太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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第二十四話 「やたっ! 久しぶりに姉貴と一緒だ!」

 酒場に戻るまでの道中、いつもより街が華やかに飾られていて、人々が忙しく行き交っている様子に気付く。

 ここ最近は王都の外に出て魔獣を退治する依頼を受けてばかりだったから気にも留めなかったが、何かのお祭りが近いのだろうか。

 

 こういう時に王都どころかフロイデヴェルトの色々を知っているリテラ(ナビ役)がこの場にいないのが、若干不便である。

 まあしかし、あいつに頼るのは本当に危ない時だけでいいだろう。あまり頼りたくないけど。頼らなくともペラペラ喋るし。

 

 これだけ街が忙しないのなら、酒場の掲示板に『祭の準備を手伝ってくれ』って依頼があってもおかしくはないよね、などと考えながら歩いていると。

 

「うわぁ~ん! 届かないよぉ~!」

 

 泣きじゃくる少女の声がして、ふと振り向く。

 

 少女の視線の先には高い木の枝に引っかかった風船。確かリテラから聞いた話だと、この世界の風船はヘリウムガスの代わりに風の精霊が中に入っていて浮かんでいるのだとか。

 

 いや、そんなウンチクを思い出している場合ではない。泣いている子が困っているのだ、ひとっ跳びして風船を取りに行ってやろう。

 助走をつけようと思っていた、その時だった。どこか見覚えのある小さな赤毛の人影が木に張り付き、登り始めた。

 

「この木登り名人に任せろぉっ!」

 

 この元気な声と猿のような身のこなしは間違いない。ニューだ。彼女はあっという間に枝のところまで辿り着くと、風船を手に取った。

 

「へへっ、あっしにかかればこのくらい――」

 

 だがニューは気付いていなかった。自分が掴まっている枝が音を立てて折られようとしていることに。

 

 あたしはすぐに気付いて既に走り出していた。やがて枝は折れ、風船をつかんだニューと共に自由落下を始める。

 

「うえぇぇぇっ!?」

 

 推定落下地点で立ち止まり、そのままニューをキャッチ。

 まったく、あたしがたまたま見てなかったらどうなってたことやら。

 

「ニュー、やったことは立派だけど、もっと用心しなさいよ」

「姉貴!」

 

 ニューを降ろしたところでミュウくんもやって来る。服の中からグラウも顔を出していた。

 

「ハァ……ハァ……ニュー、あまり離れないでって……えっ、レヴィンさん!?」

「ははっ……ふたりとも、数日ぶり」

「ヨーヘーの仕事はどうしたんだ?」

「ちょうど依頼が終わってギルドに戻ろうとしてたとこなんだけど……ほら、風船。あの子に返してきなさい」

「わかった!」

 

 ニューは風船を手に取ると、さっきまで泣いていた女の子に歩み寄り、風船を渡す。

 

「ほい。もう放すんじゃないぞ!」

「ありがとう、おねえちゃん!」

 

 風船を受け取った女の子は、嬉しそうにはしゃぎながら母親らしき人物の元へ駆けていった。

 

「それで、ふたりは何してるの?」

「孤児院のシスターの皆さんと、手分けして買い出しに。聞いてませんか? 生誕祭の話」

「生誕祭? 誰の?」

「なんでも、あので~っかい城に住んでる女王様の誕生日なんだってさ!」

「そっか、だからいつもより街が華やかなわけね」

 

 このウォルタート王国の指導者たる女王様の誕生日。それを毎年王都民が盛大に祝う祭が、いわゆる生誕祭というものらしい。

 国を良くしてくれる指導者の誕生日を祝い、感謝する祭ともなれば、街の装いに気を遣うのも当然ではある、か。

 

 あたしは数日前に王都に来たばかりの新参なので、王族の皆さんの顔をまるで知らない。しかし、王都に住む人々にとって大事な存在なのは理解しているつもりだ。

 

 最近は空中戦に対応できない以外は伸び悩んでるし、生誕祭の準備を手伝ってくれっていう依頼があれば、息抜きに受けてみるのもいいだろう。

 

「ちょうど暇してるし、荷物持ちするわよ」

「えっ、いいんですか?」

「それほど身体を動かさないで依頼が終わっちゃったから、無性に筋肉をいじめたくなったっていうか……朝からウザいリテラもいないし、今は上機嫌なのよね、あたし」

「そうだったんですか……じゃあ、お願いします」

「やたっ! 久しぶりに姉貴と一緒だ!」

 

