太陽の子レヴィン~格ゲーキャラの技を再現できる筋肉と属性付与で救世主とか無理だから!~   作:キョーサカ

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第七十五話 「運命は、アタクシの手の中にあったようですわね(2)」

 遊技場が集まる中にひっそりと佇むお洒落な喫茶店、その名を『トローム』。

 

 屋外に設置されたテーブルを囲んだあたしたちは、名物のフルーツサンドに舌鼓を打ちながら、ジャスミンが経験したイカサマ話の仔細を聞くことになった。

 

 ちなみにここのお代は全てあたし持ちである。

 こんな時に限ってギャンブラーどもの金はスッカラカンなんだもんなぁ。

 

「実を言うとさ、買いたい奴隷がいるんだよ」

 

 ど、奴隷?

 ジャスミンの話が開幕から重くなってきたような。

 

「その奴隷ってのが、親が離婚して生き別れた弟でさ。市場に並んでからそんなに日は経ってないって聞いたから買おうかと思ったら、結構な値段が付けられてたんだ」

「なるほど、弟を手っ取り早く救う手段として選んだのが、ギャンブラーの道ってわけね」

「いや、賭博は前から好きでやってたんだよ。目的と手段が合致しただけ」

 

 だとしても手段があまりにも問題すぎるでしょ。

 どうしてギャンブラーって生き物は好きで死地に行きたがるかな。

 

(はや)る気持ち、お察し致しますわ。で、あの『ザムフ』とかいうカジノは何なんですの? 久々に来たアタクシですら覚えがないので、新しく出来た物だとは思いますけども」

「お前も用心棒のヤツから聞いたろ、ラングハイムって支配人の名前」

「聞いたことないわね……。ヤーナ、知ってる?」

「ダニエル・ラングハイム伯爵。最近マギニウム鉱脈を新たに発見して、一気に成り上がり街道をバク進中の貴族と聞いてますわね」

 

 流石はヤーナ、王都を遊び歩いているだけあって事情通である。

 

 その情報だけ聞く限りでは貴族としては若いのだろうが、そんな彼がカジノの支配人でイカサマをやっていたという話なのだから、とても立派には思えないのも事実。

 

 あたしはしばらく、ジャスミンの話に耳を傾けた。

 

「でな、そのラングハイムが仕切ってる『ザムフ』。噂じゃよく稼げるって聞いて挑んでみたんだが、結果は見ての通りさ。賭け金が軒並み、沼に飲まれた」

「他のカジノでもよくある光景じゃございませんの。状況証拠としては弱いですわね」

「うっせぇな、露骨にやられたんだよ、イカサマをな! 知らんぷりってオマケ付きだ」

「具体的には、どんな?」

 

「例えば馬の前に人参を二本置いて、馬が左右の人参どちらを先に取るか、って賭け事が行われたとするだろ? それで提案したヤツがどっちを選ぼうとも賭け事に勝った、それは何故か?」

「もしかしてだけど……賭け事を提案したヤツが馬に指示を出してたから、どちらを選んでも勝つように仕組まれていた、とか?」

「意外に頭が回るなぁ、レヴィンは。正解だよ。他にもいつの間にか手札の柄が変わってたり、ルーレットの球が一瞬で別の位置に移動してたり……大当たりしてる時にそういう類のイカサマをやられたってコトさ」

 

 なるほど、店ぐるみで味な真似をする。

 

 ギャンブルの根幹は運試しだ。

 六面のサイコロを振って常に同じ目が出るとは限らない。

 

 その運を否定する行為こそが、イカサマ。

 運で生きるギャンブラーの神経を逆撫でする所業であることは、疑いようもないだろう。

 

「バレなければイカサマではない、を地で行くカジノなのですわね」

「実を言うと、それだけじゃないっぽいんだよな」

「イカサマ黙認以上の何かがあるっての?」

「トイレ行った帰りに従業員のヒソヒソ話を聞いちまったんだが、どうも『ザムフ』が客から巻き上げた金の一部が、どこぞに横流しされているらしい」

 

 よ、横流し!?

