太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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第十七話 「感謝の印として、受け取ってくれたまえ」

「ここが王国騎士団本部ッス」

 

 王都の郊外にある大きな建物の前で馬車を止め、ノルンさんが案内する。

 

 ウォルタート王国騎士団本部は、巨大な城門のような門扉に守られた、白亜の建物だった。

 王国の守護者であることを示すためか、国旗である獅子の意匠が施された旗がいくつも掲げられている。

 敷地の中には訓練場らしき広場や宿舎もあるようで、かなりの規模を誇る施設であることがうかがい知れた。

 

「じゃあウチは魔石を預けに行くんで」

「うむ。また後でな、ノルン」

 

 馬車から降りて早々、ノルンさんは麻袋いっぱいの魔石――『森の王』の魔石だけではなく複数の『眷属』の魔石も入っている――を担いでどこかに行き、隊員のサンズ、マグ、バングらも『部屋で休む』と言って散り散りになる。

 

 あたしとリテラはジークさんの案内で騎士団長に会い、感謝の印を頂くことになっていた。

 

「ではついて来てくれ。団長もレヴィンに会いたがっている」

「えっ、何で面識も何もない団長さんが、あたしに会いたがるの?」

「既に私とノルンが伝書で団長に報告しておいたからな。キミのことも書いておいたら、是非会いたいと返信してきた」

「ウソでしょ……」

 

 もしかしたら父の知り合いだったりするんだろうか。

 傭兵と騎士団は反りが合わないとリテラから聞いているし、もしそうだとしたら、かなり気まずいことになる予感がする……。

 

 不安を覚えつつ、先導するジークさんの後を追う。

 

 騎士団長の部屋は建物の最上階にあった。流石に普段過ごしている場所だと迷わないようで少し安心する。

 ジークさんは扉をノックして、中にいる騎士団長に呼びかけた。

 

「ジークリンデ・シグルド小隊長です! 戦果の報告と、今回の協力者を連れて参りました!」

「おお、相変わらず声がでかいな……よくぞ戻ってくれた。入ってよい」

 

 扉の奥から聞こえたのは、落ち着いた男性の声だった。

 年寄りと言うわけではないが、威厳のある口調をしている。

 

「失礼します!」

 

 少しおどおどしながらも、ジークさんと部屋に入る。

 

 騎士団長の部屋は、中々に豪勢だった。

 応接用のテーブルと椅子、壁には歴代の騎士団長が写された肖像画がかけられており、窓際には甲冑が飾られている。

 

 奥には執務机があり、そこに壮年の男性が座っていた。

 髪の色は黒に近い灰色だが、瞳は青みがかっている。

 

「ほう、ラグナ族か」

 

 入ってきたあたしを見るなり、騎士団長であろう男性はそう口にした。

 

「レヴィン・ゾンネと申します」

「わしはリテラ。こやつの教育係みたいなもんじゃ」

 

「ウォルタート王国騎士団長、ニコラウス・クロイツァーだ。そこのジークリンデからの伝書を読んで、もしやと思ったが……レオンの娘か」

「やっぱり父をご存知なんですね……」

「そう硬くならなくていい。まぁ掛けなさい」

 

 促されてあたしたちは向かい合うように席に着く。

 ニコラウス騎士団長は、値踏みするような視線を向けてきた。

 

「ふむ、どことなく面影はあるようだ。身体も随分と鍛えられている」

「恐縮です……」

「キミの父親とは何度か一緒に戦ったことがあってね。最近傭兵を辞めたと聞いて以来、音沙汰が無かったのだが……何か知らないかね?」

 

「父は……」

「レオンは殺されたよ。『魔獣教団』の、死神のような女にな」

 

 父の戦友を前に訃報を伝えるのを躊躇っていたところを、リテラが代弁してくれる。

 

「なんと……ただでは死なぬと思っていたレオンが……! 信じられん……」

「事実です。あたしが父のマキナを受け継いだのが、その証拠」

 

 あたしは魔法陣が刻まれた右手の甲を騎士団長に見せる。すると彼は目を見開いた。

 

「この陣の形は確かにレオンが契約していた『ソルマドラ』……信じよう」

「あたしは父の無念を晴らすためにこの王都へやって来ました。父は負けていないと、この『ソルマドラ』で証明したいんです」

「傭兵になるつもりかね? 父と同じように」

「はい」

 

 決意を込めて返事をする。

 騎士団長が腕を組んでしばらく考え込んでいるところに、今まで黙っていたジークさんが口を挟んできた。

 

「団長、レヴィンは我々が追っていた『森の王』の討伐に協力してくれました。彼女の実力は私が保証します。どうか騎士団の一員として加えてやっては頂けませんか?」

「いやジーク、さっきまでの話聞いとったんか? どうしてその流れになるんじゃ」

「どうしてだと? 私は元々レヴィンを騎士団の戦力として歓迎するためにだな――」

 

 いや、まだそれ諦めてなかったの!?

