人形の見た目を果心居士にしたのは、自分の好みです。
わたしは、人形。
お店の棚に並んだしがない人形。もう何年も売れ残り、店先に置かれています。
元々わたしは、おじいさんの手でつくられました。おじいさんにずっとずっと可愛がられました。孫娘のように大切にされました。
でもある時おじいさんは病気で亡くなりました。最期まで私を傍に置いてくれました。人形の私にはおじいさんの苦しみや気持ちはわかりません。だって人間ではありませんから。ですが、おじいさんは亡くなる寸前まで、わたしのことを心配していました。自分がいなくなった後のことを気にしていました。
おじいさんが旅だった後、わたしはおじいさんの家族にひきとられました。
おじいさんの家族はわたしを気味悪がりました。家族はおじいさんのことをよく思っていなかったみたいでした。耄碌だの厄介者だの散々ないいようでした。
わたしは知っています。おじいさんは家族を大切に想っていたことを。よく仕事場で語り掛けてくれましたから。でもわたしは話せません。ただの人形です。一言ぎゃふんと言わせたいですが、ただの人形でしかない自分は何も言えず座っているしかありませんでした。
幾年か経った頃、わたしは借金の肩に売られました。家族はおじいさんの遺産を充てにして自堕落な生活を送っていました。しかし遺産が手に入らなかったため借金苦に陥り、当てつけに売ったのでした。
でもわたしはきにしません。あの家族の下にいるよりもお店の方が落ち着きます。古めかしい雰囲気がおじいさんと居た日々を思い出すからです。
それからまた、幾年が経ちました。
わたしは不思議な女の子に買われました。お店の人も大層驚いていました。古びた人形よりもクマやうさぎのぬいぐるみの方がいいはずなのに。
でも女の子はいいました。"この子が良い"と。
女の子の母親も熱意に負けてお金を払いました。紫がかった黒髪に、両眼には星がありました。
この日、わたしは女の子”アイ”の家族になったのです。
アイとの暮らしは、とても楽しい日々でした。わたしの髪をくしでとかし色々な髪型にしてくれました。
でも楽しいことばかりではありません。アイの母親はある時から”おかしく”なってしまいした。
アイに手を出すのです。癇癪を起してはいつもアイに当たるのです。
おかげでアイはボロボロです。わたしはあの母親が嫌いです。おじいさんの家族を主出すからです。
アイはいつもわたしに向かって話してくれます。辛い、苦しいと言ってくれます。でもわたしは人形。あの母親をどうにかすることはできません。アイに抱かれることしかできません。
ある晩、アイが寝静まったのをいいことに母親はわたしを外に連れ出しました。連れていかれたのはゴミ捨て場です。母親は手に持ったバールでわたしを何度も叩きました。鬼の形相で何度も何度も叩きました。いっぱい恨み言も吐かれました。
よっぽどアイの傍に居るわたしが気に食わないようでした。わたしは人形なので人間の言う痛みがありません。ですが、あまり叩かれ過ぎて困ってしまいます。叩かれ続けられているうちに、目が、片腕が欠けてしまいました。髪も一部抜けてしまいました。
満足したのでしょうか。母親はバールを捨てて帰っていきました。
わたしは置き去りです。このままでは翌朝にはごみ処理場行です。
アイが心配です。おじいさんのようにアイが一人ぼっちになってしまわないか、とても心配です。アイの人生がとても心配なのです。
でもわたしは人形です。動けないのです。走ることもしゃべることもできません。
嗚呼、無情。できることならわたしは人になりたい。アイの傍に居たい。アイを守ってあげたい。ただそれだけなのです。
朝が近づきました。
ごみ捨て場にカラスたちが集まってきます。物珍しいにカラスたちはわたしの身体をつっつきます。あ、まってあまり目や髪をいじられるのは困ります。
カラスたちと戯れていると、女の子がやってきました。女の子が来た途端、カラスたちはわたしの身体をいじるのを止めて飛び立っていきました。
女の子はボロボロになったわたしを拾い上げるなり、くすくすと笑いました。
「ねえ、貴女人間になりたい?」
女の子はわたしの願望を言い当てました。人形だから当然話せません。ですか、女の子にはわかるようでした。
わたしは、”はい”と念じます。冷やかしかと思いましたがこの女の子はアイとはまた別ベクトルで変な雰囲気を漂わせているから、本物のかみさまかと思います。
「いいよ、貴女を人間にしてあげる。人に愛されたお人形さん、貴女の行く末を見届けさせてもらうわ」
「その前に、ボロボロなままじゃいたただけないわね。直してあげる」
そういって女の子は、わたしを持ったままカラスと一緒に山へ向かいました。
山に着くとかみさまはお道具箱を手に取り、わたしの修理をはじめました。欠けた手は接合され、片目は新しい赤い物に取り替えられました。元々あった目と合わせてオッドアイのようでかっこいいです。髪も新しい物に替えて修理は終わりました。
いよいよ神様はわたしを人間する儀式をし始めました。
儀式を始める前にかみさまはわたしに言いました。
「もし、貴女が元人形であることがバレたら人ではいられない。気を付けてね」
わかってます。かみさま、ありがとうございました。
儀式が始まり、わたしは次第に意識を失いました。
アイ、待っててね。必ず逢いに行きますから。
目が覚めると、身体が自由に動くことに気が付いた。
手も動く、脚で歩ける、声も出る。
アイと同じ人間になることができたのです。
ただの
ふと私は思いました。名前がいると。せっかく人間に成れたのです。自分に名前を付けたくなりました。
姓は、アイと同じ星野が良い。しかし、名はどうしましょう。
そうだ、ライにしよう。
わたし‥‥私は――――
あラ?かタこトになってしまイましタ。
まだ、れんシュウがしなくてハいけませんネ
星野ライ
カラスを連れた少女によって人間になった元人形。
おじいさんの元で大切にしてもらった結果、付喪神もどきになり自我を獲得した。
見た目はFGOの果心居士をそのまま模した感じ。神様曰はく、偶然出来たとのこと
まだ人間に成りたてであるため発音が片言気味。