太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~ 作:キョーサカ
あたしのようなインファイターからすれば、向こうからやって来ない限り天敵以外の何物でもない。
そんな奴の討伐依頼を受けたヤーナ、あたしの戦闘スタイルを見た上でこの依頼を選んだのなら、とんだ意地悪である。
しかし、この程度のことで狼狽えてはいけない。いかなる不利な条件をも押し通すことが、今のあたしには求められている。きっとあのダリアは
なのでヤーナの選んだ依頼を承諾したあたしは今、ヤーナと共に
「レヴィンさん、飛行する魔獣との戦闘経験は?」
「全く。今まで遭遇しなかったのが不思議なくらいよ」
「ならアタクシにお任せくださいませ。文字通り飛ぶ鳥を落とす勢いで、アタクシの『シュツルムウォーダン』が吹き飛ばして差し上げますわ」
『シュツルムウォーダン』。それがヤーナのハンドメイドマキナの名前か。語感から既に格好良いじゃないか。ズルいぞ。
「ま、
「うわっ、リテラ!? いつからそこに!?」
あたしの服の中からリテラがひょっこりと顔を出してきた。妖精体だからこそできる芸当ではあるが、あたしの汗で蒸れてはいないか心配になる。
「そんな細かいことはいいんじゃよ。それよりここから西におるぞ、
「あら、可愛らしい妖精。本当でしたのね、『妖精憑き』の噂は」
「好きで憑かれたんじゃないわよ」
それに本体は神だし……。どうせ言っても信じないから言わないけど。
「リテラじゃ。わしのことは未来の救世主を支える大黒柱と呼んでくれ」
「こいつが勝手に自称してるだけだから気にしないでね。あと、こいつが言うことの大半は信用してくれなくていいから」
「育ての親に対して何たる言い草! 反抗期か! 手塩にかけて育ててやったというのに、ここまで立派になりおって! 鼻が高い!」
「いや、何でその流れで喜んでんの!?」
「随分仲がよろしいようで。ツッコミの切れ味も中々ですわ」
「そこは評価してくれなくてもいいからね!?」
まったく、どいつもこいつも……ジークさんがここにいたらツッコミ疲れでブッ倒れてるところよ。
無駄話は置いといて、早く
「そういえば、
「基本的に『眷属』は『王』が既存の動物に瘴気を浴びせて生み出すものじゃ。しかし常に『王』に纏わりついているというわけではない。『王』の縄張りの範囲内なら、『眷属』は割と自由に生きておるぞ」
「『眷属』討伐の依頼なんかは、基本『眷属』を目撃した一定の範囲内に『王』が居ないことを確認してから発行される、という話を聞いたことがありますわね。もし『王』が見つかりでもすれば、対象ランクが一気に跳ね上がる、とも」
やはり『眷属』と『王』の魔獣とでは戦力差がありすぎるから、『王』クラス討伐の依頼は対象ランクが随分と上になるのね。
「とはいえ、今回の相手は『眷属』の群れ……総合的な戦力は『王』単体に匹敵するかもしれませんわ」
「望むところよ」
両の拳を握り締めながら、あたしは意気込む。
どれだけ相性が悪かろうが、要は一発当てればいいのだ。空から来るとわかれば、『ライジング・ナックル』で対処できる。
少なくともこの時は、そう思っていた――。
※※※
奴らが集まっていたのは、切り立った崖の傍だった。
どうやら、あそこから飛び立って狩りを楽しんでいるようだ。
「今のところ周囲にわしら以外の人影は見当たらんのう。して、ヤーナとやら。作戦なんかは考えておるのか?」
「アタクシの『シュツルムウォーダン』で一匹ずつ狙撃したところで、集まって逃げられるのがオチでしょうね。せめて群れを集めて一網打尽にできれば良いのですが」
「いやいや、あたしを見るな見るな。あたしを囮にして群れが集まったところに大火力の魔法ぶっ込むつもりでしょ!」
「お主なら平気じゃろうが。何のために鍛えたんじゃ」
「少なくともこの時のためじゃないことは確かよ」
「アタクシはあなたのタフさを買っているんですのよ。作戦通りにしてくださいませ」
「最近同じ台詞を聞いた気がする……ああ、もう! わかったわよ!
