そう感じたアコは、イオリとチナツを巻き込みながら、ヒナ委員長(と先生)の動向を追うことにした。
※pixivとのマルチ投稿を行っています。
「先生、お待たせ」
“全然待ってないよ。私も今来たところだから”
「そう、よかった。じゃあ……」
(ヒナに手を差し出す)
「…?…先生?」
“せっかくのデートなんだから、ヒナと手を繋いで歩きたいな”
「てっ…!?誰が見てるか分からないのにそ、そんな……!」
“でも他の子たちに見られないように、ここまで来たんでしょ?”
「そ、そうだけど…」
“それとも、手を繋ぐのは嫌だった?”
「そんなことない!た…ただ、恥ずかしい、から…その…」
“……ヒナは可愛いなあ!”
「せ、先生!…もう、せっかくセットしたんだから…」
“ごめんごめん。じゃあ、行こうか”
……………
「行政官、委員長が先生と合流。共に移動し始めました。方角的に目的地は付近の公園と思われます。」
「公園ですか…それだけでは何を行う予定なのか読めませんね…」
「ねぇアコちゃん…本当に続けるの?調査…というか尾行…」
「当たり前です!委員長が極秘で先生と、しかもこんなに学園から離れた場所で待ち合わせなんて!これは我々に黙って委員長が先生とたった二人でゲヘナの脅威に立ち向かっているに違いありません!」
「そうかなぁ…」
「二人とも、我々も移動しないと…」
「はい!さあ行きますよイオリ!」
「アコちゃんは元気だなぁ…」
────数日前────
【ゲヘナ学園 風紀委員会本部】
「お二人とも、変だと思いませんか?」
「何が?」
「我々がどんなに頑張っても、学内の風紀は改善されず、仕事が一向に減らないことですか?」
「違います!最近のヒナ委員長のご様子がおかしいんです!何も感じないんですか!?」
「え?委員長の…?」
「そう言われましても…特に何かあったようには思いませんでしたが…」
「またアコちゃんの勘違いでしょどうせ」
「…はぁ…お二人は風紀委員として次代のゲヘナ学園を支える立場であるという自覚が足りませんね」
「いや、それとこれとは関係ないでしょ」
「いいですか?まず委員長の身体的な変化からです。肌つやが以前にも増して良くなり、目の隈が無くなり、目つきが柔らかくなり、ついでになんだかいい匂いがするようになりました!いえ前からいい匂いではあったんですけどそれとは違う香水の香りが!」
「行政官らしく変態性の高い発見から入りましたね…」
「今更だよチナツ…」
「さらに以前に比べてよりスピーディーにお仕事を片付けられるようになられました。と思えば、時々窓を眺めて物思いに耽るようにため息をつかれることが……。その数、先日は午前に6回、午後はなんと11回です!」
「そして何よりも気になる変化は委員長が自ら休憩時間を設けるようになったことです!以前は我々がいくら提案しても『休みなら取ってる。1日に5分くらい』と仕事を途中で止められることが無かったのに!」
「あ、それは確かに!」
「初めてまともな発見がでましたね」
「しかし、私は気づいてしまったんです…!委員長が自ら設けるようになったこの自由時間は休憩のために使っているわけではないのだと…!」
「どういうことですか?」
「先日私がお手洗いに行った際、本当に偶然たまたま委員長がお手を洗っていらっしゃったんです」
「なんでそこそんなに強調するの?」
「そこで私は見たんです…!普段は手袋をしてらっしゃるので気づきませんでしたが、手を洗っている様子を見て発見しました……委員長の手にいくつも絆創膏が貼ってあるのを…!!」
「絆創膏…ですか?」
「あの委員長が手や指とはいえ怪我をするなんて滅多にありません!ですからこれは委員長が何かトラブルを一人で抱えていらっしゃるサインに違いないのです!」
「うーん…そう言われると確かに気になるかもしれない……」
「そこまで気になるのであれば、委員長に直接尋ねられたらどうですか?」
「委員長が私達に黙って行動されている時点でそれは他の風紀委員には話せないということを意味しています。こうなったら、私達が委員長の抱えていらっしゃる秘密を暴く必要があります!これはこのゲヘナ学園の秩序を守るためにもやらなければならないことなのです!」
「そ、そこまで大げさなことか……?」
「もしかしたら行政官の勘違いということも…」
「……いいですか、問題が表面化してからでは遅いかもしれないんです。それに、お二人はヒナ委員長と私が卒業された後にゲヘナ学園の風紀を守る中心人物となるのですよ。……それなのに、お二人は今回も委員長一人にお任せするつもりなんですか?」
「「……!」」
────翌日────
「……ふぅ」
「お疲れ様です委員長。休憩されますか?」
「うん。じゃあアコ、一時間くらいしたら戻るから」
「はい」
(ドアを開け部屋を出るヒナ)
「……出ていかれましたね」
「はい。ではお二人とも、頼みましたよ。私はここでサポートを行いますので」
