最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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『理解したくない事だらけ』

「まさか今日は仕事がアクアと被るとはな」

 

「役者として共演する事は割とあったが、バラエティで絡むというのはそうそう無いからな。役者以外だと今ガチ以来だったか」

 

「ま、たまには良いんじゃねーの。今ガチでバチバチにやり合ってたり東ブレでも共演って程じゃないがつるぎ役がかなとあって色々聞かれたのは面白かったわ」

 

 今日の仕事は珍しい事にアクアとバラエティで共演というものだった。

 今ガチで図らずしも対立構造になった辺りからネットでも俺様達の関係がどうのだったりかなを奪い合う関係性だったり果てには和アク……アク和派の方が若干多い、なカップリングをねじ込んできたりとやりたい放題だったのは知っていたがこうして表で関係性に付いて色々やると言うのは案外初めてで新鮮だった。

 

「あの時は本気でいがみ合ってたのかと聞かれた時は何と答えるべきか迷ったが」

 

「そこは俺様が即答しちまったから考えるも何も無いだろうよ。天才の俺様に感謝しろよ」

 

「言った瞬間場が凍り付いた事を除けばな」

 

「『俺様はガチでいけ好かない奴だと思ってましたよ。こんな奴のどこが良いんだよってなってましたから』って言っただけだが」

 

「俺が咄嗟に『今はそうじゃないですけどね』って言わなかったら事故だったぞ、生放送はもう少し発言に気を付けろ」

 

「お前ならそう返すと思ったのも織り込み済みだよ。結果としてそこから話題広がったし問題ねーって」

 

 アクアを慌てさせるのを目的で敢えてギリギリの発言を繰り返して何度か場を凍らせかけたがそこはご愛嬌。

 嘘は付いてないから俺様は悪くないしな。

 

「そういう問題か……?」

 

「そういう問題だ。……あ、てかお前ちょっと前かなとデートしたろ?」

 

「ああ、1ヶ月くらい前の話か」

 

「そうだよ。あそこから何も進展聞いてねえんだけど結局何なの? かなとは付き合ってんのか?」

 

「いや、付き合ってないが」

 

「はあ!? お前『たまたま見掛けた』ゆきちの報告じゃ良い雰囲気って言ってたじゃねーか!」

 

 そして話は変わりかなとアクアがデートした話題に遡る。

 実のところ多忙で詳しく聞けていなかったから割と気になっている話題だったりしている。

 ゆきち曰く『結構良い雰囲気? だったよ? うん』という事だったから2人ともそろそろ付き合うのかと思ってたのに全く雰囲気無いから俺様がイチャイチャしちゃったりしてる訳で。

 でも直接かなから聞くのも嫌じゃん、ってしてる間に1ヶ月くらい時間が経ってた、反省はしている。

 

 それはさておきゆきちの話だと名前呼びもしたしそのまま付き合うみたいな流れだったのにどうしてそうなってるんだ君達。

 馬鹿なんじゃないのか?

 

「俺としては勝手にデートを観察された上に報告されてる事に何とかしてツッコミを入れたいんだが」

 

「それは捨ておけ! その前になんでお前付き合ってないんだよ! 名前で呼び合ったんだろ!? 俺様に取られても良いのか!?」

 

「いや良いけど」

 

「ごめん俺様はお前が何を言ってるのか一切理解出来ないんだ」

 

「俺はあのデートで気持ちの整理が付いたんだよ。少なくとも俺の気持ちは幼馴染への親愛と推しへの気持ち、恋情じゃなかった。それだけだ」

 

「すみません本当に何言ってるか分からないんですけど」

 

 え?なに?アクアが抱いてた感情恋情じゃない?そんな事ある?

 いやいや無いだろそれは、だってあんなに脳みそ焼かれた様な顔してたり『かなが倒れたら』を想像して卒倒して重症を負うレベルの人間だぞ?これが恋じゃないとか嘘だろって範囲の問題に収まらないんですけど。

 あーダメだ脳みそが理解を拒む、これじゃかなが報われないじゃねえかよ……

 

「はぁ……無道が言いたい事は良く分かっているつもりだ。かなの気持ちはどうするか、そういう事だろ」

 

「……チッそうだよ。アイツはな、俺様じゃなくてお前の事を好きなんだ。俺様なら幸せにしてやれるだけの自信はある、だが選ばれなかった以上幸せになってもらうだけの後押しはしないとダメなんだよ。なのにお前に恋心が無いとかさ……どうすんだよかなの気持ちは」

 

「……無理矢理にでもくっ付けて来ると思ったが」

 

「流石にしねーよ。そこまで腐っちゃいねえしそれじゃあかなが幸せにはなれない。だからこれからどうすべきか悩んでんだろうが」

 

「無道、お前は確かに良い奴だと思う」

 

「なんだよ藪から棒に」

 

「だがな、たまに少しだけ視野が狭くなる時がある。特にかな関連だと」

 

「おい何が言いてえんだよ、ハッキリ言えよそういうのはよ」

 

「そこは俺が言う事じゃない。少し考えてみると良いだろう」

 

「あ、おい! 言えってそこは! 肝心なとこだけ暈してるんじゃねーぞこの金髪イケメン野郎が!」

 

