太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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第二十話 「確かに見えちゃったわね……あんたが倒れる姿が」

 表に出たあたしたちは、向かい合う。いつの間にか野次馬も集まっていた。

 

「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 狂犬リバーと期待の新人レヴィンちゃんの一騎打ち! ジャンジャン賭けてって頂戴!」

 

 ロッソママや、その野次馬相手にあたしたちの勝負で賭博を仕切るのはいかがなものかと思うが……まあいいか。

 

解放(リリース)! 『ゲイルトマホーク』!!」

 

 リバーが解放の呪文を唱えると共に、魔法の光で顕現したマキナを手に取る。

 トマホークの名の通り斧の形をしたその武器は、柄の部分まで真っ赤に染まっている。刃渡りだけで一メートル近くあるだろうか。

 

「どうよ、俺のマキナは! 大金叩いて手に入れた一級品だ! ひと振りで集ってきた『眷属』を強風で吹き飛ばし、風の刃で斬り刻む! 『ゲイルトマホーク』に斬れないものはねぇ!」

 

 あ、マキナの能力解説しちゃった。あたしの知る限り、自慢げに手の内を晒して勝った奴はいない。

 どの世界でも通じることだが、中身の無い人間ほど己の力を誇りたがる。『ライジングナックル』の勝利メッセージでそんなことを誰かが言っていた気がするし。

 

「さあ抜きな、アンタのマキナを! 『ソルマドラ』を!」

 

 マキナの斧を構えて開始のゴングを待つリバー。

 そこまで言うならちょっとだけ見せてあげよう。

 

解放(リリース)、『ソルマドラ』」

 

 両手に太陽竜の鱗をあしらった籠手を顕現させる。それを見たリバーは呆気に取られた表情を見せた。

 

「嬢ちゃんよ、俺を舐めてんのか?」

「何のこと?」

「『ソルマドラ』は本来、甲冑のように全身を覆う鎧だったハズだ。それなのに腕だけしか纏ってないのはおかしい。舐めてるとしか思えねえ」

 

 まあ確かに、舐めてかかってはいますけどね。

 

 籠手しか顕現させていないのは、単にあたしのイメージと、魔力効率の問題だ。

 いくら日光で魔力を補えるからって、魔力を使いすぎてあたしが倒れてしまっては意味がない――リテラによればこの現象のことを『魔力酔い』というらしい――。

 それを防ぐため、拳や脚の先に魔力を集中させて属性付与させている、というだけ。

 

 手持ちの武器に属性付与させるだけの父とは違う戦法で戦っているのだから、不完全なのは当然。まだまだ改良の余地はありそうだ。

 

「おまけに属性付与(エンチャント)させる武器も無いんじゃ、勝負は見えたな」

「確かに見えちゃったわね……あんたが倒れる姿が」

「無理して吠えるなよ。武器がなきゃ何も出来ねえだろ」

「武器ならあるわよ。不幸にも鍛え抜かれちゃった、あたしの腕と脚が」

 

 あたしの虚勢と思われそうな台詞を、リバーは鼻で笑う。

 

「ハッ、面白い冗談だぜ。属性付与(エンチャント)した籠手で喧嘩でもするってのか?」

「その通りだって言ったら?」

「馬鹿にするのも大概にしやがれ!」

 

 挑発に激昂したリバーは脚を踏み込み、一気に距離を詰めてくる。

 

 斧を振りかぶってあたしを両断しようとするが、あたしはその見え見えの軌道を読んでいる。

 バックステップで回避すると、あたしがいた場所に深々と斧が突き刺さり、地面を割った。

 

 同時に、斧から強い風が吹く。『ゲイルトマホーク』から発生したカマイタチのような風の刃だ。肌が切られそうなので両手の籠手で捌く。

 

「スゲェ! 初見で対応できるか普通!?」

 

 野次馬の声を気にも留めず、今度はこちらの反撃。

 リバーが地面に刺さった斧を抜く隙を突いて、一度離した距離を詰めていく。

 

「セイッ!」

 

 詠唱で威力を増したりせずに、突進技『ブレイク・フィスト』をリバーのボディに叩き込んだ。

 

「カハ……ッ!?」

 

 腹の直撃で嗚咽を漏らすリバーを見上げつつ、左アッパーで顎を捉え、打ち上げる。

 リバーの身体は宙を舞い、放物線を描いて地面に倒れた。

 

「……ふぅ」

 

 ごめんなさいリバーさんとやら。格闘ゲームで癖になってるんです、わずかな硬直の隙を突くの。

 魔力を拳に集中させていなかったので、死んではいないだろう。多分。

 

