(今度こそ勝たなくては……)
ミッドウェー島東方約350浬の海域をジェニファー・フレッチャー少将率いる第17任務部隊とレナ・スプルアンス少将の第16任務部隊が航行していた。二個任務部隊はそれぞれ空母2隻ずつを主力とした機動部隊であった。
ジェニファーの第17任務部隊には空母『ヨークタウン』『レンジャー』が配属され、レナの第16任務部隊には空母『サラトガ』と『ホーネット』が配属されその周囲には重巡『ミネアポリス』ら7隻、防空巡洋艦『アトランタ』、駆逐艦17隻が護衛していたのである。更にその後方には護衛空母『ロング・アイランド』『チャージャー』『ボーグ』『カード』『サンガモン』『サンティー』の6隻と護衛艦艇14隻が航行していた。護衛空母も今回の作戦には急遽参戦していたのである。
航空機も約400機近くが配備されていたが『ヨークタウン』『レンジャー』は約70機程、『サラトガ』約90機、『ホーネット』で漸く90機程度を保有していた。
しかも彼女達の腕はそこそこであり一番突き出ていたのは『サラトガ』飛行隊であった。
また護衛空母『ボーグ』『カード』『サンガモン』『サンティー』の4隻についてはまだ進水しか済ませておらず就役はまだだったが航行は可能であり航空機の運用も可能だったので参加させたのだ。
(それでも……せめて敵空母の飛行甲板を叩けば……)
ジェニファーは敵空母を沈めるのは無理と判断しせめて飛行甲板を叩いて撤退をさせれば……と思っていた。飛行甲板を叩けば後は貧弱の工業力を持つ葦原だ、復帰するまでには相当の時間を必要とする筈でありその間に我々は来年に就役する『エセックス』級空母が葦原本土を襲う筈である。
そう踏んでいたジェニファーだったが一つミスをしていた。それが今までの葦原であったら問題はなかった。しかし、葦原は将和と清らのテコ入れもあったので大きく向上していたのだ。
それはさておき、葦原海軍だが彼等の艦隊もミッドウェー島に近づきつつあった。
「ミッドウェー島攻撃には二航戦及び五航戦の全力攻撃で行う」
「では敵艦隊攻撃には……」
「無論、一航戦で対処する」
「けどそれだと二兎を追う羽目になりはしないか? 此処は先にミッドウェー島を完全破壊してからでも遅くはないと思うが……」
「まぁな。だからこそ、我々は此処を使う」
草鹿の指摘に将和はニヤリと笑って頭をトントンと叩く。
「作戦『乙』を発動する」
『ッ!?』
将和の言葉に草鹿と嶋野は目を見開く。
「それは……」
「なに、百%の勝率は難しい。ならばその確率を高めるための作戦『乙』だ」
驚く二人を他所に将和はニヤリと笑うのである
「なに、今回は前衛には『大和』らの主力部隊がいる」
ミッドウェー島を目指す第一航空艦隊、その前方80海里には近藤中将の第二艦隊が、更にそこから20海里後方に展開するのは五十子率いる主力部隊が航行していた。そして墨を含んだ筆を主力部隊に丸の円を描いた。
「二航戦に五航戦はミッドウェー島攻撃後は護衛艦艇と共に退避し主力部隊に合流、敵機動部隊攻撃への備えとする」
残った空母は第一航空戦隊の2隻と第一防空戦隊の2隻の計4隻のみである。
「嶋野、ミッドウェー島攻撃隊発艦後に電波を発せよ。意味は不明で良い。奴等を俺の前に引き摺り出す!!」
『…………………』
将和はニヤリと笑う。その様子に嶋野と草鹿は背筋に氷を入れられたようなゾクリと感触を味わう。
「ミッドウェーのあの光景を味わう者が贈る素敵な物語……というわけかい?」
「だろうな。けど草鹿、俺は一度あのマリアナ沖で死んだにも等しい男だ」
「長官……」
「だが……」
将和は前方の海面を見つめつつ笑みを浮かべる。その笑みも背筋が凍るような思いをする二人である。
「一度死んだ人間は……恐いぜ……」
斯くして『加賀』から彩雲1機が発艦し前方の主力部隊に向かい将和の作戦『乙』発令を伝える。作戦『乙』発令を伝えられた五十子は前方の海域を見つめつつ将和を思う。
(……大丈夫、大丈夫だよ三好長官。私達は勝つから)
そして将和の覚悟を聞いた洋平も動き出す。
「五十子さん、第一航空艦隊を援護しようッ」
