『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第十三話 『運命の開戦』中編

 

 

 

 

 

 

 

 将和の第一航空艦隊からの第一次攻撃隊が真珠湾に殺到した時、ヴィンランド海軍太平洋艦隊は攻撃の7時間前に日本の勢力圏にあるマリアナ諸島へ向けて出撃しており、この時点では損害を受ける事はなかった。

 

「真珠湾が空襲されたというの!?」

「提督、直ちに引き返して反撃しましょうッ」

「そうです。艦隊決戦なら我が方に利がありますッ」

 

 この時、太平洋艦隊はハワイ諸島南方を航行していたが、ウェーク島から航空機輸送の帰還途中だった空母『エンタープライズ』と合流すべきか迷っていた。

 

「提督ッ」

「ッ。いや、ハルゼーと合流してからでも遅くはないわ。ハルゼーにも連絡しなさい」

 

 参謀の問い掛けにヴィンランド海軍太平洋艦隊司令長官のハイネス・キンメル海軍大将はそう答えたのである。しかし、太平洋艦隊が反撃して勝てるチャンスとしたらこの一瞬だっただろう。

 なお、フレンダ・ハルゼー中将の第8任務部隊はウェーク島への航空機輸送からの帰還途中であったが、彼女はキンメルから開戦近しという電文を受け取ると大急ぎでハワイ諸島近海(カウアイ島南方)まで帰還していたのだ。

 

『何を躊躇う必要があるのキャサリン!! あんたの艦隊は直ちに引き返して葦原のサルの艦隊を叩くべきよ!!』

「えぇ、分かっているわ。帰投中の『レキシントン』と合流次第、帰投するわ」

『まだそんな事を言っているの!? オアフ島の航空戦力は叩かれているのよ!! あんたは直ちに……ちょっと待って。今、情報が入ったわ』

「何の情報かしら?」

『今、うちの機が敵の偵察機と接触したわ!!』

「えッ!? 位置は!!」

『オアフ島沖西140マイルの海域よ』

「偵察機は落としたの?」

『いや、恐ろしく足が速い機みたいだわ。北西へ逃げたわ』

「北西に?」

 

 ハルゼーの言葉にキンメルは海図を見る。奴等は南西から来ると思っていたが、どうやら敵は北にいるようだ。

 

『どうやら獲物は私の方が近いわね。カウアイ海峡を北上して先に仕掛けるわ!!』

「ま、待ちなさいフレンダ!! 見込みで追撃しようと言うの!? 我々と合流するまで待ちなさい!!」

『勝負はどっちが先に見つけるかよ。賭けてみるわ!!』

 

 ハルゼーはそう言って隊内電話を切るのである。

 

「……キャサリン、オアフ島近海に偵察機を出しなさい」

「アイサー」

 

 キンメルもハルゼーに切られたのでは仕方ない。その為、偵察機を出すしかなかったのである。

 そして将和の第一航空艦隊も艦艇を分散させていた。二航戦の空母『蒼龍』『飛龍』『雲龍』は旗艦を移動させた戦艦『霧島』の艦隊と共にカウアイ海峡方面へ向かい、草鹿率いる空母部隊は『レキシントン』攻撃の為にミッドウェー方面に向かうのである。

 しかしながら、『エンタープライズ』の航空機と接触した『彩雲』は一旦は母艦の方へ遁走したが、『エンタープライズ』機を再度死角から確認し追尾し第8任務部隊を発見するのである。

 

「空母1、巡洋艦3、駆逐艦9の艦隊か……ハルゼーの艦隊だな」

「長官、此処は先に仕掛けるべきですわ。この空母部隊、カウアイ海峡を北上しているので南下している我が艦隊とぶつかるのも時間の問題です」

 

 嶋野がそう具申すると見張り員が叫んだ。

 

「『蒼龍』より発光信号!! 『直チニ攻撃隊発艦ノ要アリ』です!!」

「ハハハ、流石は楠木だ。航空戦の何たるかを知っているな」

 

 楠木からの意見具申に将和は苦笑しつつ制帽を被り直す。

 

「二航戦へ発光信号。攻撃隊、準備出来次第発艦。攻撃目標、巡洋艦3隻に駆逐艦9隻と『エンプラ』の飛行甲板だ」

「飛行甲板……ですの?」

「あぁ、攻撃隊長は将弘にさせろ。アイツなら俺の意図を読める」

 

 なお、攻撃目標を聞いた将弘は溜め息を吐くのである。

 

