太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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第五十六話 「必ずコイツをモノにしてみせる」(2)

 王都の市場に農産物と依頼人コルクさんを送り届けて、無事に護衛の依頼は完遂できたのだが。

 

「ほい、今回の報酬金。それにしても困っちまうだな、そちらのジークさんには」

 

 かえって依頼人を心配させてしまう結果に終わりそうだ。

 

「護衛の道中にもウチの野菜を食い入るように見つめとったし。辿り着く前に根こそぎ食われるんでねえかとヒヤヒヤしたべ」

 

「すいません……まだ傭兵としちゃペーペーの新人なもので」

「確かに私は傭兵としては新人だが、過去に護衛任務を請け負ったこともある。これでも自制はしていたのだが」

「時々口から漏らしたヨダレが汚かった人間の言う台詞ではありませんわね」

「次から護衛の依頼は食料抜きで受けようかのう」

「そんな殺生な! 私の士気が上がらんではないか!」

 

 割と本気で考えてみようかな、それ。

 とはいえ、なんだかんだでコルクさんから感謝の言葉は受け取ったので、良しとする。

 

 コルクさんと市場で別れて、ひとまず護衛依頼は終了。

 

 太陽の昇り加減からして今は昼頃。

 本来なら往復二日移動の疲れを癒やすために、公衆浴場へ行こう、となるのだが。

 

「そういえばリテラ、私とそなたで注文した契約型マキナ、まだ完成していないのか?」

「注文してまだ七日じゃぞ。オーダーメイドとなると時間がかかるのは当然じゃろうが」

「しかし、汎用型が壊れたのも今回で五本目だ。安定して手に馴染むものがないと落ち着かん」

 

 ジークはまだ完成の報せがない、自分のマキナが心配の様子。

 

 ギラソール傭兵団結成の後にリテラから聞いた話だと、彼女が傭兵ギルド本部に来る前から既に魔武器鍛冶師(マキナスミス)の店――しかもあたしが依頼で酒を届けたことがあるシュミッツさんの所――に寄って、契約型マキナの注文をしていたそうで。

 

 うん、よく迷わずに行けたなと思ったけど、王城を出たところでリテラが迎えに来ていたそうだから安堵はした。

 でも聞き逃がせなかったのは、リテラがジークのマキナのオーダーメイドをプロデュースした、という部分。

 

 詳細を聞こうとすると、不自然にはぐらかされたのを覚えている。

 とても嫌な予感がする。趣味全開のモノになってなきゃいいんだけど。

 

「ねえ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないの? ジークがどんなマキナを注文したのか」

「何も喋らんぞ! 私はそこまで()の軽い人間ではないからな!」

「そこは『口』じゃない!? 尻軽だと別の意味に聞こえて、色々危ないんだけど」

「どうせ無意味なサプライズですわよ。完成まで秘密にしておいた方が格好良いとか、絶対リテラに吹き込まれてますわ」

「返す言葉もない。すまんな、ヤーナに頼ってもよかったのだが、刃物の鍛冶は不得手だったろう?」

 

 おや、そうだったのね。

 風杖『シュツルムウォーダン』を自作するほどの天才にも、苦手なジャンルがあったとは。

 

「どうでもいい事だけは、しっかり把握してますのね……。しかし訂正させてくださいませ。刃物の鍛冶は出来ないわけではありませんわ。ただ、あらゆる方向性で面倒だから、アタクシ自身がやりたがらないだけですのよ」

 

 前言撤回。

 ただ面倒な手順を踏まなければならないので、モチベーションが上がらないだけだった。

 

 でも傭兵団の拠点に、規模の小さい鍛冶場の設置をあたしに頼んだほどなので、小型の刃物くらいなら打ってくれそうだが。

 それでもお金は取られそうだけど。

 

「ま、そういうことじゃ。ひとまず公衆浴場でサッパリの前に、またジークの汎用型を見繕うとするかのう」

 

 また不自然にはぐらかされた気がする。

 

