最愛の幼馴染へ   作:有馬かなを幸せにし隊

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『世間は優しい?/狂い出す歯車』

 結局のところ何だかんだ仲直り出来てかなとはラブラブ同棲生活を送り続けている。

 まず多分疑問に思っている事は分かる、そもそもなんでそんな簡単に同棲出来てるのかって。

 そこは簡単、恋心を自覚するずっと前から何時でもかなを守れる様にとお泊まりセットは全て常備されているのだ。

 何なら何の疑いも無くかなが買い足してくれたりしてくれてもいるからこれが二人のデフォルトだ。

 

 つまりはかなの家にはお泊まりから永住になっただけで別にルーティンに変わりは無い訳だ、自然とそのまま居着けるのは幼馴染の特権だなほんと。

 

 そしてかなの芸能活動復帰だが来週の『ホットな話題!情報局』の収録で固まった、これで胸を撫で下ろす事が出来る。

 まだ外に出る時に若干のPTSDだったり多少の幼児退行に近いものが出る時はあるが、そこはまあ俺様が着いていれば一応大丈夫なレベルには落ち着いたからな。

 そんでもこの後遺症が治るかどうかは……ちょっと難しいがな。

 

「しかしまさか交際発表して炎上せずにお祭り騒ぎになるとはなぁ……」

 

「アタシ達幼馴染でずっとベッタリだったからそこは普通なんだけどね……男性アイドルグループ所属と女性アイドルグループにいるのを除けばだけど」

 

「いやマジでそこな。いくら今までカップリングだのなんだの言われてても流石にどうかと思ったんだけどな……」

 

「幼馴染パワー強過ぎじゃないかしら」

 

 そんでもって本題、苺プロとカミプロ両社長に交際を伝えて双方でこれを隠しながら交際を続けるか発表して交際を続けるか協議した結果、2分後には『発表するしか無くない?』と両社長の見解が一致していた。

 

 両社長の見解としては

 

「本来なら片方がアイドルってだけでもアウトな上今回はお互いがアイドルだから絶対ダメだ……と、普通は言っていたところだが無道君とかなは例外だ。ネットでの評判でもほぼほぼ『早く付き合え』という意見が見られた、だとすれば下手に隠すより発表が堅実だろうさ」

 

「今までの和也君の行動と周りの反応を見ていれば問題無いのは明白だったからね。寧ろ早く発表しないと変な邪推も生まれかねないしこっちの方が安全だろうね」

 

 との事。

 

 どっちも常識はあるんだよなちゃんと。

 やっぱり俺様達二人が例外なんだろうなあとしみじみ感じる、かなが言ってた通り幼馴染パワー強過ぎるわ。

 

 実際発表した後ネットニュースに大々的になっていたが、9割は祝福のコメントを残していた。

 1割は妬みのコメントがあったが良く考えてもらいたい、何度も言うが俺様達はアイドルとアイドル、どちらも異性に愛を振り撒いて生きていく存在だ。

 だと言うのにマッチ程度の火しか出てこなかった上にその火もねじ伏せられている現状には流石にドン引きしている。

 

「うーん見事なまでに否定的な意見がねえ」

 

「アタシの事待っててくれてるファンの人こんなにいるんだ……」

 

「そりゃそうだろ、かなの可愛さは全世界共通項目だからな。もう少し時代が未来的だったら義務教育に有馬かなの魅力を教え込む授業があっただろうさ」

 

「それは流石に無理があるでしょ」

 

 ……とはいえ、だから愛されていなかったのかと言えばまた別なのが更に不思議な感覚にさせる原因だった。

 

 寧ろ2グループとも人気はうなぎ登り、俺様達AtoZは相変わらずYouTube上の活動がメインだが様々なチャンネルや企画に呼ばれたりもして今や200万人規模のチャンネル登録者数。

 B小町はYouTubeメインというよりはリアルメインで、かなとメッちゃんも深掘れのレギュラーレポーターになっている。

 つい先日には情報局の収録翌日にJIFに出る事にもなった、今年は去年よりも昇格して第三ステージなそうな。

 俺様的には第二ステージでも良いと思ったんだがなあ……

 

 まあそれはさておき。

 

 大々的にネットニュースになるのもどうかと思うが、世間って意外と優しいのかも知れないと感じてしまう訳で。

 

「……ま、何にせよ有り難い話だよな」

 

「そうね。……これからは二人での仕事ももっと増えるかしら」

 

「あるかもなあ」

 

 平和だなあと感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 星野アクアは最近妹のルビーが頻繁に何処かに出掛けては2時間もせずに帰ってくる、という行為をしている事に何かしらの意図があると怪しんでいた。

 そもそも彼は、ルビーが宮崎旅行から『どこか元気が無い』『何か笑顔を貼り付けている様に感じる』そういった違和感を覚えていた。

 最初こそ『白骨死体を見つけたのだからしばらくは引きずるだろう』そう思っていたのだがそれは半年を超え既に八ヶ月程経過していたのだから当然だ。

 

