太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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第二十五話 「ナイスです! ナイス誠意ですわ!」

 ノルンさんはあの阿呆な隊長より良識はある方なので、滅多なことで冗談を言う人間ではないとわかっていた。

 それだけに、事の重大さは重くのしかかる。

 

 まさかあのジークさんが暗殺……?

 

「いや、ありえないでしょ!?」

「ウチもそう思うッス! でも――」

「落ち着いてください、ノルンさん! 深呼吸して!」

 

 ミュウくんに言われて息を整えるノルンさん。少し落ち着いたのか、冷静さを取り戻して語り始める。

 

「取り乱して申し訳無いッス。でも隊長は王族に反旗を翻すような頭は持ってない。これだけは言えるので、実際のところは冤罪なんスけど」

 

 隊長は阿呆だから大罪は犯せないだろうという絶対の信頼。ある意味凄いと思う。

 

「暗殺されたのも女王陛下の影武者という話なので、本物の女王陛下は未だ健在ということになるんスけど、それでも要人殺害未遂ッスから、国家反逆の罪ってことにはなってしまうんス……」

「そもそも、何故ジークさんは疑われたんですか?」

 

 ミュウくんが言ったように、あたしもそれが気になっていた。

 

 王族のジークさんへの好感度がどれだけあるのかは知らないが、彼女は周りを振り回すような行動はすれど、王家に楯突くような騎士の風上にも置けぬ人間ではないはず。

 

「それは――」

「わしから説明しよう」

 

 そこへ、今朝からいなかった妖精の声。リテラが王城の方角からふわりと飛び降りてきた。

 

「リテラ、あんた今までどこに行ってたのよ?」

「少し嫌な予感がして、王城までフラッとな。偶然ジークリンデが捕まるところを目撃したんじゃ」

「うーん……色々と言いたいことはあるけど、偶然見たってんなら、さっさと情報提供しなさいよ」

「実はの――」

 

 リテラが言うには、こういう経緯だった。

 

 女王陛下影武者の暗殺には、目撃者がいたという。

 その者の証言によれば、『月明かりで微かにしか見えなかったが、影武者を剣で刺して殺した人影がジークリンデに似ていた』のだそうで、潔白の証拠も不十分なまま、王城の牢屋に入れられてしまったらしい。

 

「ちょっと待ちなさいよ。ジークさんは否定したんでしょ?」

「無論じゃ。しかしまだ証拠も不充分、ジークリンデのアリバイもそこのノルンが証明してくれたが、疑いを晴らすにはまだ足りん」

「隊長は疑いが晴れるまで牢屋の中ッス。下手したら処刑されるかも……」

「そ、そんな……!」

「しょ、しょけい……!」

 

 双子が不安がるのも無理はない。あたしだって、ジークさんが大罪で疑われるなんて思ってもみなかった。

 

 でも、あの人はどれだけ阿呆でも騎士としての信念だけは全くブレなかった。

 それを知っているのは、短い間だが共に旅をしたあたしたちと、ノルンさんたち小隊の面々。

 

 流石に国家反逆の濡れ衣を着せられては、見過ごせない。

 ならば、行動に移すのみだ。

 

「心配ないわよ、ふたりとも。暗殺者は十中八九、偽物だろうし。ノルンさんだって、あいつがやったとは欠片も思ってないんでしょ?」

「もちろんッス!」

「ならそれでいいじゃない。あたしたちは、やれることをやりましょ」

「その通りじゃ。まずは王城で情報を集めるとするぞ」

「ぐすっ……ありがとうございまス……!」

 

 ノルンさんが感極まったのか泣きじゃくっている。

 

「小隊の仲間以外に……頼れる人がいなくて……本当に……ありがと……ございまス……」

「別に気にしなくていいですよ、ノルンさん。あの人は阿呆だけど、この国には必要な騎士だと思ってるから……それだけ」

 

 まったく、本当に手間のかかる騎士様だ。

 

 あたしたちは踵を返して、早速王城へ向かった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 あたしたちが王城までやって来ると、城門前には人だかりができていた。

 どうやら衛兵たちが荒ぶる民衆たちを抑えているようだ。

 

「皆さん、落ち着いてください!」

「うるせえ! 陛下が狙われたんだぞ!」

「犯人だっていう騎士を出せ! 報いを受けさせてやる!」

「そもそもあんたら騎士の怠慢のせいで陛下は殺されそうになったんだろ!? 責任取りやがれ!!」

 

 群衆は口々に叫ぶ。

 

 言いたいことはわかるが、このままでは女王様の謁見すらもままならない。群衆が押し寄せているせいか、衛兵たちも迂闊に動けずにいる。

 

