の序章
「ねー!みのるー!ポストにまたいっぱい溜まってるよ。これ見てもいいやつ?」
「いいが、依頼の手紙だったらこっちに寄越せ。俺が読む。」
実がそう言ったすぐそばからサトルは紙を仕分けし出した。
その表情はいかにも真面目であって、実はそれをみて優雅にコーヒーに口をつける。
iPadで新聞を読んでいる。
この事務所にはテレビがない。メディアが流す情報は信用できないとココを作るときに実がいったからだ。絶対NHKがめんどいからだとサトルは踏んでいるが大人なので口にださなかった。
「実、4個手紙来てたけどこれいつの?1週間もたってるとかいわないよね?」
「俺は、必要ないものは見ないんだ。俺の天才的な頭脳に入る容量は決まっていてな、申し訳ないんだけどな笑」
「もー、じゃあしゃあないな」
サトルは馬鹿なのでこんな適当な言い訳ですぐに納得する。馬鹿すぎて冗談が通じないのだ。
だが、実が言ったことの一部は本当で、IQは197、天才であった。
実は4個の手紙を乱雑に開けて、読む。
「はい、コーヒー」
カラになったコップにコーヒーを注いで渡した。サトルは馬鹿だが気の利く男なのだ。
「この依頼受けるか。サトル、すぐに用意しろ。3番と5番の引き出しの中全部カバンに詰めとけ。」
「えっ!珍しい。何週間ぶり?」
2人が今いるのは事務所であった。探偵ともいえないし、何でも屋でもない。
だって実は依頼をほぼ断るのだ。
依頼を受けるのなんてめったになくて1週間に一回うければいい方。1ヶ月ないことだって何度かあった。
でも依頼はひっきりなしにとどく。サトルが宣伝するからであった。
サトルは3番と5番の引き出しを開けてつめこみながら、実に尋ねた。
「どの依頼うけるの?誰の依頼だろ。蓮生かな、拓司?、蘭ちゃんとかかな。いやワンチャン、マリー!?」
「知らん、着いたらわかるだろ。早くしろ」
人の名前を出しつづける声を背に、実はオートロックのドアを出た。
エレベーターを待っている間に、準備が終わったサトルが横に並んだ。
重いリュックを背負って、帽子をかぶってる。こいつはイケメンなので帽子は必須なのだ。たまに実もサトルの顔の良さにやられる。
チンッと音がして扉が開いた。
「ねぇ、やっぱりあの依頼玲央な気がするんだよね。前あった時悩んでるって言ってたし。」
「知らん。レオってやつは女か?」
「んーや、男。性転換したんだよ、この前カラオケで相部屋になって意気投合したって話さなかったっけ?」
「その悩みは、亡くしたイチモツを取り戻したいでちゅ、ママ〜ってか?そうでないなら違うだろうな。」
「えー、じゃあ誰だろ…」
きっかり35秒間経ってもう一度チンッと音がなった。
この依頼は実に1ヶ月ぶりの仕事であった。サトルは気合を入れて、リュックを背負い直す。
そしてにっこり笑ってまた、だらだらと話すのだった。
ちなみに、この事務所は新宿に置いてあるタワマンの40階の一帯全部であった。
実はその天才的頭脳で、株に大会の賞金、学生で起業した会社の貯金なんかで人の人生100回分裕福に過ごせる金がある。
つまり何を言いたいのかといえば。
この2人がやってることは正義感なんてなく、ただの好奇心で始まった完全な金持ちの道楽であるということである。