最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「い、いやそれはおかしいだろ……そもそも何故ルビーが話したんですか?アイツは頭は弱いがアイの話になると口は死ぬ程固いはずだ」
「ああそれかい。それは少し申し訳ない事をしたとは思うけど、妹ちゃんをJIFで見た時から既に『そう思っていたんだ』」
「それとこれとどう話に繋がる?」
「忘れたのかい?私はB小町の中で最も早く彼女にアイドル観を壊された女だよ?ならば良くも悪くも彼女の事はなんでも知っている、飲まれた瞬間のオーラと妹ちゃんのオーラは正に瓜二つで実際に受けた瞬間嫌でも分かってしまったよ。だからつい瓜二つのオーラに詰め寄ってしまったんだ……あの子も流石にそうなっては隠し通せないと観念して話してくれた、それだけさ。だから妹ちゃんは悪くないよ」
「……今まで極僅かな人間にしか知られてこなかったそれを、見ただけで見破る?それを俺に信じろと?」
「おや、別に私の言葉は信じなくて良いよ。ただその場合、妹ちゃんが裏切り者になるけどね」
「……」
飄々とした表情でアクアの言葉を受け止め投げ返すニノ。
だがその瞳は若干狂気にも似た色をしていた、それはかつてB小町の絶対的エースとして君臨したアイに誰よりも早く狂わされ、誰よりも深くその深層を覗いて『アイドルという存在はアイ以外に有り得ない、それ以外はアイドル足り得ない』そう結論付けたアイの一番の親友で、信者で、アンチだった頃の色の瞳だった。
どれだけ改心しようともそれは抜け落ちない、そう彼女は語る。
「この瞳はね、アイに焼かれてしまってから『元に戻らなくなってしまった』んだよ。もう正常にアイドルを見る事は不可能だ。私にとってアイドルはアイだけ……そう思っていたんだ」
「でもキミの妹ちゃん、ルビーちゃんを見た瞬間もう一度この瞳の焼ける音がしてしまってね。もう終ぞこの瞳が焼かれる事は無いと思っていたのに彼女を生で見た途端『アイの子以外有り得ない』と、そして『アイ以外でアイドルを名乗れる唯一の存在』と感じたんだよ」
「……ルビーに変な事はしてないだろうな」
「私を見くびってもらっちゃ困るよ。もうアイの時の二の舞はしない、今度こそあの崇高な存在のドームライブを見るんだから……」
アクアはどうしようもなくゾッとした、ニノの瞳は確かに輝いていた、輝きはしていたがその瞳の中に果たしてルビー本人がいたのかと言われれば……
彼女の瞳の中にあるのはルビーではない、間違いなくアイだ。
そう思うとこれ以上こんな話を聞いている場合では無いと未だトリップしているニノに向けて声を掛ける。
「……ニノさん、俺はまだ本題を聞いていない。どうして上原清十郎がアイの事故前に死んでいると矛盾が発生するんですか?アイを見捨てた実父、それに変わりは……」
「言ったはずだよ、矛盾があるって」
今までトリップしていた彼女はどこへやら、一瞬目を瞑ると狂気の瞳は鳴りを潜め会った時の瞳へと戻っていた。
彼女は淡々と告げる、矛盾があると。
「いくら関係が冷えていたとしてもだ、君達の実父が死んだと聞いてアイが正常でいられると思うかい?」
「それ、は……」
「一度はそういう関係までいった間柄相手だ、多少なり様子がおかしくなったりコンディションに表われる、違うだろうか」
「……」
アクアはその言葉を否定出来なかった。
旧B小町メンバーと関係が冷えきっていた頃、体調不良でリハーサル中に高峯が倒れた時にはそれでもすぐ傍に寄っていた話を知っているからだ。
古参ファンの一部しか知らない話ではあるが、その時のアイは無表情を装うとしていたものの冷や汗が流れていた……そんな話を少しした頃高峯本人が話していたものが語り継がれている。
そんな話がある以上、いくら関係性が悪くても一度は身体を合意の元で重ねた関係に動揺しないアイでは無い事をゴローの魂を持っているアクアは誰よりも知っていた。
だからこそ、否定する事は叶わなかった。
「……それが君達が生まれてから今日まで全く無かった、そうでも無ければたかが私の発言一つに動揺なんてしない、そうだろう?」
「そんなはずは……」
「更に言おうか?上原清十郎と姫川愛梨はね、事故前どころじゃなくてアイが休養を発表する一年前には既に死んでいたんだよ」
その年の暮れ、二人の住んでいた自宅がちょっとしたガス漏れによる爆発事故に見舞われた。
その事故による死者は二名、一名は黒焦げの焼死体として発見された上原清十郎、もう一人は身体の一部さえも残らない程の炭として発見された姫川愛梨だった。
そう、それは『明らかな矛盾』であった。
アイの妊娠時期と上原清十郎が存命していた時期とが完全にズレている、アクアとてその程度少し考えればすぐに辿り着ける程の簡単な矛盾だったのだ。
だが、彼は本当は復讐なんてしたくなかった。
斎藤夫妻もアイもルビーも笑顔で。