「了解」
「分かりました」
……………
「こちらチナツ。委員長を確認しました。しきりに周囲を気にされて、なんだか周りを警戒していらっしゃるような……」
「うん。まるで他の人に見られたら困るみたいな。う〜ん…確かにこれは何かを隠しているのかも…」
『分かりました。このまま気づかれないよう十分に気をつけながら尾行をお願いします』
……………
「あれ、ここは…」
『どうしました?』
「いや、委員長…学食に入っていった」
『が、学食ですか?一体どうして……』
「しかし、学食に向かうとして何故こんな時間帯なんでしょう…?昼食は既に済まされたでしょうし、休憩におやつでも召し上がるのでしょうか…?行政官、どうしますか?」
『とりあえず、中まで入って下さい』
……………
「一応開いてるとはいえ、流石にこの時間だと誰もいないな……」
「あっ、委員長が!」
『どうしました!?』
「今、奥の厨房に入っていくのが見えました!」
『厨房…ですか?そこで何が……』
「どうするアコちゃん?流石に厨房には入れないよ。委員長だけじゃなくて多分給食部の子もいるだろうし」
『そうですね………仕方ありません。今回はここまでとしましょう』
「わかりました」
『続きは明日にでも』
「「……え?」」
……………
「まさか休日にまで駆り出されるなんて…」
「ですが、三人で行動する意味はあるでしょうか?見つかるリスクが高まりますよ?」
「もし今日が決行の日だとしたら、戦力は多くて困ることはありません。見つかるリスクについても…委員長はずっと先生を見つめていらっしゃるようなので何も問題ありません」
「でも二人が何話してるかまでは、隠れながらじゃ聞き取れなくないか?」
「大丈夫です。ミレニアム製の高性能小型集音器を用意してきました!これなら500m先の委員長のかわいいかわいいくしゃみの音もばっちり聞き取れます!」
「…なんか委員長を守るというより、二人の会話をこっそり聞くことが目的にな」
「いえ決してそんなことはありませんよええはい」
「否定が早いし早口で怖いよ…」
……………
「綺麗な公園ね」
“うん。晴れてよかった”
「…広いのに、誰もいないみたい」
“街から大分離れてるし、遊具もあまり置いてないみたいだからね”
“ここなら、今はゲヘナの風紀委員長でいる必要はないよ?”
「先生…」
“……と、とりあえず…ベンチに座らない?”
「運動不足…」
“普段こんなに歩かないから…”
「ふふっ、いつも私に休んで休んでって言うけど、先生はもうちょっと体を動かしたほうがいいみたい」
“善処します…”
……………
「多少間を置いて公園内に入りましたが……」
「入口の数も限られてるし、すぐに入ったら流石にバレるかもしれないからな……」
「先生を発見しました。現在広場のベンチに腰掛けているようです」
「公園が目的地であっても今は決行の時ではない…?それとも誰かを待っている…?」
「……あれ、委員長は?」
「くっ、委員長の庇護欲を掻き立てる後ろ姿を遮るベンチの背もたれが憎い…」
「流石にそこまで小さくはないかと……先生と一緒にいらっしゃらないということは……公園に入ってから別行動されたのでしょうか?」
「後ろからだと見つかる心配はありませんが、状況が確認しにくい上に声も聞き取れないですね…移動しましょう」
「了解!」
……………
「………ハッ!?」
「ど、どうしたのアコちゃん!?」
「あああ…あれ………」
「い、委員長が先生の膝の上に座ってます…」
「え!?………わ、本当だ……だから後ろからだと先生しか見えなかったんだな……」
「どっ、どどどどういうことですか!?どうして委員長が先生とあんなに密着しているんですか!?」
「し、知らないってば…アコちゃん苦しい……」
「先生がいたずらで委員長を膝の上に乗せている、という可能性は……?」
「そ、それです!それしか考えられません!」
「確かに、あのヘンタイならありえるかも…」
「……?」
「…あの、行政官?」
「そういえば、二人の会話が聞こえません」
「聞こえないって…」
「集音器の故障とか…あっ」
「チナツ、双眼鏡借りますよ」
「次からは奪う前に言おうねアコちゃん」
「……!」
「どうされました?」
「寝て、いらっしゃる…」
「寝てるって…委員長が…?」
「では……眠っている委員長に先生がいたずらとして膝の上に乗せているということでしょうか…?」
「う〜ん、やっぱりそうなのかな……」
「ですが…今から敵対勢力と交戦するにしては少々呑気すぎるような…」
「そんな状況で委員長が寝るはずないもんね……」
「委員長の貴重な寝顔委員長の貴重な寝顔……くっ、私に凄腕スナイパー並みの視力があればこんなレンズに頼らず直接網膜に焼き付けられるのに…!」
「誰かさんは全く気にしてないみたいだけど…」
「ええ…」
……………
「……ん、先生…?」
“あ、ヒナ起きた?”