「あの狂犬が拳二発で!?」

「期待の新人マジでつえぇ!」

「っしゃあ! 荒稼ぎですわァ!!」

 

 見渡せば野次馬も阿鼻叫喚。大体の人がリバーに賭けていたらしく、悲鳴を上げている人も多い。

 中にはあたしに賭けていた人もいたようで、シスターのような服を着てガッツポーズを決めていた。

 

 ……いやいや、何故シスターさんがこんなところで賭博に参加しているのか。後で職務質問でもしてやろう。

 

「ヘッ……いいパンチ持ってるじゃねえか」

 

 倒れていたリバーがゆっくりと起き上がり、持っていた斧を封印(シール)の呪文で収納する。

 先程までの威勢はどこへやら、満身創痍と言った様子だ。

 

「初めてだぜ、マキナで斬りかかってほぼ素手の相手に負けるなんてな。しかも属性付与(エンチャント)すらされてなかったと来た」

「本気出したらアンタが焼死体になっちゃうしね。流石に殺しちゃったら後味悪いもの」

「拳のキレは鋭いが、まだまだ甘ちゃんだな。だが悪くねえ」

 

 口元の血を拭いながらリバーは笑う。

 

「お前はレオンさんとは違う……まさにその通りだったな。我が道を行った結果が、こんな喧嘩殺法なんだからよ」

「格闘技って言ってよ。それじゃ、あたしが喧嘩に明け暮れる不良みたいじゃないの」

「ハハッ、違いねえ。傭兵なんかになってなきゃ、とっくに闘技場のチャンピオンになってたかもな」

「いや、あたしは別に最強とか目指してないし」

 

 そもそも最強になっちゃったら面倒が増えるだけで、心の余裕がなくなっちゃう気がして、ちょっと怖いのよね……。

 と、今までどこに隠れていたのか、リテラが突然割って入ってきた。

 

「チャンピオン……それも悪くないのう。救世主として更に箔がつく」

「だからアンタは勝手につけないでよ、箔を」

「『妖精憑き』な上に救世主とは……敵わねえわけだ」

 

 リバーはそう呟いて、また笑った。

 もしやリテラの戯言を素直に信じちゃったんじゃなかろうな?

 

 そもそも『妖精憑き』というのはただの迷信じゃなかったか。妖精に懐かれた戦士には幸運が訪れるとか、そういう話をノルンさんから王都の道すがら聞いたことがあるぐらいだけど。

 

「迷惑かけて悪かったな。せいぜい頑張れよ、期待の新人」

 

 それだけ言い残して、リバーは酒場に戻っていった。

 その後ろ姿を見送っていると、勝負を見ていた野次馬たちが興奮してあたしに群がってくる。

 

「すげぇやアンタ! あの狂犬リバーが拳二発で負けを認めるなんて!」

「ラグナ族だろ、アンタ! 武器もマキナの能力も使わずに闘って勝つラグナ族は初めてだ!」

「ぜひうちの傭兵団に入ってくれ! 分け前は弾む!」

「えっと、いや、そのぅ……」

 

 ああ、もう……うっかり売られた喧嘩を買ったものだから、無駄に持て囃されてしまった。

 

「お主ら、落ち着かんかい! レヴィンが困っておるではないか!」

 

 リテラが大声で叫び、割り込んできた。

 まさかこの状況から助けてくれるの? 珍しいけど今は助かった!

 

「要望なら順番じゃ、一列に並べ! 未来の救世主様に助けていただくなら今のうちじゃぞー!」

 

 ……前言撤回。コイツが今の騒ぎを有効活用しないわけがないよね畜生!

 

 傭兵になったばかりでこの始末。現実から目を逸らすように賭博を仕切っていたロッソママの方を見ると、あたしに金を賭けていたと思われるシスターさんがすこぶる興奮していた。

 

「はい、これアナタの取り分。凄いわね、あの娘に賭けてたのアナタだけよ。もしかして、勝つのがわかってた?」

「金貨がザックザクですわぁ……コホン。あの方が勝つのがわかっていた? まさか。アタクシは千里眼など持っておりません。もし持ってても見ることはありませんわ」

「へえ、ならどうして?」

「簡単ですわ。アタクシ、大穴狙いが趣味なんですもの」

 

 あたしは大穴、か。良かったね、ガッポリ稼げて。

 でもその服来て賭博は程々にね。知り合いに見つかったら大事だよ。

 

 そんなことを考えながら、結局この日は野次馬の要望に散々付き合わされて、日が暮れた。

 ……別にやらしいことはしていない、という事実だけは付け加えておこう。

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