 それからあたしたちは久しぶりに三人一緒になり、街中を歩きながら買い物をした。

 

 傭兵を始めてから、こんなにもゆったりとした時間は久しぶりだ。

 

 ミュウくんが持っているメモを見て、主に市場を周っていく。途中、スリの現場に居合わせてニューと一緒に犯人を捕まえて感謝されたり、ミュウくんが骨董品店の売り物に目を輝かせていたり、そんな平和な時間を過ごした。

 

 ふたりの顔には笑顔が浮かび、その顔は出会った頃と比べると自然体になっていた。

 

 初めて市場を通った時に買った肉饅頭を三人分買って、噴水のある広場で休憩をとる。

 

「姉貴、この肉饅頭っての、ほんとに美味いな!」

「もっちりした生地と溢れる肉汁が、病みつきになりそうです!」

 

 成人前の双子に禁断の味を覚えさせてしまったような気分になるが、まあいいか。

 

「孤児院の子供たちとは、うまくやっていけてる?」

「みんないい子だし、木登りできないのがまだいたりするけど、楽しくやってるぞ」

「神父さまもシスターの皆さんも良い人ばかりで……でも――」

 

 振った話題のどこに俯く要素があったのかはわからないが、とにかくミュウくんは俯いた。

 やはり能動的なニューと違ってミュウくんは色々と考え込んでしまう節があるようだ。

 

「長くあそこに居ちゃいけないんじゃないかと、思う時があるんです」

 

 ほらね、色々考えすぎてた。

 

「別に、孤児院の居心地が悪いとか、そう言いたいわけじゃないんです。あそこは親を亡くしながらも、子供たちが幸せに暮らせる場所……かつて生まれた国から逃げたボクたちからすれば、孤児院は楽園と呼べるものなのかもしれない。でも、目の前の楽園に甘え過ぎちゃいけないと、そう考えてもいるんです」

 

「要するにミュウくんはどうしたいのよ?」

「ミュウはいちいち回りくどく考えちゃうからなぁ」

「ニュー、もっと大目に見てよ……クセなんだから」

「まどろっこしいな。姉貴、ミュウは姉貴について行きたいってさ」

「大目に見てってさっき言ったばっかりなんだけど!?」

 

 さすが双子の姉弟。互いのことを一番よくわかってるし、言葉の拳に一切の容赦がない。

 だからこそ、このふたりが羨ましい。

 

「というか、あたしについて行きたいって……もしかして、あたしのサポーターをやりたい……って話?」

「結論としては、そういうことなんですけど……ダメ……ですか?」

 

 ふむ、参った。

 

 悔しいがリテラに言われたように、この双子にはサポーターの素質がある。

 それを知ってか知らずか、ミュウくんは自分の意志であたしのサポーターになりたいと言ってきた。

 

 あたしは、ふたりの意志を尊重したつもりだった。

 ふたりの仕事が見つかるまでの住処として孤児院を推された時も、反対はしなかった。

 きっとふたりにとって、孤児院に住まわせることが正解だと思い込んでいた。

 

 そうか、あたしの知らないところで、あの子はもう答えを出していたのか。

 

「いや、別にダメってわけじゃないけど……サポーターって危ないよ? 色々と……」

「王都までの旅路で、自信はつきました。それに万が一何かあっても、レヴィンさんが守ってくれますし……」

「もちろんあっしも一緒だぞ!」

 

 まったく、あたしってばそこまで信頼されていたのか。

 そこまで言われてしまっちゃ、断りづらいじゃないの……。

 

「わかった。あたしとしても、傭兵団は作らなきゃって思ってたし――」

 

 双子の頼みを渋々承諾しようとしていた、そんな時だった。

 

「レヴィンちゃーん!」

 

 聞き覚えのある声。ノルンさんが息を切らしてこちらに向かってきた。

 

「ハァ……ハァ……ここにいたんスね……よかった……」

「ノルンさんじゃないですか!」

「もしかして、あたしを探してたの?」

「ハイッス……助けてくれそうなの、レヴィンちゃんくらいしか……」

「落ち着いてください。いったい、何があったんですか?」

「あのたいちょーが食料全部食ったとかだろ?」

「そんなレベルじゃ済まされない大事なんスよ……隊長が……隊長が……」

「ジークさんが……?」

 

「女王陛下暗殺の罪で捕まっちゃったんス!!」

 

「ええぇぇぇっ!?」

 

 ノルンさんの口から発せられた衝撃の大事に、あたしたちは言葉を失った。

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