Genshin Impact ~第五の降臨者~ 作:三枝愛依
「おや? 来たんだね?」
ウェンティが走り去ってから、『英雄の象徴』を深く考えて行き着いた先が風立ちの地にある巨大な樫の木、これは千年程前に『
この大樹は、英雄が神々の島へ登り、その地を去った後に彼女の英雄として、そこにいた事を表す大樹である、とされている。
「そろそろ来る頃かなって、そう思ってたんだ……」
「風神のことをもっと知りたい。」
「『風神・バルバトス』? あいつならもうモンドから消えたよ?」
カルミアは首を傾げる。カルミアが先程、ウェンティに尋ねた事と言っていることが異なっているからだ。
「は? ウェンティはさっき、私の『風神・バルバトス』が帰ってきたという質問に否定しなかったですよね?」
カルミアは蛍たちとの会話を遮ってまで口調が乱れながらも、ウェンティに問う。
「ボクは帰ってきてない、なんて言ってないよ? よく思い出してごらん?」
「そう……ですか。 はぁ……我儘なのはどっちでしょうね?」
ウェンティはカルミアの問いを切り捨てるように返し、蛍の質問に質問で返す。
「どうして、風神のことを? トワリンのせいかい?」
ウェンティの顔が少し変わる、どこか思うところがあるのか?
「それは……『神』のことだから。」
「『風魔龍』の過去を教えてもらったから。」
「ふーん、そういえばみんなは『風魔龍』をどう思っているんだい? 気になるなぁ。」
ウェンティはどこか探るように問ってくる。
それはただただ、興味からなる質問ではなさそうだ。
「まぁ、そんなに急いで教えてもらわなくてもいいよ──ここに戻ったのは久しぶりだからさ。それにボクの帰りに不満を抱く者もいるみたいだしね。」
不満? ウェンティの帰りに不満を抱く?
カルミアは彼が話す内容に理解が追いつかなかった。
何故、ウェンティの帰りで不満を抱くのだろうか? 寧ろ、今のモンドを見れば誰もが歓喜してもおかしくない。風の加護だとか言って喜ぶだろうに……。
カルミア達が首を傾げて疑問を浮かべていると、背中の方から暴風が押し飛ばすようにぶつかってくる。
「うわぁ! 風が強すぎて、目も開けてられないぞぉ!!」
それは宙に浮く緑色の球体で、自身の周りに竜巻のようなものを纏っている。
元素生命体だろうか? 風元素生命体なら、今の蛍とは相性が悪い……ウェンティも腰に風元素の瞳をぶら下げているから、風元素使いだろう。
「あの生き物、そよ風の平原でしか現れないはずじゃ……? ──緑のやつを追ってきたのか?」
パイモンはウェンティの方を振り向くが、口笛を吹いてそっぽを向く。
カルミアと蛍は、微笑みの中で殺意を抱きながら彼を見る。
「はぁ……ここは私の出番かな。ここを消えていったのならもう風神様から力は返してもらえないかなぁ。いい加減、私を許してくれてもいいんじゃないん?」
ウェンティはふふっと笑いながら彼女の呟きを拾う。
「そういえば、風神の物語にこんなのもあったね……かつて、俗世の七執政はこの世に舞い降りた
ウェンティは唇に人差し指を持ってきて、こっそりと呟く。
「でも、彼女の力を封じた『風神・バルバトス』は思ったんだ……自由を象徴する国の神でありながら、自由を体現した星女の自由を奪うなんてあまりにも矛盾した話ではないかと……──
──だから、彼は彼女が眠り姫と共にこの世界を歩み始めたその日から、彼女の自由の根源たる力を返した、この世界に未だ
ウェンティの微笑みにカルミアはふっと笑い返す。
「やるじゃん、風神様! これでようやく、七分の一は本気出せるかな。」
カルミアは黎明の神剣を地面に突き刺して、両手を叩くように激しく打ち合わせる。
