『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第一話 御前会議

 

 

 

 

 

 

 三好将和の朝は0600から始まる。三好将和は現在、帝政葦原中津国海軍戦艦『長門』の一室で軟禁となっている。将和が起きている事をGF参謀長の小澤智里大佐が毎日確認する事になっていた。そして朝食を共にしている。

 ここ5日程分かったのは三好将和は麦飯に味噌汁をぶっかけて雑炊して食べるのが好むらしい。

 

「別に好むとかじゃないけどな。塩分とか一緒に取れるしササッと喰えるからな」

 

 三好将和はそう語る。その後、米内聯合艦隊司令長官と面会するまでは自身の記憶を書類に書き留めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これだけ……?」

「はい。これだけです」

 

 小澤の報告に米内はガッパシという擬音が出そうな程落胆した。

 

「小澤ちゃん、そうじゃない。そうじゃないよー小澤ちゃ~ん」

「はぁ……」

 

 落胆する米内に小澤はどうしたらいいか分からない表情をする。

 

「もっとさぁ……三好将和の身体つきは筋肉質で非常に良いとか男の匂いが良いとかさぁ」

「長官……」

 

 米内の言葉に小澤は溜め息を吐く。この長官、どうも乙女チックぽいのが傷である。米内自身は既に旦那がいる身なのにも関わらずである。

 

「全く……小澤ちゃんも男捕まえるなら研究しておかないとね」

「……気が向いたらします」

 

 素っ気なく返す小澤であった。そこへ通信兵が入ってきた。

 

「失礼します。海軍省より電文です」

「ありがとう……小澤ちゃん、三好『大将』を呼んできて」

「ッ。米内長官、まさか……」

「えぇ。海軍省から三好大将を連れてきてほしいって。そして御前会議するらしいわ」

「ご、御前会議を!?」

「海軍……元より陸軍、政府も三好大将を重要と認識したらしいわ」

 

 将和は2日前、米内長官を通して史実日本、将和が入れ知恵した日本の歴史を徹夜(3徹)して書き留めて政府及び陸海軍に渡していた。そして事態を重くみた時の総理である岡田啓介は御前会議を行う事とし陸海軍のそれぞれの大臣を召集し将和を招致する事にしたのである。

 

「……予想していたより早かったな」

 

 小澤からその話を聞いた将和は頭をポリポリをかきながらそう言うのである。そして将和は米内、小澤と共に帝都に航空機で向かうのであった。

 

「君が三好将和だね?」

「その通りです」

 

 明治宮殿車寄を入って右側にある『東一の間』にて陛下以下の人員が集まりコの字の中央に将和は座らされた。そして廣田らが入室し、やや時間があって入ってきたのはーーー帝政葦原中津国を治める陛下であった。将和は陛下を見て昭和の時代を動かしてきた『陛下』と重ねて見えたのである。

 

「君は……違う葦原の者と聞く」

「はっ。少なくとも二つの世界の日本……葦原の歴史を歩みました」

「朕に聞かせてはくれぬか? 二つの葦原の歴史を。かの後に起こる悲劇を聞かせてはくれぬか?」

「自分で良ければ……」

 

 そして将和は自身が作成した説明書を見ながら陛下、岡田、川島陸軍大臣、大角海軍大臣、伏見宮軍令部総長、閑院宮載仁親王陸軍参謀本部総長らに丁寧じっくりと説明をするのであった。

 

「何と……」

「我が葦原が焦土と化すというのか……」

「しかし……」

 

 説明を聞いた川島、大角、伏見宮らはそう言い合うがそこへ口を開いたのは陛下だった。

 

「朕は三好の言葉を信じる」

「しかし陛下……」

「では寺内、三好と共に来た輸送艦の中身は何とする? 戦車は我が葦原陸軍が保有するチイよりも強力ではあるぞ」

「ッ」

 