 あのいけ好かないイケメン金髪野郎、意味深な事だけ言い残してダンマリ決めやがった。

 気になんのはそこだろうがよ、肝心なとこ勿体ぶってんじゃねえぞ。

 くっ付いてくれさえすれば後腐れなくストーカー野郎に選んでもらえなかった鬱憤理不尽にぶつけられたのに中途半端なまま対峙しないとならんのかこれは。

 

 あークソ、これはこれでイライラするしストーカー野郎に会ったらとにかく一度腹でも蹴飛ばしておこ。

 死なない程度に蹴飛ばしてりゃ生きてる事後悔し始めるレベルにはなるだろうしかなが負った心の傷に比べりゃ安いだろう。

 まあ何にせよ簡単に殺さない様にだけ気を付けるとするか。

 

 ……連絡も来てるみたいだし、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日は仕事遅くまで掛かるって話してあるから……迎えるな」

 

 例のところから連絡が来てから数日、ようやく都合良く黙せる日が来たから『今日は遅くなる』と伝え昼間だけのスケジュールを終わらせ今に至る。

 公園のトイレで深めのパーカーを着て万が一にでも見られない様にしておいてから事務所……ではなく、そこから少しあるコンビニの前で2人組の男と落ち合う。

 

「お前だな?」

 

「ああ。念の為に2人で来てもらって済まなかったな」

 

「構わねえよ、バレを防ぐ為だ。んじゃ万一にでも発信機が取り付けられてたらまずいからアクセとかバッグはこっちの車に載せろ」

 

「大事な人間から貰ったもんの中に発信機があってもあまりにも捨てにくいからなあ」

 

 二台の車の内アクセサリー、バッグ、小物等は全て『現場に向かわない方の車』に積み込む、何かの間違いで発信機が付けられていても撹乱させられるからだ。

 かなに貰ったものなんてそんなものが着いていたとしても捨てられるはずが無いからな。

 

「全く、好きな奴から貰うと罠って分かってても捨てられねえから人間ってのは困った生き物だねえ」

 

「同感だ。時にゃそういった情を捨てないと行けないのは俺様も分かっているが……それじゃあ頼んだ、報酬はそのバッグに入ってるから回収すると良い。終わったら連絡するからその時にもう一度ここで頼む」

 

「分かった」

 

「……さて、早速行くかい?」

 

「そうだな、頼んだ」

 

 向かうのは人気の全く無い廃ビルだ。

 倉庫でも良かったのだが誰も近付かない安全度合いを考えれば廃ビルの屋上に縛り付けておくのが一番やりやすかったらしい。

 ……今屋上でジタバタしているストーカー野郎を思うとなんだか滑稽に感じてしまうな。

 

 黒い軽自動車に乗り込み、目的地へと向かう。

 ちなみにだがこのコンビニはコイツらの事務所の息が掛かった連中で店主店員が構成されている為何も問題は発生しない。

 都合が良くて助かるよ。

 

「さて、ここになるな」

 

「大分ゴーストタウンみがある……都内にこんな場所があったとは」

 

「元々工場地帯だったらしいぜ。解体費用が中々集まらなくて半ば放置気味になってるとか」

 

「助かるねえ」

 

 ゴーストタウン的テーマパークと言われれば一瞬納得しかけてしまうのではないかと思うくらいの謎の威圧感、静けさ。

 その地帯の一番奥にあったのは、恐らくこの地帯の本部であっただろう10階建て程度のビル。

 外装こそ汚れているが中はもぬけの殻という以外はそこまで気になるところも無く、不思議な感覚を与える。

 

「ところで男と女、どっちだった?」

 

「あ? そういうのは後のお楽しみにしなくて良いのか?」

 

「正体さえ隠されてりゃ男女や年齢なんて別に大きい事じゃない。ただの付属品に過ぎないからな。とはいえ一応気になるというのも人間心理な訳で」

 

「成程。中年……高齢一歩手前っぽい見た目のババアだったぜ、ギャーギャーと騒ぐもんだから目隠しに猿轡まで噛ませて待たせてある」

 

「あーららそれはそれは。しかし中年の女ねえ……かなの事ストーカーする意味合いなんてあるのか……?」

 

 不意に聞いてみたくなったそれ、ストーカーの情報。

 それを聞くにはどうにも違和感を覚えてしまう情報としか思えなかった、何せ中年の女だかなをストーカーするなら拗らせオタクとして若年層〜中年層の男若しくは俺様のファンの逆恨みとして若年層の女性。

 中年層のファンだろうと一蹴されればそれまでだが、何故だかものすごく嫌な予感がした。

 

「監視ご苦労。依頼人だ」

 

「はっ」

 

「さあ、行ってくると良い。そこで煮るなり焼くなり好きにしろ」

 

「有難い限りだ。それじゃあご尊顔拝見と行きますか……ね……」

 

 そして、その予感は見事に的中してしまう事となる。

 

「……コイツがかなのストーカー?」

 

「は、ははは……どうやらアンタはジョークが上手いらしいな?」

 

「……テメェがストーカーなら、尚の事生きて帰れるとは思うんじゃねえぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなの母親の癖に娘を捨ててあまつさえストーカーなんてしてる奴に、生きる価値なんて無いんだからよ」

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