面白いかどうかは分かりませんが、たまにはこういう雰囲気の異世界ものも良いかも……かどうかも分かりません。自分的には読み直していて疲れました。もっと簡単に書きたい。話もなかなか進まないし。
“あなた”に質問です。
もし仮に、『気が付いたら異世界に飛ばされていた』という状況にあなたが陥ったとしたら、果たしてあなたは最初に、どのような行動を起こすものだろうか。それを少し想像してもらってから、次を読み進めてもらえると嬉しい。
……答えは出ただろうか。ここからは、“俺”なりに考えてみた可能性をいくつか挙げてみる。もし、そのどれかに当て嵌まったとしたら、きっと現実的に物事を捉えることができる想像力の持ち主なのかもしれない。逆に、どれにも当て嵌まらなかったとしたら、たぶん現実においても空想においても、同じ捉え方で物事を考える想像力の持ち主と言えるかもしれないだろう。
別に、そのどちらが正解でどちらが不正解であると、そんな答え合わせをしたいわけではないのだ。むしろ、“俺”が置かれている状況的には、後者の想像力を持つ人間である方が、“この先にて控える過酷な世界”でも生き延びることができる可能性が十分に高く、また“この世界”にて求められるありとあらゆる知識や技術で活躍できる見込みがあるからだ。
前置きが長くなってしまったが、“俺”が思いついた可能性をこれからいくつか挙げてみようと思う。
想定できる場面としてはまず、『途方に暮れる人間が現れる』かもしれない。あまりの仰天ぶりに思考は停止し、自分は何故このような状況下に置かれているのか? 自分の家はどこへ行ったのか? の疑問で頭がパンクする。それで、ここがどんな場所なのかも分からないし、次第と巡り始めた極度の不安によって、心身ともに押し潰されて野垂れ死ぬというケースがあり得るだろう。
次に考えられる可能性として、『広大な見知らぬ世界の中央に置き去りとされた現実に、絶句』。少しずつ理解した脳みそには不安や焦燥、未来へと向いた危機感や、景色の見え方によっては海外とも思えるだろう西洋風が主体となった異世界の光景に、その人物は嘆きの言葉を漏らし、直にも涙をボロボロと零しながら大声で叫びながら助けを求め始めるのではないかと、“俺”はそう少なからずと思っている。
そして、最後……と言いたいところだったが、特に何も思いつかなかった。
極限に追い詰められた人間の多くはおそらく、上記通りの呆気や困惑で脳みその理解が追い付かず、次第と内々からよぎってくる死の予感に侵蝕されるよう苛まされ、先ほどまで何気無く生きてきた常識的な日常から一転として、ほぼ手ぶらの状態で未知の世界に置き去りとされた人間は、焦燥からなるパニックを引き起こし、そう時間を掛けずとも一つの“判断”が脳裏によぎると思われる。
それこそが、『死』である。
先ほどまでの何気無い現実から一転として、目の前には人間を餌にする、獣の比にならな凶暴なマモノがこちらを睨みつけている。そんな状況に、前触れもなく突然と放り出されたりでもすれば、思い切りの良い性格の人物であれば、自ら命を絶つ者だって現れるかもしれない。
それほどまでに、人類の異世界入りというものは精神に深刻な不安定をもたらし、能力も持たないただの凡人が絶望の淵へと立たされ、人間として究極的な選択を強いられる。
これが、“俺”が考える『気が付いたら異世界に飛ばされていた』の模範解答だと思える。もちろん、例として挙げた二つの回答に同意した者も少なくはないかもしれない。
ただ、“ココ”に顔を出す人間達の大半はおそらく、異世界に放り出されてもなお適応できる変態達の集まりであるのだろうと、“俺”は勝手にそう思っていた。
過去の経験や体験から基づく“妄想”が現実となり、頭の中で描いていた行動は、臨機応変なサバイバル術として手際良く住居や武器の調達を済ませていく。“異世界”に放り出されても不安や焦燥に負けず、むしろ好奇心や憧れなんかで目を光らせながら、自然と察していた身体能力の向上であちこちを動き回り、自分達なりに異世界ライフをエンジョイする様子を、“俺”は勝手に想像してしまえるわけなのだ。
話が長くなってしまった。
先の話で何を伝えたかったのか。それをこれから、手短に説明しようと思う。
“俺”は先ほど、『気が付いたら異世界に飛ばされていた』場合、自分はどのような行動を起こすものだろうか。の質問を投げ掛けた。
この質問に対する、“俺”の答えはこれだった。それは、想定できる場面として最初の方に挙げた、『途方に暮れる人間が現れる』そのものだった。
焦ったよ。見知らぬ世界が目の前に広がっていて、強烈な景色があまりに思考停止してしまっていた。
彼方へ続く無限の青空と、その水色を大海原と見立て、まるで魚のように泳ぐ雲の群れがのどかでもある。辺り一面には若葉色の草原が地平線まで広がっており、緩急のある坂を上った先にある、人の通り道のような茶色の地面がうかがえるその路肩で“俺”は佇んでいた。