「ふぁ……ん、ごめん…少し寝てたみたい…」
“むしろリラックスしてるみたいで安心した。よく眠れた?”
「うん……久しぶりにひなたぼっこしたかな……それに」
“それに?”
「その………先生と一緒だから、かもしれない……」
“…………ヒナ”
“これからは一緒に暮らそうか”
「えぇっ!!いや、その、それはまだ早すぎるというか……っ!」
……………
「…………」
「……あの、行政官…どうされましたか?」
「ずっと無言なの怖いんだけど……」
「………ぅおおぇっっっっっ」
「え、えずいた⁉」
「何で⁉あ、アコちゃん何があったんだ⁉具合悪いのか⁉」
「い、いえなんでもありません…調査を続けましょう……」
「いや絶対なんかあった反応じゃんか……」
「行政官、委員長と先生はどのような会話を」
「おおぇっっっっっ」
「再発⁉」
……………
(日差しが強くなってきたので、東屋に移動した)
「あの…先生…」
“どうしたの?”
「えっと……こ、これ……」
(バッグからシンプルな水玉模様の巾着袋を取り出すヒナ)
“これって………”
「せっかくのデートだから……その、作ってみた」
“お弁当!?”
「う、うん……フウカにも色々と手伝ってもらったんだけど……」
“ヒナの手作り……家宝にしよう……”
「いや、食べてほしいのだけど…って、前にもこんなやり取りをしたような……?」
“そうだったっけ?”
「二人分作ったから…よかったらその、一緒に…」
“あ……”
「?…先生?」
(鞄から大きめのランチボックスを取り出す)
“私も持ってきたんだった…”
「あっ…先生も作ってきてたの?」
“まあ、サンドイッチとか簡単なものだけどね?”
「…ごめんなさい。私が何も言わずに持ってきたから…」
“ヒナが謝る必要はないよ!それに、私はヒナにお弁当を用意してもらって嬉しかったよ?”
「…ありがとう、先生。…じゃあ、その…私は先生の作ったお弁当、食べてもいい?」
“じゃあ、交換しようか。でも、二人分あるから食べ切れないと思うよ?”
「それなら、今日の夕食にする」
“そんなにバリエーションないから同じ味になると思うけど…”
「別に構わない。せ、せっかく先生が作ってくれたんだから…」
“…!じゃあ、私もヒナの手作り弁当二人分食べていい!?食べきれなかったら夜に食べるから!”
「…同じ味が続くと思うけど」
“別に構わないよ。せっかくヒナが作ってくれたんだから”
「…ふふっ。今の、私のマネ?」
“うん。どうだった?”
「似てない」
“そんなっ”
…………
………
……
────数日前────
【ゲヘナ学園 学生食堂厨房】
「……これで、どうかな」
「…うん、盛り付けも完璧です!流石はヒナ委員長ですね!」
「い、いや…フウカの教えが良かったおかげだから……その、ありがとう…」
「そんな、とんでもないです!……あ、もうこんな時間……私、後片付けしますので委員長はお仕事に戻って大丈夫ですよ?」
「あ……その、私にも手伝わせてほしい……私のわがままで時間を割いてもらってるのに、いつも申し訳ないなって、思ってたから」
「委員長……」
(ああ、もしヒナ委員長が風紀委員会でなく給食部にいてくれてたら……!)
