それはいつものように私がギターヒーロー宛のリクエストを消化している時のことだった。曲も終盤のサビに入って私も少し熱くなった頃ギターのピックが私の手から逃げるように落ちた…普段はこんな事滅多にないのになと切り替えてもう一度弾き直そうとすると…手がまるで凍りついたかのように動かなくなってしまった
ぼ「えっ…な、なんで…」
そこから1時間ほど昔弾いた曲を試してみたけどどれも最初の弾く所すら出来なくなっていた。最後には私の手は震え…とうとうピックすら持てなくなってしまった
次の日私は学校を休んで病院に行くことにした。私からギターを取ったら…何も残らない…急いで解決しないと…
私は病院に行けば何とかなると軽い気持ちだったのだけど先生から言われた言葉で顔の血が一瞬でひいた
医者「イップスですね」
ぼ「い、イップス…?」
それってスポーツ選手とかがなる病気のことだよね…私に関係があるのかな…
医者「確かギターを演奏なされているそうですね 」
ぼ「は、はい」
医者「珍しいことでは無いことですが実は楽器を弾く人でもなることがあるんです。それが治るにはすぐに治る人もいれば…何年もかかって引退する人もいますね」
ぼ「っ」
医者「これは心の病になるので…私達からは安定剤をお渡しするしかできないですね…申し訳ない…」
そこから私は…どうやって家に帰ったかすら覚えていない。両親からはとても心配されていたことだけは覚えてはいるけど…いまの私には返事をする余裕すらなかった。
ぼ「……みんなには…隠さないと…」
ロインで私はみんなに暫く休むことだけを伝え、押し入れに引きこもり弾けないギターを触り続けた
○○○○○○○
ある日からぼっちちゃんから暫く休むと連絡が入って今日で1週間が経とうとしていた…喜多ちゃん曰く学校すら休んでいるみたい…私達も何度もロインを送った物の既読もつかずどうしようか悩んでいた
喜「ひとりちゃん…大丈夫かしら…」
り「うん…流石に心配になるよね」
虹「ロインも相変わらず既読すら無し…何かあったのかな…」
私達は集まってもうため息しか出なくなっていた…この中では私だけが知っているギターヒーローのアカウントも休む連絡が入ってから一度も更新がされていない
虹「…あー!こうしてても動かないんだしみんなでぼっちちゃんの家に行かない?」
喜「そうですね…ここで話しててもひとりちゃんから連絡があるわけでもないですし…」
り「うん、行こう」
こんなことをしていても埒が明かないということで私達はぼっちちゃんの家に向かうことにした。電車に揺られ2時間…その間も頭の中では悪い予想ばかり巡っては振り払っていた
虹「……なんだか、緊張するね 」
喜「ですね…ひとりちゃん何も無ければいいのですけど…」
り「はやく押そう、ぼっちのこと心配だし」
虹「…そうだね」
珍しく真面目に心配してるリョウに感心しながらもインターホンを押した。暫く待っているとぼっちちゃんのお母さんが真っ青な顔をして扉を開けた
虹「ど、どうしたんですか!?」
ぼ母「ひ、ひとりちゃんが…いないの!」
喜「えっ」
ぼ母「さっき…急に大声を出して泣きながら靴も履かずに出ていったの…私もさっきまで探してたんだけど見つからなくて…」
虹「わ、私達も探します!」
喜「ひとりちゃんのお母さんはもし帰ってきた時の為に家にいてください!」
り「2人とも手分けして探そう」
ぼっちちゃん…大丈夫だよね
○○○○○○
ぼっちが家を飛び出したらしい、しかも泣きながら…これは何かあったに違いない。ぼっちは周りのことは率先して助けに来てくれるけど自分の時はひたすら隠してしまう悪い癖がある、今回も多分隠して限界を迎えたのだろう…でもぼっちがそこまで限界を迎えることって何があるのだろうか
私は虹夏達と別れぼっちが行きそうなジメジメした所を探した。やはり土地勘があるぼっちの母親が探しても見つから無かったのだから簡単には見つからない…半分諦めて歩いていると公園のブランコに見覚えのあるピンクのジャージを見つけた
