『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第十八話 新たなる作戦

 

 

 

 

 

 

「本土空襲は最小限の被害で済みました」

「まぁマスゴミは相変わらずウザイけどな。あいつら、日比谷焼き討ちから変わっとらんよ」

 

 帝都空襲後の4月20日の柱島泊地。将和は五十子らの『大和』に乗艦して作戦会議をしていた。

 

「やっぱ空母を最優先で撃滅しないとッ」

「焦るな山本長官。焦れば此方がやられる」

 

 空母撃滅を主張する五十子に将和はそう諭す。将和も持久戦に持ち込む形でなら機動部隊の撃滅は賛成するところである。

 

「だが……第二段作戦は当初の予定から修正しつつ行う必要があるだろうな」

「と言うと?」

 

 将和の呟きを宇垣が拾う。問われた将和は世界地図を出す。

 

「史実の第二段作戦はMO作戦、MI作戦、AL作戦そしてFS作戦となっていた。だが、これらの内……FS作戦はしないべきだろう」

「それ以外はどうしてもやるべきがあると? Leary?」

 

 第四艦隊司令長官の井上が将和にそう問うが将和は頷く。

 

「あぁ。ただし、占領作戦なのはMO作戦のみだ」

「という事は……」

「まだ構想ではあるがな……MI作戦とAL作戦は連動するようにしている」

 

 将和は指揮棒を持ってアリューシャン列島をトントンと叩く。

 

「先にAL作戦を仕掛ける。AL作戦後、関連する機動部隊はMI作戦に参加するために南下。MI作戦参加艦隊と共に敵機動部隊を撃滅する」

「だが敵は出てくるのか?」

「その餌が必要だが……餌は暗号解読だ」

『暗号解読?』

「そう、暗号解読。奴さんら、時折に此方が混ぜて交信するD暗号は解読しているようだ」

 

 史実でも日本海軍と外務省はパープル暗号は解読されていた。ミッドウェー海戦での『AF』の場所。海軍甲事件での山本五十六の飛行日程の解読等々である。

 なお、陸軍は戦前からポーランドのコワレスキー大尉等を招いて暗号を一新したりしていたので解読はあまりされていなかった。(薩摩弁は最強でごわす)

 

「今回のMI作戦に関してはD暗号を使用して誘き寄せる。特に『AFは真水が豊富であるか?』を打たせてな」

「『AF』?」

「ミッドウェー島の事だ。史実でも日本海軍は『AF』をミッドウェー島と呼称していた。アメリカはミッドウェー島から平文で『ミッドウェー島の真水にする機械が故障したから交換してほしい』とわざと打たせた。そしたら海軍は『AFで真水が不足している』と電文を打っちまった。それでMI作戦の場所がミッドウェー島と分かったんだ」

「成る程……」

「だから此方を誘き寄せると思わせて実際は此方が奴等を誘き寄せるという寸法だよ」

「けど、上手く奴等が引っ掛かるか?」

「そこは五分五分だな。引っ掛からなければミッドウェー島を爆撃演習にして攻撃、破壊して帰ればいいさ」

 

 宇垣の質問に将和はそう言って肩を竦めるのであった。

 

「それにパイロットも大分予備が出来てきてくれている」

「他にも『エンタープライズ』もとい『神鶴』も再就役したから戦力は向上するだろうな」

 

 4月6日には『雲龍』型四番艦『笠置』が就役してパイロット達も配置されていたがそれでも予備兵力のパイロットはまだあったのだ。(数で言えば二航戦分程)また、開戦初期に鹵獲した空母『エンタープライズ』も調査と改修作業が終わり乗員を新たに編成し完熟訓練の真っ最中であった。

 なお、『神鶴』は同型艦がいないので『加賀』と航空戦隊を編成させて第一航空戦隊とする案もあったがまだ話はそこまで進んでいないのである。

 4月22日、インド洋作戦の報告のために智里と南雲が先に空路で帰還し『大和』を訪れた。

 

「東洋艦隊の撃滅、良くやったな」

「ありがとう将和。でもやってくれたのはパイロットの皆のおかげだ」

「それでもだ。指示、決断をしたのは最終的にはお前だ。胸を張れ智里ッ」

「……ありがとう将和」

 

