『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第二十四話 MI作戦後

 

 

 

 

 

「……それは本当ですか?」

「……残念ながら本当です。第16任務部隊、第17任務部隊は壊滅、『ヨークタウン』『レンジャー』は撃沈。『サラトガ』『ホーネット』は中破しました。他にも護衛空母の3隻は轟沈。今は何とか帰還途中ではありますが……」

 

 ハワイオアフ島の太平洋艦隊司令部でセシリア・ニミッツ大将は部下からの報告に思わず腰を浮かせてしまう。

 

「……そうですか。それでジェニファーとレナは?」

「二人とも軽傷ではありますが生還しています。両官とも『ポートランド』に乗艦して帰還途中です」

「……分かりました、下がりなさい」

 

 部下を下がらせるとセシリアは深く溜め息を吐いた。

 

「これで残りは二空母となってしまった……どうしたら良いのかしら……」

 

 出撃した10隻のうち半分は沈むかもう半分は大破してしまい長期の修理になるだろう。他の護衛空母は8月以降に就役してくるがそれも能力的には正規空母以下であり期待はしない方が良いだろう。

 

「だがこれで葦原が和平を言い出してきたら……」

 

 国民は乗っかるかもしれないが大統領は黙殺するだろう。大統領のローズンベルトは大陸は元よりブリトンと共にトルメアを叩くのが優先だから葦原と和平をしている暇はないだろう。それに大陸と太平洋での権益が欲しいから和平なぞする理由は無い筈だ。

 

「だが葦原と戦争を続けるにしても空母が無い……」

 

 セシリアが欲していた空母は新型の正規空母群であり彼女達はまだ建造途中であり就役予定は残念ながら来年であったのだ。

 

「……ブリトンから空母を借りれないかしらね……」

 

 この時、セシリアは冗談を言ったつもりだったがまさかああなるとはこの時はまだ予想していなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

「残った空母を撃沈出来なかったのは悔やむしかないな」

「でもこれで暫くはヴィンランドも攻勢には出て来ない」

「それは希望的観測だな。奴等の事だ、ブリトンから空母を借用してでも反攻作戦をするぞ」

 

 7月20日、内地柱島泊地に帰還した日本・葦原連合艦隊は旗艦『大和』の作戦室で将和らが集まって会議をしていた。

 

「それで2空母の損害は?」

「2隻とも大破。攻撃隊を出した後の被害だし零戦だけの誘爆だったから何とかミッドウェーの二の舞は避けれた感じだな」

 

 『神鶴』『祥鳳』は完全に大破しており修理だけでも半年は掛かる程だった。だが、沈まないだけでも良しとするしか無かった。

 

「『蒼龍』と『飛龍』の喪失…少しはキツイ……スピー……」

 

 将和達の内心を代弁するように寝ている黒島が寝言を呟く。

 

「ま、問題は……」

 

 将和はそう言って指揮棒でトントンとガダルカナル島を指した。そこは史実日本も泥沼に巻き込まれた戦いの場所であった。

 

「此処をヴィンランドが来るかどうかだ。来なければFS作戦はやらないといけないしな」

「うーん……やっぱりFS作戦はやった方が良いよね三好長官?」

「あぁ。ニッケルが取れるニューカレドニアは戦争を継続するにしても和平をするにしても欲しい場所だ。それに航空戦と艦隊決戦で奴等の艦艇を少しでも削る必要がある場所だからな」

 

 ニッケルは発動機の部品に使用されており多くの航空機を生産するのであればニッケルの確保は重要だった。だからこそ史実の日本もFS作戦を立案していたが米軍のウォッチタワー作戦により延期され後に破棄された。

 それは将和がいた世界でも変わる事はなくFS作戦はむしろ成功してニューカレドニアまで占領、ニッケルを確保する事に成功している。

 

「ま、取り敢えずは東京の南条がどう出るかだな……。また岸の妖怪と話す必要があるしな……」

 

 その日の夜、将和は翌日に東京に向かうために準備をしていた。そんな時に扉をノックする音が聞こえた。

 

「開いてるよ」

「……エヘヘヘ……お邪魔しま~す」

「山本……?」

 

 おそるおそる入ってきたのは五十子だった。取り敢えず将和は五十子を椅子に座らせてお茶を出す。

 

「どうしたこんな時分に?」

「うん……三好長官に御礼が言いたくて……」

「御礼?」

 

 そう言って五十子は目を将和に見据えると頭を下げた。

 

「三好長官、この度は葦原を助けて頂き真に感謝に絶えません。ですからどうか、これからも葦原と共に歩んでもらえませんか?」

「………………………」

 