「彼が封じた私の力は……
カルミアの掌からは激しく燃え盛る炎の弓が召喚され、それをカルミアはアンバーの構えと似た、斜め上を狙って炎で形成された矢を放つ。
「
カルミアがそう言葉を発した直後、竜巻の上で浮遊する緑色の球体の更に上から曲射で放たれた炎の矢の雨が降り注ぐ。
その球体は風元素の影響で竜巻に触れた炎の矢から広がっていく火炎が、緑の球体を炙る炎の竜巻へと変えた。
「嘘っ?! か、カルミアって元素を扱えたの?!」
「ううん、正確にはそれを複製したんだよ。」
燃え盛る球体を背景に彼女の背が照らされ、逞しく見える。
実際、今の彼女は先程までの彼女とは一変して強き者の覇気を纏っている。
「ふふ、彼女はやっぱり封印すべき存在だったんだ……自由なんて言わなければ、この世界を乱す異分子をそのままに出来たのに。」
ウェンティは懐からライアーを取り出して、旋律を弾く。
「これは
「
彼女が発した言葉に今度はその力は反応しなかった。
「あれ? なるほど、旅は蛍たちとの歩みからって事か……。」
カルミアはこれまでに数多の星を駆けてきた、彼女が完全に力を取り戻せばその複製の力を持って容易く世界を滅ぼせるほどに強大な力さえも見てきた。
神も天理も何もかも、容赦のない一撃を以て滅ぼしてしまえるほどに……。
彼女が召喚しようとしたのは、旅した星々のひとつ。それはかつて、騎士にして王となった伝説の者が選定の座で引き抜いた究極にして至高の聖なる剣。
その世界では、あらゆる聖なる剣の頂点に君臨するとさえ言われていた最高の剣だ。
まぁそれも、今となっても使えないのだから最高もクソもない。
「ウェンティ? しっかりと私の一歩を詩にしなよ?」
「ふふ、任せてよ。君からはもう、かつての支配者のような風は感じないからね。いい詩が出来そうだよ。」
~~~
──かつてこの世界には、俗世の七執政と呼ばれる七人の神が世界を各々の国として分け、統治していた。
掲げる旗は違えど、そこに争いはなく。かつての神の座を求め争う、あの戦争のような惨事は起きない平和な時が続いた。
これはそんなかつてのテイワットに訪れた、一人の星々を旅する少女のお話である。
神の座を奪い合う 世界を巻き込んだ戦争
その戦は七人の神が 座を納めることで終結した
終結したその世界からは 辛苦の声も悲しみと怒りに染まった血も
世界が求めていない 欲しくない声と流れる血は消えた
平和と呼ばれるその世界では 人々が和気あいあいと過ごし
全員が微笑ましい そんな幸せな時間だけが過ぎていった
それは嵐の前の静けさだった
血と殺戮が消えた 平和な幻想世界に
自由の体現者 アスナーメが降臨するまでは
彼女がその星を訪れた時 世界を統治する七神は彼女に問った
「君はこのそよ風に包まれた世界に嵐を吹かせる存在かい?」
彼女は微笑んで七神に返した
「私は星々を旅する、自由の体現者……自由な私の意思にあなた達は頷くこと以外は許されない。それがあなたたちに許された唯一の行い。」
七神は慄いた 星々を気分で支配する絶対者
目の前の彼女は 平和な幻想世界を混沌へと戻す種であった
七神は勇敢にも 彼女に立ち向かい
星々の願いにより 彼女の自由
七つの核を 願いの鎖で封じた
彼女は初めて知った
「独りでは成せない可能性、自由すぎたが故の孤高、それが生んだ敗北」
彼女は鎖で縛られ 空を降りる
旅の終わりではない これは眠り姫と出会う彼女の 真なる旅の始まりであるのだ
~~~
「ふぅ……やっぱり、複製が一番使いやすいわ! 風神に封じられてよかった、これが岩神とかだったら少し面倒だったよ。契約しか頭になさそうだし。」
カルミアの背で灰と化す緑色の球体を見て、ウェンティは旋律を止める。