 ポンポンと智里の頭を撫でる将和であった。そしてインド洋作戦の報告が行われるのである。

 『雲龍』を追加しインド洋に侵入した第二航空艦隊は4月4日にカタリナに発見されると智里は『作戦乙』を発令させた。『作戦乙』はセイロン島攻撃より東洋艦隊撃滅ーーアッドゥ環礁に退避ーーを優先させたがこれが幸いした。

 4月5日0530、アッドゥ環礁は第二航空艦隊から発艦した攻撃隊(零戦36機 九九式艦爆54機 雷装九七式艦攻45機 爆装九七式艦攻36機)の強襲攻撃を受けた。アッドゥ環礁は東洋艦隊のB部隊が燃料補給のため停泊していた。しかも燃料補給が完了する一時間前に対空レーダーが飛来してくる攻撃隊を探知したのである。

 B部隊司令官のアルガノ・ウィリス中将はB部隊は動けないので環礁内での迎撃を決意。直ちに対空戦闘用意が発令されるが攻撃隊は無慈悲であった。アッドゥ環礁上空に『ハーミーズ』から発艦したハリケーン12機がいたが零戦隊によってあっという間に全機撃墜された。対空砲火が撃ち上げられる中、攻撃隊は環礁に殺到した。

 先に轟沈したのは戦艦『リヴェンジ』だった。『リヴェンジ』は左舷に魚雷5発が命中、大傾斜する中で水平爆撃隊による800キロ爆弾3発の命中がトドメとなった。

 『ハーミーズ』は急降下爆撃隊18機全弾命中して爆沈する程であった。結果として攻撃隊は戦艦『リヴェンジ』『レゾリューション』『ラミリーズ』『ロイヤル・サヴリン』の4隻と空母『ハーミーズ』、乙巡『カレドン』『ドラゴン』の2隻が環礁内で撃沈される事になる。

 アッドゥ環礁空襲の報を聞いたA部隊司令官のジニー・サマヴィル中将は方位を割り出して第二航空艦隊の位置を特定し側面からの航空攻撃を仕掛けた。

 しかし、第二航空艦隊は各艦艇が搭載する13号対空電探が接近する攻撃隊を探知したので迎撃しやすかった。『インドミタブル』『フォーミダブル』の攻撃隊が飛来した時に第二航空艦隊上空には54機の零戦隊が待ち構えており攻撃隊は数機を残して壊滅した。また遁走する敵機を彩雲で追尾させてA部隊を発見、攻撃隊を繰り出して戦艦『ウォースパイト』大破、空母『インドミタブル』『フォーミダブル』を撃沈する事に成功するのである。

 その後、第二航空艦隊は目標の空母を撃沈すると直ぐにアッドゥ環礁方面から撤退、翌日の4月6日にはコロンボへ二次に渡る航空攻撃を実施した。この航空攻撃でコロンボは基地軍港施設の完全破壊及び駆逐艦2隻、商船17隻が撃沈されたのである。

 そして4月8日、トリンコマリへの二波の攻撃隊を出してトリンコマリも基地軍港施設と飛行場は完全に破壊された。この一連の攻撃により智里はインド洋の制海権は葦原側になったと判断し帰還する事になったのである。なお、葦原側の損失は零戦2機、九九式艦爆16機(7機不時着水後救助)九七式艦攻8機(5機不時着水後救助)である。

 

「満点に近いな」

「ありがとう三好長官。お褒めに至り恐縮だよ」

 

 流石の作戦室では智里も将和に甘える事はしなかった。ただし、隣同士で座っていたので智里の右手は将和の制服の裾をコッソリと握っていたりする。

 

「ちなみに三好長官ならどうする?」

「そうだな……プラスでタンカーがあれば航路中に鹵獲して油だけ貰いつつアラビア海まで進出、ボンベイのインド門を破壊するかな」

「あちゃぁ、それをしとけば良かったかな……」

「……………………(イチャイチャしてますわ……)」

 

 将和の言葉に智里は悔しがる表情をする。それを後ろで見る副官嶋野であった。

 

「特にパイロットの救助をしたのは褒めるところだ。これはどの艦隊にも言える事だしな」

「そうだね、パイロットは一朝一夕では出来ないからね」

 

