「我々
歳は40、50ばかりだろうか。特に目立った特徴もないその男に、しかし会場中の全ての視線が注がれていた。
いや、会場だけではない。この世界に住まう全ての視線が
いや、これも適当ではない。
全ての創作世界に住む全ての知性体の認識が、そこに注がれていた。
「…統一時間軸にして約50年前、彼方でいえば1973年。b-3228に属する多元世界に於ける地球は地球外生命体ーーBETAからの侵略を受けました」
会場が静まり返る。数多の創作群の中でも、この世界の凄惨さは折り紙つきであった。
同創作世界は無数のタイムラインを抱えており、又その全てでクラス7の文明危機、或いは
既に、428のタイムラインの不可逆的滅亡が確認されている。
「…b-1117では、インキュベーターを名乗る地球外情報体によって思春期の少女が文字通り電池同然の扱いを受け、ーー紆余曲折あり、最終的には、46のタイムラインで宇宙構造の破綻が起こりました」
「…b-2112では、神格存在によって宇宙全体が支配され、大半の知的文明が滅亡。地球文明も、神格存在の庇護下での存続を余儀なくされました」
「…b-4130では、特殊な時空間構造によりタイムラインそのものが常に世界群維持のために削除され続けていました。内部の生命や文明を無視して、です」
それらは上位創作層から見れば作品の1シーンであり
そして、我々にとっては忘れることのできない凄惨な天災であった。
「それだけではありません。
この創作層には、無数の存続が危険に晒されている創作世界がありました。
いえ、もっと細かいところまで言うなら
等々、小規模であっても、十分に重大なインシデントは無数にありました」
魔法少女、神、超能力者、魔法使い、科学者、一般人、軍人、機械、
これを聞いている全ての存在が、全ての世界の存在がその事実を胸の内で反芻する。
彼らは、それを知っていた。
それの重さを、重大さを、どうしようもなさをよく知っていた。
「BETA襲来時に
インキュベーターを
異聞帯剪定の前に、時空間/虚数現実次元についてより
数多の時空間異常/時空間渡航に、超常現象に
ですが、我々は分断されており、それらは夢物語でした」
僅かな間
会場が重苦しい静寂に包まれる。
少し開けて、「しかし」と言う声が響いた。
「それも、過去の話です。
それらの世界は“あった”訳ですが、今はどうでしょう?
財団-管理局-タイムパトロールを中核として発足した次元管理連合は、無数の宇宙規模の災害を未然に防止してきました。
財団ーー三頭政治は無数の小規模から神格規模にも及ぶ超常現象を排除し
管理局は規模を拡大、崩壊の危機にある世界の次元管理を行い
タイムパトロールは時間軸異常への対応や創作群全体の監視を行い
統一宇宙艦隊連盟は軍事的介入によって脅威を排除してきました。
財団側の提供によって齎された物語理論並びに物語緩衝層の存在は、我々から創作という縛りすらも取り払いました。
私は断言しましょう。
それは夢物語ではないと。
無数の創作世界が手を取り合うことで、
希望が会場を照らす。フラッシュライトが眩く降り注ぐ。
全ての視線が、認識が、その次の言葉を催促している。
それに応えるよう、男がこう宣言した。
「統一歴1年1月1日、多元虚数作品間連盟の締結を宣言します
…全ての終わりに、大団円を」
歓声が、全ての世界を包んだ。
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財団空想科学部門より通達
本文書は宣言終了後速やかに上位創作層へ送信され、本統一タイムラインの固定並びに上位創作世界からの切断が実行されます。