トレーナーのことを好きだと理解したアグネスタキオンのお話です。

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タキオンが嫉妬するお話

もし、好きな人ができたらどうする?

 

そんなバカバカしい質問をされたことがある。私にはそんな経験はないし、そんなことに現を抜かしている暇などない。だから、私はそんなことはありえない。そう答えた。

 

「なにそれ、つまんないの」と言って私のチームメイトは去って行った。彼女がなぜそんな質問をしたのか見当もつかないし理解するつもりも毛頭ない。

 

ただ、その日を境に私は妙な感情を抱くようになった。

 

「ねぇねぇ、トレーナー! 今の走り、どうだった?」

 

「うん、かなりいい感じだったぞ。ただ、もうこれで10本目だから休憩取ってね」

 

「え~! まだあと100回はやるつもりだったのに~」

 

「ダメです。早く水分補給しておいで」

 

「は~い」

 

「いい子だ」

 

「…………」

 

何でもないトレーナー君とチームメイトとの会話。そして、トレーナー君が担当バのことを褒めて、スキンシップをとるなどいつものことだ。

 

しかし、いつの間にかそんな何でもないことに腹を立てている自分がいた。

 

腹立たしい。実に腹立たしい。

 

こんなことに腹を立てている自分に、そして何よりこの状況を作り出しているあのチームメイトに私は怒りの感情を覚えていた。

 

「お~い、タキオン。ちょっとこっちに来てくれ~」

 

「えっ、あっ……うん、わかったよ」

 

トレーナー君に自分の名を呼ばれて、私の胸は高鳴る。

 

「これなんだけどさ」

 

「うん」

 

「こっちの練習メニューの方がいいかなって思うんだけど……って、タキオンちゃんと聞いてる?」

 

「えっ? あぁ、もちろん聞いているさ。トレーナー君に任せるよ、それが君の仕事だろう?」

 

そう言って、私は彼に背を向けた。なぜ背を向けたのか。それは簡単で、実に私らしくないことだった。

 

「お、おい。そんな言い方はないだろ、タキオ」

 

背後からトレーナー君の手が私の肩に触れようとしていた。私はそれを払いのけてトレーナー君に言う。

 

「きょ、今日は!」

 

「お、おう」

 

「今日は体調が芳しくないみたいだ。すまないが今日のトレーニングは中止とさせてもらうよ」

 

そう言って、私はトレーナー君に背を向けたまま走り出す。

 

後ろの方でトレーナーが何か言っているようだったが、私は構わず走った。

 

顔が熱い。きっと、熱があるのだろう。だから、仕方ない。ただ、困ったことにこの熱はトレーナー君が原因で起こっているようだ。彼の声が、しぐさが、私の心を乱す。

 

「全く……これでは研究に集中できないじゃないか」

 

胸に手を当てると、全身に響き渡るほどに私の心臓は激しく鼓動していた。

 

これは、走って研究室まで戻ってきたからではない。正直な話、彼に名前を呼ばれてから私の心臓はずっとこの調子だった。

 

そして、ようやくというか。最近になって私は理解した。あのいけ好かないチームメイトに腹を立てている理由に、トレーナー君を見ると胸が高鳴る理由に。

 

「……この感情が、恋というやつか」

 

恋。つまり、私は特定の異性を自分のものにしたいと思っているというわけだ。

 

「まさか、この私がねぇ」

 

バカバカしいと思っていたチームメイトたちの恋バナにくだらない少女漫画の物語。今になって少しはきちんと興味を持っておくのだったと後悔した。

 

なぜなら、私はこの感情をどう押さえつければいいのかがわからないからだ。

 

『好きな人ができたら、どうする?』

 

あの言葉が頭の中で復唱される。今更、わからないから教えてくれ。などとは口が裂けても言えそうにない。

 

「……わからない」

 

そう口にしてしまうと、私はどうしようもなく孤独を感じた。私には、この感情を打ち明けられる友人はいない。なぜなら、友人など研究の邪魔になると思っているから。それに、私の愚痴や研究に理解を示そうとしてくれたのはトレーナー君だけだった。