7月14日、第一航空艦隊はミッドウェー島北北西約220海里の地点まで進出していた。ミッドウェー島攻撃隊である第二航空戦隊、第五航空戦隊の4空母の飛行甲板では攻撃隊の発艦準備が行われていた。
「攻撃隊は予定通り0510に発艦開始と出来るよ」
「ん」
草鹿からの報告に将和は頷く。上空には第一防空戦隊から警戒機の零戦12機が発艦して警戒に当たっていた。そして0510、4空母から攻撃隊が発艦が開始されたのである。
「総飛行機発動ォ!!」
「チョーク外せェ!!」
チョークを外された一番先頭の零戦が両翼下に積載されたロケット補助推進離陸用RATOの噴進器を使用しながら発艦していく。4空母は全力出撃のため飛行甲板には多くの攻撃隊が準備されていたのだ。
「帽振れェ!!」
4空母は元より各艦艇では発艦していく攻撃隊に惜別の証である帽振れで見送ったのである。そして各艦艇は作戦『乙』の発令に基づき行動を開始したのである。
第一航空艦隊
第一航空戦隊
『加賀』
【零戦54機 彗星27機 天山27機 彩雲12機】
『神鶴』
【零戦30機 九九式艦爆18機 九七式艦攻27機 彩雲3機】
第一防空戦隊
『祥鳳』
【零戦27機 九七式艦攻3機】
『瑞鳳』
【零戦27機 九七式艦攻3機】
第三戦隊第二小隊
『榛名』『霧島』
第五戦隊
『妙高』『那智』『羽黒』
第一護衛隊
『五十鈴』
防空型駆逐隊
『涼月』以下6隻
艦隊型駆逐隊
『長波』以下6隻
「カタリナが敵機動部隊を発見したと?」
「はい、空母4隻の機動部隊です」
レナ・スプルアンスはミッドウェー島から発進したカタリナからの報告を受けていた。この時、ミッドウェーでは保有するカタリナ32機を索敵に回しておりその内の1機が将和が率いる第一航空艦隊を発見したのである。無論、カタリナは電文を放ってから零戦隊に撃墜されたがミッドウェー島では直ちに攻撃隊が発進して攻撃に向かったのである。
「……分かりました。我々も全力攻撃に移行します」
スプルアンス少将は直ちに4空母に対し攻撃隊発艦を発令した。しかし、彼女達も第一機動艦隊から発艦した『彩雲』に発見されたのである。
「いましたよ、敵機動部隊です!?」
発見したのは千早真実大尉の『彩雲』であり千早大尉は飛行していた高度5000から一気に2000まで降下して高速で美機動部隊上空を飛び回り詳細な電文を発信するのである。
「来たぞ長官!? 美機動部隊の発見だ!!」
「ん、読め」
「はい!! 『敵機動部隊発見セリ。敵空母4ヲ視認。方位ーーー』」
「やはりミッドウェー島東方ですわね」
海図を見ていた嶋野は将和にそう答える。そしてそれを聞いた将和は艦橋を飛び出し待機していたパイロット達の飛行甲板に向かって叫んだ。
「全機発艦!! 始めェェェェェェェッ!!」
『オオオォォォォォォォォォォォォ!!』
直ちに待機していた攻撃隊は発艦を開始する。第一航空戦隊の全力出撃である。
零戦54機、彗星27機、九九式艦爆18機、九七式艦攻27機、天山27機、誘導の彩雲6機は総隊長淵田中佐に率いられて美機動部隊に向かうのである。なお、彼女達が搭載していた航空爆弾は少し違っていたりする。
そして攻撃隊が美機動部隊に向かう中、将和の第一機動艦隊はミッドウェー島からの攻撃に晒されていた。この時、第一機動艦隊上空には第一防空戦隊の零戦54機と第一航空戦隊残存の零戦60機が展開しており飛来したミッドウェー島の攻撃隊は瞬く間に全滅したのである。
「給油と弾薬の再装填を各自で急がせろ。大本命の敵攻撃隊が来るぞ!!」
「了解!!」
果たして彼女等はやって来た。第一機動艦隊は0650頃から断続的に美機動部隊からの攻撃隊の攻撃を受ける事になる。
「左舷から敵雷撃機!!」
「魚雷を投下したら報告!!」
「魚雷投下!!」
「おもぉーかぁーじ!!」
空母『加賀』艦長の松田千秋大佐は将和が見守る中で懸命に回避していた。そして上空の敵機は散発になり出した。
「……引き上げていったのですか……?」
双眼鏡で覗いていた嶋野がそう呟く。対して将和は裸眼で上空を見ていた。
「いや……ッ!?」
「長官!?」
将和が上空のある部分を見た時、キラッと光るモノがあった。何かを感じた将和は直ぐに防空指揮所に駆け上がり、嶋野と草鹿もそれに続いた。
