太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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幕間その三 「王都の人間たちは呑気なものですね」

 五人の人影が、警戒しながら王都の裏路地を進む。

 ジークリンデ・シグルド率いる小隊は、情報屋から買った情報で『魔獣教団』のアジトらしき場所を特定し、その調査に向かっていた。

 

 そこにまるで人の気配はなく、ただ静寂だけが広がっている。

 

 ジークは、ノルンの合図でアジトの扉を蹴破り突入した。

 人がいた形跡はあったものの、人っ子一人いない。

 

「これはもうトンズラした後ッスね……ガセではなかった分マシかもしれないッスけど」

「一足遅かったというわけか」

「ひとまず手分けして痕跡を調査するしかないッスね。隊長は怪しいものを見つけたら絶っっっっっ対に手を出さず、まずウチに報告すること。いいッスね?」

「うむ、そうしよう!」

(本当に大丈夫ッスかねぇ……?)

 

 ノルンは知能指数は低いが行動力のある小隊長に一抹の不安を感じつつ、部下のサンズ、マグ、バングと共に空き家と化した教団のアジトに残った痕跡を調べ始める。

 

 壁に血の色で描かれた魔法陣、祭壇のような石造りの台に置かれた水晶玉、そして部屋の隅にはボロ布に包まれた人間の死体があった。

 サンズが死体のボロ布を取り払うと、そこには干乾びてミイラになった男の死体があり、服の胸元には黒い羽根のようなもので作られたペンダントがかけられていた。

 

「副隊長、これって――」

「情報によれば、このペンダントは魔獣教信者の証らしいッス。おそらくは儀式の生贄になった信者の成れの果てってとこッスね……」

「ここがアジトだったことはまず間違いないとみていいでしょう」

「日誌か何かが残っていれば、逃亡先の手がかりも掴めるんスけど――」

 

 と、ノルンがボロ布をミイラに掛け直したところで、バカでかいジークの声が響く。

 

「ノルン! お宝だ! お宝を見つけたぞ!!」

(ちゃんと報告はしてくれたけど、この後が心配ッスね)

 

 ジークの声がする方へ来てみると、棺桶サイズの箱が窓際の隅に立てかけられていた。

 

「先程から開けようと試みたのだが、どうにも蓋が重くてな」

 

 どうやら開ける寸前だったらしい。蓋が重くてよかったと心底安心するノルンであった。

 

「はぁ……ウチ、言いましたよね? 手を出すなって。隊長の辞書には『用心』の文字も無いんスかね?」

「はっはっはっ、返す言葉もないな!」

「ほんとブレませんね、隊長……」

 

「とはいえ、この箱が怪しいことには変わりない。ふたりとも、蓋を開けるのを手伝ってくれ」

「しょうがないッスね……何か収穫でもあればいいんスけど」

 

 三人は協力して箱の蓋を持ち上げる。

 

「うわっ!」

 

 すると、大量の何かが箱の隙間から飛び出していった。

 

「コウモリ!? 何でこんなものが?」

「あっ、隊長!?」

 

 コウモリらしき大量の何かがジークに集まっていく。

 

「ええい、何だこれは!? なぜ私に!?」

 

 集ってくる群れをレイピアで振り払うも、数の多さでキリが無い。

 ジークは次第に壁際へと追い詰められていく。

 

 やがて、ジークの首元に一匹のコウモリらしきモノが張り付く。

 それはジークの首元を噛み、血を吸っていた。

 

「何ッ!? これは……ものすごい勢いで……腹が減っている!?」

「多分違うと思うんスけど!? 力が抜けてるなら、おそらく吸血コウモリッス!」

「隊長から離れろ、こいつっ!」

 

 サンズが剣を抜きコウモリらしきモノを斬ろうとすると、それは攻撃を察してかジークの首元を離れる。

 そしてそのまま群れを率いて部屋の外へ飛び去っていった。

 

「一体何だったのだ、あいつらは?」

「箱の中身は空っぽッスね。あのコウモリっぽいのだけが入っていたってことッスか」

「儀式用にでも使っていたんでしょうか? それより隊長、首の具合は?」

「力が抜けたぐらいで大したことはない。戻って手当てぐらいはしておこう。あと腹に何か入れねばな。どこぞに食料庫はないものだろうか……」

「ウチらはここを荒らしに来たんじゃないんスけど?」

 

 しばらくして、分かれて調査していたマグとバングが戻ってくる。ふたりとも『大した手掛かりは残っていなかった』とのことだった。

 

「なんというか、綺麗さっぱり逃げられたって感じッスね」

「もしかしてニセの情報を掴まされたんじゃ……」

「もしくは情報屋が教団とグルだったとか」

「怖いこと言うなよ……」

 

「いずれにせよ、撤収するしかないだろうな。早く帰って夜食にしよう」

「はいはい、了解ッス」

 

 こうして、魔獣教団のアジトの調査を終えたノルンは部下達を連れて騎士団本部への帰路につくのであった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 『魔獣教団』の元アジトを出たコウモリらしきモノの群れは、双子月が照らす夜の闇を飛ぶ。

 それらが向かっているのは、王都で一番高い建物……時計塔である。

 

 時計塔の屋根には、フードを被った人影がコウモリの群れを出迎えるように待っていた。

 

「来たわネ」

 

 魔獣教団幹部、ダリア。彼女を前にして、コウモリの群れは更に密集し、黒い瘴気に包まれて人の形を取った。

 

「バットロード・カミュラ。ご要望通り、王国騎士の血を吸ってきて参りました」

 

 人間の女性の姿を取ってはいるが、彼女――カミュラもれっきとした魔獣だ。

 魔獣は基本的に人語を介さないとされているが、カミュラはとある事情から自意識を持ち、人語を理解し喋っている。

 

「フフッ、ご苦労様。アナタを置いてきた甲斐があったワ」

「では早速、暗殺を決行して参りましょうか?」

「焦らないノ。アナタの出番はまだもう少し先。王都陥落の舞台が整うまで、身を潜めていなさイ」

「了解しました、ダリア様。それにしても、王都の人間たちは呑気なものですね。壁と結界に覆われているからと安心しきって、誰も自分という魔獣が中に潜んでいるという事実に気付いていない」

「そうネ。人間は基本的に自分のことしか考えられない生き物。だからこそ虚を突きやすいのヨ」

 

 ダリアは両手を広げて夜風を受ける。

 口元は綻び、妖しい笑顔を浮かべる主の姿を、カミュラは美しいと思った。

 

「嗚呼、なんて愚かで矮小な王国の民……この国は、自らの醜さで滅んでいくんだワ!」

 

 双子月が照らす王都の夜。

 

 時計塔の上で笑い声を上げるダリアの傍らで、カミュラは再びコウモリの群れに姿を変えて、去っていった。

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