最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「た、ただいま〜?」
「随分と遅かったな」
「もー、かなちゃんずっと待っててくれてたんだからちゃんと謝りなよー?」
「アハハ、悪ぃ悪ぃ……」
「おかえりなさいムドくん☆ご飯作ってあるけどいる?」
「忙しかったんで助かります……何も口に入れてなかったもんで」
「ダメだよ〜ちゃんと栄養摂らないと倒れちゃうぞ☆」
「いやーほんと助かりますよ、ありがとうございます」
よし、取り敢えず星野家三人組には勘付かれていないだろう事はある程度確認出来た。
ここまで遅いと帰宅した瞬間に色々言われるというか『何していたか』問われそうなのが心配でどうやって言い訳をするか考えていたがこれなら問いただされる事は無いとソッと胸を撫で下ろす。
ただここで気を抜くと要らぬ失言をして自爆しかねないからな、今日は寝るまで気を抜かずに行動しようそうしよう。
しかしバレなくて良かった……途中でバレてたら捕まえる捕まえない以前にアクアと乱闘してただろうからな。
コイツ自分の事になるとブーメランぶっ刺さる癖にそれはそれとして正論は言うんだから困ったもんだよ。
「ちゃんと食べ終わったらかなちゃんに謝るんだよ〜?」
「分かりました。まあ電話来るくらいにはめちゃくちゃ心配されたしな……アレは心臓飛び出るかと思ったわほんとに……」
「ん?どうかした?」
「あーいえ、それじゃチャチャッと風呂入ってくるんで」
「うん、いってらっしゃーい」
冷静になって立ち返ってみると、もしかしたら俺様は今日ここで色んな意味で自分に付いた汚れを必死に落としていたのかも知れないのか。
返り血、飛び出した内容物、或いは飛び出した内蔵や脳みそ……まあ、そんなもの浴びなくて良くなったのは素直に良いと言える。
頭を冷やす様に冷水を浴びながらそんな事を考える。
今だから思うが、法律上人と呼べるものを殺したとして果たしてその人間は人間として生きていけるのだろうか。
いくらゴミクズ未満の生物だとしても、その一線を超えて果たしてその手でかなに触れられただろうか。
「……無理、だろうな」
有馬かなは俺様がこの世で最も大切にしてきた存在だ、幼馴染として、異性として、恋愛感情を自覚するずっと前から何よりも大切に、全てから守ってきた存在だ。
ならば、穢れた手で触る事は……無理だろう。
俺様自身が決して許す事が無かっただろう。
今になって自分がどれ程馬鹿な行いをしようとしていたのか身に染みてしまう、それはそれとして使った金は無駄とは思ってないがな。
まあそれにしたってこうして後からしっかりと反省出来る……そう、反省出来る様に後戻り出来たというのは我ながら良かった事なんじゃないだろうか。
「この手なら……かなに触れられるからな」
穢れていない、誰も殺す事無く帰ってこれた。
それだけで良かったと思える。
……かなからの告白の事も聞けるしな。
あの告白が俺様を思い留まらせたんだ、礼を言っても言い切れない気持ちになってしまう。
もし狙ってやっていたとすれば一生尻に敷かれそうだが。
「さて、頭もしっかり冷えたしさっさと上がろ。食ったらかなのとこ行かないとだし」
鏡を見る。
そこにはもう、黒い瞳は宿っていなかった。
「え?私をスカウトですか?」
「そうですよぉ、我々としては貴方のカリスマ性を見込んで我が事務所へ是非とも来てもらいたいんですよ……メイヤさん」
「うーん……お言葉は嬉しいんですけど、まだ設立3年となると少し考えさせてもらいたいと言いますか……」
「それは確かにそうですよねぇ。ですが……我々は昔有馬かなを育成した実績を持ってるんですよ……こちら名刺です、聞き覚えあるでしょう、私の名前」
「……! た、確かに……いや、でも待ってください。不祥事を引き起こして有馬かながかつて所属していた前事務所は撤退したはず……」
「あーそれねえ……アレ、部下が起こしちゃってましてね。私の知らない間に色々やられてしまってはどうしようも無くなりまして……ここから心機一転、始めているという訳ですよ」
「…………」
「もしもご興味がありましたら、名刺に記載されている番号にお掛けください。んふふ、いつでもお待ちしていますよぉ……?」
「……かな、寝てるか?」
「和也……?」
「おう。というかその話し方……大丈夫なのか?」
「うん……あ、アタシ自身何とかしなくちゃ……って、思ってた、から……」
「そっか」
かなは自室で相変わらずベッドの上、縮こまってはいたものの電話で話していた通り自分の精神を無理やり戻していた。