「物語はここまで。いや、物語はここから始まるんだ。」
「か、カルミア……今のが七つの力のうちの一つ?」
「そう。私が自由の体現者である所以、七つの力のうちの一つ。」
カルミアは手のひらに風、炎、氷、雷の元素を同時に四つも召喚する。
「四つも元素を使えるのかッ?!」
パイモンもこれには驚きである、この世界のことをよく知るパイモンにとって二つ以上の元素を持つ人間は異例、神でも中々にない事だと理解している。
「この能力は私が認識した力のうち、私が扱える程度の力は全て複製して自分のものに出来るというもの。」
「それって……ウェンティの詩を聞いてた限りだと、いずれは七神の力も……?」
カルミアは「ふふっ」と笑って答える。
「彼らの力なんて、私の記憶の中じゃ微々たる力だよ。」
かつてのカルミアにとって、七神は微々たる力しか持たない存在。
だが、パイモンがそこで首を傾げる。
「じゃあ、なんでお前はそこまで七神を圧倒していて負けたんだ?」
「うーん? それはね、私が独りだと気付いたから、こんな言葉を知ってる? 塵も積もれば山となる、多勢に無勢。」
かつてカルミアが旅した星々の、人々の願いが七神の構える抵抗の刃に纏ったのだ。
その一撃は、カルミア独りの全力を押しのけ、彼女の力を封じる程のものであった。
彼女の敗北は独りであったこと。唯一、彼女が自由でありながら持っていなかったもの。
それが彼女の敗北した原因である。
「な、なるほどなぁ……もしかして、おいらたちは本当に凄い奴と旅してるのか?」
「パイモン、今更?」
パイモンの疑問に蛍がつっこむ、そこまで凄い存在じゃない。
今は私の唯一の取り柄でもある、自由も奪われていて、私であって私ではない状態だ。
「そうだ、風神はかつて
なんともビビりな風神様だ。
まぁでも、ひとつ言えるのは……私にもう世界を支配する気はないし自由を求めるのはそれが私であるからというだけ。
その力でどうにかしようとは思わない。
「風向きの影響を受けるのは龍だけじゃないようだね。──そうだ、さっき誰かに龍の過去を教えてもらったって言ってたね?」
蛍は二人の代わりにウェンティに手短に説明する。
「そう、ここまで来たのは双方が武力行使をし始めたからさ。」
ウェンティはどこか遠い目をして言う。
「でも彼の最初の憎しみは、人々が『四風守護』を祀らなくなったからじゃない。」
「──腐食……?」
ウェンティの話す言葉を遮ってカルミアが言う。
ウェンティは驚きながらも、彼女の言葉に頷いた。
「あれは自然に生まれた憎しみなんかじゃないんだ、腐食された後の産物だよ。」
「ふ、腐食?」
パイモンと蛍が首を傾げる。
「心臓に流れ込んだ黒い血が彼を苦しめ、何年もの間、穏やかに眠れていないんだ。──だから今回、目覚めた彼の精神がアビスの魔術師の呪いによって腐食してしまった。」
「アビスの魔術師……? 聞いたことがあるような気がする。」
「人ならざる者によって結成されたアビス教団、人類の敵となる組織だよ。」
アビス? 聞いたことがあるような、ないような……。
「彼らのことはよく知らないけど、人間の世界に対して深い悪意を持つことだけは知っている。──荒野のヒルチャールも、ヤツらの指揮で動き、ヤツらの手足となってるんだ。」
なるほど……人類の敵となる秘密結社のような存在か。
まぁ、定番といえば定番の悪だろう。
「七神程度にまで戻れたら、簡単に潰せるのになぁ。」
カルミアは大きな欠伸をしながら呟く。
「ここに来るまで、ボクもトワリンと同じ呪いに蝕まれていた。」
そうだろうと思った、そうでなきゃ困る。