 しかしジークほどの騎士だった実力者が、火力面で契約型マキナに圧倒的に劣る汎用型を使い続けなければいけないという現状は、あまりよろしくない。

 

 いずれは魔人王を倒すという大目標で動いているのだから、彼女自身の本気を引き出せる逸品を、早いうちに完成させてもらわねば。

 

 そんな焦りにも似た考えを巡らせていると。

 

「おっと、ごめんよ」

 

 うっかり通行人の肩に自分の腕がぶつかった。

 そしてその通行人は、謝罪の言葉を残して、そそくさと去っていく。

 

「あっ!」

 

 気付けばあたしのホットパンツのベルトに結んであった、硬貨袋がなくなっていた。

 しまった、さっきぶつかった人にスられたのか。あたしとしたことが油断した。

 

「まったく、わざとらしいよなあ。いちいちお金盗るのに」

 

 しかし、スられた硬貨袋はニューの掌の上にあった。

 えっ、どゆこと?

 

「ウソでしょ……盗られたと思ってたのに」

「盗り返してやったよ。まあ、あっしは姉貴と会う前は、ちょっと生き汚かったし。その時のクセっていうかさ。ほい、姉貴」

「……ありがと」

 

 ニューがあたしに硬貨袋を返してくれる。

 

 盗り返した、か。

 あたしの見てないところで、そんな一瞬の攻防があったなんて。

 

「だが盗みはよくないぞ、ニューよ。盗まれて困る人もいるのだ」

「大丈夫だって、ジーク。盗む相手は盗賊とか悪いヤツ中心に選んでたし、今は盗むほどお金に困ってないしさ!」

「とっくに足は洗っているのだな。ならば良し!」

 

 なんというか、こういう所で甘いのよね、ジークって。

 素直に信じ過ぎ、とも言うけど。

 

 別に思い込みが激しい、という印象はないのだが、騙されやすいという気はしている。不思議よね。

 などと後方理解者っぽい気分になっていると。

 

「いた、アイツだ! あのガキがオレの金を盗りやがったんです、騎士さん!」

 

 ついさっき聞いたような声が、あたしたちに向かって響いてきた。

 

 先程あたしの硬貨袋を盗んだ男が戻ってきたようだ。

 面倒なことに騎士を連れてきている。

 

「ったく、なんだってんだ。人が休憩しようって時によ――」

 

 これまた聞いたことある声に、見覚えのある背格好。

 よりによって通報を受けた騎士が、あのハンネマンさんとは……。

 

「おお、また会ったな、騎士ハンネマン。貴殿も仕事上がりか?」

「そんな風に見えるかバカ。で、コイツの金を盗んだってガキはどいつだ?」

 

 えっ、そんな奴のこと信じちゃうのハンネマンさん!?

 確かに盗ったのは間違いないんだけど、元々あたしのお金だし。

 

「『かんさつりょく』ってのが無いな、おっさん」

「お、おっさん!? これでも俺ァ二十歳(ハタチ)だぞ!」

 

 老け顔、無精髭の二十歳……か。

 想像以上に苦労人っぽいわね、ハンネマンさん。

 

 それはさておき、きちんと釈明はしておかなければ。

 

「この子が盗んだのは否定しませんけど、元々はあたしのお金だったんです。この人が盗んだあたしのお金を取り返してくれただけですよ」

「あまり信用したくねえな、ラグナ族の言葉は。それが本当なら、コイツにも非があるってことになるが――」

 

 リテラから、『ラグナ族に否定的なのは大体貴族連中』という類の話は聞いていたが、その通りだとすれば、このハンネマンさんは貴族上がりの騎士ということになるのだろうか。

 

 あまり決めつけるのはよくないと思っていても、未だラグナ族への差別意識には敏感なあたしであった。

 

「な、何言ってんだよ騎士サマ! か弱い王都民の言葉を信じてくれよぉ!」

 

 スリの男は変わらずハンネマンさんに擦り寄っていく。

 どうしようもないわね、この人。

 

「ボクらの言うことも信じてください!」

「そーだぞ、おっさん! これは一種の『せーとーぼーえー』ってヤツなんだからな!」

「チッ、金を取り返して正当防衛が成立すると思うなよ、ガキども!」

 

