最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
『どっかで見た事ある面』
「……はい、カットォ!かなちゃんも和也くんもお疲れ様!今日の撮影はここまでだから、後は帰ってもらって良いよ!」
「お疲れ様でした〜」
「フッ、今日も俺様は完璧だったな!」
「いや〜2人共最近絶好調だね、特に和也くんは顕著に見える。やっぱりハッキリと婚約関係になったのが大きかったりするの?」
最近の俺様とかなは文字通り全てにおいて絶好調だった。
その原因と言うのは……このドラマ撮影の監督が微笑ましそうに聞いてきた事そのものズバリ答えである、そんなにバレバレなのか。
公にかなを婚約者だと言ったのはまあ、取られたくないのと俺の覚悟を明確に見せる為の2つあったがこれのお陰でお互いナンパされなくなったから良い影響は出ているのだと思う。
さて、それはさておきこの監督に対してどう出ようか。
……隣でタジタジになってる婚約者をいつまでもそのまま放置という訳にもいかないしな。
「ご明察、やはり愛する者を手にした男というものは無敵なんですよ」
「そうかいそうかい、幸せそうでなにより。2人とも末永く!」
「ありがとうございます、監督」
まあ、そうして受け答えをしている最中顔を真っ赤にして覆いながら袖をクイクイと引っ張る事しか出来ないくらいの機能停止になっていたかなを見る限り手遅れだったかもしれないが。
それはそれとして可愛かったので良しとする。
「んじゃ帰るか〜」
「もうバカ、ほんとバカ、アタシが恥ずかしくなるの知っててやったでしょ」
「言っても言わなくてもどうせ似たような感じになってたんだ、なら言った方が良いだろ」
「うう~……」
満足した監督から解放された後、顔を真っ赤にしたままのかなからのかわいい罵倒をニヤニヤしながら受け流す。実際言わなきゃ言わないでまだ暫くネタにされてただろうし結果オーライだ。
どちらにせよあの監督とは気心知れた仲ではあるし嫌な気はしない、気分良く帰れるというものだ。
「まあまあ、帰りにアイスでもかってやるよ。ハーゲンダッツで良いよな?」
「……2つ買って。それで許す」
「りょーかい」
そしてかなの機嫌の治し方も熟知している、大抵こうしておけば何とでもなる。
一般人相手だと少々値の張るワガママも俺様なら余裕だしな。
「あ、ごめんなさい」
「っとと、いやこちらこそ失礼。大丈夫だった……あ」
そうしてイチャイチャしながらスタジオを後にする……はずだったのだが不意にすれ違いざまに他のタレントと肩がぶつかってしまった。
別方向から来たという事は別スタジオでの収録だろうか、最近疲労が溜まっているからか気付けなかった。
幸い軽くだから問題は無いだろうが礼儀は礼儀、謝ろうと顔を見て……思わずそんな声が出た。
「……まさかここで会うとは思わなかったです。色々大変そうだったみたいですがお元気そうですね」
「それはこちらのセリフですよ。最近別事務所に入ったらしいですが、お元気そうで何より」
メイヤ……深掘れ☆ワンチャン!!の収録でかち合った後それとなく暗にこっちの番組に対して当てつけの様な巻き込みツイートをしてわざと荒れさせた悪質なコスプレイヤーだ。
こっちは色々と大変で最近まで知らなかったが、例の件は深掘れ☆ワンチャン!!内部でも荒れたらしく、同番組内でディレクターとタレントの和解が成されたそうな。
え?ホットな話題情報局との和解は?俺様達呼ばれてないけど?
そんな訳で未だ和解してない俺様とメイヤはお互い静かに言葉で殴り合いを している、後でディレクターにクレーム入れてやるから覚悟しとけよテメェ。
それはさておき最近メイヤは新しく事務所に入ったらしい、フライトコーポレーションとか言う良く分からないところだが。
「メイヤくん、あまり他事務所に迷惑を掛けてはダメだよ」
「ほら和也、あんまり突っかからないの」
等と考えながら睨み合いをしていたがお互い連れに止められた。
あっちの男は……見た目胡散臭い社長っぽいが何やらどっかで見た事ある面な気が……?