「でも、今ボクたちがいる場所は『英雄の象徴』、モンドの全ての源だ。──木々の隙間から流れる風は心地よく、ボクの好きな匂いがする……君と一緒に木陰の下にいると、龍の涙が浄化された時みたいに、ボクの中にある毒が消えていくんだ……」
ウェンティにとって、この大樹の下は心身を安らぐのに最も適した、最高の場所だということ。
「うん、だいぶ良くなったよ。」
「それで、お前はどうして毒を……?」
パイモンは至極当然の疑問をウェンティにぶつける。
「それはまぁ、前にトワリンと会話しようとした時に……誰かさんに邪魔されてね。──そのせいでトワリンの呪いを払うどころか、自分も『アビス』の毒に蝕まれちゃったんだ。」
おそらく、一番最初に蛍たちと風魔龍を見た時の事だろう。
あの時、蛍の風元素が暴走して身を潜んでいた事がバレた事で風魔龍は逃げてしまった。
「つまり、私たちのせいで……?」
「そうだよ!」
一番の戦犯であると分かった蛍は目を見開いて、硬直する。
驚きと申し訳なさで思考が停止しているようだ。
「蛍〜?」
カルミアが目の前で手を振っても反応しない。
「ねぇ、旅人、それとアスナーメ? お詫びにボクと一緒にモンドの大聖堂に行ってくれないかい?」
そうか、私はウェンティに名乗ってなかったっけ?
アスナーメと呼ばれても旅人たちが分かりずらいし、その名を知っていれば恐怖するだろう。
「ウェンティ、私の名前はカルミアだよ。 色々と棘のあること言ったけど、よろしく。」
カルミアは出会ってしばらく経ったこのタイミングでやっと自己紹介する。
お互いが微笑みながら、片手を差し出して力強い握手を交わした。
「よろしくね、カルミア。それとどうかな? 旅人。」
「モンドの大聖堂? 何しに行くんだ?」
「取りに行くんだ……ライアー───『天空』をね。」
「ただの吟遊詩人にしては、危ないことをしますね?」
「ふふ、風魔龍の腐食を治せるかもなんて言えば、きっと返してくれるよ。」
「返す…ねぇ? とりあえず、行こうか!」
カルミアは蛍とパイモンの手を握って前を進むウェンティに続く。
「歩きながらでいいから、触っても──ぐふぅ!」
歩き始めて早々に一人、歩行困難な状態へと陥った。
~~~
「ふぅ……それで、『天空』って一体……」
ウェンティの背をついて行き、モンドの大聖堂前まで蛍たちは着いた。
ウェンティの言っていることが理解出来ず、未だに大聖堂に来た理由が分からなかった。
「モンドの至宝──」
「──かつて、『風神・バルバトス』が使っていたライアー……でしょ?」
蛍に肩を借りていたカルミアは蛍から離れて、大聖堂を指さす。
「それがここに保管されてるから、返してもらいに来た……そうでしょ?」
「あはは! 君はボクの気持ちも少しも汲み取ってくれないなぁ。」
「そう? もう私たちは立派な友人だよ。」
「あの自由の星女とお友達か……そう、天空のライアーがあれば、ボクはトワリンを悪夢から目覚めさせられる。」
パイモンは首を傾げて疑問を口にする。
「本当にそれで風魔龍の破壊を止められるのか?」
ウェンティは胸に手を当てて堂々とした表情で言う。
「ボクの目を見て、ボクのこと頼もしいと思わない?」
「元素生命体を人に押し付けてくる吟遊詩人が頼もしいようには思えないね。」
「それで、どうやって天空のライアーを手に入れるんだ?」
「さっき、カルミアも言ってくれたけど『天空のライアー』はこの大聖堂のとある安全な場所に保管されていると聞いた──まずは下調べだ。もし興味があるなら、一緒に来てくれても構わないよ?」
ウェンティは自信満々の顔で大聖堂へと入っていった。
彼がこの国の至宝ともいえる『天空のライアー』を、ただの吟遊詩人としてしか知られていない彼が手に入れる?