「想定より陛下暗殺未遂の話、広まるのが早かったみたいッスね」

「情報を集めようにも、これじゃ……」

 

「大変なことになりましたわね」

 

 そこへ現れたのはヤーナだった。シュミッツさんに頼んでいたメンテが終わったのだろうか。

 

「えっ、ヤーナさん!?」

「ミュウくん、知り合いなの?」

「姉貴。知り合いも何も、孤児院のシスターさんだぞ。普段は孤児院の仕事サボってどこか行ってるけど、たまにお土産持って帰ってくるんだ」

 

 そうだったのか。どうりで名前を聞いた時に引っかかるものを感じたわけだ。

 まさか本業をサボってまで傭兵をやっていたとは。きっとたまに持って帰る土産とは、賭博の戦利品か何かなのだろう。

 

「あら、ニューちゃんがいつも言っていた『姉貴』とは、あなたのことだったのですね」

「世間ってこうも狭いもんだったのね……。で、アンタも何か王城に用事?」

「古くからの知り合いが疑われていると知っては、居ても立っても居られぬというもの。そういう単純な用事ですわ」

 

 おおっと、またしても新情報……というほどでもないか。

 ミルフィーユ孤児院のシスターなのだから、ジークさんと旧知であってもおかしくはなかった。

 

「ウチらも目的は同じッス。どうにかして真実を確かめたいと思ってるんスよ。隊長から聞いたところによると、随分知恵が回るのだとか。ヤーナさん、どうかウチらに協力して欲しいッス!」

 

 おいおいノルンさん、いくらジークさんの旧知で目的は一緒とはいえ、こいつ金の亡者ぞ?

 おそらく彼女の辞書に『安請け合い』なんて言葉はない。文字通りタダでは協力してくれないだろう。

 

「ジークの部下、とお見受け致します。お気持ちはお察ししますが、アタクシを頼るからには相応の金額を提示して頂かねば。一応アタクシも傭兵、ですので」

 

 ほら来た。仮にも国の権力である騎士団員にこの態度。あまり真似したくはないものだ。

 

「アンタはこんな時にも金なのね。傭兵らしいけど。アンタもジークさんが心配でここに来たんなら、少しはノルンさんの気持ちを考えて譲歩でもしたらどうなの?」

「お金とは誠意の形。そこの副隊長様が真にジークを想うなら、どれだけ高額になろうと払えるはずですわ」

 

 そういえば酒場でヤーナと初めて会った時も、『お金は誠意』とか言って他の傭兵団をドン引きさせてたっけ。

 確固たる、曲げられない彼女の信念のようなものなのだろう。

 

「わかったッス……今持ってるウチの全財産を、前金として支払いまス!」

「ほうほう、それで?」

「小隊全員で報酬金を出し合って、後ほど傭兵ギルドへ正式に依頼を出しまス! 総額、五十万(ゴルト)!」

「ナイスです! ナイス誠意ですわ!」

 

 いや、ナイス誠意って何よ。

 

 ともあれ、ジークリンデ小隊の財産と引き換えに、マキナを自作できるほどのブレインが協力してくれることになった。

 ミュウくんの天才頭脳と化学反応を起こせば無敵なのでは? などと期待してしまう。

 

「さて、報酬の約束を取りつけたところで……しばらく城門の騒ぎは収まりそうにありませんわね」

「ボクたちがどうこう出来ることでもありませんし、放っておくしかないですね」

「じゃあ情報をどうやって集めるのよ?」

「そこはそれ、裏口入城ですわよ。使うのは久しぶりですが、抜け道を知っていますわ。アタクシについて来てくださいませ」

 

 裏口入城? 使うのは久しぶり? 抜け道!?

 突然知らない情報が押し寄せてきて混乱しそうになる。

 まさかこの女、昔はしょっちゅう王城に出入りしていたというのか。それにしても何故?

 

 謎は尽きないが、ひとまず先頭を行くヤーナを追っていくことにした。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 城門から王城の周りをぐるっと迂回していく。

 

 王城の周辺には堀があり、その周りは高い城壁に囲まれている。

 正式に入城できるのは、先程人だかりができていた城門ひとつのみ。ヤーナが向かっているのは完全な裏ルートであり、王城にもしもの事があった場合の避難ルートを逆走するのだそうだ。

 

 しばらく進むと、堀の下まで続く階段が見えた。まさか水路から侵入するつもり?

 ヤーナについて行き、階段を降りる。その先には一隻の小舟と、意外な人物が待っていた。

 

「お待ちしてました、ヤーナ……レヴィンさんも、ようこそウォルタート城へ」

「あ、アンタ……エメル!?」

 

 街で偶然助けたことのある、たったひとりの自警団員、エメルだ。

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