ただ一つ、あの日見たアイの寂しそうな顔が忘れられなくて。
妊娠、出産、事故全て一度も来なかった実父が憎くて堪らなくて。
だから復讐を続けていた、見つけて全てを終わらせてやろうとしていた。
そして辞める理由を探していた。
だからこそ、こんな簡単な見落としに気付かないでいた、否気付きたくなくて逃げ続けていたのだ、現実から。
「……そん、な訳は……無いんだよ……だって……そうじゃないと……俺の復讐は……」
「そ、キミの復讐は終わっちゃいないんだ。君達の実父は、アイを妊娠させた男は、アイを見捨てた男はまだどこかで生きている。だから――『もう一度始めようよ、キミの復讐をさ』」
雨降る公園、人なんているはずも無いそのベンチにアクアは茫然自失で座っていた。
あの後どう帰ったかも、何を話したかも彼の記憶には無い。
全てが『まだ復讐は終わっていない』この言葉で埋め尽くされていたからだ。
「違う……終わったはずなんだ……そうじゃなきゃ……いけないんだ……」
違う、そんなはずが無い、全て全てもう終わった、父親は既に死んでいた、それで良いじゃないか。
そう呪文のように唱え続ける、しかし侵食してくるのだ、過去の自分が、ゴローが、訴えてくるのだ。
『良かったね、また始められるよ。キミが世界で一番憎んでいる人間を壊せるんだよ、この世で可能な限界まで苦痛を与えてやるんだよ』
『僕は苦しむべきなんだ。あの日血だらけで倒れているアイに何もしてやれなかった無力な僕が、平気な顔をして生きていて良い訳が無い。処置があの場で出来ていればアイの足は今も無事だったんじゃないか?ドームライブも出来て、元気にアイドルを続けて笑顔のまま引退出来たんじゃないか?』
『そうだよ、無能は苦しむべきなんだ』
『まだ僕達は何もなし得て無いじゃないか』
『これは罰であり報いなんだ。ここ暫くの安息の時間は楽しかったかい?でもあんなのはまやかしだ』
『だからまた始めようよ』
『復讐を』
『報いを』
『無能らしく』
『手に入るはずだった笑顔の為に』
『永遠に手に入れられなかった
『もう一度始めようよ、キミの復讐をさ』
「うるさいっ!! 」
幻影を振り払う様に手を振るう、もうアクアには限界だったのだ。
しかし……振り払った時、確かな感触があった、あってしまった。
アクアは咄嗟に振り向く。
「ア……クア……?」
「…………ぁ」
そこにいたのは、自身が大切な推しとして、幼馴染として過ごしてきた有馬かなだった。
そして理解してしまった、『今自分は何をした?』『心配してくれた大切な推しを、幼馴染を否定し突き飛ばしたのだ』と。
今すぐにでも否定したい、違うのだと、かなを突き飛ばしたかった訳ではないのだと、否定したかった訳ではないのだと。
だが、声が出ない。
目の前に自分のやった結果が残っている以上、どうしても現実を受け入れられなくて声が出なかった。
こんな俺なんて見捨ててくれ、嫌だ見捨てないでくれ、相反する二つの感情がぐちゃぐちゃに絡まり合って更にアクアの精神を壊していく。
有馬かなはそんな彼の行動に一時は気が動転してショックを受けていたが……今の彼女は冷静になれた、
「……大丈夫、大丈夫だからね。心配しなくてもアタシは居なくならないわよ、だからそんな絶望したような顔すんじゃないわよ、らしくもないんだから」
「か、な……?」
そっと彼を抱き締める、いつもの勝ち気な表情ではなく慈愛に溢れた表情で、震える身体を温めるように。
「何があったか知らないけれど、こんなに苦しんでる幼馴染放っておける程アタシは薄情じゃないんだからね。何かあったらアタシとかあかねちゃんだったり、ルビーやお姉ちゃんの事……少しは頼んなさいよ。理由なんて言わなくても良いから甘えたくなったら素直に甘えなさい、アンタはちっさい頃からずっと大人び過ぎてただけでまだ17歳なんだから。誰かを頼る事を覚えんのよ」
アクアはそれに頷く事は出来なかった、復讐をする事で自らを痛め付けるのもまた復讐だったからだ。
だが、今だけは。
家族にすら見せられなかった涙を、止める事が出来なかったのだった。
浦和仁乃
元B小町結成メンバー『ニノ』
アイに狂わされアイを虐めていたがそれ以上に信者であった
現役時代は狂わされる前までは親友ポジションにいた
今でもアイに狂わされており、ルビーに幻影を重ねて見ている程であった
アクアに『復讐はまだ終わっていない』と言って場を荒らした張本人
勝手にアクアの脳内にもシレッと最後にいたりとクソ面倒な女
アイの2歳年上だが見た目年齢は20代後半にしか見えない
星野アクア
アイは死んでいないが死んでいない分復讐を辞めたい気持ちが強く割と精神状態が原作より酷い方向に行った
原作では壱護が元凶なだけあり救いは多少あったがニノじゃ流石に…
有馬かな
一人外出でリハビリ中のところ95話の流れになった
ちなみに和也にはGPS5個くらい付けられてます