普通は不可能だ、だが彼は普通ではない……だから、少し気になる。
カルミアは蛍とパイモンの手を握って「行こう」と促す。
それに頷いた二人はカルミアの手をそっと優しく握り返してウェンティの後を追った。
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モンドの大聖堂、それはとても静かで神聖な雰囲気が漂う教会のような場所。ここは別名、西風大聖堂と呼ばれており、ここは『風神・バルバトス』が祀られている、その見た目はゴシック様式のかつて旅した地球と呼ばれる星のドイツという国のとある大聖堂を連想させる。
ウェンティは自信満々にシスターへと歩み寄る。
「まぁ、見てて?──こんにちは、シスターさん!」
ウェンティは爽やかな幼い子供のような声を活かして、シスターに優しく話しかける。
「風神の御加護があらん事を。若き詩人さん、何かご用かしら?」
「実はね、モンドの危機を救う方法が分かったんだ!」
ウェンティの言っていることは今のモンドにとって何よりも朗報、そしてそれを伝える相手としてシスターは相応しくなかった。
「でも、それは騎士団に報告するべきよ。関係ない修道女に言ってもどうにもならないわ。」
ウェンティは彼女の正論をおかしいと言わんばかりに笑い飛ばす。
「ははっ! そんな事ないよ、お姉さんの力が必要だから話してるんだ。」
ウェンティはすぅと息を軽く呑み込むと、上目遣いで子供が親にオネダリするように言った。
「そう、たとえば……『天空のライアー』。あれがあれば、ボクは風魔龍を──」
「おかえりください。」
『天空のライアー』という言葉が出た途端に、穏やかで優しそうなシスターはガラッと変わってウェンティに冷たい視線を送った。
「え?」
彼女の返しにウェンティはスキを突かれたかのように驚き、声を漏らす。
「あれはとても凶悪な龍ではありますが、代理団長様が意を決すれば倒せないこともない相手です。」
シスター……あなたは『風神・バルバトス』を祀るこの大聖堂の修道女なのでは?
それが、その立場でありながら神の眷属である『トワリン』を"暴走して危ないから倒そう"だなんてあまりにも酷いし、修道女としてどうなんだろうか?
カルミアと蛍は、ウェンティとシスターの会話にどこか悲しげな表情を浮かべる。
「東風を裏切った愚獣です。風神様だって、あいつを許したりしないはずだわ!」
許さないのは、都合が良すぎるモンド民じゃないかな?
カルミアはかつて、色んな星を旅した星女。それ故に色んな星の人間を見てきており、人という個体の醜さもよく知っている。
今のカルミアは、その醜さを表に出している人間に向ける冷淡な視線を向けていた。
「うっ……」
ウェンティはどこか苦しむように悩み、顔を俯かせる。
カルミアはシスターの言っている事に微かに怒りを覚えていた。彼女の身はぷるぷると震えている。
この旅で少しづつ、信頼や仲間、独りじゃない人の温かさを知ってきたが故にこのようなあまりにも自分勝手すぎる酷な人間は極度の拒絶反応を起こす。
「ん……えっと、お姉ぇさぁん!」
ウェンティは彼女の心を堕とすかのように、甘い声で再び呼ぶ。
「ダメなものはダメよ、詩人さん。」
だが、それも全て無に帰す。シスターは断固として『天空のライアー』を渡すとは言わなかった。
だが、彼女は心のどこかで母性を擽られているのか、ウェンティの甘い声に堕とされかけていた。
ウェンティは深く息を吐きながら肩を竦めると、息を整える。
「うん……仕方ないね。」
ウェンティは蛍とカルミア、パイモンたちの方を振り向くとシスターの方に向き直る。
「これ以上、隠したままにするわけにもいかないか! ──」
ウェンティはニッと笑うとシスターに告げる。
「──ボクの忠実なる信者よ。喜べ! 今、君の目の前にいるのが、『風神・バルバトス』本人なんだ──」
ウェンティの言葉に蛍とパイモンは身と表情が氷のように固まった。
カルミアは「やっぱりか……」と肩を竦めて、彼の方へ歩み寄る。
「──驚いた? 泣きたくなった? 仕える神様に会えてどう? 感動した?」
「他に用がなければ、私は戻って仕事をさせてもらいます。」
シスターはウェンティに冷たい眼差しを向ける。