 将和の言葉に五十子も納得するように頷く。パイロットの補充はやはりどうしても替えが中々効かないのが日本と葦原に共通する問題の種である。

 

「それでインド洋作戦中に敵攻撃隊の飛来は他にもあったか?」

「取り敢えずは報告した飛来しかなかったね……たまたま格納庫は空だったから被弾しても沈没する危険はなかったが……これが攻撃隊の満載だったら目も当てられない出来事だね」

「ム、それは確かにな。空母は一歩間違えたら一発で轟沈する可能性があるフネだからな」

(お、良いぞぉ)

 

 智里の感想に宇垣も納得の表情を浮かべる。それを見ていた将和は思わず安堵する。史実を考えるとこういった事が共有出来れば儲けものであった。

 

「取り敢えず休憩しよっか。甘いモノが欲しくなったよ」

「甘いモノは山本だけな気もするけどな……」

「タハハハ……」

 

 将和のボヤキに冷や汗をかく五十子である。そしてその日の夜、将和はたまたま呉の街へ繰り出していた。というのも智里に誘われたからである。

 

「たまにはこういった事もしてみたいかなとね」

「成る程ね」

 

 とある旅館、将和は智里から杯をもらっていた。貰った将和は口につけて注がれていた日本酒を飲み干す。胃にアルコールが入り内から熱くなる感触がある。

 

「フフ♪ いい飲みっぷりだね」

「そりゃどうも。此方は師範がいたからな」

 

 将和は遠い記憶を思い出す。ロマノフ王朝の血筋を引いているあの娘との思い出は今でも直ぐに思い出せる。なお、酒癖はどうも悪かった模様である。

 

「ムゥッ。今は私がいる……そうだろ?」

「あぁ……ッ……そうだな」

 

 剥れる智里の言葉に将和は四人を思い出す。どの娘も出会いは強烈過ぎるから忘れる事は無いだろう。

 

「大丈夫。君が愛している四人はそのままでいいさ。けど、一人(多分後二人)は増えてもいいだろ?」

「……敵わないなぁ。ありがとう智里」

 

 智里の言葉に将和は素直に感謝を述べて智里の手を引いて自身に引き寄せる。

 

「あっ……もぅ、急かさない事だよ」

「たまには……な。それにまた暫くは会えないからな」

 

 そう言って将和は智里にキスをしお姫様抱っこをして隣の部屋にて用意されていた布団に入り込むのであった。(しばいたろか)

 

 

 

 

 

 

 

 

「空母が足りないってのに何で豪州方面に出すのよ」

「……仕方ありません。葦原の海軍はどうやらニューカレドニアを欲しているようですからね」

「……航空機の製造に必要なニッケルを狙うわけね」

 

 オアフ島にあるヴィンランド太平洋艦隊司令部ではセシリア・ニミッツ大将とフレンダ・ハルゼイ中将はお茶をしていた。

 

「空母は来月上旬に何とか2隻、就役します」

「本当?」

「えぇ。但し、ジープ空母です」

「あぁ……殆どの機能が輸送空母じゃないの」

「搭載機も少ないですがあるよりマシです」

 

 元は輸送船団の護衛用等を目的とした補助空母であるがため、速度は『ボーグ』級空母で18.5ノットという低速であり搭載機も24機であった。その中で『コパヒー』『ナッソー』が史実よりも早くに就役する予定である。

 

「ですが、下旬には『ボーグ』級2隻に『サンガモン』級2隻が就役しこれらも太平洋戦線に投入されます。飛行隊も壊滅した『レキシントン』と『エンタープライズ』の飛行隊から選抜しています」

「これで……アドミラル・ミヨシの機動部隊に一泡吹かせる事は出来るがそれだけね」

「……『エセックス』級はどう頑張っても来年からになるわ。それまでは護衛空母と既存の空母で遣り繰りするしかないわ」

「来年まで葦原が動かないならそれでも対処は可能でしょうね。でも……葦原は動くわよ……必ずね」

 

 ハルゼイはニミッツにそう警告する。それはカウアイ海峡海戦(ヴィンランド側呼称)を経験した者しか分からない事である。

 

「……一先ずはジェニファーに頑張ってもらうしかありません」

 

 流石のニミッツもそう言うしかなかったのである。

 

 

 

 

 

 




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