 どれほど頭が飛躍してるんだ、この人は……。

 

「ジークリンデ、まったくキミという奴は……勝手に話を進めるんじゃない」

「失礼しました!」

 

 流石に騎士団長からもツッコミが入り、ジークさんは大人しく従う。

 

「レヴィン、キミの意気込みは伝わった。同時に、キミが騎士団という枠に収まりきらない人物であることも理解したつもりだよ」

「こ、光栄です……」

 

 ジークさんのボケという茶々は入ったものの、騎士団に無理矢理迎え入れられるなんてことがなかったのは幸いだった。

 

 傭兵なら金銭が絡む範囲である程度自由に動けるが、騎士団はほぼ縦社会の慈善事業みたいなものだと聞く。地球で言うところの公務員と似ているのかもしれない。

 だから行動は上司の命令とかがない限り制限されるし、職務の都合上、支給された武器や汎用型マキナを使うこともあるだろう。

 

 しかしあたしは『ライジングアーツ』専門で武器を扱うことには長けていないし、もし扱えてもガラクタが増えることになりかねない。神と母が強い身体に産んでくれた弊害である。

 そう考えると、縛られない生き方は大事なのだなと改めて思い知るのだった。

 

「ジークリンデが言ったように、キミが魔獣の『王』の討伐に助力してくれたのなら、傭兵としての活動を支援するのも(やぶさ)かではない。感謝の印として、受け取ってくれたまえ」

 

 ニコラウス騎士団長が机の引き出しから出してきたのは、革袋いっぱいのお金だった。

 感謝の印はお金がいいと思っていたことはあったが、まさか本当にお金とは。都合が良すぎて裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう。

 

「金貨が随分入っておるな……金貨一枚で一万(ゴルト)じゃから、ひい、ふう、みぃ……三十万Gじゃと!?」

 

 リテラが教えてくれたフロイデヴェルトの相場は一円=一G。そう考えると個人への感謝の印としては破格の大金だ。それをポンと出してくるニコラウス騎士団長……只者ではない。

 

「そんな……こんなに頂けません!」

「『森の王』にトドメを刺したのがキミだ、ということも聞いている。謝礼金としては充分であるし、うちのジークリンデが迷惑をかけた分の慰謝料も含まれていると思ってくれて構わない」

 

 意外と真っ当な理由で水増ししていたことに驚いてしまう。それにしてもジークさん、騎士団長から見ても問題児扱いなのね……。

 

「そういうことでしたら、ありがたく頂戴します……」

「ああ、それとこれも」

 

 また騎士団長が何かを机に置く。今度は紐で縛った書状のようだ。それと簡単な地図らしきものも。

 

「紹介状を書いておいた。傭兵ギルドにいるロッソという男に渡せば、手早く話を進めてくれるだろう」

 

 恐ろしく早い手回し……裏であたしを騙そうとしていないだろうか。

 そう疑ってジークさんをチラ見するも、ジークさんは静かにしながら満面の笑みを浮かべているだけ。おそらくは静かにする以外何も考えていないのだろう。疑って損した。

 

「そのロッソという人も、父の知人なんですか?」

「傭兵ギルドの職員だからな。獲物を取り合う関係だった私よりは、レオンとの付き合いが長い」

 

 なるほど、地図に従って傭兵ギルドまで行き、そのロッソという男に頼れと。

 都合よくお使いさせられているような気分だが、折角ここまで手回しをされたのなら、堂々と行ってやろうじゃないか。

 

「本当に色々とありがとうございます」

「傭兵の戦場は過酷だ。健闘を祈っているよ。ジークリンデ、玄関まで見送ってあげなさい」

「了解しました! 失礼します!」

 

 だから声デカいって、ジークさん……。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 玄関まで先導され、長いようで短い付き合いだったジークさんとも別れの時。

 

「いやあ、残念残念。レヴィンなら善い騎士になると思っていたのだが、騎士団長にそこまで手回しをされてしまってはなあ!」

「その割には満足そうじゃの、お主」

「傭兵といえど、力無き民を守るという点では騎士と同様。いずれ同じ戦場で共に戦うこともあるかもしれんと思うと、な」

 

 こっちとしては二度と会いたくないけどね。

 

「本当にそうなるかどうかは、あまり期待しないでね」

「うむ、ではまたな! グナーデン名物のバームクーヘンは美味いから是非食べてくれ!」

「はいはい」

 

 大げさに手を振って見送るジークさんを背に、あたしとリテラは騎士団本部を後にする。

 

 それにしても変な騎士だった。この世界で初めて会う騎士があんなのでよかったのかと思うほど、滅茶苦茶莫迦(バカ)で、滅茶苦茶芯が強くて。

 騎士の厳格なイメージはぶち壊されたが、それを補って余りある確かな信念を見たような気がする。

 

 今までの旅路、思ったよりは悪くなかった。そう示すように、あたしは振り返ることなく手を振り返した。

 

「……ふぅ」

 

 窮屈な色々から解き放たれたように大きく息をつく。

 

「未来への投資、という感じじゃったのう。あの騎士団長も期待しておるんじゃ、お主がこの世界を救う救世主じゃと」

「絶対そういうこと考えてないわね。あたしを救世主だと勝手に思ってるのはアンタだけよ」

「相変わらずノリが悪いのう……ほれ、地図貸してみぃ。お主は王都初めてじゃろ。ナビしちゃる」

「ほんと、こういう時だけはありがたいわね」

「だけとは何じゃ、だけとは。で、どうするんじゃ? このまま傭兵ギルドに直行するかの?」

 

 さて、どうしよう。折角王都まで来たのだし観光するのもいい。

 でも、それはまた次の機会にしよう。今優先すべきは――

 

「……服よね」

 

「なんじゃと?」

「服を! 買いたいッ!!」

 

 前世でも中々できなかったオシャレがしたい!

 このチャンス、活かすなら今でしょ!

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