反応が薄いシスターにウェンティは「えぇ?!」と驚き、当然だと頷きながら近づいてきたカルミアに襟首を掴まれて大聖堂の外へと引き摺られる。
「数千年も前に失踪した神が突然戻ってきたなんて、誰が信じるの? ウェンティはバカなの?」
引きずる途中で蛍とパイモンの手も握って、共に大聖堂を後にした。
~~~
「あほなの? あなたが『風神・バルバトス』だと言われて分かるのは私か俗世の七執政、強いて言うならそれと関わりがあった人間ぐらいだよ?」
「ボクから神様としてのオーラはないのかな?」
ウェンティがしょぼしょぼと落ち込んでいるところにカルミアは容赦なく槍を突き刺す。
「うん、ないね? 今のウェンティは私でも簡単に倒せそう。」
「そ、そんなぁ! ボクはこれでも風神なんだよ?!」
「知ってる、魔神戦争を生き残ってあの時代から今日まで生き残った数少ない神様の一人なんでしょ? 後継者もいなさそうだし。」
「お、おい! ウェンティが風神バルバトスってどういう事だよ?!」
「う、うん。私も驚いた……あれは本当?」
パイモンと蛍は逆に今まで気づかなかったのか……。
カルミアがウェンティの代わりに彼を説明する。
「事実だよ、私の七つの力のうちの一つを封じたのも彼だからね。」
「あれは魔神戦争よりも恐ろしかったよ、君ってば何でも出来るんだからね。」
「あの時の私からすれば、あなたたちの持つ願いの力ほど恐怖したものはない。」
「じゃ、じゃあ! カルミアは最初からこいつが『風神・バルバトス』だって分かってたのか?!」
「勿論。だって、見たことある顔だもん。」
「ふふ、覚えていてくれるなんて嬉しいよ。」
「まぁ、ウェンティが風神である話なんて今はどうでも良くて……恐らく、正規の手段で手にしようとしてもほぼ不可能だと思うから……」
カルミアはニッと笑ってウェンティを見る。彼女の思考を読んだかのようにウェンティも頷いて微笑む。
「警備が手薄になる、夜の西風大聖堂を狙って『天空のライアー』を盗んでしまおう。」
「ぬ、盗むのか?! 盗みなんてしたら、西風騎士団に……ジンにボコボコにされるぞ!! それに風神の至宝を盗むなんて風神が許さないんじゃ……」
「ボクが風神・バルバトスだよ? ボクが欲してるんだから、盗んでも怒らないよ。それに西風騎士団もちゃんと話せばきっと理解してくれるよ。」
「そ、そうだった……うーん! お、おいらは知らないからな!! おいらは手伝わないぞ!!」
「わ、私も一応『名誉騎士』の立場があるんだけど……」
ウェンティは蛍の肩を掴んで、真剣の眼差しで語りかける。
「モンドの平和とトワリンの安息よりも自分の名誉かい?! それが騎士の在り方なのかい?!」
「わ、分かったよ……ウェンティ、本当に『天空のライアー』があれば『トワリン』は救えるんだね?」
「風神の名にかけて誓うよ、ボクは夜になったら大聖堂にて待機してるからまた夜に集合しよう。」
ウェンティの提案に蛍、カルミアは頷いて、パイモンは知らんぷりしていた。
ここからは、『国の至宝』を『国の未来』のために盗む、正義の怪盗達の戦いである。
作中におけるカルミアたちの下ネタや暴言をどこまで許します?
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ち─こみたいな伏字があるなら許せる。
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ち○こみたいな伏字があるなら許せる。
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────って完全に─で伏せて欲しい。
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ちんこってもろに言って欲しい。興奮する
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カルミアは下ネタを言う変態じゃない!
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カルミアは伏せたら何も残らない!