『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第二十一話 MI作戦前編

 

 

 

 

「微速前進」

「微速前進ヨォーソロォー」

 

 光文17年7月7日0600、柱島泊地を三好将和大将の第一航空艦隊が最初に出撃した。また、その前の7日0200に五十子の主力艦隊が出撃したのである。

 出撃した艦隊は以下の通りに編成されていた。

 

 

 

 

 MI作戦参加艦隊

 

 第一航空艦隊

 司令長官 三好将和大将

 参謀長 草鹿峰少将

 副官 嶋野夕華少佐

 旗艦『加賀』

 

 第一航空戦隊

 司令官 三好将和大将(兼務)

 『加賀』

 【零戦54機 彗星27機 天山27機 彩雲12機】

 『神鶴』

 【零戦30機 九九式艦爆18機 九七式艦攻27機 彩雲3機】

 第二航空戦隊

 司令官 楠木多恵少将

 『蒼龍』

 【零戦27機 九九式艦爆18機 九七式艦攻18機 彩雲3機】

 『飛龍』

 【同上】

 第五航空戦隊

 司令官 原幸江少将

 『翔鶴』

 【零戦36機 九九式艦爆27機 九七式艦攻27機 彩雲6機】

 『瑞鶴』

 【同上】

 第一防空戦隊

 『祥鳳』

 【零戦27機 彩雲3機】

 『瑞鳳』

 【同上】

 第三戦隊

 司令官

 『金剛』『比叡』『榛名』『霧島』

 第五戦隊

 『妙高』『那智』『羽黒』

 第八戦隊

 『利根』『筑摩』

 第一護衛戦隊

 『五十鈴』『名取』

 第一水雷戦隊

 『阿武隈』

 第十七駆逐隊

 『谷風』『浦風』『浜風』『磯風』

 第十八駆逐隊

 『陽炎』『不知火』『霞』『霰』

 第三十一駆逐隊

 『長波』『巻波』『高波』『大波』

 第六十一駆逐隊

 『秋月』『照月』『涼月』『初月』

 第六十二駆逐隊

 『新月』『若月』

 

 

 

 第二航空艦隊(AL作戦から引き続き参加)

 司令長官 小澤智里中将

 旗艦『雲龍』

 第四航空戦隊第一小隊

 『龍驤』【零戦18機 九七式艦攻18機 彩雲3機】

 『隼鷹』【零戦27機 九九式艦爆18機 九七式艦攻18機 彩雲3機】

 『飛鷹』【同上】

 第六航空戦隊

 『雲龍』【零戦27機 九九式艦爆18機 九七式艦攻18機 彩雲6機】

 『天城』【同上】

 『葛城』【同上】

 第七戦隊第一小隊

 『最上』『三隈』

 第十一戦隊

 『八雲』『和泉』

 第十二戦隊

 『三河』『周防』

 第二護衛戦隊

 『香取』『鹿島』

 第四水雷戦隊

 『那珂』

 第九駆逐隊

 『朝雲』『山雲』『夏雲』『峯雲』

 第二十四駆逐隊

 『海風』『山風』『江風』『涼風』

 

 

 

 

 前衛部隊

 山本五十子大将

 第一戦隊

 『大和』『長門』『陸奥』『出雲』

 第二戦隊

 『扶桑』『山城』

 第四航空戦隊第二小隊

 『伊勢』【零戦18機 瑞雲27機】

 『日向』【同上】

 第二防空戦隊

 『龍鳳』【零戦27機 彩雲3機】

 『春日丸』【零戦18機 彩雲9】

 第九戦隊

 『北上』『大井』

 第三水雷戦隊

 『川内』以下18隻

 他多数

 

 

 

 第二艦隊

 司令長官 近藤伊佐見中将

 旗艦『愛宕』

 第四戦隊

 『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』

 第七戦隊第二小隊

 『鈴谷』『熊野』

 第二水雷戦隊

 『神通』以下12隻

 第三航空戦隊

 『赤城』

 【零戦27機 九九式艦爆18機 九七式艦攻18機 彩雲3機】

 『土佐』

 【零戦27機 九九式艦爆27機 九七式艦攻27機 彩雲3機】

 第三防空戦隊

 『千歳』【零戦27機 彩雲3機】

 『千代田』【同上】

 

 

 

 

 

 

 なお、智里の第二航空艦隊は6月24日に大湊から出撃し7月2日にはアリューシャン列島のダッチハーバーを空襲する予定であり空襲後は南下してMI作戦に加わる予定でもあった。