「親父め……まぁ親父のやりそうな事だな……」

「お兄ちゃんは長官の考えが分かるの?」

「えぇまぁ。一応は親子ですし……親父は『エンプラ』を鹵獲する気です」

「ろ、鹵獲!?」

「はい。空母の建造期間が長いのはどうにもならないので敵から空母を仕入れるんでしょうね」

「そんな……買い物に行くわけじゃないんだから……」

「親父からしたら買い物感覚でしょうね。ま、そんなわけで鹵獲しに行きますか」

 

 将弘はそう言いながら九七式艦攻に乗り込み楠に敬礼をし順番が来たら発艦していくのであった。なお、将和の艦隊も『エンタープライズ』から発艦したSBDに発見されハルゼーも攻撃隊を発艦させるのである。

 

「サルどもを沈めてきなさい!!」

 

 発艦していく攻撃隊を見ながらハルゼーはそう激を飛ばすのである。しかし、攻撃隊は戦闘機19機、艦爆22機、艦攻16機という50機前後しかいなかったがそれでもパイロット達の士気はうなぎ登りであった。彼女達も葦原の艦隊を攻撃出来ると興奮は最高潮に達していたのだ。

 しかし、彼女達は将和の艦隊手前13キロの海域で三空母から発艦した零戦32機の迎撃を受けるのである。

 

「奴等を1機も艦隊に近づけさせるな!! 掛かれェ!!」

 

 『蒼龍』戦闘機隊の菅波大尉は先頭に躍り出て攻撃を開始、20ミリ機銃弾がSBDの右翼を貫き撃墜させるのである。それに続く形で列機の零戦隊も次々と敵攻撃隊を銃撃し撃墜していく。無論、護衛のF4F隊も追い縋ろうとしたが零戦隊は60キロ以上の速度差を利用したり急旋回でF4Fを突き放したりするのである。

 

「オーマイガッ!? 何て戦闘機なの!!」

 

 F4Fのパイロットも思わず見惚れてしまう程であり、その見惚れている隙に背後から忍び寄った零戦に銃撃され撃墜されるのである。

 結局、『エンタープライズ』の攻撃隊は這々の体で追いやられ第8任務部隊に戻れたのもF4F 3機、艦爆4機、艦攻に至っては全滅という有様であった。

 対して二航戦から発艦した攻撃隊は第8任務部隊上空に到着する事が出来た。『エンタープライズ』も残っていたF4F 8機を出したが護衛の零戦は27機もおりあっという間に全てが撃墜されたのである。

 

「零戦隊はそのまま敵護衛艦艇を攻撃せよッ」

『ご、護衛艦艇をですか!?』

「何のために噴進弾を搭載しているんだ。多少の対空砲を破壊出来る」

 

 驚く零戦隊隊長である飯田大尉に将弘はそう無線で伝える。零戦隊は念の為にと噴進弾を搭載していたがまさかの対艦攻撃に使用するとは飯田大尉も思ってはいなかったが冷静になり成る程と頷く。

 

(確かに噴進弾で叩けるとしたら対空砲くらい……それに攻撃隊の被害も減らす可能性が上がるというわけね……)

 

 零戦隊は直ちに護衛艦艇に攻撃を開始し噴進弾を護衛艦艇に叩きつけたのである。この攻撃で駆逐艦2隻が炎上し多くの艦艇で対空砲等は大なり小なりの被害を受け将弘はそれを逃さずに突撃を発令させた。

 

「全軍突撃せよッ!!」

 

 九九式艦爆隊45機は江草少佐の指揮の下で急降下を開始する。江草少佐の中隊は『エンタープライズ』を目標に定めていた。

 

『1200……1000……800……600……400ッ!!』

「撃ェ!!」

 

 江草少佐は高度400で腹に抱えていた250キロ爆弾を投下し離脱する。江草少佐機が投下した250キロ爆弾は『エンタープライズ』の中部飛行甲板に吸い込まれるように突き刺さり格納庫を転がり回り、止まったところでその力を解放したのである。続いて二番、三番機も飛行甲板に命中させ三番機の250キロ爆弾の爆風は中部飛行甲板のエレベーターを押し上げ破壊する事に成功するのである。

 結果的に『エンタープライズ』は250キロ爆弾5発が命中し『エンタープライズ』は炎上するのである。

 

「クソッタレ!!」

「駄目です、爆風により機関室も被害を受けています。速度は7ノットしか出ません!!」

「敵雷撃機、艦隊に突入します!!」

 

 将弘の艦攻隊45機も突撃を開始する。その高度は5メートルを維持していた。艦攻隊は艦隊の左右から突撃しあっという間に取り付き、魚雷を投下していく。

 

「面舵イッパァァァァァイ!!」

「駄目です、間に合いません!!」

 