しかし他人の空似というものもある、今はこれ以上機嫌悪くなりたくないから鉾を収めるとするか。
「……俺様はまだ許してないからな」
そう吐き捨ててかなの手を掴んで早足でその場を去る。
出来れば二度と会いたくないがこうして遭遇してしまった以上またどこかで会うのだろう、ならばせめて1秒でも会う時間を減らすに限る。
少し後ろ髪を引かれる思いもあったがさっさと外に出たのだった。
「……で、なんで和也はアタシに抱き着いてる訳?」
「良いだろ別に。アイツ見たらイライラして何も手に付かないからかなで癒されたいんだよ」
「ほんとこういう時は年下っぽく甘えてくるのね。ま、悪い気はしないけど」
「あー……かなの胸の中落ち着く……」
「アンタ今人様に絶対見せられないようなだらしない顔してるわよ……」
「お前にしか見せないんだからいーのいーの」
家に帰るなりかなに抱き着く。
普段は俺様が抱擁する側だが今日はかなに甘えさせてもらう事にするという事で存分に抱き締められている、原因があるにせよたまにはリラックスしたい願望も実はあったりしていた。
かなもそこは分かってくれていたらしく存分に甘えさせてくれている、理解ある婚約者を持って俺様は嬉しいよ。
「あっそ、可愛いから気にしないけれど。……それより和也、なんかアタシに隠し事してるわね?」
「……はて、なんの事ですか?」
「今度ゆきの時みたく後から発覚したら次こそ婚約解消するから」
「OK分かったそれされたら生きていけないの知ってて言ってるな?言う、言うからそれだけは辞めてくれ」
「分かれば良いのよ分かれば。それで?何を隠してるのよ」
……ただ、理解あるとは言っても限度はある。
理解され過ぎていて怖い、何なら今の自爆覚悟で言ってたはずだが自分のダメージより隠し事される方が嫌ってマジか。
いや前が前なだけに分からなくはないが……うーむ、これは思っていた以上に俺様は反省せねばならないかもしれない。
確証の持てない事である以上あまり言いたくはなかったが、こうなってしまったら仕方ないだろうと口を割る。
「確証は無いからあくまでも参考程度に聞いてもらいたいんだが……今日メイヤの隣にいたあの男、どこかで見た事があると思ってな」
「メイヤの?……確かフライトコーポレーションだっけ?そうかしら?胡散臭そうとは思うけど」
「ああ、だから言ったところでと口に出すまでもないとしていたんだよ。心配掛けたみたいでごめんな」
「良いわよ。それに和也のカンって割と信用してるから助かるし。あそこの事務所関連はちょっと警戒してみるわ、元よりそんなに関わりたくもなかったし丁度良いしね」
「悪い、助かる。また何か思い出したら話す」
「うん。お願いね」
うーむしかしかなはあの一件を乗り越えて以降良い意味で警戒心が強くなった気がする、それも表には出さずにやり過ごす事を覚えて世渡りも上手くなった。
ただ後遺症か予告の無い突然の大きい物音やボディタッチにはかなり怯えるようになってしまったが……仕事モードにさえなれば問題無いのは救いか。
つくづくアレが偶然とはいえ死んでくれて助かったと思ってしまう。
なお例の件はかなに面倒や被害が及ぶとか何とかで元々繋がりのあった便利屋側と警察側双方による結託によって事故自体が無かった事にされ逮捕という形になっていたりする。
「それじゃまた甘えさせてもらうからな」
「はいはい、アタシは逃げたりしないから存分に甘えなさい」
何はともあれ今はこの空間を堪能しようとまた胸に顔を埋めるのだった。