「………」
「………」
「……どうしたら」
「………?」
「先生は、もっと喜んでくれるのかな……」
「……あの」
「…え?……あっ!いやその、今のはえっと……」
「……先生は、委員長が自分のために作ってくださったということだけでとても喜んでくださると思います。それでも委員長は先生のためにお忙しい中毎日練習してきました。…先生なら、きっとそれまでの努力や真心までも汲み取ってくださるはずです」
「うん…」
「それでも不安なら…例えば、ヒナ委員長が先生に食べさせる……とか」
「…?えっと、食べさせ…?」
(卵焼きを箸で持ち上げ、左手を下に添えながらヒナの口元に近づけるフウカ)
「こういう風に…あ~んって♪」
「…………そ」
「そ?」
「そ、そそそんなことっ!私には、無理!大胆すぎる…っ!そ、それにフウカなら先生は喜んでくれるかもしれないけど、私は全然可愛くないから…!」
「そんなことはありません!ヒナ委員長はとっても可愛らしいです!もっと自覚なさるべきです!」
「ふ、フウカ?近い…」
「大丈夫です、絶対に上手くいきます!後はヒナ委員長の勇気だけです!」
「勇気……」
…
……
………
“すごい、どれも本当に美味しそう……”
「……」
“…ヒナ?”
「せ、先生!」
“はい⁉”
「あ………」
「あ、あーん…」
“!?”
「……」
“…………夢?”
「夢じゃないから!早く……その、恥ずかしい……」
“ご、ごめん!……あーん…”
「………」
「……その、どうだった?」
“美味しすぎる……幸せ……毎食やってほしい……”
「な、何言ってるの先生!もう……」
…………
「………ねえ、チナツ……あの2人って」
「ええ、今私もイオリと同じことを言おうと思っていた所です」
「どうしよう……これ絶対見ちゃいけないやつだったよね」
「委員長に知られたらどんな罰が待っているか……」
「こうなったらもう……」
「今私たちにできる最善の策は……」
((二人に気付かれずにここから脱出すること…!))
「ね、ねぇアコちゃん、もう帰ろうよ…ゲヘナの脅威もなんも無かったじゃん……ほら、ね?」
「そうですよ…それに、もし今委員長に見つかったら…」
「……ふふっ、なるほどなるほどそういうことですか……先生こそがゲヘナの、キヴォトスの……いえ、私の脅威だったというわけですね!?!?」
「あっダメだヤバいスイッチ入っちゃった」
「こうなったら…この集音器に隠された爆破機能で先生を葬るしか……」
「ただの集音器になぜそんな機能が……!?」
「ダメだってアコちゃん!もうオチ見えてるって!」
「そうですよ!ただの私怨で先生に危害を加えてはいけません!」
「離しなさい二人とも!あんなの見せつけられたらもうこうするしかないじゃないですか!?」
「いや私たちが勝手に覗き見してるだけなんだけどね!?」
「行政官、あまり騒がれると……!」
……………
“あーん……”
「あ、あーん……」
「……ん、おいしい…」
“……もぐもぐしてるヒナ、ずっと見ていたい……”
「なっ!何言ってるの!人が食べてるとこ、あんまりじっと見ないで…!」
“ごめん、ヒナが可愛くてつい”
「もう………?」
“………ヒナ?”
「…………」
“………え?”
(一瞬、ヒナの後ろに巨大な黒いオーラが見えたような……)
「はぁ……全く」
“……ひ、ヒナ?”
「……ごめん、先生。すぐに戻るから」
“……?えっと……いってらっしゃい?”
……………
「いい加減にしてください二人とも!離しなさい!」
「それはこっちのセリフだってアコちゃん!」
「行政官……頼みます……静かに……!」
「これは誰かがやらなくてはいけないことなんです!委員長のために!」
「……そもそも、どうして二人をつけることにしたの?」
「今更何を言ってるんですか!!最近の委員長の様子が変わった原因を探りに来たんですよ!」
「ふーん……それで、この後はどうするの?」
「そんなの決まってます!これで委員長を先生の魔の手からお救い……」
バキッ!