「松田!! 操艦、代わるぞ!!」
「は、はい!? 操艦、三好長官に代わる!!」
将和の命令に松田は直ぐに下がり艦橋に降りる。そして先程のある部分を見て伝声管に叫ぶ。
「続けて敵機約50、来るぞ!! 回避用ォ意!!」
『回避用意、ヨーソロォー!!』
現れたのは経路ミスで遅れてきたF4F約20機とSBD約40機程だった。直ちに両用砲、高角砲、ボフォースが火を噴く。上空にいた零戦隊が攻撃をするがSBDは雲を利用して接近してきた。
「敵ィィィィィィィィ!! 直上ォォォォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァ!!」
「………取舵20!!」
『取舵20!!』
将和の号令により『加賀』は軽快に回避運動を展開し急降下してきたSBD10機を回避に成功する。
「や、やりましたわ……」
「警戒を怠るな!!」
「は、はい!!」
「更に敵機直上ォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァ!!」
「……取舵20!!」
更に『加賀』に群がってきたのは9機のSBDだった。それでも将和は6機目までは回避した。しかし7機目は直撃コースだった。
「チッ!! 衝撃に備えェェェッ!!」
『ッ!?』
将和は叫びつつ左右にいた草鹿と嶋野を抱きしめる。SBDから投下された1000ポンド爆弾は前部格納庫に突き刺さりーーー爆発はしなかった。
「……不発か………ッ、取舵20!!」
『取舵20!!』
投下された1000ポンド爆弾は不発だった。直ぐに将和は回避運動を再開し残りの2機も回避したのである。
「直ちに処理班を向かわせろ!! 信管を抜かにゃあエライ事になる!!」
「分かりましたわ!!」
「……風が去ったか」
「風?」
「ん? あぁ聞こえてたか。たまに感じるんだ。嫌な風みたいなのがな」
「成る程。癇の虫というやつか」
将和の説明に頷く草鹿である。が、直ぐに草鹿はニヤリと笑う。
「ところでボクと嶋野少佐を抱きしめて感触は良かったかい?」
「嶋野は思っていた以上に巨乳だった事かな」
「ハハハ、それは良いな」
防空指揮所にほんわかな雰囲気が流れた瞬間、再び見張り員が叫んだのである。
「『神鶴』上空に急降下!?」
「何!?」
この時、『神鶴』『祥鳳』は給油と再装填が完了した零戦を発艦させようとしていた。2空母の上空に雲はあって視界不良であったが、対空電探は反応しなかった為油断していた。敵機はいたのだ。分厚い雲だった事もあり2空母に搭載していた21号対空電探はその効果を十分に発揮させる事が出来なかったのだ。
「敵ィィィィィィィィィィ!! 直上ォォォォォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「回避、急いで!!」
『神鶴』艦長の菊池桃子大佐は懸命に回避をさせるが1発の1000ポンド爆弾が全てを引き裂いた。他のSBDに隠れた1機のSBDが近寄って1000ポンド爆弾を投下した。
「『ヨークタウン』の仇ィィィ!!」
投下された1000ポンド爆弾は『神鶴』中部飛行甲板で発艦しようとしていた零戦に突き刺さり格納庫に飛び込んでからその力を解放したのである。
「『神鶴』被弾炎上ォ!!」
『神鶴』は被弾炎上する。爆風は格納庫で待機していた零戦を薙ぎ倒し爆発していく。更に爆風は付近にいた整備兵達を薙ぎ倒したのである。
「ぎゃあァァァァァァァァ!?」
「目がァ、目がァァァァァァァァ!?」
「衛生兵ェェェ!!」
『神鶴』の格納庫は地獄絵図であった。格納庫は火の海であり血だまりの中に戦死した者や負傷者らが倒れ伏していたのだ。
「更に『祥鳳』上空に急降下!?」
「回避ィィィィィィィィ!!」
『祥鳳』にもSBD11機が群がり艦長の岡田次子大佐は回避命令を出すも4発が命中、内1発は艦橋付近で爆発となりそよ爆風は『祥鳳』の艦橋を巻き込み、『祥鳳』艦長の伊澤艦長ら艦橋にいた者全員を戦死させるのである。
「『神鶴』『祥鳳』被弾炎上!!」
「………」
嶋野の報告に将和は頷く事もせずに視線は上空を警戒し回避命令を出す。
「更に来るぞ!! 取舵20!!」
