最愛の幼馴染へ 作:有馬かなを幸せにし隊
「ええ~……みんなが映ってる映像や写真って言われてもなあ……ううーん、100枚? くらいしか無いよ? 大丈夫なの?」
「めちゃくちゃあるじゃねーか」
「足りそう?」
「充分過ぎる」
あかねちゃんの誘拐事件から開けて初の今ガチ収録。
休憩時間に俺達は全員集まり会議を行う事になった。
というのもあの事件時仕事が入っていて呼べなかったのと、危険で呼ばなかったメッちゃんとかなから割と苦情が来ていたからだ。
『どうして呼んでくれなかったのよ!』とか『アタシだってあかねちゃんの友達なのに!』とか……まあ大体はかなから来てたものだが。
そんな訳でじゃああかねちゃんがどうしたら炎上も収まった上で好感度回復出来るか話し合おうとなって今に至る。
「それ、アタシ達で作るんだ」
「ああ。今ガチは意図してあかねを悪役のポジションに置いてその流れでやって来ていた。流石に全員が全員本当にやりたかった訳では無いだろうが、悪意が存在する以上任せるのは危険だ」
「ま、正論だろうな」
「俺には映像編集のスキルもある。後は素材さえあれば磐石だ」
「なるほど、つまりアクたんは『私達目線の今ガチ』をやりたい訳だ」
相も変わらずいけ好かないイケメンではあるが、鋭い目線だと一目置きたくなる。
今まで視聴者は『作られた俺達』を見てきている、それを演者自身で作れば何の介入も無い『本当の俺達』を見せる事が出来る。
俺と絡んだ時のあかねちゃんを見た反応の中にも何人かいた『本当はこんな子だったんだ』という反応、それこそが俺達の狙いだと。
上手く考えたもんだ。
「それって誰かの入れ知恵? それとも自分で考えたの?」
「自分で考えた」
「へぇ、勘所悪くないと思う」
それはそれとしてその澄まし顔はどうにもイライラするがな。
この前あかねちゃんとイチャついてたの知らないと思ってんじゃねーぞウチのかなと散々イチャついてた癖にそんな事しやがってたのがバレたらかなが曇るだろうがよ。
お前は大人しくかなと付き合えよ、俺様が認めてやるから。
というかアイツもしかしてイチャついてる自覚無い? 両方共にあんなにタラシこんどいて? まさかね……
あとこの間にメッちゃんのキレキレ考察が入ってきているが聞いてない訳では無い、俺はマルチタレントだからマルチタスクも出来るからな。
しかし流石カリスマYouTuber、ユーザーの心理考察やバズへの追求心は俺も見習わないといけない。
「じゃ完成したらデータちょうだい! アップしとくよ!」
「いやそれくらい自分で……」
以下、まだまだ続くメッちゃんのバズへの貪欲な追求心であった。
天然おバカキャラと思わせときながら恐ろしいくらい真面目な女の子だと感心するしかなかった。
何故か女の子という言い方に何かしらの違和感を覚えたがきっと気のせいだろう。
「じゃあ俺は動画に合う楽曲提供するわ」
「そんなの出来るのか?」
「いやいやこう見えて俺、レーベル所属のプロだからね? これで金稼いでるんだからね? 作詞作曲なんてお手の物だから安心しといてくれ! こう、エモい感じで仕上げてくるから!」
「あとあのシーンは必要よね」
「あー、ゆきちゃんがあかねちゃんを優しく抱きしめたところ?」
「そうそう」
「……あそこカメラ回ってたのね」
「定点カメラの位置はバッチリ把握してますから。画角はバッチリ」
「いやなんかもう色々台無しなんだけど……」
サラッと強か過ぎる発言をしているゆきちに驚かされたり、色々と準備を進めている……が、ここはもう一味欲しいところだ。
そう、この『賭け』を『100%』にするような決定打が、ね。
「……良し、お前らのお陰で良い賭けになりそうだ」
「賭けェ? オイオイ俺は賭け事は好みじゃないんだけど?」
「仕方ないだろ、そうでもしないと黒川のフォローには」
「人の話は最後まで聞くもんだぜ? ……俺は、この『賭け』を『確実』にする切り札を持っている。そう、このデータでな」
「なによ、このデータ」
「この前俺とかなとゆきちとであかねちゃんとこ行った時の映像」
「は!? アンタ盗撮した訳!?」
「違う違う、これはあかねちゃんが『本物の有馬さんと会えた記念にちょっとだけ……』と撮ったという映像だ」
そう、実はあの日あかねちゃんは心が折れかかっていたところにかなが来たというのを扉越しに聞いて瞬時に盗さ……撮影をこっそりしていたらしい。
