太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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第四十九話 「よし! 今日からわしらは『ギラソール傭兵団』じゃ!」

「あら、いらっしゃい。話は聞いてるわ。思ったより少し遅かったじゃない」

「おお! とすると、貴殿がロッソ殿か。地図は頂いたのだが、少々道に迷ってしまったようでな」

 

 ロッソママが奥の方から現れて、まるで最初から話がついていたかのようにジークさんを応対していく。

 そしてジークさんは筒状に纏められた羊皮紙をロッソママに手渡した。

 

 って、呆然と観察している場合ではなかった。

 

「えっと……ジーク……さん?」

 

 当然、唐突な来訪であったため、あたしの脳内はパニック状態。

 

 そんな様子を知ってか知らずか、ジークさんは満面の笑みであたしたちを見つけると、人混みをかき分ける見事な足運びで、あっという間にあたしたちのテーブルの傍までやって来た。

 

「私を! 呼んだな!!」

「うわあっ! 声でかい!」

 

 しかも無駄に耳が良い。

 

「アンタ、何でこんなところに――」

「昨夜言ったろう、()()()すると。そのことを騎士団長と相談して、ここを紹介してもらったのだ」

「まさかそんな方向性だとは思わないでしょ!」

「でも、再出発の地としては悪くありませんわね。傭兵の仕事はかつての自称自警団に通ずるものがありますから」

「まあ、そういうことだ。これからよろしく頼むぞ!」

 

 いや、よろしく頼むぞと言われても。

 これ、後々問題にならない?

 

 元騎士がアウトローな傭兵に転職よ?

 前世の常識に例えるなら、元大手会社員の転職先が極道構成員、ってな具合のワイルドさよ?

 

「まったく。騎士団長サマも何考えてるんだか」

「顔見知りに匿ってもらえば大丈夫、ぐらいのことしか考えておらんじゃろ」

 

 流石はニコラウス騎士団長。

 伊達にワイルドな父やオネエバーテンと昔馴染みではない。

 問題児の扱いに随分と長けている。

 

 ありがた迷惑というヤツではあるけど。

 

「そういう男よ、ニッキーは。厄介事はぜーんぶアチシの役回り。()んなっちゃう」

 

 ジークさんを追ってきたロッソママが愚痴をこぼすも、その顔は(ほが)らかであった。

 

「その割には嬉しそうな顔してますわよ」

「あら、そう? 長いこと無茶振りされてきたから、信頼の厚さに気付いちゃったのかしら」

 

 その信頼、絶対重いでしょ。

 それに応えようとするロッソママも大概おかしいけど。

 

 さて、ほぼほぼ流れでジークさんを加えることになった、あたしの傭兵団。

 当然ジークさんは愛剣といえるマキナを王家に返してしまったので、サポーターとして登録することになった。

 

 マキナユーザーではない場合、サポーター登録だけならば諸々の契約書を書いておくだけで登録が可能なようだ。

 

「あれ? ジークさん、この『ジーク・ブリュンヒルド』って?」

「えっ、苗字違わないか?」

「ああ、これはノルンの提案でな。私の偽名だ。いつかヨハネス神父から聞いたことのあった、母の苗字をお借りした」

 

 契約書に書く名前が偽名、というのもどうだろう。

 

 無罪を勝ち取ったとはいえ、一度は女王暗殺未遂の疑いをかけられた元騎士。

 まだほとぼりが冷めていないことを危惧して、偽名の提案を持ちかけたノルンさんの気持ちもわからないでもないが。

 

「ロッソママ、偽名で傭兵登録って、いいの?」

「別に構わないわよ。ギルドの規則には『必ず本名で登録すること』なんて記述はないしね」

「ガバガバだなぁ」

「言ったでしょ、厄介事は全部アチシの役回り。訳あって本名が名乗れない子をどれだけ相手にしてきたと思ってるの?」

 

 ロッソママ、本当にご苦労さまです。

 

 続けて双子のサポーター登録を済ませたら、ここからが本題。

 つまるところ、あたしを中心とした、傭兵団の設立である。

 