 また、『加賀』には最新鋭艦上爆撃機『彗星』と同じく艦上攻撃機『天山』が配備されていた。本来であれば第一航空戦隊分の数は揃っていたが完熟飛行訓練もそこまで出来なかったので『加賀』飛行隊だけとなったのである。

 

「三好長官」

「どうした?」

 

 通信兵からの電文を確認した嶋野が将和に声をかける。

 

「フレンチフリゲート礁に向かっていた伊『123』潜より入電ですわ。やはりフレンチフリゲート礁に敵艦が展開していたのでK作戦は決行出来ず……との事ですわ」

「……やはりか」

 

 嶋野の報告に将和はそう呟いた。だが参謀長の草鹿は笑みを浮かべた。

 

「まぁこれで我々の暗号は解読されているのが分かったな」

「良いのか悪いのかは分かりませんが……あんまり深くは言えませんわね」

 

 草鹿の言葉に嶋野は溜め息を吐いた。将和や清、果ては洋平からの情報は葦原陸海軍に暗号が解読されていると前々から伝えていたが、トメニアからもたらされて暗号機エニグマは絶対に解読されないと自信を持っていた。しかし、今回ので葦原陸海軍はその考えを改めなければならなかった。

 

「まぁいい、艦隊は予定通りに進める。あぁ、二人とも今のうちに休んでおけ。戦いの時は休めなくなるからな」

「……分かりましたわ」

「ふむ、ならそうさせてもらおうかな」

 

 二人はそう言って艦橋を退出するのであるが草鹿が艦内の廊下を歩いていると後ろから嶋野が声をかけてきた。

 

「何ですか?」

「たまにはお茶をと思いましてね……どうですか?」

(やっぱ変わられたな……)

 

 嶋野の言葉に草鹿はそう思いながらも了承して嶋野の部屋にお邪魔する事にした。そして嶋野の部屋に入ると草鹿は目を見開いた。

 彼女の部屋は既存のベッドやロッカー、机以外には着替え等が入った箱、数冊の本とティーセットしか置かれていなかったのだ。

 軍令部総長時代の嶋野の自室をある程度は知っていた草鹿からすれば今の部屋は驚愕に等しかった。

 

「驚いたかしら?」

「まぁ……あの部屋を知ってるボク達からしたら……かな……」

「まぁそれもそうですね」

 

 クスリと笑う嶋野に草鹿は肩を竦めながらも椅子に座り嶋野が紅茶を注ぎ草鹿に渡してから一口、口に付ける。

 

「成る程。噂に聞く嶋野だいじ……少佐の紅茶の味ですね」

「ホホホ、これだけは誰よりも絶対に負けたくはありませんわ。それに対して五十子さんはお砂糖を入れてはガバガバと飲んでは御代わりを要求したり……」

「ハハハ、山本長官らしいな」

 

 そう言ってブツブツと文句を言う嶋野である。そんな嶋野を見て草鹿はやはり変わったなと思う。ふと、本の中身が気になって嶋野に質問をする。

 

「ところであの本は……」

「向こうの世界に関連する書物と戦闘詳報ですわ」

 

 そう言って嶋野が本ーー戦闘詳報を手に取り、草鹿に渡す。戦闘詳報は『真珠湾作戦』と記載されていた。

 

「これってまさか……」

「そのまさかですわ。彼方の……三好長官側の戦闘詳報を借りてますの」

「良いのですか借りて?」

「三好長官に頼んでみたら二つ返事で貸して頂けましたわ。まぁ三好長官も何故『加賀』にあったのかは不明だったみたいですけども」

「まぁ三好長官なら……」

 

 思わず納得する草鹿である。そして草鹿は戦闘詳報をパラパラと捲り最後の結言で唸る。

 

「真珠湾攻撃は失敗……としたか」

「幾ら真珠湾を水道で半年間封鎖しても空母を叩いていなければその戦略的価値は低下する……そうらしいですわ」

「成る程……だから機雷で封鎖して艦砲射撃で基地施設を叩くのを乙案とし直接占領して燃料やその他を全て掻っ攫うのを甲案としたのか……」

 

 草鹿は真珠湾の戦闘詳報を嶋野に渡してもう一つの戦闘詳報に手を取りパラパラと見るがとある一文を見てピタリと手を止めた。

 

『戦艦『大和』マリアナ沖にて戦没。同艦には第一戦隊司令宇垣中将が乗艦しており沈没時に『大和』と運命を共にした』

 

 そのように記載されていたのだ。だがこの宇垣は『大和』にいる宇垣ではないはずだ。

 

「これは……」

「あぁ……向こうの宇垣さんが戦死した海戦のですわね。ごめんなさい、配慮がありませんでしたわ」

「いやいい……」

 