後で俺が「今回は許すけど本当はダメだぞぉ」と軽く言ったから無かった事になったが、今回母親を守る為に部屋をフルモザイクにする事を条件でこの映像を借り受けた形になる。
「あかねちゃん……? あの子そこまでアタシの事好きだったのかしら……も〜それならそうと言ってくれれば写真くらい何百枚でも撮らせてあげたのに〜」
「え、かなっちツッコミ入れるのそこなの? え?」
そしてゆきちのリアクションは最もである。
昔からかなは、男はその見た目である程度は気に入られて来たが同性からの評判はドン底に悪かった。
今回の軽く好意を向けられたゆきちやメッちゃん相手にすら内心若干デレデレしていて、漏れ出た時は百合路線もありかとスタッフが本気で会議していた程だ。
そんな訳で重たい好意を同性から向けられる耐性が0過ぎてこういう事になってしまっている。
かながこんな残念な美少女であるのが表に出てきたのは恐らくこれが初めてだろうと思うとちょっと頭を抱えたくなる。
あ、一番頭を抱えているのは星野アクアだけど。
「ウチのかなが残念美少女でスマンな」
「え、あー、まあ可愛いし良いけどさ」
「話を戻すが、それで、だ。この映像を使えばガラッと印象も変わる最高の切り札になると思ってな。特にものすごい嬉しそうな顔でブンブンかなと握手するあかねちゃんは良かったぞ」
「そ、そうか……それは良かった……」
哀れ星野アクアはかなの衝撃の姿に死にかけていた。
多分死にかけてる事にすら気付いてないがな。
「全く……みんなで何してるかと思えば……本来そこの映像は持ち出し禁止なんだぞ」
後は作業に取り掛かるだけ……という時に現れたのは今ガチのディレクターだった。
番組を主導したのはこの人であり、まあ悪役に先導したのもこの人である為そこまで良い気持ちにはなれないが……
「でも……誘拐までされて、それを子どもである君達が助けたと聞いた。ハッとさせられたよ、せめてこういう時くらい大人達が子どもを守るべきだろって」
「ディレクター……」
「俺に出来んのは、番組が盾になる事くらいだろうさ。好きに使いな」
だが、後悔も反省もして自分のやるべき事を分かっているのなら話は別だ、人間間違えながら何度も学んで成長していく生き物だ。
トライアンドエラーなんて言うが人生はその最たるものだと思っている。
ならば俺はそれに敬意を示そう。
「ありがとうございます、ディレクター。この映像と
「はぁ……強かな奴もいた事だよ。無茶はすんなよ、これエナジードリンクだから編集作業の合間にでも飲んどけ」
何だかんだ言いつつ人間は元から悪人という事は無い。
やり直そうと思った時から、その人間はやり直せる。
やり直そうとしたのがこのディレクターで、やり直せなかったのがあの誘拐犯連中だったという違いなだけだ。
「よーし! ディレクターからの許可も出た事だし俄然、やる気湧いて来た! このMEMちょ、いっちょ本気出しちゃいます!」
「俺様に映像編集の技術はそこまで無いが、映像の魅せ方や画角なら任せておくと良い」
さて、夜は長くなりそうだ。
「あー違う違う、そこは長尺の方が素人感出てウケ良いって!」
「ここで俺の曲入れたら雰囲気良くね?」
「こう、バーンと行こうぜ!」
「ほんとに使うのねこれ……ちょっと恥ずかしいかも」
「……うっせぇ」
「ここの画角はもう少しズラした方が良いんじゃないか。そう、そんな感じだ」
「まさか無道が一番マシに思う日が来るとは思わなかった……」
変な話だが、この日俺達今ガチ出演者の絆は更に深まったと思う。
なおこの後動画完成に数時間、タイミングを見計らってエンコードと投稿、初動見守りに更に数時間使ったのは別の話である。
「さあ、ショーダウンと行こうぜ!」
「ノブ、お前は一番なにもやってないからな?」
無道和也
サラッと『ウチのかな』と呼んでいるくらいにはかなの事をめちゃくちゃ大事にしている
有馬かな
実はドストレートな重たい好意を同性から向けられるのはほぼ初めてな為あかねへの好感度が無意識に振り切れている
同性から敵視され続けてきた原因は和也が隣にいたからである
何百枚でも~は例のあかねちゃんの発言のパkオマージュ
黒川あかね
憧れの有馬かなが会いに来たという事態に脳みそがバグり盗撮に走った
原作に置ける反転アンチ厄介オタク振りは無いがその分ちょっと危ない人になった
誘拐騒動さえ無ければ実は割と立ち直れていたのではというのは全員の見解
ディレクター
原作でもすぐ改心したんだから流石にあんな奮闘見せられたら改心するのは当たり前である