近距離(インレンジ)のレヴィンさん、遠距離(アウトレンジ)のアタクシ、そして中距離(ミドルレンジ)のジーク。治癒と危機感知のサポートも万全。これで傭兵団として最低限の体裁は保てましたわね」

「これでもまだ最低限、ですか。傭兵の先輩の言うことは重みが違いますね」

「ぐらぁう」

「ならば後は……名前か!」

「おおっ、名前! リテラ、良い感じのないか?」

「ぬっ、いいのか? わしに任せて。そう言われると思って、百八ぐらいまで候補絞っておいたぞ!」

「多い多い! その数は全然絞りきれてないでしょ!」

 

 リテラの名付け候補は全部破棄するとして。

 

 傭兵団というチームの名前は重大な要素だ。

 ジークさんみたいな馬鹿でも覚えやすく、かつチームを象徴するような名称でなければならない。

 

 議論は白熱し、熾烈(しれつ)を極め……ることもなく。

 

「それに、もう決めてあるから。この傭兵団(チーム)の名前」

 

 あたしの一声で場は収まった。

 そして、ロッソママが用意した傭兵団設立申請書に、その名を刻んでいく。

 

「『ギラソール』……?」

「レヴィン、これは一体どういう意味合いの名前なのだ?」

「ギラソールっていうのは、あたしの好きな花の名前よ」

「そういう名前の花があったんですね。全然知りませんでした」

 

 まあ、リテラほどじゃないけど博識なミュウくんが知らないのも無理はないわよね。

 

 だってその花は、この世界に咲いてる花じゃないんだから。

 

「太陽の光で成長して、太陽の方角に咲く、そんなありきたりな花。だけど――」

 

 ギラソール、という単語は地球の国、スペインの言語。

 

 日本名は、向日葵(ヒマワリ)

 

 あたしの前世の名前であり、思い出の花。

 

 傲慢(ごうまん)かもしれないが、そう名付けずにはいられなかった。

 

「太陽に憧れていて、自分も太陽みたいに輝きたいって、頑張って花を開かせるのよ。あたしも、そんな風に生きたくて」

「レヴィン、それはアレかのう? お天道様に恥じない生き方をしたい的な」

「いや、それはそう、そうなんだけど! あぁーっ! 急に恥ずかしくなってきた!」

「恥ずかしくないですよ。レヴィンさんが率いる傭兵団に相応しい名前だと、ボクは思います」

 

 ミュウくん、気遣い痛み入ります……。

 心なしか彼の肩に乗っているグラウも嬉しそうだ。

 

「ギラソール……響きがカッコイイな、姉貴!」

「ありがと、ニュー」

 

 ニューは基本、言葉の裏表がないので、ガチ褒めなのがわかってしまう。

 ごめんよニュー。

 せめて次はもっとカッコイイ名前思いつくからね。

 

「話に聞いただけですが、まさにレヴィンさんを体現するような花という感じがしますわね」

「うむ、覚えやすくて悪くない!」

 

 ヤーナがヒマワリを見たことがないなりに、あたしと重ねて解釈しているのに対し、ジークさんはやはり語感だけを感じ取っていた。

 

 いや、理解してくれとは言わないけども。

 そういう感想は逆にモヤモヤしちゃうから、やめて欲しいのよね……。

 

「よし! 今日からわしらは『ギラソール傭兵団』じゃ!」

 

 当然リテラはあたしを全肯定しているので、ネーミングに文句はなし、と。

 これスペイン語にした自分の名前じゃろ、とか、もう少し腕が(うず)くような名前でどうじゃ、とか、少しくらいは反対意見を言ってくれてもいいんだけど、無理だろうなぁリテラだし。

 

 そこへロッソママが、台車にモーニングセットのプレートを載せてやって来た。

 

「はぁい、セット五人前お待ちどう!」

「えっ、ロッソママ? あたしはまだ頼んだ覚えないんだけど」

「傭兵団結成なんて一大イベント、祝わないわけにはいかないでしょ。サービスしちゃうわ」

「わざわざすいません……」

「いいわよ別に。――みんなァ! 新たなる傭兵団の旗揚げよォ! アチシのおごりで祝杯やっちゃうけど、いーいー!?」

「意義なぁぁぁぁし!!」

 