り「……ぼっち」
ぼ「ひっ…りょ、リョウ…先輩」
そこには最後に見たぼっちの顔より痩せて目には黒いクマが出来ていた…1目見ただけでただ事ではないと感じゆっくりと近づいた
り「…何があったの?」
ぼ「っ…こ、来ないでください!!」
り「!」
ぼっちは私を見つけるとすぐに立ち上がりボロボロと涙を零しながら逃げる体制を取った。これはひとつでも言葉を間違えたらぼっちを傷つけてしまう…私はみんなに自分の居場所だけを送り深呼吸をしぼっちの目を見て話し始めた
り「分かった、せめて話を聞いてくれない?」
ぼ「い、嫌です!帰ってください!」
り「ぼっち、どうしたの?ぼっちはそんなことを言う人じゃないの分かってるから」
ぼ「っ…な、なんでもいいじゃないですか!私なんて…いらないんです!!」
り「いらない…それはなんで?」
ぼ「そ、それは…ぐっ…」
り「私じゃ…力になれない…かな?」
ぼ「……だめ…です…ごめんなさい!」
り「!待って、ぼっち!」
ぼっちが一瞬揺らいだ気がして…油断してしまった。普段は足が遅いのに逃げ足がはやいぼっちは公園を出て行ってしまう…私が追いかけようとした瞬間ぼっちの足は止まった
喜「はぁ…はぁ…見つけたわよ、ひとりちゃん」
ぼ「っ…き、喜多ちゃん…」
○○○○○○○
喜「!リョウ先輩からロイン…これって…」
先輩から現在位置だけ送られてきた。最初は分からなかったけど状況から見てひとりちゃんを見つけたけど何かしらあって現在地だけを送ったと見て間違いがないと思う。幸い私の位置からそこまで離れていないので私は急いで向かうことにした
送られてきた場所はなんの変哲もない公園…2つの入口のうち片方にはリョウ先輩がいてその先には…ひとりちゃんがいた。何か口論をしているようで普段のひとりちゃんからは考えられないような大声がこちらまで聞こえてきた。公園の入口に入ろうとした瞬間ひとりちゃんはこちらに逃げるように走ってきた
喜「はぁ…はぁ…見つけたわよ、ひとりちゃん」
ぼ「っ…き、喜多ちゃん…」
普段からたまに顔色が悪くなる時があったけど今回のひとりちゃんの顔はそんな比ではないくらいにやつれていた
り「郁代、ナイスタイミング。絶対にぼっちを逃がさないでよ」
喜「もちろんです。さぁ、ひとりちゃん…帰りましょ?」
ぼ「……ひ、1人で帰りますから…2人は帰ってください」
り「ぼっち、ぼっちのその行動を見て信じられると思う?」
喜「そうよ、そんな状態のひとりちゃんを置いて帰れるわけないじゃない」
ぼ「……なんで…ですか…こんな…私なんて放っておいてください!」
喜「っ」
り「…ぼっち」
本当にひとりちゃん…どうしたの?…私達じゃ力になれないの…?何がひとりちゃんをそこまで追い詰めてしまったのか分からず私とリョウ先輩は固まってしまっていた…すると私の後ろから…
虹「それはぼっちちゃんが大切だからだよ!!」
○○○○○○
リョウから現在位置だけが送られてきた。きっとぼっちちゃんに何かあって送るので精一杯だったのだろう。私は少し遠くにいたから全速力で向かうことにした
暫く走ると指定されていた場所についた。そこで聞こえたのはぼっちちゃんの涙声で放っておいてとのこえだった…そんなこと…する訳ないじゃない。私は喜多ちゃんの後ろから叫んだ
虹「それはぼっちちゃんが大切だからだよ!!」
ぼ「!!!」
り「……虹夏、遅い…けど良く言ってくれた」
喜「そうよ…ひとりちゃん…何があったの…?」
ぼ「う…あぅ…」
前からは私と喜多ちゃん、後ろからはリョウがぼっちちゃんにゆっくりと近づく…
ぼ「や、やめてください…こんな…ギターが弾けない…ゴミなんて…」
虹「ギターが…弾けない?」
逃げられないと観念しぼっちちゃんは蹲って震えながら理由を話してくれた