 流石にそれは見過ごせないでしょ。

 

「取引先は魔獣教団の残党か、それとも帝国か……。いずれにしろ客から金を巻き上げる理由がある以上は、看過できませんわね」

「同感。イカサマはあたしも嫌いだし、ジャスミンの弟さんも早々に買い戻さなきゃだし、いっちょ殴りに行きますか」

「おっ、話がわかるじゃん」

 

「ただし、アタクシやレヴィンさんも傭兵の端くれ。事後承諾の形になりはしますが、後に傭兵ギルドで正式な依頼手続きを踏んだ上で、きっちり依頼料は払っていただきますわよ」

「えっ? カジノ潰しを正式な依頼にする気かよ!? しかもアタイの依頼って(てい)で話進めんな!」

「非公式のタダ働きなど言語道断。無慈悲に奪われた賭け金を取り戻したいのなら、相応の誠意を払ってくださいな」

「クソッ……必要経費ってことなら持ってけドロボー!」

「結構。必要な分を取り戻した暁には、か・な・ら・ず、お支払いなさいませ」

 

 同じギャンブラーとはいえ、傭兵という身分を利用してマウントを取れる辺り、ヤーナは強かすぎるなぁ。

 果たしてラガー区でどれだけブイブイ言わせてたんだか。

 

「やれやれ、休日だというのに、安請け合いしおって。まあ、そこがお主の良いところなんじゃが」

 

 うわっ、出た。

 気付けばリテラが、あたしの後頭部からひょっこりと顔を出していた。

 

「いつも唐突に出てくるんじゃないわよ」

「まあええじゃろ、細かいことは」

「ヤベッ、妖精とか初めて見た。えらい懐かれてんなぁ」

「ジャスミン、彼女と出会えた幸運を噛み締めなさいませ。『妖精憑き』な上に『勇者勲章』を頂いた大傭兵の力を借りられるのですから」

「基本ひとりで動いてたお前がつるんでた理由、なんとなくわかった気がするよ」

 

 まあ、ヤーナからしたら縁起物みたいな扱いなんだけどね、あたし。

 リテラはわざとらしく咳払いして、話を進めた。

 

「話は大方聞かせてもらった。しかし、ギラソール傭兵団の知恵袋たるわしから言わせてもらえば……カジノを物理的に潰すのは、止めておくんじゃ」

「まあ、そうなるわよね。相手は魔獣じゃないし」

「レヴィンさんの名声を鑑みても、ラガー区騎士団に犯罪者として目をつけられては、今後の傭兵団活動にも支障をきたしますしね」

 

 ヤーナ、密かにあたしを脳筋じゃないかと思ってそうな発言。

 いや、本当に物理的に潰そうとか思ってないからね。

 怒りの沸点を超えたらわかんないけど。

 

「それにイカサマの証拠はともかく、横流しの話題なんかは、アタイの又聞きでしかねえわけだし。確証がなきゃ騎士団に訴えようがねえぜ?」

「そこじゃよ。どうにかして合法的にラングハイム伯を裁く。そのための証拠を掴まねば、わしらに勝ち目はないじゃろう」

「合法的、か。具体的にはどうするつもり?」

「案はある、いくらかのう。しかしその前に、拠点でジークや双子と合流して、今回の話を共有せねば。正式な依頼として仕事を受けるのなら、尚更じゃ」

 

 ジークはともかく、ニューとミュウくんにもここでの仕事やらせる気か、と思ったが、案外ラガー区の環境に身を置いても、ふたりなら平気かもしれない。

 

 泥水をすすって、帝国から命からがら逃げてきたほどのふたりだから、ラガー区のような光景はとっくに見慣れているだろうし。

 

「リテラ様、余計な気を回さずともアタクシたちだけで――」

「裏の空気を吸っておる奴は、縛りプレイが好きな阿呆ばっかりでいかんのう。難易度は下げるに越したことはない。もっと周りを頼らんか」

「ならリテラ様は、繊細な作戦が苦手そうなジークでも、役に立てる何かがあるとおっしゃいますの?」

「そこはミュウ辺りが適材適所の配置にしてくれるじゃろ」

「アナタがそうおっしゃるのであれば、頼ることにしますわ。悔しいですけど」

 

 そういえば、ヤーナがリテラのことを様付けで呼ぶのは何でなんだろう、と前々から思っていた。

 まさか創造神の分体であることを看破してるとか……なんてね。

 

 当然リテラは自分の正体を徹底して隠してるだろうし、バレているところを見たことがない。

 とはいえバレたら面倒なことになると言っていたし、バレそうになったらそれとなくフォローしておこう。

 

 って、何で今更コイツの心配しないといけないんだ。

 

「よし、決まりじゃな! ジャスミン、お主もウチの拠点に来てもらうぞ。『ザムフ』の内装やら何やら、知っている情報を出来る限り教えてくれ」

「お、おう。わかったぜ」

「よろしく頼むぞ。『エチゴヤ成敗計画』、始動じゃ!」

「エチゴヤ……?」

 

 あー、やっぱり異世界(フロイデヴェルト)の人はわかんないよね、()()()

 ウチの創造神の地球オタクなトコが出ちゃって申し訳ない。

 

 まあ確かに金に汚い貴族を成敗って、なんとなく時代劇っぽいかも。

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