 

だが、今回だけはそのトレーナー君にこの話をしてしまうことはできない。してしまったが最後、私は本当に1人になってしまうのではないか。そんな恐ろしさを私は感じていた。

 

トレーナー君の周りにはいつも色々な人がいる。担当のウマ娘に同僚のトレーナーや先輩のトレーナー。それこそ私がいなくとも、彼の生活は成り立つだろう。

 

だが、私はどうだろうか。朝は彼に起こしてもらい、朝食を作らせ、昼にはお弁当を用意させ、トレーニング後には私の研究を手伝わせる(もちろん夕食付きで)。そんな生活を続けているおかげで、私はもう彼なしで生きていける自信がない。

 

「はぁ」

 

大きなため息を吐いて、私は研究室のソファーに倒れ込んだ。

 

「好きな人ができたら、か」

 

でない答えを必死に考える。答えがでないとわかっているのに、どうして私は考えてしまうのだろうか。

 

二度目のため息の途中、私は現在開発中の薬品に目が留まった。

 

「そうか!」

 

私はソファーから飛び起きて、ピンク色の薬品を手に取った。

 

「奪えばいいんだ。彼の視線を、全て私に向くように」

 

そして、私はその薬品を飲んだ。

 

「ウッ⁉」

 

床に落ちた試験管が大きな音を立てて飛び散る。

 

薬を服用してすぐに異変は起こった。

 

身体が焼けるように熱い。視界も歪み、立っていられなくなる。

 

どうやら惚れ薬は失敗作だったようだ。

 

熱い……あつい。意識も朦朧としてきた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

私としたことが、テストも行わずにいきなり効果を試そうなどどうにかしていた。

 

「とれー……なーくん」

 

最後に思い浮かんだのは好きな人の面影。私を見るや否や、彼は私を優しく抱きかかえてくれた。

 

「――! ――!」

 

何か彼が叫んでいる。答えてあげないと。

 

しかし、上手く声がだせない。それに段々と視界が狭く、黒くなっていく。

 

そうか――私は死ぬのか。

 

でも、まあ、実験の一環で死ねるのなら……好きな人の腕の中で死ねるのならそれも悪くない。

 

そう思いながら、私の意識は途絶えた。

 

*

 

「はぁ、タキオンのやつ。急にトレーニングサボりやがって。なぁ~にが今日は体調が良くないだ。朝もめちゃくちゃ元気だったし、昼ごはんの弁当もコメ一粒残さずに食ってるじゃないか」

 

実験のことしか頭にない彼女のことだ、きっと新薬のヒントでも閃いてすぐに試したかったのだろう。

 

「しかし、あんな嫌そうに手をはじかれたのは初めてだな……」

 

はじかれた手に残る痛みはない。しかし、嫌そうにはじかれたという事実が、俺の心に違和感として確かに残っていた。

 

この数年、彼女のために尽くしてきた。もう慣れてしまったが、朝早く起きてタキオンの朝ごはんと昼ごはんを作り、彼女を起こして、彼女の持ってくる薬を飲んで、彼女のトレーニングをして、その後一緒に晩御飯を食べる(もちろん俺が作る。そしてなぜか俺の部屋で)。

 

これだけのことをしているのだ。何か嬉しい見返りの1つや2つ、あってもいいではないか。

 

しかし、現実は非常だ。俺はタキオンに嫌われているらしい。

 

俺はこんなにもタキオンのことを好いているというのに。

 

「まあ、惚れた方の負けだよな。こうゆうのは」

 

そんなこと考えながら歩いていると、タキオンの研究室の方から大きな音がした。

 

「……⁉ あのバカ!」

 

この間マンハッタンカフェのコレクションに薬品をぶちまけて恐ろしい目にあったばかりだというのに、タキオンは全く反省していないようだ。

 

ちなみにその件はプチ問題となり、カフェとタキオンは少し言い合いをしたようだった。そしてなぜか俺の監督不行き届きということになり、俺はカフェに謝罪し、(タキオンの)反省文を書く羽目になった。

 