 陛下の言葉に川島は何も言えなかった。確かに『第一号』輸送艦と『第百一号』型輸送艦に積載されていた三好世界の九七式中戦車は葦原陸軍が保有するどの戦車より強力なのは言うまでもなかった。

 

「伏見宮、大角。そちらも『加賀』や『出雲』を見ておろう?」

「はっ」

「正にその通りでございます」

 

 陛下の問いに伏見宮と大角は頷く。流石の二人もあの兵器を見れば納得するしかなかったのだ。だからこそ海軍は早期に将和と協力しようと模索していた。

 そして陛下は将和に視線を向ける。

 

「三好」

「はっ」

「葦原を焦土と化させないためにも……協力してもらいたい」

「……協力するのは構いません。しかし懸念があります」

「それは?」

「これは同盟という形にして頂きたい。つまり我が日本と葦原との軍事同盟になります」

「何ッ!? 軍事同盟だと!?」

 

 将和の言葉に川島が目を見開く。

 

「馬鹿を言え!! 日本と言っても貴様一人しかいないではないか!!」

「だが兵器はある。そしてコイツが我が手打ちにある」

 

 将和は懐から何かのスイッチを出した。

 

「……それは?」

「艦艇用の自爆スイッチだ。対等な同盟であればスイッチも押すつもりはない。だが、葦原の臣下というのはごめん被る。確かに葦原は日本と似ているだろう。だがッ、俺は日本帝国軍人であり日本国民でもある!!」

『ッ……』

 

 将和の言葉に岡田らは何も言えなかった。それはただのプライドではない。一人の、男としての責務なのかもしれない。米内は小澤に視線を向けると小澤も米内を見ており首を横に振る。

 

(……三好将和の三好元帥大将としてのブラフ……か………)

 

 米内は博打打ちが大好きな一人の女性海軍将官を脳裏に浮かべる。彼女は此処まで言えるだろうか? いや、否だろう。

 

「良い。構わぬ」

「陛下ッ!?」

「三好よ。葦原と日本との対等な軍事同盟の締結には朕は賛成する。皆も良いな?」

『………………』

 

 陛下の決断に岡田らは頭を下げる。陛下の英断が何よりも優先される。わだかまりはあろうが陛下は先に葦原と日本の関係を優先したのだ。陛下の言葉に将和も頭を下げるのであった。

 そして会議は一時間休憩として一旦はお開きとなる。席を立とうとすると将和は川島に声をかけられた。

 

「陛下が決めた事だ……ワシはそれ以上の事は言わん。互いに葦原の未来のために尽くそう」

「無論です川島閣下」

 

 川島も腹の中は納得していなかったがもし万が一、将和の機嫌を損ねたら戦車の開発が遅れると踏んだのだろう。伊達に長く大臣や将官を勤めているわけではなかったのだ。

 そして一時間の休憩後、再度御前会議は開始された。今度は世界地図を拡げていた。将和は世界地図を見るにほぼ元の世界と変わっていない事に安堵した。

 

「恐らくこのまま進めば……光文16年の12月には開戦となるでしょう」

「ムゥ……」

「開戦を回避する事は可能か?」

「史実を歩んできた日本、自分が梃入れした日本も何れも『ハル・ノート』を提示されました。つまりは満州事変……満州からも撤退せよとの事でした」

「それは困る」

「なので開戦を想定した動きをしなければなりません」

「具体的には?」

「その為にはまず、工業力の向上です。カネにカネを言わせて各国から工作機械を大量に仕入れて工業の基礎を作らせます」

「大量にかね?」

「大量にです。今後の戦争は総力戦になります。例えば葦原でチイを1両製造する毎にルーシ連邦は戦車を10両を製造している……そういう寸法です」

「成る程。それは分かりやすいな」

 

 将和の説明に川島と閑院宮載仁親王は頷く。伏見宮や大角も海軍に置き換えて考えたのだろう。納得するように両者も頷いていた。

 そして将和は以下の提案をした。

 

 

