『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第二十話 超えるべき場所

 

 

 

 

 

「ジェニファー……」

「第17任務部隊……只今戻りました」

 

 5月19日、ハワイ諸島オアフ島にあるヴィンランド海軍太平洋艦隊司令部では頭に包帯を巻いたジェニファー・フレッチャー少将が入室した。その怪我に太平洋艦隊司令長官のセシリア・ニミッツ大将は思わず腰を浮かべようとしたが部下の手前でもあり何とか立ち上がらないようにした。

 

「構いません……まだ傷口が回復していないだけですので」

 

 フレッチャーはそう言いながらも頭を下げる。

 

「『ワスプ』の喪失並びにポートモレスビーの陥落は私の責任であります」

「そう……でもポートモレスビーに関しては陸軍の責任になるから問題無いわ」

(……しかしながら『ワスプ』の喪失は私の責任……というわけね)

 

 だがニミッツの言い方は『ワスプ』の喪失は自身に有りと感じられたフレッチャーである。

 

「けど……貴女を更迭する理由が無いわ」

「……というと?」

「フレンダの件も貴女の件も葦原側で何らかの出来事が起きていると上は踏んだのよ」

「何らかの出来事……まさか葦原が新型機を開発したと?」

「その可能性も否定出来ないわ……一先ずは報告をお願い」

「……分かりました」

 

 ニミッツの言葉にフレッチャーは報告書を渡す。

 

「珊瑚海で経験した私から言えるのは……今回も葦原は異様でした」

 

 そう言ってからフレッチャーは語り出す。フレッチャーの第17任務部隊はソロモン諸島のツラギ島に上陸したツラギ攻略部隊を空襲したのはいい。確かに艦艇群はいたがその高角砲や対空機銃の砲身銃身は上空に向けて攻撃隊を待ち構えていた。

 しかも上空には30機の水上戦闘機が待ち構えており攻撃隊は攻撃しようにも這う這うの体で追い回され結局は攻略部隊やツラギを攻撃出来なかったのである。

 それでもフレッチャーは航空戦力を消耗した『ヨークタウン』を後退させ『ワスプ』からの第三次攻撃を出すつもりだったが0815に『ワスプ』の索敵機がMO攻略部隊を発見したのだ。直ちにフレッチャーはツラギ攻撃全力攻撃を指示し出せうる92機の攻撃隊を送り出した。

 しかし、攻撃隊がMO攻略部隊上空に到着すれば待ち受けていたのは100機余りの零戦隊であった。彼女らは散々に落とされ帰還出来たのは21機のみであった。

 この時点でフレッチャーは珊瑚海からの撤退を決断し攻撃隊を収容後は反転しようしたが、この時に第17任務部隊は第一航空艦隊から発艦した『彩雲』に発見されたのである。

 1012、第17任務部隊は150機余りの第一航空艦隊から発艦した第一次攻撃隊からの攻撃を受け空母『ワスプ』は爆弾8発、魚雷5発を受けて大破漂流したのである。

 それでもフレッチャーは艦隊の退避を懸命に行ったが1204に第二次攻撃隊が飛来、この攻撃で『ワスプ』はトドメを刺されたのである。

 その後、第一航空艦隊はポートモレスビーを航空攻撃後に南下し豪州のケアンズ、ブリスベンを空襲して引き揚げた。そしてポートモレスビーはMO攻略部隊が艦砲射撃する中で大発を降ろした第『一号』型輸送艦らが主力となって南海混成旅団を上陸させたのである。

 ポートモレスビーは2日間粘ったが結局は占領されたのである。

 

「そう……ご苦労だったわ。今はゆっくりと休んで下さい」

「……そうするわ」

 

 ニミッツの言葉にフレッチャーはそう答えるのみで退出するのである。退出後、ニミッツはパールハーバーが見える窓際に歩き軍港を見下ろす。

 軍港は未だ真珠湾攻撃からの再建途中だった。

 

「……やはり空母が足りないですね……上に働きをかけてみますか」

 

 現時点で空母3隻を喪失し1隻修理中の太平洋艦隊であるが使用可能な空母は『ヨークタウン』『ホーネット』しか無い。ブレマートンの工廠ではまだ『サラトガ』が修理中でありニミッツに取っては非常に不味い状態であったのだ。

 

「何とかしないとね……」

 

 そう呟くニミッツであった。そして葦原はというとGF旗艦『大和』でMO作戦の報告が行われていた。

 

「結果として言えば敵空母1隻の撃沈、主目標のポートモレスビーを占領する事に成功したな」

「三好長官、本当にありがとうございます」

 

 将和の言葉に五十子は頭を下げるが将和は手を振る。

 

「構わないよ山本。だが今の本命はMI作戦だ。それまでは気を抜いちゃいけない」

「あっ……ごめんなさい……」

 