何が何だか、ワケが分からなかった。
一体どうして、映画やゲームなどで出てきそうな、美麗で滑らかなグラフィックの大自然が目の前に広がっているのだろうと。VRゴーグルを着けた覚えはなく、てかむしろ着けるVRゴーグルすら所持していない自分が、こんなにも没入感に溢れる立体的で臨場感ある“異世界”の中で、呆気にとられた顔のまましばらく周囲を見渡すだけだったのだもの。
身に纏っている服装を確認すると、リアルで身に着けていた衣類そのものの感触や見た目が、見下ろす視界にハッキリと現れたではないか。両手で実体に触れ、無難にカジュアルなアウターとシャツ、スキニーパンツに革靴という最低限の洒落っ気を演出した格好をベタベタ触っていく。
……そして、俺は時間を置いてからようやく確信した。
ひとりで何度も頷いて、あぁそうかそうかと脳内の言葉を揺らしていく。この現実が受け入れられなかったんだ。どうしても、そうであってほしくないと心のどこかで願い続けていたお祈りも結局は届くこともなく、俺は現実に打ちひしがれるように俯きながら両手を腰に当て、何も考えられない、動力源を失った空っぽの思考回路に意識のみを流し込みながら、暫し胸の中に満たされた絶望の念を抱え込み、言い知れない恐怖を巡らせ、言い知れない不安を巡らせ、そして、このままでは確定してしまう不可解なままの哀れな末路を、恐ろしいほどに鮮明に想像し、途方に暮れてしまっていた。
空を見上げると、幸いにも時刻は昼なのだろうか燦々とした眩しすぎる太陽が頭上でニッコリ微笑んでいる。
あの太陽に顔がついているのが最高に意味不明で気色悪い。みんなは、太陽がこちらへ微笑んできたらどう思うだろうか。もしその時期が真夏であり、なぜか長距離走を強要され、くたびれた両脚と暑さによる倦怠感、そして喉の渇きと目の日焼けで満身創痍な状況にある中で、上空をふわふわ飛んでいる太陽さんが微笑ましくニッコリしてきたら、みんなは一体どう思う?
殺意を覚える?
素直な感想でよろしい。俺もそう思う。
噴き出る汗を拭い、段々と気温が増してきた空間の中を見渡していく。
……人が定期的に通るのであろう人間ver獣道には何も通らず、周囲に存在する木々には果物も成っていない。水分と呼べる水の気配も高台の景色からはまるでうかがえず、生きる術を探す間にもジワジワと体力を消耗する神経の擦り減り具合に、俺は項垂れた首も持ち上がらず、そのVRゴーグル越しみたいな視界をゴロンッと180°に回転しながら、その場に倒れ込んでしまった。
……なんか、重いのだ。たぶん、この視界越しでは伝わらないのかもしれないが、自分の体がとにかく重く感じられて仕方が無い。
俺が太ったというわけではなく、何かに圧し掛かられているわけでもない。じゃあ何がそんなに重いのか、という問いに関してだが、今も“全身の輪郭に沿うよう付き纏う重さの正体”について、俺は何の根拠も持たないまま直感に近しい一つの結論を決定付けた。
これは……『魔力』だ。
魔力が、この世界に充満している。それは素肌に触れるとヒリッ、バチッ、とかすかながらも弾ける感触を覚え、それが鼻先や鼻の中をくすぐるとくしゃみが起こり、脇や横腹に漂うとくすぐったさから思わず変な笑いが出てしまう。
質量無きエネルギーにおける代表的な力の一つだろう。幸いなことに、この触れた際の弾ける感触についてだが、あの静電気ほどの獰猛さは持っていない。よって、ずっと体の周り……いや、世界中にはこうしたビリビリヒリヒリが充満するように漂っているものなのだが、この中で数回ほど行った呼吸でも特別な症状は表れていないため、人体には影響が無さそうなのが救いだった。
それでも、魔力が喉に張り付くとむせるし、鼻につくとムズ痒くなる。
俺はこれから、この魔力とも向き合って生きていかなければならないのだろうか。行き倒れた自分は地面が壁になった視界の中でひとり魔力を吸い、それにひとりでむせ返り、止まらない咳で横になりながら腹を抱えていく。
ちょうど、若葉色の草原の上で倒れてしまったものだけど、けっこう勢いよく倒れ込んだ割に痛みなどは生じなく、むしろお布団のように優しく受け止めてくれた草原さんの寛容なお招きにより、自分は割と身を委ねるように、穏やかな心持ちで草原の若葉に寝転がっていたものだ。
地面から伝わる感触が、とにかく心地良いのだ。草木には弾力や香りがあり、弾力は掛け布団のようにふわふわと柔らかく、香りは自然の土混じりな青い感じの不快な部分のみを取り除いた、風吹く深緑と生気に満ちた温かな大地のアロマとも言えるようなそれであると言える。そんな異次元のダブルコンボを不意に食らうことによって、自分はそれどころではないはずなのに不思議と、抗えない眠気に誘われてしまえたものだった。