 政府関係

 ・工作機械大量輸入により工業力の向上

 ・ネジ等の部品の統一規格

 ・労働法の制定

 ・朝鮮半島の開発投資を大幅に削減

 ・削減した費用を海軍工廠等の工場建設費用に補填

 ・上記の海軍工廠を大神、旅順に工廠を建設。砲兵工廠も3つは建設

 

 

 陸軍関係

 ・ノモンハン事件までに九七式中戦車(三好世界)の増産

 ・7.7ミリ小銃、7.7ミリ軽機関銃、短機関銃の開発配備

 ・開戦時までに隼三型(輸送艦に積載していた)を開発配備

 ・新型高射砲(12サンチ高射砲)の開発

 ・海軍と協力して対戦用新型徹甲弾の開発配備

 ・野砲(機動90式野砲や機動91式10サンチ榴弾砲等々)、対戦車砲(試製57ミリ機動砲やロタ砲等)の増産

 ・双発複座戦闘機(キ102乙)

 

 

 海軍関係

 ・正規空母(三好世界の『雲龍』型空母)の増産

 ・『秋月』型・『夕雲』型駆逐艦の建造開発

 ・対潜兵器(三好世界の一式対潜噴進砲や一式対潜ソナー)の増産配備

 ・対空火器(40ミリや12.7サンチ両用砲等)の開発配備

 ・新型戦闘機(三好世界の零戦)の開発配備

 ・新型艦上爆撃機(彗星三三型)の開発

 ・新型艦上攻撃機(天山及び流星)の開発

 ・新型艦上偵察機(彩雲)の開発

 ・発動機の開発(各種)

 ・各艦艇の対空火器増設及び近代化改装

 ・5.500t型巡洋艦を護衛巡洋艦(対空・対潜への強化)への近代化改装

 ・乙巡の建造(改『阿賀野』型)

 ・水上電探の開発配備

 ・『第一号』型・『第百一号』型輸送艦の建造

 ・艦隊への随伴可能な高速給油艦の建造

 ・パイロットの大量育成(特に戦闘機パイロット)

 ・保有する戦艦の近代化改装(高速化・対空火器増設)の実施

 

 

 陸海共同開発

 ・対空電探の開発配備

 ・航空機用航空無線機の開発配備

 ・噴式発動機の開発

 ・航空機用排気タービン過給機の開発

 ・四発爆撃機(連山)の共同開発

 

 

 

 

 なお、将和の提案は岡田ら政府は元より陸海軍は全て受諾したのである。

 

「本日の御前会議は此処までとします」

 

 見れば時計の針は2000を指していた。流石に他の者達も疲れが見え始めていたのでまぁやむを得ないだろう。将和も海軍省の仮眠室を宛がわれ休む事にした。そこへノックをする音がして許可すると入ってきたのは小澤だった。

 

「どうした?」

「……ヴィンランドとの戦争は回避は出来ないのか?」

「……無理だろうな」

 

 小澤の問いに将和はそう答え茶碗に小澤の分も入れた日本酒を注いで小澤に渡す。

 

「ヴィンランドは世界恐慌から抜け出す事は出来なかった……公共ダムの開発もやっていたが今一だったしな。だからこそ、不況を吹き飛ばすには戦争が持ってこい。そういう事だな」

「…………………」

「このままだったら葦原も史実日本との運命だったが……青臭い台詞を吐くけど俺がいるからな」

「フフッ……確かにそうかもね」

 

 将和の言葉に小澤は苦笑する。

 

「そうだ小澤。お前航空戦はどんなモノと思っている?」

「航空戦? そうだな……空母は『弓兵』と捉えるかな。航空機は矢、機体も『パイロットも使い捨て』と考えるな」

「あ?」

「ッ」

 

 小澤の『パイロットも使い捨て』という言葉に将和は強く反応した。しかも小澤に殺気を出してである。殺気を当てられた小澤はビクリと身体を震わせる。

 

「……成る程。なら言っておこう、お前には空母を率いる事は到底無理だな」

 

 将和はそう言うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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