 将和の指摘に五十子はシュンとするが将和は苦笑する。

 

「まぁ酒盛りしてやらかすよりかはコイツでなら大丈夫だろ」

 

 将和はそう言って従兵に合図をして人数分のとあるお菓子を茶碗に入れて持って来させた。五十子はそのお菓子を見た瞬間、表情を明るくさせた。

 

「水まんじゅうじゃないですか!?」

「水まんじゅう?」

「あぁ。山本と同じ出身の奴がうちの艦隊にもいたからな。話を聞いて準備させたんだよ」

「わぁ、嬉しいなぁ」

 

 五十子は喜びながらまんじゅうと氷が入った茶碗に砂糖を入れていく。

 

「えっ……まんじゅうに砂糖をですか?」

「うん、そうだよ」

 

 渡辺戦務参謀の質問に五十子はそう返し将和の茶碗にも砂糖を入れ自身の茶碗にあるまんじゅうにスプーンで開けてそれを口に運ぶ。

 

「ん~美味しい~♪」

「お代わりもあるが食べ過ぎには注意しておけよ」

「ウッ……気を付けます……」

 

 あっという間に食べ尽くしお代わりに手を出そうとする五十子にそう忠告をする将和である。(なお、お代わりはした模様)

 

「さて、腹も膨れたようだしMO作戦の報告をするか」

 

 将和はそう言って複製した書類を五十子らに配る。

 

「現状での報告だが……まずはソロモン諸島方面、ブーゲンヴィル島南部のブインにも一個工兵隊を派遣して航空基地を建設中。恐らく7月には完成予定だ。ツラギはどうするかだがな……それとショートランド諸島も基地化を進めている」

「それはガダルカナル対策になりますか?」

「それ+FS作戦も兼ねている。島伝いに行く方が史実を考えればな。それなら先にガダルカナルよりもブインやムンダ、レカタ等の基地整備を優先させるな」

「成る程……」

 

 特務参謀扱いになった洋平の問いに将和はそう答える。何が起きるかは分からないので将和は安全策を取る事にしたのである。

 

「それとポートモレスビー、これは滑走路も修復したからラバウルで待機していた一個航空隊を派遣した」

 

 将和が言うのは番号名の航空隊であり編成されたばかりの205空の零戦48機が派遣された。この205空もラバウルに進出していたがポートモレスビーの滑走路が修復したのでラバウルから移動したのである。

 また葦原側も局地戦闘機ーー防空隊の必要性は理解しており局地戦闘機として双発局地戦闘機『月光』(史実の『天雷』相当。発動機がハ-42)や『雷電』(二式鍾馗を元にハ-42を搭載)の生産を急がせていた。

 

「まぁラエ等に展開している航空隊も順次ポートモレスビーに向かわせてくれたらいいさ」

「そうですね」

「それで……MI作戦だが……」

「スピー……当初の6月から7月に変更した……スピー……」

 

 将和の問いに答えたのは寝ながら報告する黒島である。

 

「うん。亀ちゃんの言う通り、MI作戦はミッドウェー攻略じゃなくて敵機動部隊の撃滅に変更して行うから6月に拘る必要は無くなったからね」

「ウム、なら艦隊の再編もしやすいだろう」

 

 将和はそう言って書類を五十子に渡し彼女は書類に目を通す。

 

「こ、これって……」

「どうだ? 中々の案だろう?」

 

 驚く五十子に将和はニヤリと笑う。五十子は驚きながらも書類を皆に渡す。

 

 

 

 MI作戦参加艦隊

 

 第一航空艦隊

 司令長官 三好将和大将

 参謀長 草鹿峰少将

 副官 嶋野夕華少佐

 旗艦『加賀』

 第一航空戦隊

 司令官 三好将和大将(兼務)

 『加賀』『神鶴』(元『エンタープライズ』)

 第二航空戦隊

 司令官 楠木多恵少将

 『蒼龍』『飛龍』

 第五航空戦隊

 司令官 原幸江少将

 『翔鶴』『瑞鶴』

 第一防空戦隊

 『祥鳳』『瑞鳳』

 第三戦隊

 『金剛』『比叡』『榛名』『霧島』

 第五戦隊

 『妙高』『那智』『羽黒』

 第八戦隊

 『利根』『筑摩』

 第一護衛戦隊

 『五十鈴』『名取』

 第一水雷戦隊

 『阿武隈』

 第十七駆逐隊

 『谷風』『浦風』『浜風』『磯風』

 第十八駆逐隊

 『陽炎』『不知火』『霞』『霰』

 第三十一駆逐隊

 『長波』『巻波』『高波』『大波』

 第六十一駆逐隊

 『秋月』『照月』『涼月』『初月』

 第六十二駆逐隊

 『新月』『若月』

 

 

 

 第二航空艦隊(AL作戦から引き続き参加)