 そしてハンネマンさんも融通が利かないときた。

 とっととスリの男をしょっ引くだけで、この話は解決するというのに。

 

「どうしたもんかしらね、これ……」

「もういっそお金で黙らせる、というのはどうですの?」

「そのお金が話題の中心なんだから、余計に話がこじれるわね。却下」

 

 これが地球なら、防犯カメラなりが設置してあったりして、映像でスリの証拠を提示できるんだけど。

 

 本当にどうしたものかと悩んでいたら、あれこれ考えることのないジークが、ハンネマンさんの前に立ち塞がっていた。

 またこのパターンか!

 

「騎士ハンネマン、どうか怒りを抑えられよ」

「ジークリンデ・シグルド……!」

 

 ハンネマンさん、やたらとジークをフルネームで呼びたがるな。

 

「まさか身内だから笑って見過ごせ、なんて話をしたいんじゃねえだろうな?」

「そんなつもりは毛頭ない。悪いのは金を奪ったこの男だからな。私達は見ていたぞ」

 

 頼れるのは第三者の目撃証言のみ、ではあるのだが。

 多分ジークは現場を見ていない。ニューの申告で理解しただけだ。

 だから私()と補足したわけ。

 

「実行犯を庇うのは、賢い選択とは言えんな。仮にも騎士たる者が、見極められんでどうする?」

「なんだとっ……!」

 

 お、いいぞいいぞ。

 どうせ適当に言葉を並べてるだけだと思うけど、その調子で論破しちゃえジーク!

 

 しかし、唐突にジークが手で鼻を覆った。

 えっ、どうした?

 

「それに口が臭いぞ貴殿……。ニンニク料理を食べた後に対話すると印象が悪くなるぞ……私の経験談だ」

「今指摘すんじゃねえよ、口臭はよォ! そういうトコだぞ!」

 

 そういうのは辛くとも黙っておくのがマナーでしょうがっ……!

 でも口に出しちゃう。それがジーク・クオリティ。

 

「俺の口臭はともかく、スリの現場を見た奴がいるんなら、話は変わってくる。喜んでコイツをブタ箱にぶち込んでやるよ」

「そ、そんなぁ!?」

 

 スリの現行犯、罪を擦り付けるも敢え無く無事逮捕。

 ま、自業自得でしょ。

 

 しかし、ハンネマンさん自身はご不満の様子で。

 

「これでこの件は終いだ。そしてここからは王国騎士としてじゃなく、俺個人の要件に切り替える」

 

 ハンネマンさんは左の白い手袋を取って、ジークに投げつける。

 ジークは首を傾げつつも、それを受け取った。

 

 あっ、もしやこれって……!

 

「ジークリンデ・シグルド! 俺と決闘しろ!」

「おおっ!」

 

 なぜかリテラが喜んでいる。

 

「明日、南の太陽が昇りきった頃、王都北口を出た先のカエサール遺跡、石の門にて待つ! マキナを構えての真剣勝負だ。受け取った以上は、逃げるんじゃねえぞ……!」

 

 そう宣戦布告を残して、ハンネマンさんはスリ犯を連行して去っていった。

 

「……なんだか、とんでもないことになっちゃったな」

「しかもマキナを使っての真剣勝負って話でしたけど……」

「あの様子だと、今は都合が悪いと伝えたところで、聞く耳持たずといった感じですわね」

 

 ヤーナの半ば呆れの入った言葉を聞いて、あたしは決闘を申し込まれた張本人を見る。

 

 ジークはアホ面を晒しながら、受け取った手袋をなぜかしゃぶっていた。

 

「いや、何やってんのよ!? いい匂いでもしたの!?」

「いや、手袋に付いてたソースの味を確認していた。この味は二丁目の――」

「しかも店まで特定してる! そういう記憶力こそ、今活かしなさいよ!」

 

 嗚呼、今から不安でならない。

 こんな調子で、決闘など出来るのだろうか――?

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