 謝る嶋野に草鹿はそう言いながらもマリアナ沖海戦の戦闘詳報を読み耽る。それを嶋野は何も言わずにただ紅茶を啜る。そして最後まで読み終えた草鹿が顔をあげた時、草鹿は一筋の涙を流していた。

 

「こんな……事が……」

「……実は三好長官にそれを聞こうと思いますの。本当に『大和』に残る気だったのかと……」

「……どういう事だ?」

 

 嶋野の言葉に草鹿は問う。嶋野の言葉は不思議だったからだ。

 

「三好長官程の人物であるなら……幾ら『大和』が沈もうが生存者救助を優先させて退艦をする筈ですわ。それなのに長官は遭えて……遭えて残ろうとした……何かが矛盾しますの」

『………………』

 

 確かにと草鹿は思う。三好長官なら退艦をして次の戦いに備える筈である。だが長官は遇えて残ろうとしたが代わりに致命傷を負っていた向こうの宇垣が『大和』に残って『大和』と運命を共にした。

 

(三好長官に何かがあった……?)

 

 草鹿はそう判断する。そう思った時、草鹿は……いや二人は真意を聞こうとした。黙ってはいられない性格上、そう判断したのだ。

 草鹿は席を立とうとするがそれを止めたのは嶋野だった。

 

「草鹿さん、貴女の事だから三好長官の元に行こうとするのでしょう?」

「……止めるのですか? 嶋野少佐らしくないですね」

 

 草鹿の言葉に嶋野は笑みを浮かべて肩を竦める。

 

「まさか。むしろ私も聞きたいのです、何故そうするに至ったのかを……もしかしたら私も何かを掴めるんじゃないか……」

「………フッ………」

 

 嶋野の言葉に草鹿は笑みを浮かべる。突然の笑みに嶋野は警戒する。

 

「……何ですの?」

「いや……やっぱ変わったなぁって思いましてね」

「う、五月蝿いですわ!! ほら、行くなら早く行きましょう!!」

「……あれがツンデレというやつかな」

 

 嶋野は草鹿の言葉に顔を真っ赤にし部屋を出るのである。それを見届けた草鹿は苦笑しながらも続いて部屋を出て将和の元に赴くのであった。

 

「長官、失礼しますわ」

「おぅ、どうした二人とも?」

 

 将和も休憩で自室に戻っており寛いでいた。寛いでいた将和にさしもの二人もいざ聞こうとすると声にはなかなか出せなかった。

 

「…ん? どうしたんだ?」

「あの……ですわね……」

「その……な……」

「??」

 

 歯切れが悪い二人に将和は首を傾げるが切り出したのは草鹿だった。

 

「……実は向こうのマリアナ沖海戦の戦闘詳報を見たんだ」

「……ッ………」

 

 草鹿の言葉に将和はピクリと身体を震わせながらもやがて深く息を吐いて二人の椅子を用意した。

 

「まぁ座りなさい」

 

 将和は二人を座らせグラスを用意して食器棚の中からラム酒のビンを取り出した。なお、このラム酒は真珠湾を占領した時にくすねたラム酒であり他にも10数本は保管していたりする。そして将和はトクトクと三人分のを少量入れて二人に差し出す。

 

「それで……何を訊ねたいのかね?」

「……何故『大和』に残ろうと?」

「………………………」

 

 嶋野の言葉に将和はラム酒を一口舐める。脳裏に思い出すのはあの時の光景だった。

 

『長官、貴方は此処では死んでいけない人ですッ』

『宇垣ィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!』

 

 内側に秘められた想いを隠した仮面を剥がさないように将和は健気に守ろうとする。

 

「……これまでに戦死した者達への謝罪を込めてに残ろうとした」

「それは本心なのかい?」

「……何が言いたい?」

 

 草鹿の言葉に将和は眉を潜める。ピキッと何かが割れた音がしたのを将和は聞いた。

 

「貴方程の人物がそう易々と艦と運命を共にしない……そうじゃないか? 少なくともこれまでの言動を見ていればボクはそう思う」

「向こうのミッドウェー海戦でも『蒼龍』の柳本艦長を説得させて退艦させているではありませんか、ならば何故あの海戦で長官は……」

 

 草鹿に続いて嶋野がそう言い切る前、将和はラム酒を一気に飲み干し新しくラム酒を注ぐ。またピキッと何かが割れる音がする。

 

「……残ろうとした理由は先程言った筈だ」

「矛盾しか残らないんだ長官ッ」

 

 あくまでもそう主張する将和に草鹿はそう斬り込んだ。草鹿の真っ直ぐな視線に将和は一瞬、たじろぎそうになりそれを堪えるが更に斬り込んだのは嶋野だった。

 