 司令長官 小澤智里中将

 旗艦『雲龍』

 第四航空戦隊第一小隊

 『龍驤』『隼鷹』『飛鷹』

 第六航空戦隊

 『雲龍』『天城』『葛城』

 第七戦隊第一小隊

 『最上』『三隈』

 第十一戦隊

 『八雲』『和泉』

 第四水雷戦隊

 『那珂』

 第九駆逐隊

 『朝雲』『山雲』『夏雲』『峯雲』

 第二十四駆逐隊

 『海風』『山風』『江風』『涼風』

 

 

 

 

 前衛部隊

 山本五十子大将

 第一戦隊

 『大和』『長門』『陸奥』『出雲』

 第二戦隊

 『扶桑』『山城』

 第四航空戦隊第二小隊

 『伊勢』『日向』

 第二防空戦隊

 『龍鳳』『春日丸』

 第九戦隊

 『北上』『大井』

 第三水雷戦隊

 『川内』以下18隻

 他多数

 

 

 

 第二艦隊

 司令長官 近藤伊佐見中将

 旗艦『愛宕』

 第四戦隊

 『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』

 第七戦隊

 『最上』『三隈』『鈴谷』『熊野』

 第二水雷戦隊

 『神通』以下12隻

 第三航空戦隊

 司令官 桑原和子少将

 『赤城』『土佐』

 第三防空戦隊

 『千歳』『千代田』

 

 

 

 

 

「空母を全部合わせて20隻もかぁ……」

「あぁ、MI作戦でその全てを投入する」

 

 五十子の言葉に将和はそう主張する。がふと将和はモジモジしている南雲を見つけた。

 

「どうした南雲?」

「ひゅいッ!? あ、あの……私の艦隊がいないから……」

「あぁ……南雲はインド洋に専念してもらおうと思う」

「ひゅいッ!? さ、左遷ですかァ!? うぅ、魚雷発射管に入りたい……」

「いや、むしろ栄転だろ」

「えっ……?」

 

 その言葉に顔を挙げ将和に視線を向ける南雲。

 

「話は最後まで聞きたまえ。途中で思考を単一に放棄してはヴィンランドに勝てんぞ」

「………はい。じゃあ何故ですか?」

「簡単な事だ。お前は元々は水雷屋だろ? 適材適所で考えるなら空母よりむしろ戦艦だ。だからインド洋で通商破壊作戦をしてほしいんだ」

「……それが私が南遣艦隊司令長官としている理由なんですね……?」

「あぁ、そうだな」

「……分かりました。頑張ります」

 

 将和の言葉に南雲は問題無しとして矛を納める。そして思い出したかのように口を開いたのも南雲だった。

 

「あの……そういえば別世界の私はどうなったのですか……?」

「史実の南雲は南太平洋海戦後に艦を降りてマリアナ諸島のサイパン島で米軍を相手に地上戦を展開したが……最期は自決した」

「ッ……」

「だが俺の世界では……マリアナに侵攻してきたヴィンランド軍に第二艦隊司令長官として参戦し敵上陸船団を全滅させ、追撃する敵残存艦隊と対峙して戦死した」

「………」

「南雲の艦隊参謀長は重傷だった南雲に退艦をさせようとしたが既に致命傷を負っていた南雲は拒否をしていてな……参謀長にこう告げた……『米艦隊との艦隊決戦で死ねるのだ。満足して逝きかけてる人間をいまさら呼び戻さんでくれんかね』とな」

「……………」

 

 そして将和は南雲に視線を向ける。

 

「俺のところの南雲は悔いの無い生き方をし満足して靖国に行った。だからこそ君も悔いの無い生き方をするんだ。それが君が生きる意味だ」

「悔いの無い生き方……はい、分かりました!!」

「けど、戦死は許される事じゃないからな。生きて生きて生き抜く事が大切だ(なぁそうだろ……宇垣……?)」

『…………………』

 

 将和の言葉に南雲は頷くのであった。その様子を宇垣と嶋野、小澤は無言で見ていたのである。そして将和は見渡す。

 

「これらの布陣でMI作戦を完遂させる。この戦いは俺だけではない。俺を含め、日本海軍、葦原海軍が超えなければならない戦いだ!!」

『……………………』

 

 将和の言葉に五十子達は真剣な表情で頷く。『ミッドウェー海戦』それは将和は元より洋平らには鬼門とも言える言葉である。

 しかし、超えなければならない戦いでもある。

 

「改めて主攻撃目標は一に空母、二に空母、三、四も空母であり五も空母だ!!」

『はいッ!!』

「そして……生きて帰るぞ。皆で御茶会でもやろう」

『はいッ!!』

 

 将和の言葉に五十子達は頷いたのであった。斯くして光文17年7月7日、MI作戦は発動されたのであった。

 

 

 

 

 

 




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