 だから彼は最近、そんな妹を心配して何をしているのかを尾行して確かめていたのだった。

 そして何をしているか知れた今、星野アクアはその原因となった人物の元へと向かっていた。

 

「……ここか」

 

 場所は比較的閑静な都内の釣り堀、数人程客がいたがお目当てはすぐに見つかった……あまりにも分かりやすい出で立ちだったからだ。

 

 黒のロングヘアーにベレー帽、整ったスタイルという凡そ釣り堀にいるには似つかわしくない出で立ち。

 ルビーが話し掛けていたのはこの人で間違いない……アクアは歩みを進め……まるでそれを予知していたかの様に『彼女の方から』声を掛けられた。

 

「やあ、星野アクアくん。まさかキミがここに来るとはね」

 

「……どうして貴方がルビーに入れ知恵なんてしていたんですか。浦和仁乃さん……いや、元B小町初期メンバー」

 

 

 

「……ニノさん

 

 

 

「良く知っていたね、私の元芸名なんか。いや、それは妹ちゃんもか」

 

「知ってるも何も俺が知っているのは当たり前だろう……アイにイジメを行って処分されたメンバーの名前だぞ?」

 

「はは、キミはそっちも知っていたか。妹ちゃんは知らなかったみたいだけれどね」

 

 元B小町初期メンバー、ニノ。

 彼女はかつて苺プロ所属のジュニアモデルだった。

 容姿は上位、清廉潔白そうな雰囲気と幼少期から歌とダンスを習っていた事が功を奏しB小町結成メンバーとして抜擢された。

 

「あまりふざけた事を言わないでください。俺は今でも貴方の行った行為を許していないんですから」

 

「……そうだね。あの時は私も若かった。今ではバカな事をしたと思っている……と言っても信じてはもらえないだろうけれど、最初はたかがほんの少しだけの嫉妬心だった。それがみるみる内に肥大して気が付けばあのザマだった」

 

 彼女は最初、高峯には歌の指導、渡辺とアイには歌とダンスの指導係も含めたコーチ兼任アイドルだった。

 その分他のメンバーより手取りも良く、大変だがやり甲斐はあった。

 だが徐々にアイ『だけ』が売れ出した。

 他のメンバーも不満は溜まっていたがそれが最初に決壊したのがニノだったのだ。

 そして彼女は見せしめに解雇、その後は数年後から五年弱歌手をしていたが鳴かず飛ばずで挫折して今に至る。

 

「アイにはね、しばらくしてから会いに行って許してはもらえたんだ。少し大人になってからやらかした事の重大さに気付いたんだよ」

 

「アイが許そうが俺が許すかは別問題だ」

 

「それもそうだね」

 

 ニノは眉を下げて困った様に笑う。

 

「……でも今は、丁度キミがここに来たからには私から一つ話をしようじゃないか」

 

 だがそれは、そう言った彼女自身によって直ぐに切り替わる。

 

「……なに?」

 

「妹ちゃんから聞いたんだよ。『ずっとアイを見捨てた実の父への復讐しか考えてなかったお兄ちゃんが今は元気そうで嬉しい』って。私がアイの親友だって話したら話してくれたよ。……キミ、その父親の名前って誰なんだい?」

 

 ニヤリと彼女が一瞬不敵な笑みを浮かべたのが見えた……とアクアは脳内で警鐘が鳴っている事に気が付いた。

 この女とこれ以上話せば『不都合な真実を知る事になるかも知れない』と。

 だが、同時に『これは知らなければならない真実の可能性もある』と。

 

 ……どうせ全て思い過ごしだろう、と全てを飲み込んだ星野アクアはその場を去ろうとする、やはりこの場にいてはいけないという警鐘に、本能に従う事にしたからだ。

 

 だが。

 

「ねえ、キミの妹ちゃんの話から察するにさ……キミは『自分の父親はもう死んでいて、復讐なんてもう無い』そう思ってるんじゃないのかな。いや、こう言った方が分かりやすいかも知れないね……『そう思い込んでいる』んじゃないかい?」

 

「……なに、を、言って……?」

 

 彼の足は止まった、いや止まらざるを得なかった。

 あまりの衝撃的な言葉に、それでいて薄々どこかで、心の奥底ではそれを理解していたかの様に、金縛りの様に足が動かない。

 唯一絞り出せた声は、まともに発声出来ていたかも不確かな声のみ。

 それを見た彼女は静かに目を閉じる、まるでその反応を最初から予期していたと言わんばかりに。

 

「……やっぱり。そうだと思ったよ、妹ちゃんの話からしてね」

 

「ま……待て、父親はもう見つかったはずだ。上原清十郎は既に死んでいた……そのはずだろ?」

 

「言わなきゃ分からないかな?」

 

 彼女は依然アクアに背を向けたまま話し続ける。

 

「だってキミは大きな矛盾点に気が付いていない、いや意図的に無視をしているじゃないか」

 

 

 

 

 

「上原清十郎はアイが事故に遭う前には既に死んでいたのだから」

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