結局、囮はあたしである。この世界に生まれてから、随分と貧乏くじを引くようになったものだ。
「
両手に籠手を顕現させ、戦闘準備は整った。
「じゃ、行ってくる」
それだけ言い残して、あたしは岩陰から飛び出して行った。
こちらに気付いた飛竜達が、一斉に急降下してくる。
来ている数は五匹。そのどれもが殺気に満ちていた。
上に跳んでは奴らの思うツボだ。まずはこれで迎撃する。
「『我流・ライジングアーツ、ライジング・ナックル』!」
イメージと詠唱。太陽の炎を纏い、天に向けて突き上げられる右の拳。炎は正面の三匹を焼いた。残りの二匹は危険を察知したのか急上昇し、そのまま高く飛んでいく。
自由落下しないのが飛べる生物の厄介なところだ。いずれまた空襲を仕掛けてくるだろう。そうあたしが構え直した、その時だった。
何か生物の手に掴まれた感覚。しまった、後ろにもいたのか
「ぬうぅぅぅぅっ!」
あたしは
風圧を受けながら、あたしと地面の距離はグングンと遠ざかっていった。
「このっ……アンタは下でしょうがっ!」
太陽の炎で
あたしは
そこへもう一匹、地面の方から
あたしが投げた焼き
「よくも真っ直ぐバカ正直に来てくれたわね!」
だが、あたしも乗せられたままではいられない。
やってきてくれた
あたしはそのまま頭を潰した
「えぇ……こんなギャグ漫画みたいなことある……?」
当然残りの
こんな状況、想定していなかったかといえば嘘になる。元々あたしは
「ん? あれって……」
上空で旋回する
狩りで養われた視力でよく目を凝らしてみる。人の形をした何かが、空の上に立っている、ような……。
「お待たせして失礼! 今からデカいの、参りますわよ!!」
上の方から大声が聞こえたが、この声はヤーナのものだろうか。
ということは、だ。今のヤーナは空の上に立って呪文を詠唱していたということに……?
ヤーナらしき人影の更に上を見ると、
まさか、これを丸ごと
「『ストームボム・
上空から嵐の球が振り下ろされる。その威力たるや凄まじく、大地を揺るがすほどのものだった。
その一撃を受けた
問題は足が地面に埋まったあたしだ。何とか嵐の球を耐えなくては。
「あたしの位置も考えろおおおおおっ!!」
あたしは両手に
「ぐぬぬぬぬぬ……!」
重い! 思ったより重いぞこの球! だが負けてたまるか!
あたしは歯を食いしばって、両腕に力を込める。
しかし、あたしはこれが魔力球ではなく爆弾であったことを、思い知らされた。
「うおあっ!?」
嵐の球が突如爆ぜて、強烈な爆風が襲う。この爆発で地面が少し砕けて足が抜けたあたしは吹き飛び、地面を転げ回った。
あたしは痛みに耐えながら起き上がる。普段から鍛えていたおかげで大した怪我はないが、ヤーナへの怒りだけは募った。
「ほら、やっぱり耐えた。賭けはアタクシの勝ちですわね」
どこかメカじみた杖を魔女の箒のように使い、上空からふわりと降りてくるヤーナ。
「あたしは何も賭けてないんだけど……とりあえずアンタがどんな傭兵かはわかったわ」
「何の
「何をしていますの? さっさと魔石を拾って退散しますわよ。依頼はもう果たしましたから」
ヤーナは地面に降り立つと、地面に散らばる
あたしも慌ててそれに倣ったが、一つ疑問が浮かんできた。
「ヤーナはさ」
「何でしょう?」
「こうしてビジネスパートナーを利用してまで、どうしてお金が欲しいのよ?」
ヤーナの金への執着は相当だが、ただお金欲しさに傭兵をしているとは思えなかったのだ。
だから聞いてみたかった。何故彼女はここまでして、金を求めるのか。
するとヤーナは大きな溜息をつく。そしてあたしをジロリと見つめてきた。
「くだらない質問をなさるのですね。無論、軍資金に決まっておりますでしょう?」
ギャンブルの、ということだろう。賭博のための金を傭兵仕事で集める、というのは本末転倒な話ではあるが。
だが、あたしにはそれ以上の理由があるように思えるのだった。