俺は急いで研究室の前まで走り、勢いよく研究室のドアを開けた。

 

「おい、すごい音が……って、タキオン⁉」

 

ガラス片、そしてその中身であろうピンク色の液体が床に散乱していた。

 

その中に今にも倒れそうなタキオンがふらふらと立っていた。

 

「タキオン! 大丈夫か⁉」

 

俺はガラス片の飛び散る床から、寸でのところでタキオンを受け止める。

 

その後、彼女は眠ったように動かなくなった。俺は彼女の名前を何度も呼んだ。しかし、反応はなく、代わりに薬品の甘い香りが俺の鼻を刺激した。

 

「…………」

 

まさか、自分でこの液体を服用したとでもいうのだろうか。

 

自分で効果を試すなど彼女らしくない。新薬ができたことが嬉しすぎて自分で試した、とか……いや、それならば確実に俺で試してから飲むはずだ。

 

何にしろ、彼女は自分の発明品を自分で試した。

 

つまりこれの意味するところは――

 

「俺はもう必要ないってことか」

 

あまりにも悲しい事実であった。

 

今すぐにでもタキオンを叩き起こして、彼女に問いたい。

 

しかし、今は緊急事態である。タキオンの身の安全が第一優先だ。

 

「……はぁ、本当に手のかかるウマ娘だ」

 

俺はタキオンをソファーに寝かせ、飛び散ったガラス片と液体を処理した。

 

そして、部屋の換気をして、タキオンの隣に座る。

 

苦しそうな寝顔に俺は胸が苦しくなる。何かタキオンのためにできることは無いか。そう思い、俺はタキオンのおでこと頬に手を当てた。

 

「……熱いな。一応タオルでもおいてやるか」

 

俺はタオルの入った引き出しの方へ歩こうとした。

 

「……トレーナーくん?」

 

「……!」

 

俺はすぐに回れ右をして、タキオンに近寄った。

 

「タキオン、大丈夫か⁉ どこか痛むところはないか?」

 

「いたむところ。ん~、だいじょうぶみたい」

 

ふわふわしたタキオンに俺は戸惑う。どうやら、これは大丈夫ではなさそうだ。

 

「タキオン、君は自分で作った薬を飲んだ。そして、倒れた。ここまでは覚えているか?」

 

「ん~、なんとなくおぼえてる」

 

「よし。じゃあ、その薬は何だったか思い出せるか?」

 

「えっと……その……」

 

タキオンらしからぬ、もじもじと指を交差させるしぐさに俺は不覚にもドキッとした。

 

「い、いや。思い出せないならいいんだ! と、とりあえず何ともなさそうで安心したよ! ここじゃああれだから、保健室に行こう。あそこなら先生に見てもらえるし、きっと今より楽になる」

 

俺がそう言うと、タキオンは俺の目を真っ直ぐ見つめた。

 

いつもは何を見据えているのかわからないタキオンの瞳だが、今はハッキリと俺だけを映しているが分かった。

 

「いやだ……トレーナーくんといっしょがいい」

 

「え?」

 

驚いたのはもちろん、タキオンの言葉のせいだ。何年も同じ時を過ごしているが「一緒にいたい」などとタキオンの口から聞いたことがなかった。しかし、俺を本当に驚かせたのはタキオンの言葉ではなく、行動だった。

 

「た、タキオン?」

 

なぜか俺は、タキオンに抱き着かれている。

 

これは、一体なんのご褒美だろうか。今日、俺は死ぬのだろうか。

 

「ぎゅー……」

 

「ぎゅぎゅ、ぎゅう⁉」

 

絶対にタキオンが言わない言葉ランキング5位には入るであろうワードに俺の思考は停止した。

 

「あぁ……タキオンが壊れた……」

 

感動や嬉しさよりも、俺はタキオンの頭が心配になった。もし、このまま俺の知っているタキオンが戻って来なかったら……考えるだけでも恐ろしい。

 

「こわれてないよ! それに!」

 

タキオンはお互いの息が触れてしまいそうな程に顔を寄せてきた。

 

「ち、近い!」

 