「……え?」
(素手で粉々に砕かれた集音器)
「頭隠して尻隠さずという言葉があるように……物陰に隠れたつもりでもヘイローで位置が分かってしまう……というのは割と常識だったりするのだけど……まあ、あまり現場に出たことがないなら知らなくても仕方ないか……勉強になったわね?アコ」
「まあ、こんなに静かな場所であれだけ騒げば嫌でも気付くけど」
「あ、ああ………」
(ああ、終わった……)
(短い人生でしたね……)
「ひ、ヒナ委員長!こ、これはその……」
「言い訳は聞きたくない」
「はっ!はいぃぃぃ………」
(委員長のアコちゃんを見る目……まるで養豚場の豚を見るかのような……)
(あれだけ頼もしい委員長が、敵に回られるとこんなにも恐ろしい存在だったとは……)
“ヒナ!……あ、みんなもいたんだ?”
「あ……先生?」
(一瞬で恋する乙女の表情に!?)
(先生すご過ぎないか!?一体委員長に何したんだ!?)
“とりあえず……みんなでお昼にしようか”
「「………え?」」
“二人だけじゃ食べきれない量あるし、みんなお昼用意してないんでしょ?”
“反省会ならいつでもできるし、ね?”
「……まあ、先生がそう言うなら」
(……た、助かった……のかな?)
(……少なくとも…生きてますね、私たち)
「………はぁ、良かれと思ってしたことなのは理解したけど……アコ」
「はっ……はい!」
「続きは来週に……ね」
「はいぃっ!」
(猶予が伸びただけだったかもしれない……)
(私たち、名前すら呼ばれないのが逆に怖いのですが……)
「二人共」
「は、はい!」
「委員長、この度は本当にすみませんでした!」
「ああいや、大丈夫。二人は巻き込まれただけなんでしょう?」
「大方、アコに焚き付けられたんだと思うけど…今日は本来休日だったんだし、来週は一日分委員会の活動お休みしてもいいから」
「え⁉いや、そんな……!」
「お休みなんていただけません!ただでさえ委員長にご迷惑をおかけするばかりでしたのに!」
「そう?……だったら、先生も言ってたけど…お昼食べていく?私のお弁当でよかったら、だけど」
(先生のもとへ歩いていくヒナ)
「……確かに行政官がおっしゃっていたように、委員長は変わられたのかもしれません…」
「…うん、そうかもしれない。別に前までが理不尽に厳しかったり怖かったりしたわけじゃない、けど……」
「やはり先生の影響、なのでしょうか……」
「うん……」
「委員長!!お願いです!どうか!どうか私にも委員長の手作り弁当のお恵みを!!」
「アコ、歩きづらいから離れて」
「そして何一つ変わらない人があそこに……」
「私たちはああはならないようにしましょうね、イオリ……」
…………
「うわ⁉ミニハンバーグ美味しい!冷めてるのにふっくらしてる!」
「彩りや栄養バランスにも気を遣われていて、本当にすごいです……」
「いや、ほとんどフウカに教えてもらっただけだから…」
「給食部ってやっぱり伊達じゃなかったってことか……?私はあいつらに食中毒にされた印象しかないけど」
「やはりあの事件は何かの間違いだったのでは?あの場に美食研究会のメンバーもいたんでしょう?」
「……ぁ、た…卵焼きが最後の一つ……い、委員長!あの!」
「私が先生のために作った料理をどうして自分が食べられると思うの?アコ」
「申し訳ございません‼そうですよね!では……こちらのツナサンドを一つ……」
「これは先生が私のために作ってくれたサンドイッチなのだけど……同じ説明が必要?」
「はい!申し訳ございません‼」
「……………はぁ、白米くらいなら食べてもいいから。一応、ふりかけも持ってきてたから使って」
「委員長………!ありがとうございます‼ありがとうございます‼…あぁ……ヒナ委員長が手ずから炊かれた白ごはん……!なんと神々しい輝き……‼」
「……アコちゃん、無敵か?」
「行政官は戦闘はからきしなのに誰よりもしぶとく生き延びそうな感じがしますよね……」
「そこ!聞こえてますよ!」
“……やっぱり、ヒナはみんなから愛されてるんだね”
「……え?」
“みんな心配だったんだよ。ヒナが一人でどこかに行ってしまわないか……って”
「……うん、そうなのかもしれない」
(でも、私は……)
“……!”
(他のみんなからは見えないテーブルの下で、ヒナが手を握ってきた)
「いつか、風紀委員長じゃなくなって……ただの空崎ヒナになったら」
「先生……その時は、今度こそふたりきりで……ね?」
“……もちろん!”
(これからのことについて、ヒナと小声で約束を交わした。)