 頭を五十子、将和は無言で椅子に座り五十子の顔を挙げて……額にデコピンをしたのである。

 

「あいたッ!?」

「あのな山本……俺はただ単に葦原を助けるわけじゃないぞ」

「………?」

 

 将和の言葉に五十子は首を傾げる。

 

「お前や洋平が葦原の未来を憂慮して啼いていたからだ」

「………………」

 

 将和らと接触して歴史を知ってから、宇垣や黒島達は葦原の未来に涙を流した。だが五十子は泣いてはいなかった筈だった。

 

「心が啼いていた」

「ッ」

 

 その言葉に五十子の瞳が揺れる。確かに五十子も泣きたかったが自身は聯合艦隊司令長官の身であるがため、泣く事は耐えていた。それを将和は感じ取っていたのだ。

 

「自分の為ではなく、誰かの為に啼いていた……俺はそんなお前を信頼して手を差しのべた。後はそれをどう活かすかはお前次第だったが……ちゃんとお前はやれていたよ。良くやったな」

「……三好長官……ッ!?」

 

 将和の言葉に五十子は堪えきれなくなり大粒の涙を流していく。そんな五十子に将和は頭を撫でる。

 

「まぁ……俺も嶋野と小澤に似たような事されて思わず泣いてしまったから何とも言えんけどな」

「……そうなんですか?」

「あぁ」

 

 そう言って将和は『加賀』での事を五十子に話す。話を聞いた五十子は笑みを浮かべた。

 

「フフ、嶋野ちゃんらしいなぁ……それに智里ちゃんも凄いなぁ……(ボソッ」

「借りを返されたようなものだがな」

 

 前半は聞き取れた将和だが後半は聞き取れなかった。それはさておき、五十子は立ち上がる。

 

「ありがとうございます三好長官。何とかやってみます」

「ん。まぁ洋平との逢い引きはバレないようにしておけよ」

「んな!? バ、バ、バ、バレてたんで……」

「洋平から相談されていたからな。お前の押しが強いから気があるのか無いのか分からないと言っていたからな」

「~~ッ。洋平君の馬鹿ッ」

(まだまだ青いなぁこの二人……いやでも俺の場合、対象は夕夏達だから……あ、これはアカンヤツですわ)

 

 何故か夕夏達が武装して構えている姿に将和は身震いをして記憶から消す事にしたのである。

 そんな将和をさておき、翌日には将和は副官の嶋野と共に一式陸攻に乗って東京に向かうのである。

 

「……………………」

(……何か空気が寒いんだが……)

 

 機上になった将和と嶋野を『大和』から五十子と宇垣らが見送るのだが五十子の隣にいた宇垣はそう思うのであった。

 それはさておき、将和と嶋野は厚木に到着すると待っていた宮様と車で帝都に向かいそのまま陸軍省に向かう。

 

「やぁ三好大将。ミッドウェー作戦の事は聞きました、空母撃滅おめでとうございます」

「いやいや、まだ健在する空母がいますので油断はなりませんがね」

 

 将和と嶋野を出迎えたのは帝政葦原中津国の総理大臣の南条秀樹陸軍大将だった。応接室に通され促されて二人はソファに座る。

 

「それで……今回の来訪は?」

「ヴィンランドからの返答はありましたか?」

「……無かったね。むしろ黙殺されていたよ」

 

 でしょうなぁと将和はそう言って出されたお茶を啜る。世界や国が変わってもお茶の味は変わらなかった。なお、葦原はMI作戦後に中立国スイスでヴィンランド、ブリトン側の者と密かに接触して和平の交渉をしていたが返答は無かったのだ。

 

「ならばまだ続けるしかありませんな。ある程度の時期を見定めをしなければなりません」

「何か案が?」

「あるにはありますがまだ私案段階です。纏まればお伝えます」

「分かった。それと満州だが……基本的には守備という形になるだろう」

「それが一番ですな……後はルーシに備えるため」

「ウム、関東軍もチハを提供されて躍起に機甲師団の編成をしている」

「生産は急いでいますが葦原の工業力にも限界はあります」

「……つくづくそう思うよ」

 

 南条は深い溜め息を吐いた。現状で、今の葦原は将和 共に転移してきた日本の兵器に頼っているばかりである。現時点で葦原の全土に点在する各工場では24時間態勢で発動機や航空機、戦車等を生産していたが、それよりも多くを生産していたのが工作機械である。葦原にも工作機械はあるがどれもこれも年数が古すぎるモノばかりであり磨り減っているのが現状であった。