俺はすぐさまタキオンから距離を取った。

 

「む~、そんにわたしがきらいなのかい?」

 

「いや、嫌いとかではなくだな」

 

俺がそう言うと、タキオンの目から涙がポロポロとこぼれ始める。

 

「うそだ! しってるもん! トレーナーくんはわたしがきらいなんだ!」

 

「お、おい。落ち着けって、タキオン。俺が君のことを嫌う理由なんてないだろう?」

 

俺の言葉も虚しく、タキオンは嗚咽交じりに反論する。

 

「うそだ……だって、トレーナーくんはわたしにいじわるするんだ!」

 

「い、いじわる⁉ 俺がいつそんなことを?」

 

「あの子のあたまはなでるくせに、わたしのあたまはなでてくれないじゃないか!」

 

「は?」

 

「わたしもトレーナーくんに……あたまなでなでしてもらいたい……」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ、タキオン」

 

頭の処理が追い付いていない。タキオンがこうなってしまった原因……そう、これは薬のせいだ。薬のせいではタキオンは一時的におかしくなっているだけだ。

 

きっと、一日経てば薬の効果が切れるはずだ。いつも俺の体が光る副作用も大体一日で終わる。であれば、この幼児化したタキオンも一日で落ち着くはずだ。

 

「やだ、またない」

 

「え、ちょ、ちょっと、なに?」

 

再びタキオンが近づいてくる。今度は何をされるのかわからない。俺はゆっくりと後ずさりをしながらタキオンから離れる。

 

「どうしてにげるの?」

 

「では、どうして追いかけてくる」

 

「今はわたしがしつもんしてる!」

 

「っ……!」

 

ついに壁まで追い込まれた俺は、タキオンにじりじりと追い詰められている。

 

ここまでか――

 

そう覚悟を決め、俺は目をつむった。

 

「さっ、はやくなでてよ」

 

「ん?」

 

「だから~なでて~」

 

そう言って、タキオンは俺の手をつかみ、ぶんぶんと振り回した。

 

「わ、わかったから! な、なでればいいんだな?」

 

「うん!」

 

タキオンの元気な返事を聞き、俺はタキオンの頭を恐る恐るなでてやった。

 

「~~♪」

 

心地よさそうにするタキオンを見て、俺はこのままのタキオンでも良いのではないか。そう思い始めていた。

 

しかし、これはタキオンの本心なのだろうか。

 

もし、無理やりというより本当に薬の副作用でこうなっているだけだとしたら。俺はタキオンにとんでもなく失礼なことをしているのではないだろうか。

 

そう考え始めると、俺は急に罪悪感を覚えた。

 

「も、もういいだろ」

 

俺はタキオンをなでるのをやめた。すると、タキオンは不満そうに言う。

 

「まだ~! これだけじゃぜんぜん足りないよ~」

 

「ダメったらダメだ。ま、また今度してあげるから、今日は休もう。タキオンは疲れてるんだよ」

 

「ん~、そう言われたら、何だか眠いような……」

 

「そうだろ? なら少し休もう」

 

俺がそう提案すると、タキオンは眠そうに目を擦りながら言う。

 

「なら、最後に一つだけ」

 

「なんだ?」

 

「モルモット君は、わたしのことどう思っているんだい?」

 

「どうって……そりゃあ……」

 

なぜ今、タキオンがこの質問をするのかはわからない。それに今この場で、俺の気持ちを素直にタキオンに伝えるべきなのかが判断できない。

 

だが、この質問に対してはぐらかすような返しをしてはいけない。この質問が俺たちの仲を決定づける大切な質問であると感じてるのも事実であった。

 

だから俺は、迷った末にこの気持ちをタキオンに伝えることにした。

 

「……好きだよ。タキオンのこと好きじゃなきゃ、毎日一緒にいて、一緒にご飯食べたりなんてしないよ」

 

「す、好き……それって」

 

「ああ、異性として、俺はアグネスタキオンのことが好きだ」

 

「……!」

 

俺の言葉が今のタキオンにどの程度伝わったのかは分からない。それに俺が今から言う質問も全く意味のないものなのかもしれない。

 