ぼ「…わ。わたし…ギターが突然弾けなくなったんです…最初は触ってたら弾けるようになると思って練習をしていたんですけど…全然ダメで…病院で心の病だって…」
り「……もしかして…イップス…?」
喜「それってスポーツ選手とかがかかる病気でしたっけ?」
り「いや、私達演奏者にもかかる事があって何がきっかけでなるのか…そして何がきっかけで治るのか分からない心の病気」
確かに聞いたことがある…有名な演奏者もたまにかかってそれで引退することもあるって。でも…
虹「…でもなんで私達から逃げたの?」
ぼ「……わ、私にはギターしかないんです…そんな私からギターを取ったら…みんなに嫌われる…だから…会いたくなかったんです…」
喜「そ、そんな…」
り「そんなことあるわけない!!」
ぼ「!」
喜多ちゃんがぼっちちゃんの言葉を否定しようとした瞬間リョウが大きな声で遮った。こんな声を出すリョウなんて初めてで私と喜多ちゃん…そしてぼっちちゃんも驚きを隠せなかった
り「ふざけないで、私達がぼっちのお母さんから居なくなったって聞いてどれだけ心配したか分かる!?」
ぼ「…で、でも…」
り「怖かったの!ぼっちが…私達の大切な友達のぼっちがいなくなると思ったら怖かったの!」
喜「先輩…」
虹「うん、ぼっちちゃん…リョウの言う通りだよ」
私は蹲っているぼっちちゃんに近づきゆっくり後ろから抱きしめた
ぼ「…なんで…」
虹「リョウも言ったでしょ?心配したって」
ぼ「……こんな…弾けないギタリストを置いてても…バンドは有名になれないですよ…」
やっぱりぼっちちゃんの心の奥で心配していたのはその事だったんだ
虹「うん、確かに…バンドとしては有名にもなれないね」
ぼ「な、なら私なんかに構ってないで…帰ってくだ」
虹「でも…友達が困ってたら心配するのが当たり前でしょ?」
ぼ「!!」
確かに弾けないことはギタリストにとっては致命的な事だ。バンドにもいらないかもしれない…けど私達結束バンドは4人揃っての結束バンドになる。それが1人でもかけてはいけない、それに1番大切な事はバンドで有名になる事じゃない。困っている
喜「ひとりちゃん…ギタリストはギターが弾けないといけないのは分かるわ…じゃあ私はこの結束バンドにはいらない存在?」
ぼ「そ、そんなことは…」
喜「私もギターが弾けないのにここに入ったわ」
ぼ「……」
喜「でも、そんな無責任な私に居場所を作ってくれたのは紛れもなくひとりちゃんよ。ギターが弾けないなら教えるって…だから私はまたひとりちゃんが弾けるようになるまで隣にいるから」
ぼ「……きた…ちゃん…」
喜多ちゃんもぼっちちゃんに近づき優しく抱きしめた
り「…さっきは怒鳴ってごめん…けど、これだけは覚えてて。私達はぼっちがギターを弾けるから近くにいるんじゃない、最初はそうだったとしてもぼっちは私達の大切な友達なんだから」
ぼ「…なさ…」
ぼ「…ごめ…ん…な…さい…」
リョウも少し落ち着きこちらに近づくとぼっちちゃんを抱きしめた。私達3人がぼっちちゃんを抱きしめているとぼっちちゃんはゆっくりと顔を上げ大声で泣き続けた
○○○○○○○○○
私は暫くみんなに抱きしめられたまま泣き続けた…泣いている間私にずっと張り付いていた黒いものがボロボロと取れる感覚がし泣き止む頃にはスッキリとしていた。虹夏ちゃん達に連れられ家に帰るお母さんは泣きながら私に抱きついて怒ってくれた…私は大切にしてくれる人がいたのに自分だけで解決しようと逆に悪い方向に向かっていたのだと改めて痛感しまた泣いてしまった
お風呂に入って素足で走っていたため怪我をした足を消毒し私達4人は私の部屋で話すことにした。まだ根本的な解決は出来ていないから
虹「それじゃあ落ち着いたし…どうしようか…」
ぼ「すみません…」
喜「大丈夫よ!ひとりちゃん!1人では無理でも集まったらなんとかなるわよ!」
り「……ねぇ、試したいことがあるんだけどいいかな?」