更に4機が『加賀』に急降下してきたが4発とも回避に成功する。至近弾の水柱が防空指揮所に降り注ぐ。降り注ぐ海水に将和は嶋野と草鹿を抱き寄せる。
「大丈夫か?」
「え、えぇ。大丈夫ですわ///」
「お、おぅ///」
抱きしめられた二人は若干頬を紅く染めるも直ぐに表情を戻す。
「更に2機来るぞ!!」
「……取舵20!!」
『取舵20、ヨォーソロォー!!』
更に2機のSBDが急降下してきたが将和はそれも回避をして水柱が『加賀』の防空指揮所に降り注ぐが今度も二人を抱きしめる将和である。
「さて……今度こそ引き上げたか……大丈夫か二人?」
「………はッ!? だ、大丈夫だ!!///」
「大丈夫ですわ!!///」
将和は上空を見ながらそう呟く。どうやら今度こそは終わったようであった。なお、抱き寄せられた二人は顔を真っ赤にしながらも略帽を深く被るのであった。
「2空母の被害状況を詳細に報告させよ。曳航可能か、航行可能であれば後方へ退避させる」
将和はそう言って略帽を深く被る。視線は炎上する2空母に向けられていた。
「二度も……やられた仕打ち……この仕打ちは高くつくぞ……?」
将和はそう呟くのであった。そして動いていたのは将和だけではない。第二航空戦隊司令官の楠木少将は『神鶴』『祥鳳』被弾の報を聞いた瞬間、楠木は動いた。
「伊藤ちゃん、全艦隊に打電して!! 『我、航空戦ノ指揮ヲ取ル』!!」
そう言って楠木は艦橋にいた全員を見渡す。
「良い皆? 何としても三好のお兄ちゃんを、一航戦を助けるよッ。このままじゃあ葦原海軍は末代まで舐められるよッ!!」
『オオオォォォォォォォォォ!!』
二航戦と五航戦はミッドウェー島に全力攻撃していたので機数は少なかった。それでも零戦18機、九九式艦爆18機、九七式艦攻18機、彩雲2機を用意して敵機動部隊への第一次攻撃隊として送り出したのである。なお、攻撃隊長は確実を期す為に『蒼龍』艦攻隊隊長に異動した将弘であった。
その一方で一航戦が送り出した攻撃隊は千早大尉の彩雲の電波誘導によりジェニファー・フレッチャー少将の第17任務部隊を見つけたのだ。
「全軍突撃準備!!」
天山隊と攻撃隊長を率いる村田少佐は指示を出す。既に板谷少佐の零戦隊はF4F隊と空戦をしており零戦隊はF4F隊を駆逐しようとしていた。
『村田さん』
「小川大尉ッ」
『突撃命令を出したら先に我々が仕掛けます!!』
「了解。平山、ト連送よ!!」
『了解!!』
直ちにト連送が発信される。受信した小川大尉の彗星隊27機は一個中隊9機ごとに分かれて急降下を開始する。第17任務部隊は対空砲火を撃ちあげるも急降下速度が速い彗星隊には当たる事はなかった。
「撃ェッ!!」
小川大尉は投下索を引いて50番ーー500キロ爆弾を投下する。投下された500キロ爆弾は吸い込まれるように『ヨークタウン』の中部飛行甲板に突き刺さり飛び込んだ格納庫に転がりその力を解放する。
「ダメージ・コントロール!!(この威力……まさか新型機ッ!?)」
フレッチャーは艦体が震えるのを見つつ珊瑚海での衝撃より大きいのを感じる。そして『ヨークタウン』は先程の爆撃と更に四回震えた。
「報告!! 敵急降下爆撃機により飛行甲板に5発の命中弾!! 飛行甲板は大破、発着艦不能です!!」
「消火活動を急がせていますが火の勢いは止まりません!!」
「やはり新型機ね!!」
そう叫ぶフレッチャーであるが、急降下した小川大尉は大尉で『ヨークタウン』の被害に驚いていた。
「これは……ヴィンランドの爆弾は凄い威力ね」
『あっという間に飛行甲板は捲れ上がってますね』
一航戦の艦爆隊が使用していたのは葦原海軍が使用する航空爆弾ではなくヴィンランド海軍が使用している航空爆弾であった。
ハワイ作戦時に陸軍の飛行場や弾薬庫等で保管していた500ポンド爆弾や1000ポンド爆弾であり、今回の作戦の為に使用されていたのだ。ヴィンランド海軍は元より米海軍も徹甲爆弾という概念は無く、陸用と艦船用の航空爆弾はGP爆弾(汎用爆弾)であり信管も基本的に一種類しか無いのだ。
これはヴィンランド軍や史実米軍は高品質の鋼材で作られている爆弾でありしかも同じ重量でも炸薬量は爆弾の構造や材質によって大きく異なるからある。