それ自体はめちゃくちゃ嬉しい事なのは確かなので俺様もベッドに腰掛けてかなの腰に手を回して隣まで引き寄せる。
そして頭を撫でれば幸せそうな顔をしている、何とも可愛い奴だよ本当に……天使だろうか、天使だったわ。
「なあ、さっきの電話で言ってたやつ、さ……」
「……こ、告白の?」
「うん。この際なんであのシチュエーションでいきなりとか、そういうのはもう聞かないけど。あれさ……本気って事で良い……のか?」
「……ほ、本気じゃなかったら言わないわよ。和也には……嘘、付かないもん」
心臓の音が早くなる、顔が熱を帯びるのを感じる、唇が異様に乾く。
シチュエーションは確かに謎だった、それは今でもどういう事なのかとツッコミを入れたくなるがそう言った全てを投げ捨ててでも今の告白には価値がある。
……だって俺様は、本当はずっと待っていたんだって気付いたんだから。
「俺さ。ずっとずっと、それこそチビの頃からかなとアクアの事くっ付けようとしてたけどさ。中学の時にはもうお前の事が……異性として好きだったんだって、気付いたんだよ。気付いたのは去年だったけどな」
「そうなの……?」
「ああ。中学に上がってちょっとした時に交わした事覚えてるか?『かながおばさんになっても独り身なら俺様が貰ってやる』って」
「したわね、そんな事」
「その言葉を言った時にはもう、好きだったんだよ。……今思えば、だけどな。本当は今ガチの時もアクアと話してて嫉妬してたのは番組側の意図した盛りでも何でもなく本音だったし、アクアの事がいけ好かなかったのもかなが取られた様で嫌だったからだし、かなを守りたいと思ったのも家族愛とは別に恋情があったからだし」
「……幸せになってほしかったのも、本気でかなの事を異性として愛していたからなんだよ。アクアを許してたのは……ま、アイツならかなの事幸せにしてくれると思ってたからだけど。でも去年の途中からは、自分がかなを幸せにしたいと思う様になった、でもかなはアクアの事好きだと思ってたからずっと押し殺してた。幸せになってほしかったからこそな」
言いたい言葉がまるで滝の様に溢れてくる。
今まで押し殺していた感情、我慢していた事が全部全部溢れてくる。
情けないかも知れないが、今はそういうの全て度外視して素直になろうと思う、それで良いんだよ、きっとな。
「そんな事思ってたの……?」
「東ブレの稽古の途中からだから一年弱だぜ?自慢にもならないけどな……まあそんな事もあったから何回も諦めようと避ける時もあったし実際会わなかった時期もあっただろ?情けないよな……」
「情けなくなんかない。ちょっと……ビックリはしたけど、それだけ大事に想われてたんだって思うと……嬉しい」
「……ッ、いや、そうか……そう、言われるとまあ……救われるかもな、うん」
ちょっと、いや大分涙腺に来た。
全てを擲って自分の心さえ犠牲にして、何もかもを捨てる覚悟さえしていた俺にとってこの言葉は救いになった、間違いなく。
やってきた事全部報われたんだと思えば過去苦しんだ俺も解放されるだろうよ。
なら……もう何のしがらみも無く言えるよな、俺様の本心を、かなに。
誰よりも幸せにしたい女の子に。
「かな……今聞いての通りだが、俺様はかなの事を世界で誰よりも愛している。心の底から、異性として、世界で誰よりも幸せになってほしいと思っている。だから……かなが20歳を迎えたら結婚しよう。――本当の意味で家族になろう」
「アタシも……和也の事が世界で一番大好きよ……一緒に……家族になりたい……もう一人は嫌だから……」
「ああ、絶対にもう一人にしない。約束するよ、一緒に生涯を共に生きて共に死のう。何があっても離さない」
「ありがと……愛してる……!」
二人は自然と目線を交差させる。
かなの潤んだ瞳は俺様を虜にするにはあまりにも充分過ぎて、我慢ならなくて優しくその手を頬に添える。
かなも何をされるかは察したのか、頬を赤く染めながらそっと瞳を閉じて全てを受け入れる様に優しく微笑む。
時間が止まったかの様に音が消えた世界で、二人の顔はそっと近付き……そして重なり合った。
この日、俺様とかなは永遠を誓い合った。
そして改めて、本当に幸せになる為にこの世界の歪みに立ち向かって行こうと覚悟を決めるのだった。
「わぁ、かなちゃんと和也くん幸せそう……良いなぁ……」
「ふっ、本当に世話の掛かる幼馴染二人だ……」
「ふむふむ、明日はお赤飯にしよっと☆」
無道和也&有馬かな
お幸せに
星野家
明日の夜は赤飯にするかとか考えてる
メイヤ
因果応報って言葉知ってる?