がいなくなったらさ、デートしようぜ。俺様が全部プラン立てて一日お姫様をエスコートしてやるからさ」

 

「ちょっとは男として魅力も上がったと思ってんだぜ、これでも」

 

「……どう?」

 

「……したい、デート」

 

「そうだろうそうだろう?」

 

 思い出すのはかなが11歳の頃、事務所と母親から見放されたあの年の思い出だ。

 少しずつ緩やかに子役としての仕事が無くなり始めはしたもののプランでは中学生になる頃に本格的な女優としての活動を始める予定があり、そのまま自然な形で軌道に乗れれば上手くシフトチェンジして落ちぶれずに済むと考えていた。

 何せかなの演技力は天下一品だ、埋もれる様なものじゃない。

 

 だがかなは失敗してしまった、まあそこまでは良い。

 ありがちな一度の失敗だ、ここまで大きな失敗無しで来ていたかな的には少し心に来たみたいだったがこれを糧に成長していってくれれば俺様すらも超える輝きを手に入れるだろうと確信していた。

 

 だが事務所……正確に言えば当時のマネージャーはこれ幸いにと徐々に売れなくなっていたかなを切る大義名分を得た様に躊躇無く契約解除を上にでっち上げを通達、上も調べもせずに信じきって解雇してきた。

 そしてそれを聞いたかなの母親は罵詈雑言を浴びせたかと思うと一週間もしない内にどこかへと消えていた。

 

 短期間に現実とさえ思いたくない理不尽が二度も舞い込めばおかしくなって当然というべきか、かなは何も映さない光を失った目で歪に笑いながら

 

「和也ぁ……アタシ、全部無くなっちゃった……」

 

 って言ってきて。

 そんな事されたら抱き締めるしか無いだろって、その時出来る全力で慰めてたんだ。

 あの時は芸能界そのものにトラウマを持ちかねないとあって半年近く休止する事になって、それが遠因となって一度鳴かず飛ばずになってしまった。

 

 あの事務所? ちょっとそれっぽいデマを週刊誌に数本タレ込んだらすぐ潰れてくれたよ、タレントは粒揃いだから他事務所に簡単に移籍したし無意味な被害者は出してないから良いって事にして置いてる。

 ちなみにその後のタレント以外の行方は知らない、どっかで野垂れ死んでてくれると嬉しいと思ってる。

 

「デートするために……ちゃんとそとでられるようにしないと……」

 

「だな。まあ俺様が付き添っててやるから心配すんな」

 

「……ごめんね、かずや」

 

「謝んなよ、お前は何も悪くないだろ。悪ぃのは全部ストーカー野郎なんだから。あそうだ、なんなら今から俺様がかなに耳かきしてやろうか? こういう時はリラックスするのが一番だって事でな」

 

「そ、それじゃあ……やって?」

 

「OKOK、ちょっと待っててな」

 

 さて意識をこっちに戻して、ここからは耳かきだな。

 確か隣の部屋の……

 

「あ、どーぞどーぞ☆」

 

「あ、どーもどーも……」

 

 バッチリ今までの話全て聞かれていたらしい、既に耳かきセットを揃えたアイが満面の笑みで渡してきた。

 ほんとこの人こういうの好きなんだな……会えば俺様とかなの話を聞きたがるし昔のエピソードも聞きたがるし。

 まあめちゃくちゃワクワクしてる表情で聞かれて悪い気持ちにはならないし色々聞かせてますけど。

 

 かなの良さ、特に可愛いところは全人類に伝えないといけないからな。

 

「よっしゃ、それじゃやるか。はい膝枕」

 

「ひざまくらー」

 

 ゴロンと寝転がるかな、ふと目と目が合うがそういう上目遣いは中々にその……背徳感がある。

 頭を撫でながら耳を良く湿らせてまずは耳の縁から……

 

「しっかし俺様がかなにする耳かきとか何年振りだろうな。高校入ってからはしてないから……3年くらいかね」

 

「いつも俺様が甘えてばかりだからなぁ……ちょっとくらいでも恩返し出来てるのかもなって思うとそれはそれで嬉しいもんなんだよ」

 

「ううん、アタシもあまえてばかり。かずやがいるからあんしんできるの」

 

「ありがてえ話ですよ。男ってもんは美少女に頼られるのがロマンみたいなところあるからな。ま、俺様はかな限定だけど」

 

「えへへ……ありがと。アタシもかずやにだけだからね?」

 

「どういたしまして。ほい中の掃除してくぞ」

 

 実際俺様達は共依存に近いものがあるんだろう、甘えて甘えさせてでどっちも寄りかかれるし寄りかかられた時それを受け入れるだけの度量がある。

 まあここまで精神的に依存し合うというのは流石に世の幼馴染もやっていないとは思うが……しかし今でも異性の幼馴染間でデートしないというのはなんか納得いかない……

 

「うん、これくらいか。じゃ最後は梵天で……くるくるくるりんと、よし出来たな。んじゃ反対もやるから」

 

「わかった〜」

 

「もう体勢変える事も無いし、このまま寝ても大丈夫だからな」

 

「でもまだおひるちょっとすぎただけ……」

 

「良いって。今はどーんと贅沢しときな。お前にゃそれをしても許される権利がある。俺様が認めてやる」

 

「じゃあ……かずやのひざまくらでねる……」

 

「おう、そうしとけそうしとけ」

 

 次第にすぅすぅと気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。

 こうしていると幸せなんだがなあ……これからやる事を除けば。

 ま、束の間の平和って事で満喫するか。

 

 耳かき終わったら俺様も寝よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

「しーっ」

 

「どしたの? ……ああ、なるほどなるほど」

 

「全く、アイツらは本当に仲が良いな」

 

「守らないと、だね☆ この寝顔を」




有馬かな
原作では割とズボラ生活を満喫しているがこちらでは料理に目覚めたからか超家庭的になってる上に和也がいつも気に掛けてくる影響でズボラ生活とは完全無縁だったりする
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