例を上げるなら史実米軍の500ポンド爆弾は総重量222.9キログラムだが炸薬は146.6キログラムも充填されていたりする。ちなみに旧日本海軍の九八式25番陸用爆弾の炸薬量は96.6キログラムであるから日米の工業力の差は大きく突き離れているのだ。
将和はそれを前世等で経験していたから知っていた。だからこそ航空爆弾の確保には躍起になり、この海戦の為に温存していたのだ。
自国で作られた爆弾で飛行甲板を破壊された『ヨークタウン』は最早空母としての機能は喪失していたのだ。
そして攻撃はまだ終わりでは無かったのだ。
「左舷から敵雷撃機!!」
「回避ィィィィィィィィ!!」
左舷から突撃してきたのは村田少佐の天山隊9機であった。対空砲火を放つが天山隊は撃墜される事なく9本の魚雷を距離700で投下して離脱した。
「直撃コースです!!」
「マイガッ!! 衝撃に備えて!!」
そして『ヨークタウン』の左舷に5本の魚雷が水柱を上げて命中したのである。左舷にマトモに食らった『ヨークタウン』はあっという間に大傾斜となった。
「総員退艦よ!! 急いで!!」
傾斜する中で手摺りに掴まりながらフレッチャーは『ヨークタウン』での最後の命令を出す。『ヨークタウン』は攻撃をされてから19分後に小規模な爆発をしながら波間に消えていくのである。そして『レンジャー』も橋口少佐の攻撃隊に襲われ被弾炎上していたのである。
「まだ、敵空母が残っているわ!! 平山、直ちに無線機の出力を上げて電文を打つのよ!!」
『了解です!!』
そして村田機から真珠湾方面に遁走するレナ・スプルアンス少将第16任務部隊の動向が発信されたのである。その村田機から発信された電文を受信したのは敵機動部隊に向かっていた将弘の攻撃隊であった。
「経路変更。もう一群の機動部隊に向かう」
『了解ですッ』
そして程なくして将弘の攻撃隊も第16任務部隊上空に到着したのである。
「まだ来るのね……アドミラル・ミヨシ」
『エンタープライズ』艦橋でスプルアンス少将は冷や汗をかきながらそう呟く。第16任務部隊は後方にいた護衛空母群の艦隊と糾合していたので対空砲火は厚かった。また、上空にはF4F48機もいたのだ。
『2中隊、東に回りますッ』
偵察員の報告に将弘は上空にいた零戦に視線を移す。零戦18機も増槽を落とした。敵戦闘機を見つけたのだ。それを見た将弘は伝声管に向かって叫ぶ。
「全軍突撃せよ!!」
先に動いたのは『飛龍』艦爆隊の小林大尉の9機であった。小林隊は間近にいた空母『サラトガ』に狙いを定めたのである。
「『飛龍』艦爆隊!! 行くよォォォォォォォォ!!」
高度3000から『飛龍』艦爆隊は急降下を開始する。第16任務部隊の対空砲火で3機が撃墜されるも6機は投弾に成功。3発が命中する。
将弘の中隊はその隙を逃さずに降下、一気に将弘は高度3メートルを維持する。それを見ていたスプルアンスは思わず感動すら覚えてしまう。
「Unbilly Babo……何という低空飛行なの……」
スプルアンスの感動を尻目に将弘の中隊は距離1200まで躍り出る。
『敵空母、18ノットッ。火災を起こしています!!』
「ん、沈めるぞッ」
偵察員の報告に将弘はただその一言だった。『サラトガ』は面舵をして艦首が将弘の正面に出た。
『距離750!!』
「撃ェッ!!」
九七式艦攻の胴体から九一式魚雷改五が投下され波間に沈むも直ぐに浮き上がり疾走を開始する。将弘は操縦桿を右に倒し右への横滑りをしながら離脱する。その間にも主翼に機銃弾が突き刺さるも炎上はしなかった。
「戦果確認!!」
『えっと……やった!! やった!! 4本の水柱です!! 命中です!!』
『エンタープライズ』は左舷に4本が命中、急激な傾斜をする。しかし偵察員が叫ぶ。
『後方から敵機!!』
「了解!!」
将弘は左右への横滑りをしつつ敵戦闘機から離脱するのであった。
しかし、山口の機動部隊も五十子の主力部隊と合流する前に護衛空母群から発艦した攻撃隊に襲われていたのである。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m