「あれ程、生にしがみつこうとする気迫があった。それが何故『大和』に残ろうとしたのか」

「実はもっと他に理由があったのではありませんか?」

「ーーーッーー」

 

 嶋野の言葉にラム酒の酔いが廻り始めていた将和は思わず椅子からよろけてしまい崩れてしまう。そしてバリンと何かが割れた音がした。

 

「長官!?」

「来るな!!」

 

 崩れた将和に嶋野が駆け寄ろうとしたが将和はそれを大声で制した。

 

「長官……」

「来るな……来ないでくれ……ッ」

 

 将和は頭を抱える。それは酔っているのか、それとも身体が震えているのか。

 

「やめてくれ……心が……心が抉れる……」

「長官……?」

 

 気付けば将和の身体は震えていた。そして将和はポツリと呟いた。

 

「『帰れる』……『帰れる』と思ったんだ……」

「『帰れる』……?」

 

 嶋野がポツリと呟く。そして将和は身体を震わせながらも口を開いた。

 

「明治の……あの時から来て……日露を、第一次世界大戦を、シベリアを、大東亜を駆け抜けて『大和』が沈もうとした時、俺は思ったんだよ……夢オチじゃないかって……『大和』に残れば……そうしたら平成の元の世界に戻って来れるんじゃないかって……またあの馬鹿な日常に戻れる……そう思ったんだ……」

『……………』

 

 気付けば涙を、大量の涙を流していた将和の言葉に二人は何も言えなかった。何の因果か、八百万の神々の悪戯か、未来の日本にいた、たった一人の青年の人生の全てを犠牲にして時を越えた。その時を越えたのが三好将和だったのだ。そして三好将和が八百万の神々に選ばれてしまったのだ。

 

「だからそうさ!! 夕夏を……ターニャや皆は俺の妄想だと思った……思ってしまった!! だからこそ俺は『大和』に残ろうとした……けど俺は宇垣に生かされてしまった……俺は……俺は自分が生きているなんて!!」

「生きていますわ」

 

 懺悔の言葉を繰り出す将和にそう言ったのは嶋野だった。

 

「夢ではありませんわ長官。ほら証拠に……」

 

 嶋野はそう言ってソッと将和にキスをする。

 

「夢……だったらキスの感触も分からないじゃありませんか」

「しま……の……」

「もしかして……私の名前で反応していたのは奥様を思い出してしまったので?」

「……あぁ……」

 

 嶋野が挨拶をした時、将和は夕華(ゆうか)で反応した。それを不審に思っていた嶋野は漸く合点がいったと思った。

 

「少し……嫉妬しますわね、三好長官の奥様に……」

「……確か愛人も複数人いると聞いたぞ? まさか天下の嶋野様が人妻に嫉妬するなんてな」

「フフ、なら会えたら御挨拶をしませんとね。それに女の嫉妬は怖いモノですわよ」

 

 草鹿の言葉にクスリと笑う嶋野である。そしてポケットからハンカチを出して将和の涙を拭う。

 

「長官、私……あれだけ殴られ、怒られたのは初めてでしたのよ……? だから長官には感謝しているんですの。本当の私を探してくれて。兵学校に入った時の……原点の私になれましたの……だからこそ長官には生きていてほしいのですわ。後、殴られたのがちょっと気持ち良くなったのですが……(ボソッ」

「嶋野……」

「まぁボクもそうかな。これまで航空戦を理解していると思っていたけど、完全に理解していなかった。それに『大和』に残った宇垣中将にもちょっと分かる気持ちはある」

 

 草鹿はそう言って床に座り将和と正対する。

 

「宇垣中将は、未来を……日本の未来を長官に託したのかもしれない」

「………」

 

 ニカッと笑う草鹿に将和はあの時を思い出す。宇垣に殴られ意識が昏倒する中で不思議と宇垣の声は聞こえていた。

 

『長官はまだ死ぬ運命ではありません』

 

 致命傷を負った自分の代わりに生きてほしい。生きて生きて生き抜いてほしい。だからこそ宇垣は笑って『大和』の長官室に消えていったのだ。

 

「ありがとう……」

 

 漸くあの時の宇垣の言葉を理解出来た将和は再び涙を流すのである。

 

「フッ……鬼の目にも涙……か」

「あーら草鹿さん、それはどういう事かしら?」

「なーに、いつもの仕返しだよ」

「そ、それは私もそうなるかもしれませんが……」

「おや、なら今度は私が操縦しようかい?」

「結構ですわ!!」

「……ククッ」

 

 言い合う二人に将和は苦笑するのであった。

 

 

 

 

 

 




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