 護衛艦艇は次々と魚雷が命中し傾斜していくのである。この雷撃で重巡洋艦『ノーザンプトン』『ソルトレイクシティ』『チェスター』はそれぞれ4〜6本の魚雷が命中し瞬く間に波間に没するのである。他にも駆逐艦7隻が撃沈され第8任務部隊は『エンタープライズ』と駆逐艦2隻しか残らなかったのであった。

 

「おのれサルどもが!! 許さないわ、絶対に許さないわ!!」

 

 炎上する『エンタープライズ』の艦橋でハルゼーはそう吠える。第8任務部隊は何とか戦場から離脱する事に成功、そのまま真珠湾に滑り込むのであるがカウアイ海峡海戦には何ら影響を与える事はなかったのである。

 

「第8任務部隊が壊滅!? それでフレンダは?」

「軽傷を負われましたが被弾炎上した『エンタープライズ』はパールハーバーに向かったとの事です」

「そう……フレンダが生きているならまだ何とかなるわ」

 

 キンメルはそう呟くが艦橋に通信兵が駆け込んできた。

 

「た、大変です!! ミッドウェー方面において合流予定だった空母『レキシントン』が撃沈されました!!」

「な、何ですって!?」

「『レキシントン』は敵の航空攻撃を受け、一度に5本の魚雷が命中、艦体は三つに折れての轟沈だそうです」

「そんな……」

 

 キンメル艦隊と合流予定だった空母『レキシントン』を撃沈したのは将和の艦隊と分離した草鹿の機動部隊であった。『彩雲』からの報告に草鹿は有無を言わずに攻撃隊を発艦させ見事撃沈させたのである。

 

「提督、水上機からの通信です。敵艦隊がカウアイ海峡を目指しているようです」

「カウアイ海峡にですって?」

「恐らくはパールハーバーを狙う気では?」

「今更? パールハーバーは空襲されて破壊され尽くしているじゃないの」

「いえ、まだ450万バレルの燃料タンクが無傷で残っています。これを破壊されますと向こう半年間、我々は行動不能に陥りますッ」

「成る程。それが奴等の狙いね!!」

 

 参謀の言葉にキンメルは頷く。確かに真珠湾の燃料タンクを狙っているなら納得出来る事だった。

 

「更に水上機より追加電文です。どうやら敵空母はいないようです」

「敵空母がいない? 三隻は確認していた筈よ」

「恐らくは弾薬と燃料が不足して後退したのではないですか?」

「提督、もしそうであれば我々にも勝ち目はありますッ」

「フム……確かにね」

「提督、我々の対空対潜陣形は完璧です。ちょっとやそっとでやられる筈がありません」

「提督、ハルゼー艦隊の仇を討ちましょうッ!!」

「えぇ!! 我が艦隊はカウアイ海峡に向かうわ!!」

 

 参謀に押され勇気を得たキンメルはカウアイ海峡を目指す事にしたのである。そしてキンメルに狙われる形となった将和の艦隊も同じくカウアイ海峡を目指していた。

 

「ほぅ、草鹿もやるじゃないか」

「あら、やれるからこそ草鹿さんを差し向けたのではありませんか?」

「ん? ククッこれは一本取られたな」

「お待ちどうさまです。戦闘配食です」

 

 『霧島』の艦橋にて将和は苦笑すると主計長自らが戦闘配食の赤飯のお握りを銀のカゴに載せて持ってきた。

 

「美味そうですわね」

「駄目ですよ副官。まずは長官からです」

「ほほぅ美味そうだな」

「天下一品ですよ」

「どらどら……んっ、正に天下一品だな」

「ですよねッ」

「この娘ったらその気にならないもんだよ」

「……アハハハッ」

 

 吉岡首席参謀の言葉に主計長は笑い、艦橋にいた者達も笑うのである。それを尻目に将和はお握りを更に一つ取り、食い掛けの一つを食べる。

 

「長官、敵は来るでしょうか?」

「来るとも。航空部隊が使えない以上……奴等に残されたのは艦隊決戦しかあるまい」

 

 そう言いつつ将和は一つ目の赤飯のお握りを食べ終えると二つ目も口に含む。そこへ主計長と入れ替わりに通信参謀が入ってきた。

 

「『彩雲』より入電です。キンメル艦隊はカウアイ海峡に進路を取ったようです」

「ん。航海参謀、艦隊速度はこのままで良いか? 会合のタイミングが本作戦の要だぞ?」

「少し速度を落としましょう。概ね28ノットでドンピシャリです」

 

 将和の問いにコンパスで海図に書き込んでいた航海参謀は笑みを浮かべそう答えたのである。

 

「ん。ならこのまま行こう」

 

 斯くして『霧島』を旗艦にした三好艦隊は北方からカウアイ海峡に侵入するのである。

 

 

 

 

 

 

 




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