 うわっ、なんだか大事(おおごと)になっちゃったぞ。

 下手すると昨夜『勇者勲章』授与された時より、傭兵の皆さんが盛り上がってる気がする。

 

「っていうか、朝からお酒は正気の沙汰じゃないんだけど!?」

「今日ぐらいは大目に見ちゃうわ」

 

 ロッソママ、想定より懐が深すぎ問題。

 

「だったら早速、ギラソール傭兵団のリーダーから、乾杯の音頭を聞かせてもらうとするかのう!」

 

 酒が入ってないのに、リテラもえらい乗り気である。

 あ、あたしにお熱なのはいつものことか。

 

 しかしまだ顔が熱い。恥ずかしい。

 昨夜散々注目されていても、自分が中心になるお祭り騒ぎっていうのは慣れないもので。

 

 ああ、もう。しょうがない。

 ここまで来れば引き返すのも困難だし、突き抜けるところまで突き抜けてやろうじゃないか。

 

「えぇっと、その、こういうのはあまり慣れてないので、うちの団の方針だけ、宣言します!」

「よっ、勇者団長!」

「目標はデカけりゃ何でもアリよ!」

 

 ちょっと野次がうるさいな。無視無視。

 

「かつてあたしの父はこの地で、蛮族の汚名を覆そうと、必死に戦ってきた。あたしはそんな父を、今でも誇らしく思っている」

 

 乾杯の音頭だけを取るはずが、不思議とテンションが上がり、テーブルに右足を乗せるあたし。

 

「父の意志を継ぐ、なんて大それたことは言えない。既にあたしの手には『勇者勲章』があって、父の目標を軽く超えてしまったから。だからあたしは、その先へ進む!」

 

 そう、階段を二段どころか三段以上先まで飛ばして登ってしまったのなら。

 振り返るよりも、進まねば。

 

「ギラソール傭兵団が目指すのは、魔獣の元凶を断った先にある、完全無欠の大勝利! 必ず夜明けが来るように、何度でも立ち上がって、掴んでみせる! 文句あるかぁッ!!」

「イエェェェェェェイッ!!」

「まだ朝だから食い倒れぐらいに留めておきなさいよ! あたしたちギラソール傭兵団の結成祝いと、完全勝利を願って! 乾杯(プローズィット)!!」

 

 あたし自身も驚きのかつてないハイテンションで放たれた乾杯の音頭。

 『BAR フェストザール』はかつてないほどの一体感で、宴モードに突入した。

 

 さて、これからだ。

 あたしの……あたしたちの本当の戦いは、ここから始まる。

 

 でも、その前に。

 

「うむ、美味い! 酒場とはいえ、何たるクオリティの高さだ!」

「ジークさん、これ……」

「む、レヴィン。それはキミの分ではないのか?」

「昨日は、ごめん。頭がこんがらがって、熱くなって叩いちゃったから……そのお詫び」

「別に怒ってなどいないぞ、私は。事前に何も伝えていなかった私にも非はあるしな。それに――」

「それに?」

「既に私は階級上、目上の騎士ではなく、キミと並び立つ傭兵だ。遠慮せず呼び捨てで構わんぞ」

 

 はぁ、まったくこの人は。

 ちょっと前まで後悔していたあたしが情けなくなるほど、人間としては出来すぎている。

 

 こんな世界に必要な人間を生かすために動いて、本当に良かった。

 

「はいはい、よろしくねジーク。でも並び立つと言っても、マキナのひとつも持ってなきゃ、一緒に戦えないんだけど?」

「はっはっはっ、返す言葉もないな!!」

 

 でも頭はほぼスッカラカンなので、本当に生かしてよかったのか、と思わなくもない。

 

 ともあれ、ここに仲間は集い、基盤は整った。

 

 待っていろ、魔人王。そしてダリア。

 絶対アンタたちより強くなって、リベンジしてやる。

 

 ここからが、あたしのコンティニューだ――!

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