帰ってくるまで一言話さなかったリョウ先輩の提案は即席で演奏するというものだった。スターリーから来ていたらしくたまたま喜多ちゃんもリョウ先輩も楽器を持っていて虹夏ちゃんは私から本を借りて即席のドラムを作っていた…最初は喜多ちゃんと虹夏ちゃんも反対していたけどリョウ先輩の真剣なお願いに負け演奏をすることになった
り「ぼっちも持つだけ持ってくれない?」
ぼ「えっ」
私はどうしたらいいのか迷っているとリョウ先輩が部屋の隅にあった私の相棒を持ってきてくれた…弾けない私が…いいのかな
り「大丈夫、ぼっちなら帰って来れるよ」
この時のリョウ先輩は普段の先輩とは違う安心感が産まれて私も頷くことにした
虹「それじゃあ…準備はいい?123!」
虹夏ちゃんの合図と共に演奏が始まる、アンプも繋いでいないからそこまで大きな音は出ていないはずなのに私の心の中にぐっと染み込んでくる…喜多ちゃんも虹夏ちゃんもリョウ先輩もみんないい表情で演奏をしている…私の音だけが…足りない…悔しくてピックを強く握る…でも、悔しいだけじゃなくて私も混ざりたい…弾きたい…そんな気持ちが悔しさや黒い気持ちを全部打ち消し気づいた時には私の手は勝手にコードを掻き鳴らしていた。
私の大好きな音が…混ざりあって1つの音楽が産まれた
虹「…ぼっちちゃんが…弾けた!」
喜「ひとりちゃん!かっこよかったわ!!」
ぼ「えっ…わ、私…」
私が肩で息をしながら狼狽えているとリョウ先輩が肩を叩いて親指を立ててくれた
り「イップスは身体の病気じゃないことが多い、しかもぼっちは突然になった…なら、ぼっちが意地でも弾きたくすればいいと思ってね」
喜「なるほど!さすがリョウ先輩です!」
ぼ「で、でもそんな簡単なこと…」
虹「ぼっちちゃん、簡単な事ほど見逃すことがあるんだよ!それに…弾けたならいいじゃん!」
喜「ひとりちゃん…もっと私達を頼っていいのよ…?」
……なんで私はこんな簡単なことに気づかなかったんだろう…私1人じゃ解決できなくて自暴自棄になるんじゃなくて…みんなを信じて相談していたらまた変わっていたのかな…
虹「ぼ、ぼっちちゃん…?」
り「……ぼっち?」
喜「大丈夫…?ひとりちゃん…?」
みんなが心配そうに顔を見てきた…私の頬に暖かいものを感じようやく泣いているのだと気づいた。でもこの涙はさっきまでのみんなに捨てられるかもという絶望から出ているものじゃない…私はまたこの光の中へ戻れた事に安堵しているんだと思う。だからみんなに絶対に言わないといけないことがある
ぼ「っ…み、みな…さん…本当に…ありがとうござい…ました!」
○○○○○○○○
何故かギターが引けなくなって1週間…みんなに心配されていろんなことがあったけどまた弾けるようになった
そんな経験から私は作詞をすることにした、数日後歌詞が完成した
ぼ「で、できました…」
り「ふむ、拝読いたす」
虹「なんだか私までドキドキしてきちゃった」
喜「分かります!!私もドキドキが止まらないです!」
いつもの喫茶店…ではなくみんなに見てもらいたくて今回はスターリーでのお披露目会…ドキドキしながらノートを机の上に広げみんなが読み始めた…しばらくしてみんなが顔を上げる
虹「うん、いいね!歌詞の中に記号を入れるなんて新鮮!」
喜「私はここの「毎分毎秒が奇跡刹那の煌めき」という所が好きです!」
り「うん、本当にいい歌詞だね。ぼっちらしさもあってそれでいて前向きな曲になってる、これなら直ぐに曲の方も浮かびそう」
みんなに好評だったのでよかった…
り「それで、曲名は決まってる?」
ぼ「あ、は…はい」
この曲は暗い世界に陥った私がみんなに救って貰った事を題材にした曲…だから私の中では既に決まっていた
ぼ「こ、この曲の名前は…」
「光の中へ」
そう決めていた
pixi○にまだ投稿していないものになります!
一応2日後に投稿予定ですが先にこちらへ…
光の中への曲いいですよね…