だが、こう言わないと俺の気が済まなかった。

 

「タキオンは俺のこと好きか?」

 

「……わ、私は……トレーナーくんを……」

 

そう言い終えると、タキオンは電池が切れたように俺に倒れ掛かってきた。

 

「お、おい、大丈夫か、タキオン?」

 

「……すぅ……すぅ」

 

「ったく、騒がしいやつだ」

 

その後、タイミングを見計らったかのように入って来たカフェにタキオンを託して、俺は研究室を後にした。

 

今日の出来事はきっと、毎日頑張っている俺に神様がくれたご褒美だ。

 

俺はそう思うことにした。

 

*

 

「随分と迷惑をかけたみたいだねぇ」

 

「本当だよ、これに懲りたら二度と自分で効果を試そうなんてしないでくれよ」

 

そう言いながら、トレーナー君は私にご飯をよそった。

 

「ありがとう。それで、今夜のおかずは何だい?」

 

「今日は野菜炒め。あと、ほうれん草のお浸しがあるけど、いる?」

 

「ほほう、ではそちらもいただくとしよう」

 

「わかったよ」

 

何気ないやり取り。

 

普段通りのやり取りのはずなのに、私はトレーナー君から目が離せないでいた。

 

原因は分かっている。あの日だ。私が早まって新薬の効果を自分で試そうとしたあの日から、私達の関係は少しずつ変わってしまったように感じる。

 

あの日の記憶は曖昧だ。私の覚えていることはほとんどない。

 

私は薬を飲んで寝たまま、なかなか起きなかった。トレーナー君からはそう聞かされている。

 

だからきっと、うっすらと残っているこの記憶は、夢で見たものだろうと私は思っている。いや、思うことにしていた。

 

「トレーナー君」

 

「なんだ?」

 

「おかしなことを言ってもいいかい?」

 

「お、おう」

 

トレーナー君はお皿をテーブルの上に並べ、私を見つめた。

 

「頭をなでてはくれないだろうか」

 

「は?」

 

「い、いいから! はやく!」

 

「わ、わかったよ」

 

トレーナー君はしぶしぶ私の近くまで来て、ゆっくりと手を私の頭に置いた。

 

そして、ゆっくり、優しく私の頭をなでた。

 

「……!」

 

この感覚、この暖かさ……これは夢で感じたものと全く同じだった。

 

そして、同時にあの出来事は夢ではなかったと感じさせるのに、十分過ぎるものだった。

 

「こ、これでいいか?」

 

トレーナー君の質問に、私はこぼれ落ちる涙をこらえながら答える。

 

「いいや……これだけじゃあ、全然足りないね」

 

そう言って、私はトレーナー君に抱き着いた。

 

「た、タキオン?」

 

戸惑うトレーナー君をよそに、私は続けてトレーナー君に言う。

 

「私もトレーナー君のことが好きだ。大好きだ。誰にも取られたくないと感じるほどに」

 

「……!」

 

私の突然の告白に、トレーナー君は驚いているようだった。しかし、その表情はどこか安心したかのような雰囲気にも感じた。

 

「なんだ、ちゃんと記憶があったのか」

 

「とても曖昧だけどね。だけど、嬉しかったことは鮮明に覚えているよ」

 

「そっか」

 

「だから、というわけではないんだけれど……」

 

「うん」

 

「もう一度言ってはくれないだろうか。私のことをどう思っているのか」

 

私がそう言うと、トレーナー君は笑って「そう言うと思った」と答えた。

 

「まあ、これから何度も言うことになるからいいよ」

 

「な、何度も……」

 

「タキオン」

 

「…………」

 

自分で言っておいてなんだが、私は急に恥ずかしくなり下を向いた。

 

「俺は君のことが好きだ。俺と付き合って欲しい」

 

「……よ、喜んで」

 

いつかトレーナー君の目を見ながら、その言葉を受け止められる日が来るのだろうか。

 

私はそんな日を夢見て、トレーナー君の頬に口づけをした。

 

 

~Fin~




ここまで読んで下さりありがとうございました!

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