 宮様や官僚達(岸に吉田、池田達)が何とか交渉や協力によりトメニアやイタリアンを通じて開戦前の葦原にも多くの工作機械が導入されつつあったが正直まだまだなのは言うまでもない。

 

「宜しい、大陸についてはその方向で持っていこう」

「分かりました」

 

 南条との会談は穏やかに終了し後は帰るだけだったが南条はコッソリと嶋野を呼び出した。

 

「しかし、君が大臣の椅子を降りると言い出した時は驚いたが……まさか三好大将の副官になっているとは思わなんだ」

「これも天命と言うものでしょう」

「成る程、天命ね……ならば君をそこまで動かしたのも天命かね?」

「それもありますわ。ですが一番は……」

「一番は?」

「……あの方に惚れた……そういう事ですわ」

「……クハハハ。成る程、君からそういう言葉が出るとは思わなかったよ」

 

 南条は嶋野の言葉に大笑いするがその表情は親が子を見守る表情だった。

 

「可能な限り、君は元より三好大将には協力する。これは決定事項だから安心したまえ。陸軍の強硬派はワシが何とか抑え込む」

「頼りにしていますわ」

 

 それではと嶋野は頭を下げて部屋を出るのである。

 

「あの嶋野がなぁ……世の中、何が起きるか分からないもんだ」

 

 そう呟く南条だった。将和と嶋野は南条との会談後、海軍省に向かい、今後の作戦展開についての会議を参加する事にした。無論、柱島からも五十子と洋平、それに横須賀から清と井上も参加していた。

 

「やはりFS作戦は継続すべきではないですか? 航空機の発動機の生産に欠かせないニッケルはインドネシアでの鉱山で見つかったばかりで内地に還送するのも時間が掛かります。幸いにも三好大将が航空本部長時代の命令でニッケルの備蓄はしていたのでまだまだ大丈夫ではありますが……」

 

 海軍航空本部長の片桐中将はそう意見を出す。片桐もFS作戦を主張するのは芳しくなかったがニッケルの備蓄を考えれば仕方ない事だった。

 

「実行部隊としてGFはどのような考えですか?」

「GF司令部としてもニューカレドニア攻略のNK作戦までは構想をしています。サモア攻略までのFS作戦までは補給路の問題が有り想定はしていません」

「そいは如何なもんでごわす。豪州を脅かせばせんばFS作戦は実行すべきでごわす」

 

 第八艦隊首席参謀への就任が予定されていた神重子大佐は渡邊戦務参謀の言葉にそう主張するが将和が反論する。

 

「それは機動部隊が後2個あれば可能だったろうな」

「三好大将ッ」

「豪州を落とすにはせめてそれくらいの機動部隊が無ければ到底落とせん。まさか陸軍を送り込むわけにはイカンだろ。あれこそ50個師団は必要になるぞ」

「じゃっどんッ、豪州ば落とせんば葦原は南北から攻めんこつになりもす」

「アリューシャンはそこまで重視はしなくて良いだろ。史実でも海戦は数回無いし、北は寒さとの戦いだ」

「ムゥ……」

 

 将和の指摘に神もそこまで言い返す材料は無かった。

 

「幸いにもラバウルで新設する第八艦隊は開戦初期に鹵獲した艦艇も多く配備する事になっているし史実に比べたら遥かにマシだ」

「それは確かにですね」

 

 将和の言葉に洋平は頷く。ラバウルにて新設されたばかりの第八艦隊は旗艦を改装が完了したばかりの甲巡『鳥海』とし、六戦隊等がその艦隊編成に加わっていた。

 

「ですが、本当にヴィンランドはソロモンに来ますか?」

「来る」

 

 福留の呟きに将和はそう答えた。

 

「奴等は空母が少なかろうが、対葦の反攻作戦は必ずやる」

「成る程……」

「外れてたら皆の前で小澤とキスでもしてやるよ」

「ッ!?」

「お、良いねぇ」

「Sharap」

「あたッ!?」

 

 将和の言葉にニヤニヤする清に持っていたバインダーで殴る井上である。

 

「馬鹿……」

 

 そして智里はそっぽを向きながらも頬が赤かったのは言うまでもなかった。

 そして8月1日、葦原は再度連合国側に対して和平交渉を促した。だが、ヴィンランド合衆国との和平交渉であるがヴィンランド合衆国の大統領ローズンベルトは和平交渉を明確に拒絶し代わりに降伏要求である『ワシントン宣言』を声明を出す程であった。

 これにより葦原ではまだまだ戦争が続く事が明確にハッキリとしたのであった。

 

 

 

 

 




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